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文献詳細

雑誌文献

臨床外科70巻4号

2015年04月発行

文献概要

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あとがき

著者: 田邉稔

所属機関:

ページ範囲:P.518 - P.518

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 「君はどんな医師になりたい?」…私は医学部で教員をしている立場上,医学生やオープンキャンパスで訪れる医学部志望の高校生によくこの質問をする.「ブラックジャックのような天才外科医? 赤髭のような献身的医師? それともノーベル賞を受賞した山中伸弥先生のような世界的研究者?」と捲し立てれば,若者達は「ウ〜ン」と恥ずかしそうに下を向いてしまう.そんなある日,医学生の一人が「先生,もう一つの医者の理想像,ドクター・ハウスを忘れていませんか?」と私を問いただした.「ドクター・ハウス?」聞けば米国の超人気テレビドラマの主人公だというので,家に帰ってそのドラマを見てみると,なるほど….人間性は最悪のひねくれ者だが,極めて広い知識と深い洞察力で次々と難病の原因を突き止め,治療の道筋を立てていく.ドクター・ハウスは内科医なので手術はしないが,外科・内科を問わず,世間一般の人々が正しい診断と治療を受けたいという願いがドクター・ハウスのようなヒーローを作り上げたのであろう.
 神経内分泌腫瘍の患者は比較的若く,インテリジェンスが高い.過半数は非機能性で無症状,小型腫瘍で発見される場合が多いので,どのような治療を受けるべきか,経過観察ではだめなのか,インターネットで調べまくる患者が少なくない.NET(neuro endocrine tumor)患者はネットが得意であり,“ドクター・ハウス”を求めて病院を渡り歩くこともある.最近の報告では,たとえ小型腫瘍であってもリンパ節転移や脈管浸潤がそれなりに存在するとされ,治療はより切除が重視されつつある.WHO 2010分類が提唱された今でも,何が良性の証なのかは明確でなく,症例の予後を決定する因子も通常の悪性疾患のように体系化されていない.何がわかっていて何が未解決な課題なのか,それを理解した上でないと,患者の問いに答えることができない.特に「わからない」部分を上手く伝えなければ,“ドクター・ハウス”には近づけないのである.勿論,彼の性格まで手本にする必要はないが….

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1278

印刷版ISSN:0386-9857

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