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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科71巻13号

2016年12月発行

雑誌目次

特集 名手からの提言—手術を極めるために

ページ範囲:P.1447 - P.1447

 外科手術の技術の向上は,新しい医療機器の開発・進歩によって生じるものではなく,技術の向上や新規技術の提案の過程で新たな医療機器のニーズが高まり,開発につながるものと考えられる.これまでの外科学の進歩は,先駆者・改革者の英知,想像力,そしてたゆまぬ努力によるところが大きい.
 本特集では,近年の消化器外科手術を極めてこられた,あるいは極めつつある練達の方々に,これからの上達をめざす若手外科医に伝えたい手術についての「思い」を述べていただいた.手術における哲学,座右の銘,これまでの修練方法といった総論的なことから,こだわりの器械,手順,術式といった専門分野に特化した各論的なことまで,名手からの提言をお届けする.手術上達をめざす若手外科医の座右の銘となれば幸いである.

上部消化管領域から

上部消化管外科医人生と若手外科医への提言

著者: 宇山一朗

ページ範囲:P.1448 - P.1452

これだけは伝えたいこと
①手術は道具の正しい使い方と外科解剖が大事である.
②可能か不可能かは他人ではなく自分自身で決めること.
③挑戦的な手術の是非はガイドラインではなく外科医の技量と人格で決まる.
④自分が患者の最後の砦であると思え.

若手外科医への提言—食道外科手術を極めるために

著者: 桑野博行 ,   酒井真

ページ範囲:P.1453 - P.1456

これだけは伝えたいこと
◆手術手技に加え「手術学」の習得が求められる.
◆「手術手順のstory化」「先を読む」「beyond the fieldをイメージする」ことが重要である.
◆外科医の原点=「患者のための手術」

より良い手術で治すことをめざそう!

著者: 瀬戸泰之

ページ範囲:P.1457 - P.1460

これだけは伝えたいこと
◆手術を極めるために,「眼」「組み立て」「道具」「経験」が必要である.
◆日ごろの素朴な疑問が「より良い手術」を創造する原動力となる.
◆外科医は指導者(メンター)となる必然性があり,それが次代の外科医を育てる源流となる.

手術を極めるために

著者: 大幸宏幸

ページ範囲:P.1461 - P.1463

これだけは伝えたいこと
◆手術習得の近道は猿真似である.
◆白と黄色を認識して間を切れ.
◆外科医に大切なEBMとはExperience based medicine.

胃癌手術を解剖する

著者: 二宮基樹

ページ範囲:P.1465 - P.1468

これだけは伝えたいこと
◆胃癌手術は一度限りしかない.
◆手術はリスクマネージメントである.
◆郭清の要諦はen blocという言葉に尽きる.
◆困難症例にも対応できる技術体系を構築し,普段から実践しておくべき.

終わりなき究極を求めて—意思あるところ道ありき

著者: 安田卓司

ページ範囲:P.1469 - P.1475

これだけは伝えたいこと
◆患者には次がない.術中は集中力を絶やさず,強い意思をもって最高の手術をめざせ.
◆術前画像,術中の術野情報と鉗子を通じた触感などあらゆる情報を駆使して,術野を透見するような3次元画像をイメージすべし.
◆取るのではなく残すものだけを残す意識をもち,左手のカウンターで場を展開して手術すべし.
◆すべての結果に責任とこだわりをもて.

下部消化管領域から

私の手術への向き合い方

著者: 絹笠祐介

ページ範囲:P.1476 - P.1478

これだけは伝えたいこと
◆現在の手術成績に決して満足しないという向上心.
◆良い手術をよく考えながら沢山見るというトレーニング環境.
◆低侵襲手術手技の鍛錬を怠らず,一方で開腹手術をためらわないというスタンス.

腹腔鏡下大腸癌手術—解剖学に基づいた視野展開について—カウンタートラクション

著者: 竹政伊知朗

ページ範囲:P.1479 - P.1482

これだけは伝えたいこと
◆CME/TMEを完遂するための良好な視野展開には,術者の左手の使い方が最も重要である:局所解剖に基づいて助手の2本の鉗子で基礎視野を作り,それに合わせて術者左手で垂直方向にカウンタートラクションをかける.
◆鉗子操作,デバイスは「柔らかい」「メリハリのある」タッチが重要である.
◆学会などで見聞した様々な異なる知見を「良いところ取り」のごとく安易に混同させることは,良い結果をもたらすとは限らない:方法論を十分に理解する.
◆自分の手術ビデオを5分程度に編集してみる:手術を極めるための自身の問題点・欠点が必ず見えてくる.次の手術までに実践してほしい.

腹腔鏡下直腸低位前方切除術—虎の巻

著者: 黒柳洋弥

ページ範囲:P.1483 - P.1487

これだけは伝えたいこと
◆剝離の基本は剝離層でのsharp dissection.
◆剝離層を知るには脂肪の属性を理解する.
◆術中はSeries of small successful stepsと折れない心.

A pessimist or an optimist?

著者: 渡邉聡明

ページ範囲:P.1488 - P.1489

 これまで外科医として歩んできた中で,印象に残る言葉があります.A pessimist sees the difficulty in every opportunity;an optimist sees the opportunity in every difficulty.(楽天家は,困難の中にチャンスを見い出す.悲観論者は,チャンスの中に困難を見る).これは,ノーベル文学賞も受賞した英国の元首相Winston Churchillの言葉です(図1).Winston Churchillは,第一次世界大戦中から第二次世界大戦,戦後の冷戦時代にかけて活躍した偉大な政治家ですが,このほかにも多くの名言を残しています.
●The price of greatness is responsibility.
●Never, never, never, never give up.
●Kites rise highest against the wind—not with it.
●Success is not final, failure is not fatal:it is the courage to continue that counts.

内視鏡外科は外科教育の革命か

著者: 渡邊昌彦

ページ範囲:P.1490 - P.1492

これだけは伝えたいこと
◆出血はしない,させない,広げない.
◆メスとハサミは使いよう.
◆外科手術の作法を学ぶ.

肝胆膵領域から

理想の手術をめざして

著者: 上坂克彦

ページ範囲:P.1493 - P.1495

これだけは伝えたいこと
◆手術は,術前の準備が大切.特に肝胆膵外科では,術前の画像を自ら読影し,これに基づいて手術をプランニングする.この作業が正確かどうかで,手術の成否が決まる.
◆メスとはさみは使いよう.
◆若いうちに名手の手術をたくさん見ましょう.

肝臓外科を極めるために—手術ではなく頭術

著者: 檜垣時夫 ,   高山忠利

ページ範囲:P.1496 - P.1500

これだけは伝えたいこと
◆最初に,教授就任5年目(2006年)に教室員に語った「手術ではなく頭術」という,外科手術に対する考え方を示した.
◆次に,その10年後,この頭術を叩き込まれ,教室員が日常的に行っている具体例として,他施設で切除不能と判断された症例を提示した.われわれの肝臓外科に対する思いについて述べる.

血管合併切除を伴う肝胆膵外科手術の工夫と課題

著者: 宮崎勝

ページ範囲:P.1501 - P.1505

これだけは伝えたいこと
◆術前に十分な手術プランニングを怠らない.
◆遭遇しうるあらゆる困難な事態を想定しておく.
◆常にもっと良い手術手技ができないか考える.
◆強い責任感をもって,新たなチャレンジをする.
◆有用と実感したことはやり通し,理論的な根拠をもって発信していく.

完全腹腔鏡下肝左葉切除

著者: 田邉稔 ,   伴大輔 ,   大庭篤志 ,   巌康仁 ,   光法雄介 ,   小野宏晃 ,   松村聡 ,   藍原有弘 ,   落合高徳 ,   工藤篤 ,   田中真二

ページ範囲:P.1506 - P.1512

これだけは伝えたいこと
◆腹腔鏡下肝左葉切除は,上級者への入り口となる手術である.
◆安定した肝離断には,デバイスの使用法を熟知し,確実な脈管処理を行う必要がある.
◆輸液制限,気腹圧維持,30度頭高位,換気圧の制限,肝門血行遮断など,出血させない環境づくりも極めて重要である.
*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画を見ることができます(公開期間:2018年12月末まで)。

継続こそ上達の道

著者: 中尾昭公

ページ範囲:P.1513 - P.1517

これだけは伝えたいこと
一,至誠に悖る勿かりしか
一,言行に恥づる勿かりしか
一,気力に缼くる勿かりしか
一,努力に憾み勿かりしか
一,不精に亘る勿かりしか

膵臓手術医をめざす若手外科医のみなさんへ—膵頭十二指腸切除術のポイントの極めかた

著者: 山上裕機

ページ範囲:P.1519 - P.1524

これだけは伝えたいこと
◆外科医の修行は,一生続きます.
◆「生涯一外科医」で頑張ってください.
◆「鬼手仏心」

肝切除を極めるために

著者: 若林剛

ページ範囲:P.1525 - P.1528

これだけは伝えたいこと
◆今の操作は次の操作の準備.
◆広く浅くまわりから.
◆終わらない手術はない.
◆止まらない出血はない.

ラパコレUpdate 最近のコンセプトと手技・5

胆囊炎症例におけるラパコレ—急性胆囊炎症例に対するラパコレ—早期LCと待機的LC

著者: 今井寿 ,   吉田和弘 ,   長田真二 ,   松井聡 ,   田中善宏 ,   松橋延壽 ,   高橋孝夫 ,   山口和也

ページ範囲:P.1530 - P.1536

はじめに
 腹腔鏡下胆囊摘出術(以下LC)は1990年頃より革新的な低侵襲手術として急速に拡散し,近年,あらゆる腹腔内臓器で主流になりつつある内視鏡外科手術の礎である1).LCは2016年に改訂された「胆石症診療ガイドライン」にあるように,有症性胆囊結石症の標準術式であり,日本では約80%の症例がLCで治療されている2,3).一方,2000年以降,急性胆囊炎症例においてもLCの安全性と有効性が担保されることが明らかとなり,2013年に改訂出版された急性胆管炎・胆囊炎診療ガイドラインであるTokyo Guideline 2013(以下TG13)では,早期LCと待機的LCがそれぞれ重要な役割を担っている4〜6).本稿では,TG13に示されている急性胆囊炎治療におけるLCの位置付けと,適切な手術時期の選択方法に加え,実際の急性胆囊炎症例での注意すべき術中合併症について概説する.

病院めぐり

塩竈市立病院外科

著者: 福原賢治

ページ範囲:P.1537 - P.1537

 塩竈(しおがま)市立病院は仙台市東部に隣接する塩竈市あります.塩竈市は日本三景「松島」の島々の大半を有し,塩竈神社の門前町,みなと町として発展してきました.開院は昭和20年で,この地域唯一の公立病院として,塩竈市,多賀城市,松島町.七ケ浜町.利府町を合わせた2市3町,約19万人を診療対象にしています.5年前の東日本大震災は東北地方の太平洋側を中心に甚大な被害を及ぼしましたが,松島湾が自然の防潮堤になり,沿岸部としては比較的被害の少なかった地域でした.また病院は高台にあり,老朽化した病棟も耐震工事を終えたばかりで倒壊を免れ,震災直後から診療を再開しました.
 昭和61年に225床あった病床は,総務省の推進する自治体病院改革プランにより,平成21年4月,161床に縮小されました.地域の高齢化が進むなか,厚労省の推進する地域包括ケアシステムをいち早く取り入れ,平成25年11月に在宅療養支援病院の認定を受けました.また平成27年6月には地域包括ケア病棟を稼働させ,医療型療養病棟を含めて,地域住民の幅広いニーズに応える病棟体制にしました.一方で年間1,000件以上の救急搬送を受け入れ,3,000件の内視鏡検査を行い,救急,消化器癌,高齢者医療を3本の柱に,「信頼,貢献,誠意」の院是のもと,近隣医療機関との連携強化を図っています.

FOCUS

WHO分類2010年版をふまえた良性肝細胞性結節の新しい考え方—その理解と対処のために

著者: 近藤福雄 ,   斉藤光次 ,   東海林琢男 ,   副島友莉恵 ,   福里利夫

ページ範囲:P.1538 - P.1547

 WHO分類2010年版(新WHO分類)は,良性肝細胞性結節の様々な遺伝子変異と免疫染色所見を明らかにした有用な分類である.しかし,従来からの肉眼や組織形態を主体とした診断基準とは診断根拠が異なるので,形態診断と新分類での診断が相異する例がある.分類困難な症例の解釈や,個々の症例の病態把握には,肉眼的形態,組織所見,免疫染色所見,分子生物学的所見,背景因子を詳細に検討した個別化診断が有用である.また,限局性結節性過形成には門脈血流優位型や進行型という特殊型があることにも留意すべきである.
 本稿は,既刊の総説1,2)の内容に追加・改訂を加えたものである.

胃癌化学療法の新展開

著者: 加治早苗 ,   川上武志 ,   町田望 ,   寺島雅典

ページ範囲:P.1548 - P.1553

はじめに
 一時期滞っていた切除不能進行・再発胃癌化学療法の開発は,HER2陽性例に対する1次治療へのトラスツズマブの上乗せ効果の証明や1),2次治療におけるramucirumab(Ram)の有用性が証明されたことで2,3),再び勢いづいてきている.また,2014年9月よりオキサリプラチン(l-OHP)が使用可能となり,治療の選択肢が増え,特にシスプラチン(CDDP)適応外症例の予後改善に期待される.
 一方,術後補助化学療法については,2007年米国臨床腫瘍学会(ASCO)でのACTS-GC試験の結果公表以降,胃癌根治切除術後Stage Ⅱ,Ⅲには1年間のS-1投与が標準治療として認識されている.しかし,サブグループ解析の結果から,Stage ⅡとStage Ⅲでは異なった治療開発が計画されている.すなわち,Stage Ⅱに対しては毒性を軽減する,もしくは投与期間を短縮する試みが,Stage Ⅲに対してはより強い治療効果を期待する試みが計画されている.

手術トラブルを未然防止する12の行動特性・9

トラブル発生を未然防止する基盤を整える—チェックリストなどを活用し,ルール・マニュアルを遵守している

著者: 石川雅彦

ページ範囲:P.1554 - P.1557

●はじめに
 外科手術の実施に際しては,さまざまなルールやマニュアルが存在し,術前・術中・術後には各種のチェックリストを用いた業務が実施されている1).本稿では,トラブル発生を未然防止する基盤を整えることに関連して,外科医がチェックリストをなど活用し,ルール・マニュアルを遵守していることが,患者への影響拡大の防止とトラブル発生の未然防止に資するということに焦点をあてて検討する.

臨床研究

切除可能大腸癌肝転移患者に対する周術期化学療法の実態分析—京都大学外科関連施設癌研究会アンケート調査から

著者: 吉野健史 ,   間中大 ,   西躰隆太 ,   吉村玄浩 ,   寺嶋宏明

ページ範囲:P.1558 - P.1563

要旨
切除可能大腸癌肝転移に対する明確な治療指針は示されていない.そこで,現在の治療実態を調査するため京都大学外科関連施設にアンケート調査を行い,33施設から回答を得た.切除可能大腸癌肝転移に対し,手術先行か,術前化学療法(NAC)先行かについて,症例ごとに検討が21施設と最多で,手術先行11施設,NAC先行1施設であった.NACを行う場合,オキサリプラチンや分子標的薬を含むレジメンで行い,術後は分子標的薬を用いない施設が多い傾向であった.切除後の治療では,術後オキサリプラチンを含み,分子標的薬を併用しない施設が大多数であった.また,同時性・H2/H3・肝転移Grade Cなど再発高リスク症例に対して,より積極的にNACを行う傾向がみられた.

臨床報告

体外循環Standbyで手術した胸腹部杙創の1例

著者: 江田匡仁 ,   高須惟人 ,   齋藤雄史

ページ範囲:P.1564 - P.1567

要旨
症例は57歳,男性.住宅建築の作業中に足場より転落し,鉄筋が左胸部から右腹部に穿通した.鉄筋を切断し救急車にて搬送された.エコーでは心囊水,胸水は認めず,心囊内に鉄筋を認めたものの,心筋との関係は評価できなかった.人工心肺を準備しつつ,手術室に搬送し,clamshell incisionで術野を展開した.鉄筋は左肋間から下行大動脈前面を通り,心囊内に刺入,心臓下面,下大静脈前面を通り,心囊外へ出て,横隔膜および肝臓を損傷していた.抜去し,洗浄後に大網充塡を行った.第22病日に退院となった.良好な術視野と一期的大網充塡を施行し,良好な結果を得たため報告した.

昨日の患者

病棟で引き継がれる手作り袋

著者: 中川国利

ページ範囲:P.1460 - P.1460

 外科病棟には様々な趣味や特技を持った患者さんが,病を得て入院する.入院当初は手術を控えて緊張し心に余裕がないが,術後に痛みが緩和し食欲が出てくると,病室でも常日頃の活動を行う患者さんが現れる.そして診療を担うわれわれ医療従事者にも心のゆとりが生じ,医療以外の会話も弾む.
 80歳代前半のMさんは胆囊癌で,拡大胆囊摘出術を行った.術後経過は良好で,退院を前に編み棒で手袋を編んでいた.そこで「編み物が得意なのですね」と,声を掛けた.すると「母親は裁縫が得意で,私の服も作ってくれました.幼児の頃から見よう見まねで裁縫を覚え,大好きになりました」と語った.そこでバッグに貯めた尿や胆汁が直接外部から見えないように,携帯用袋の作製を依頼した.

ひとやすみ・145

同業者への厳しい視線

著者: 中川国利

ページ範囲:P.1487 - P.1487

 医療関係者が患者であると,診療を行う際には何かとやり辛いことが多い.私自身が同業者へ厳しい視線を投げかけた事例を紹介する.
 職場でのインフルエンザワクチンの接種会場に行くと,多数の職員が並んでいた.壁に貼られた接種部位の説明では,上腕中ほどの外側を出すように絵で具体的に指示していた.しかしその場所は橈骨神経が通る部位であり,注射により神経損傷をする危険性がある.

1200字通信・99

「伊勢志摩サミット」余話

著者: 板野聡

ページ範囲:P.1518 - P.1518

 10月号に伊勢志摩サミットの話題を書きましたが,その後,色々な方面からの多くの報告を目にすることになりました.新たに知ることも沢山あり,改めて感心しています.
 ご存じの方も多いと思いますが,会場となった志摩観光ホテルは,山崎豊子さんが書かれた『華麗なる一族』の舞台となったホテルで,皇族方のご利用でも有名です.このホテルは,真珠で有名な志摩市の賢島にあり,本土とは2つの橋だけで連絡しており警備がしやすいことや,三重県警察には要人警護のためのSP部門があり警備の経験が豊富なことなどから,この地が選ばれたそうです.

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原稿募集 「臨床外科」交見室

ページ範囲:P. - P.

バックナンバーのご案内

ページ範囲:P. - P.

あとがき

著者: 小寺泰弘

ページ範囲:P.1572 - P.1572

 「天才外科医」という言葉があり,テレビ欄で時々見かけますが,やっかみもあるかもしれませんが,私はこの言葉は好みません.でも,天才ピアニストはいます.凡人がどんなに練習しても絶対に指が回らない難曲を簡単に弾く才人なら結構いるのかもしれませんが,天才とはその程度のレベルではありません.マルタ・アルゲリッチという「天才」女流ピアニストが,あるコンクールに参加した時のことだったと思いますが,同じコンクールの参加者が,自分の部屋にこもってプロコフィエフのピアノ協奏曲第3番という不協和音の多い楽譜が真っ黒な難曲を何度も繰り返し練習していた時のこと.興味をひかれてずっと壁越しに聴き続けていたアルゲリッチは,もうそれだけで自分で弾けるようになってしまったそうです.おそらく1950年代の後半,まだプロコフィエフの楽譜など簡単には入手できなかった時代のことだと思いますが,ありえないようなエピソードです.やはりミューズの世界には天才はいるのです.
 しかし,名人と言われる外科医の手術ビデオを見て,「何だ,ああすりゃいいんだ.簡単だ」とばかりに初めての手術でやれてしまう研修医はなかなかいないと思います.外科医も医学部は出ているので,勉強ならある程度はできたのかもしれませんが,幼いころから動体視力や空間識別能,立体感覚,関節覚,テレビゲームの上手さなど,様々な能力でふるいにかけられ選抜されてきた特別なヒトなわけではありません.そもそも,手術のような自然の摂理に反することを行う者に,天与の才が与えられることはありません.これは神ではなくヒトの営みであり,運も多少はあるかもしれませんが,たゆみない探究心,好奇心,創造力に加え,忍耐力,胆力,危機察知能力など様々な能力を備えたヒトが,人知れず努力を重ねて優秀な外科医になるのだと思います(多分).結果として優秀な外科医になられた先生方が,一体どのような縁があり,そこにさらにどのような努力を重ねてそうなられたのかを一度お聞きしてみたい.こうした声に応えて本特集が編纂されました.私などが読んでも今さら手遅れの感はありますが,若い読者諸君,この特集を読んでmotivationを上げてもらえれば最高です.君ならまだ間に合う!?

「臨床外科」第71巻 総目次

ページ範囲:P. - P.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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