臨床外科71巻2号

2016年02月発行

臨床報告

傍下行結腸窩ヘルニアの1例

著者： 光岡晋太郎¹ 酒井亮¹ 寺本淳¹ 瀬下賢¹

所属機関： ¹岡山市立市民病院外科

ページ範囲：P.228 - P.231

文献概要

要旨
患者は62歳，女性．腹痛と嘔吐を主訴に来院し，イレウスの診断で保存的治療を行ったが軽快しなかった．CT所見から絞扼性イレウスと診断され，内ヘルニアが疑われたが原因は特定できなかった．緊急手術を施行すると，下行結腸外側の傍結腸溝にヘルニア門を有し，下行結腸外背側に陥凹が存在して小腸が10 cmほど入り込み嵌頓していた．小腸を引き出して整復したのち，再発防止のためヘルニア門を切開し，嵌頓していた空間を広く開放して手術を終了した．内ヘルニアでも稀な傍下行結腸窩ヘルニアであったが，この疾患の形態を理解しCT所見を丁寧に読影すれば術前診断も可能と考えられた．

参考文献

1）川崎浩之，佐々木一晃，高坂　一，他：傍下行結腸窩に発生した内ヘルニア嵌頓の1例．日消外会誌36：1621-1625，2003

2）高森　繁，後藤秀樹，竹田　泰，他：下行結腸固定異常に伴う傍下行結腸窩ヘルニアの1治験例．日臨外医会誌56：108-111，1995

3）朽木　恵，高梨俊保：内ヘルニアのCT診断．臨放41：909-913，1996

4）山田達治，近藤　哲，小川弘俊，他：特徴的なCT所見を呈した傍下行結腸窩ヘルニアの1例．日臨外医会誌58：183-186，1997

5）野中　隆，柴田良仁，黨　和夫，他：傍下行結腸窩に発生した腹膜窩ヘルニアの1例．日消外会誌41：700-704，2008

6）岡崎雅也，丸高健司，福沢淳也，他：傍下行結腸窩ヘルニアの1例．日臨外会誌69：1524-1527，2008

7）新名一郎，長沼志興，千々岩一男，他：傍下行結腸窩ヘルニアによるイレウスに対し腹腔鏡下手術が有用であった1例．日鏡外会誌15：343-348，2010

8）Rosen L, Woldenberg D, Friedmann IH：Small bowel obstruction secondary to pericecal hernia. Dis Colon Rectum 24：45-46, 1981

9）山本明宏，丸山忠憲，江口孝之：下盲腸窩ヘルニアの1例．外科診療35：421-424，1993

10）恩田昌彦，高橋秀明，古川清憲，他：イレウスの全国集計21899例の概要．日腹部救急医会誌20：629-636，2000

11）佐藤秀一，竹山信之，吉田暢元，他：内ヘルニアのCT診断．画像診断25：1034-1049，2005