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文献詳細

雑誌文献

臨床外科70巻6号

2015年06月発行

文献概要

ひとやすみ・125

腕を磨く

著者: 中川国利1

所属機関: 1宮城県赤十字血液センター

ページ範囲:P.717 - P.717

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 一般に外科医の仕事は,「頭を使うことなく,単に手足を動かすだけの肉体労働である」と,中傷されがちである.確かに仕事の中核は手術であり,体を動かす仕事に従事している.しかしながら外科医は個々の患者に対応し,最小の侵襲で最大の効果が得られるように熟慮しながら手術をしており,豊富な知識とともに熟達した技術が必要である.
 私の研修医時代,同期の研修医は4名で,互いに早く技術を習得したいと競い合ったものである.朝会や術前検討会などでは,白衣のボタンに糸を掛けて糸結びの練習をした.そして白衣に結ばれた糸が多数付いていることが,研修医の誇りでもあった.また,現在では縫合セットが病院から研修医に貸し出され,さらには縫合の講習会も開催されている.しかしながら私の研修医時代には,縫合セットは売られていなかった.そこで道具の貸し出しを手術室の師長に願い出たが,「研修医に貸し出すほど余裕はありません」と,断わられた.しかし,「なぜか春先になると研修医の頭数だけ減るのよね」という優しい小悪魔のささやきを聞き,深夜に忍び込んで拝借した.そして自宅で猛練習したものである.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1278

印刷版ISSN:0386-9857

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