文献詳細
図解!成人ヘルニア手術・8 忘れてはならない腹壁解剖と手技のポイント
文献概要
■一般外科医がTEPに対するときの心構え
各種の成人鼠径ヘルニア修復術のなかで,腹膜前修復法は鼠径部の構築を破壊することがなく,ヘルニアが発生する可能性のあるすべての部位を一度に補強できるという長所がある.そのなかでも腹腔鏡下鼠径ヘルニア修復術(laparoscopic inguinal hernia repair:LIHR)は整容性が高く,術後早期の痛みが軽く,早期社会復帰が可能であるが,そもそも,鼠径部ヘルニアは腹壁の脆弱性に由来する疾患であるので腹腔内操作は必要なく,TEP(totally extraperitoneal approach;腹腔鏡を用いた腹膜前到達法による腹膜前修復術1))であれば腹壁内の操作のみで完了することができ,腹腔鏡下手術のもつ低侵襲性を十分に発揮することができる.しかしながら,TEPのほうがlearning curveが長く,その間の合併症や再発が多いことが報告されており,日本内視鏡外科学会のアンケート調査によれば,2013年には5%と非常に高い再発率が報告されている2).その要因として,腹膜外腔への到達が盲目的である,見慣れない視野である,間接ヘルニア囊の処理が難しい,などが挙げられるが,これらの課題を克服するためには,腹壁解剖の正確な理解が不可欠であり,特にTEPにおいては,腹膜前腔の層構造の正しい理解なしには正確な修復術はできない3〜7).
初めに,腹壁解剖に基づく標準化した第二世代のTEPともいうべき手術手技を十分に理解し習熟したうえで,最新の器材や手技へも取り組み,TEPの素晴らしさを体感し,患者と共有していただきたい.
各種の成人鼠径ヘルニア修復術のなかで,腹膜前修復法は鼠径部の構築を破壊することがなく,ヘルニアが発生する可能性のあるすべての部位を一度に補強できるという長所がある.そのなかでも腹腔鏡下鼠径ヘルニア修復術(laparoscopic inguinal hernia repair:LIHR)は整容性が高く,術後早期の痛みが軽く,早期社会復帰が可能であるが,そもそも,鼠径部ヘルニアは腹壁の脆弱性に由来する疾患であるので腹腔内操作は必要なく,TEP(totally extraperitoneal approach;腹腔鏡を用いた腹膜前到達法による腹膜前修復術1))であれば腹壁内の操作のみで完了することができ,腹腔鏡下手術のもつ低侵襲性を十分に発揮することができる.しかしながら,TEPのほうがlearning curveが長く,その間の合併症や再発が多いことが報告されており,日本内視鏡外科学会のアンケート調査によれば,2013年には5%と非常に高い再発率が報告されている2).その要因として,腹膜外腔への到達が盲目的である,見慣れない視野である,間接ヘルニア囊の処理が難しい,などが挙げられるが,これらの課題を克服するためには,腹壁解剖の正確な理解が不可欠であり,特にTEPにおいては,腹膜前腔の層構造の正しい理解なしには正確な修復術はできない3〜7).
初めに,腹壁解剖に基づく標準化した第二世代のTEPともいうべき手術手技を十分に理解し習熟したうえで,最新の器材や手技へも取り組み,TEPの素晴らしさを体感し,患者と共有していただきたい.
参考文献
1)日本ヘルニア学会ガイドライン委員会(編):鼠径部ヘルニア診療ガイドライン 第1版.金原出版,2015,p 5
2)日本内視鏡外科学会(編):内視鏡外科手術に関するアンケート調査—第12回集計結果報告.日鏡外会誌19:520-524,2014
3)江口 徹:腹腔鏡下修復.外科74:598-608,2012
4)江口 徹,当間宏樹,岡部安博,他:腹腔鏡下鼠径部ヘルニア手術のピットフォールと対策:腹膜外到達法,経腹的到達法そして再発症例に対するhybrid修復.外科76:1493-1499,2014
5)江口 徹,当間宏樹,豊田秀一,他:腹腔鏡下修復:TEP,TAPP,そしてHybrid修復術.手術69:533-542,2015
6)江口 徹,当間宏樹,岡部安博,他:腹腔鏡下鼠径ヘルニア修復術—TEP法の最新手術手技,手術69:1539-1548,2015
7)川原田陽,小野田貴信,岩城久留美,他:特集 鼠径ヘルニアの新しい治療法 TEP法.消外36:959-972,2013
8)日本ヘルニア学会ガイドライン委員会(編):鼠径部ヘルニア診療ガイドライン 第1版.金原出版,2015,p 27
9)柵瀨信太郎:鼠径部の局所解剖.手術69:491-523,2015
10)佐藤達夫:鼠径部の解剖.手術62:1625-1633,2008
11)豊田秀一,他:金属性タックを用いた経腹膜外腔腹腔鏡下鼠径ヘルニア修復術(TEP)後イレウスの1例.日鏡外会誌20:89-94,2015
12)International Association for Ambulatory Surgery(IAAS)(監修),永田医,永田傳(訳):Day Surgery Handbook日帰り手術ハンドブック,日本短期滞在外科手術研究会,2015,p 13
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