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非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)/非アルコール性脂肪肝炎(NASH)の診断と治療—外科医が知っておくべき基礎知識
著者: 橋本悦子1
所属機関: 1東京女子医科大学消化器内科
ページ範囲:P.1394 - P.1399
文献購入ページに移動はじめに
飽食の時代を迎えたわが国においては,肥満やメタボリック症候群,その肝病変である非アルコール性脂肪性肝疾患(nonalcoholic fatty liver disease:NAFLD)が急増し,その対策が急務となった.脂肪肝(fatty liver)とは肝臓に余剰な脂肪が溜まった状態で,余剰な脂肪は脂肪滴として肝細胞質に蓄積する(図1)1〜2).脂肪肝の血液診断マーカーはなく,日常診療では超音波検査やCTなどの画像検査で診断される.脂肪肝の原因は,過剰飲酒,肥満・メタボリック症候群などのインスリン抵抗性,生活習慣病,脂質代謝異常,内分泌疾患,高度の栄養障害,長期間の完全非経口栄養,薬物,膵頭十二指腸切除後など多彩である(表1).肝臓学では,脂肪肝はアルコール性と非アルコール性,つまりNAFLDに大別されている1〜7).NAFLDは,アルコール性肝障害をきたすほどの飲酒歴のないすべての脂肪肝の総称で,多彩な病態を包含する.しかし,多くのNAFLDはインスリン抵抗性を基盤に発症するため,インスリン抵抗性に起因した脂肪肝のみをNAFLDとし,他の病因を二次性NAFLDとして除外することもある.なお,NAFLDはインスリン抵抗性を増悪し,両疾患は悪循環を呈するため,全身疾患として捉える必要がある.
NAFLDは,80〜90%は病態が進行することが稀で病的意義のほとんどない非アルコール性脂肪肝(nonalcoholic fatty liver:NAFL)であるが,10〜20%は脂肪変性に壊死・炎症性変化を伴い,肝硬変や肝細胞癌に進行しうる非アルコール性脂肪肝炎(nonalcoholic steatohepatitis:NASH)である(図2).NASHは肝組織学的に診断されるが,肝生検は一般的な検査ではなく,日常臨床ではNAFLDとして扱われることが多い.本稿では,わが国のNAFLDのガイドラインを中心に概説する.
飽食の時代を迎えたわが国においては,肥満やメタボリック症候群,その肝病変である非アルコール性脂肪性肝疾患(nonalcoholic fatty liver disease:NAFLD)が急増し,その対策が急務となった.脂肪肝(fatty liver)とは肝臓に余剰な脂肪が溜まった状態で,余剰な脂肪は脂肪滴として肝細胞質に蓄積する(図1)1〜2).脂肪肝の血液診断マーカーはなく,日常診療では超音波検査やCTなどの画像検査で診断される.脂肪肝の原因は,過剰飲酒,肥満・メタボリック症候群などのインスリン抵抗性,生活習慣病,脂質代謝異常,内分泌疾患,高度の栄養障害,長期間の完全非経口栄養,薬物,膵頭十二指腸切除後など多彩である(表1).肝臓学では,脂肪肝はアルコール性と非アルコール性,つまりNAFLDに大別されている1〜7).NAFLDは,アルコール性肝障害をきたすほどの飲酒歴のないすべての脂肪肝の総称で,多彩な病態を包含する.しかし,多くのNAFLDはインスリン抵抗性を基盤に発症するため,インスリン抵抗性に起因した脂肪肝のみをNAFLDとし,他の病因を二次性NAFLDとして除外することもある.なお,NAFLDはインスリン抵抗性を増悪し,両疾患は悪循環を呈するため,全身疾患として捉える必要がある.
NAFLDは,80〜90%は病態が進行することが稀で病的意義のほとんどない非アルコール性脂肪肝(nonalcoholic fatty liver:NAFL)であるが,10〜20%は脂肪変性に壊死・炎症性変化を伴い,肝硬変や肝細胞癌に進行しうる非アルコール性脂肪肝炎(nonalcoholic steatohepatitis:NASH)である(図2).NASHは肝組織学的に診断されるが,肝生検は一般的な検査ではなく,日常臨床ではNAFLDとして扱われることが多い.本稿では,わが国のNAFLDのガイドラインを中心に概説する.
参考文献
1)橋本悦子:脂肪肝.日本消化器病学会(監);消化器病診療,第2版.医学書院,2014,pp 176〜178
2)橋本悦子:NASH疾患概念の成立と変遷.竹井謙之(編);Hepaotlogy Practice vol. 2.NASH・アルコール性肝障害の診療を極める.文光堂,2013,pp 2-7
3)日本消化器病学会(編):NAFLD/NASH診療ガイドライン2014.南江堂,2014
4)日本肝臓学会(編):NASH・NAFDLの診療ガイド2015.文光堂,2015
5)Chalasani N, Younossi Z, Lavine JE, et al:The diagnosis and management of non-alcoholic fatty liver disease:practice Guideline by the American Association for the Study of Liver Diseases, American College of Gastroenterology, and the American Gastroenterological Association. Hepatology 55:2005-2023, 2012
6)EASL, EASD, EASO:EASL-EASD-EASO Clinical Practice Guidelines for the management of non-alcoholic fatty liver disease. J Hepatol 64:1388-1402, 2016
7)Hashimoto E, Tokushige K, Ludwig J:Diagnosis and classification of non-alcoholic fatty liver disease and non-alcoholic steatohepatitis:Current concepts and remaining challenges. Hepatol Res 45:20-28, 2015
8)Eguchi Y, Hyogo H, Ono M, et al:Prevalence and associated metabolic factors of nonalcoholic fatty liver disease in the general population from 2009 to 2010 in Japan:a multicenter large retrospective study. J Gastroenterol 47:586-595, 2012
9)Hashimoto E, Tokushige K:Hepatocellular carcinoma in non-alcoholic steatohepatitis:Growing evidence of an epidemic? Hepatol Res 42:1-14, 2012
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