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文献詳細

雑誌文献

臨床外科71巻2号

2016年02月発行

文献概要

臨床報告

ポリスチレンスルホン酸カルシウム(CPS)による回腸狭窄をきたした1例

著者: 市川健1 河埜道夫1 近藤昭信1 田中穣1 長沼達史1 伊佐地秀司2

所属機関: 1済生会松阪総合病院外科 2三重大学肝胆膵・移植外科

ページ範囲:P.241 - P.245

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要旨
症例は85歳,男性.慢性腎不全,高カリウム血症でポリスチレンスルホン酸カルシウム(CPS)を1年間内服中であった.当院受診の2日前より腹痛,下痢を繰り返したため精査を行った.小腸造影検査・内視鏡検査でバウヒン弁より30 cm口側の回腸に全周性狭窄を伴う潰瘍性病変を認め,過去に結核感染の既往はないが,結核菌検査で陽性を示したため回腸結核を疑い,回腸部分切除術を施行した.病理組織学的所見で抗酸菌は否定され,狭窄部粘膜下層に好塩基性無構造物の沈着を認めたため,CPSによる回腸狭窄と診断された.CPSによる小腸病変の報告は本症例を含めても2例と少ないが,腸管の狭窄や炎症性変化を認める症例でCPS内服歴があれば,本症も念頭に置くべきであると考えられた.

参考文献

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2)小林和祐,井上 勉,池田直史,他:ポリスチレンスルホン酸カルシウム内服中に直腸穿孔を発症した腹膜透析患者の1例.日透析医学会誌41:199-205,2008
3)藤竹信一,内田大樹,滝川麻子,他:ポリスチレンスルホン酸カルシウム内服中に発症した高齢者大腸穿孔の1救命例.日臨救急医会誌11:443-448,2008
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12)真壁志帆,岡野一祥,塚田三佐緒 他:炭酸ランタンとポリスチレンスルホン酸カルシウムを併用していた透析患者に腸管穿孔を認めた一例.腎と透析78:631-634,2015

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1278

印刷版ISSN:0386-9857

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