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文献詳細

雑誌文献

臨床外科70巻6号

2015年06月発行

文献概要

FOCUS

外科医労働環境の現況と今後の展望

著者: 富永隆治1

所属機関: 1九州大学大学院医学研究院循環器外科学

ページ範囲:P.750 - P.755

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はじめに
 国民皆保険制度を始め,日本の優れた医療制度によって,日本国民は高度の医療を最小の自己負担で享受している.一方,対象患者の高齢化,疾病の複雑化,患者の権利意識の変化などが重なり,医療現場の仕事量は年々増大する傾向にある.このため医療従事者の労働環境は,劣悪の一歩を辿っている.特に外科は,一人前の術者になるまでの研修期間が長い,訴訟などのリスクが高い,高度の手術手技に対する評価を含め仕事に対する報酬が低い,緊急の呼び出しを含め労働時間が長い,などの理由から敬遠される傾向にある.全体の医師数が漸増する中で産科とともに外科医は減少しているのである.医師数の減少は臨床現場の過重労働を加速させ,さらに若手医師の新規参入を減少させるという負のスパイラルに陥っている.日本の高いレベルの外科医療を維持するために,外科医の労働環境改善は急務といえる.筆者は日本外科学会労働環境改善委員会担当理事として,これまで5年間活動してきた.アンケート調査などで会員諸兄には多大のご協力をいただいた.本稿では,その調査結果と委員会活動の一端を紹介する.

参考文献

1)一般社団法人日本外科学会:平成24年度日本外科学会会員の労働環境に関するアンケート調査報告書,平成25年1月
2)一般社団法人日本外科学会:平成24年度診療報酬改定結果に対する外科医の労働環境改善反映方法等実態調査報告書,平成25年1月
3)日本外科学会理事会,日本外科学会外科医労働環境改善委員会:平成23年度日本外科学会会員の労働環境に関するアンケート調査および平成22年度診療報酬改定後の病院としての勤務医師労働環境改善方策に関するアンケート調査報告書(要約)
4)富永隆治,梛野正人,金子公一,他:日本外科学会会員の労働環境および診療報酬改定後の病院としての勤務医師労働環境改善方策に関するアンケート調査報告書.日外会誌113:226-240,2012
5)富永隆治,兼松隆之,遠藤久夫,他:福岡県日本医師会会員を対象とした「医療の分業化」に関するアンケート調査報告書—「新しいチーム医療体制確立のためのメディカルスタッフの現状と連携に関する包括的調査研究」研究班(厚生労働科研).日外会誌114:48-52,2013
6)田林晄一:新しいチーム医療体制確立のためのメディカルスタッフの現状と連携に関する包括的調査研究.厚労科研 政策科学総合研究事業(政策科学推進研究事業)平成20年度—22年度総合研究報告書,2011

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1278

印刷版ISSN:0386-9857

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