icon fsr

文献詳細

雑誌文献

臨床外科70巻6号

2015年06月発行

文献概要

臨床報告

急速な進行をきたした小腸平滑筋肉腫の1例

著者: 金兒博司1 濱田賢司1 田岡大樹1 大倉康生1 大森隆夫1 伊藤貴洋1

所属機関: 1鈴鹿中央総合病院外科

ページ範囲:P.786 - P.791

文献購入ページに移動
要旨
症例は66歳,男性.貧血と便潜血陽性にて精査を行ったが異常なく,一旦経過観察となった.7か月後のCTで,小腸壁外に突出する造影不均一な約9 cm大の腫瘍を認めた.小腸造影では上部小腸に壁不整像と造影剤の腸管外漏出を認め,壊死による小腸腫瘍内への穿通と診断し手術を施行した.空腸に存在した壁外性腫瘍は骨盤底と強固に癒着し,直腸腹側面および膀胱底部に多数の播種結節を認めたため,小腸部分切除のみを施行した.腫瘍は固有筋層を主座に紡錘形細胞の充実性増生を認め,免疫組織化学染色ではα-SMA,ビメンチンが陽性,KIT,CD34などは陰性で小腸平滑筋肉腫と診断した.しかし,その後急速に遺残腫瘍が増殖し,直腸閉塞,水腎症を併発し,術後3か月目に死亡した.小腸平滑筋肉腫は稀な疾患で診断も困難であるが,極めて悪性度が高く,臨床的に注意を要する.

参考文献

1)八尾恒良,八尾建史,真武弘明,他:小腸腫瘍最近5年間(1995-1999)の本邦報告例の集計.胃と腸36:871-881,2001
2)日本癌治療学会/日本胃癌学会/GIST研究会:GIST診療ガイドライン.金原出版,2014
3)Miettinen M, Makhlouf H, Sobin LH, et al:Gastrointestinal storomal tumors of the jejunum and ileum:a clinicopathologic, immunohistochemical, and molecular genetic study of 906 cases before imatinib with long-term follow-up. Am J Surg Pathol 30:477-489, 2006
4)Miettinen M, Sobin LH, Lasota J:True smooth mustle tumors of the small intestine:a clinicopathologic, immunohistochemical, and molecular genetic study of 25 cases. Am J Surg Pathol 33:430-436, 2009
5)石原寛治,鈴木範男,伊東 了,他:多発性肝膿瘍を契機に発見された回腸原発平滑筋肉腫の1例.日消外会誌35:1683-1687,2002
6)吉田健一,多田修治,上野直嗣,他:破骨細胞型巨細胞をともなった小腸平滑筋肉腫の1例.日消誌100:443-447,2003
7)久保田健介,赤星朋比古,東 秀史,他:急性腹症にて発症した小腸原発平滑筋肉腫の一例.大分医会誌23:48-51,2005
8)大高和人,森田高行,藤田美芳,他:急速な増悪経過をたどった小腸平滑筋肉腫の1例.日消外会誌42:399-403,2009
9)橋本 章,小田裕靖,稲垣悠二,他:門脈ガス血症を認めた小腸原発平滑筋肉腫の1例.日消誌107:1159-1166,2010
10)池田 純,樋口恒司,谷口史洋:小腸との穿通をきたし膿瘍形成を伴った小腸平滑筋肉腫の一例.京府医大誌120:317-323,2011
11)加藤健宏,小木曽清二,小林建仁,他:成人腸重責症にて発症した小腸平滑筋肉腫の1例.日消外会誌45:875-880,2012

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1278

印刷版ISSN:0386-9857

雑誌購入ページに移動
icon up
あなたは医療従事者ですか?