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文献詳細

雑誌文献

臨床外科71巻8号

2016年08月発行

文献概要

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あとがき

著者: 渡邉聡明

所属機関:

ページ範囲:P.1044 - P.1044

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 今年はロサンゼルスで開催された2016 Annual Scientific Meeting of The American Society of Colon and Rectal Surgeons(ASCRS 2016)に出席してきました.アメリカで最近行われている大腸外科におけるロボット手術の発表を中心に見てきました.アメリカでは大腸領域のロボット手術が世界で最も多く行われています.アメリカ以外の国では,大腸領域では主に直腸癌にロボット手術が行われているのに対して,アメリカでは結腸癌や良性疾患に対しても行われており,そのロボット手術の現況がよくわかりました.一方,学会発表とは別に企業のセミナーで,最新のロボット手術の現状についても見学し,これまでのロボットとは違う新世代のロボットを見ることができました.デバイスの進化は,手術術式にも大きな影響を与えます.現在,腹腔鏡手術が大腸外科領域で広く行われています.しかし,歴史的にみると1990年代初頭に腹腔鏡手術が導入された時代,大腸外科で腹腔鏡手術が急速に広まったわけではありません.2000年を過ぎてから特に広く普及したわけですが,その普及の背景にあったのはやはりデバイスの進歩でしょう.低侵襲手術が発達するためには各臓器の手術の特性に合ったデバイスが整備されている必要があります.そういった点から見ると,現在のロボットはまだまだ技術的に改良点が多く残されていると思います.しかし,今回見ることができたいくつかの新技術はロボット手術の進化に多く寄与するものと思われました.現在,腹腔鏡手術が広く普及している中,本当にロボット手術が必要か,という議論があります.ここで注意しなくてはならないのは,現在のロボット手術はまだまだ十分成熟した段階ではなく,改良点が多く残されている段階であるという点です.ロボット手術は,器機の改良により,これからますます進化していくと思われます.その発達を支えるためには工学系との連携も重要でしょう.さらに,医療経済的側面からコストの検討も必要でしょう.そうした総合的なアプローチによりロボット手術が進化して,日常臨床の場で真に有用なtoolとなることを期待しています.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1278

印刷版ISSN:0386-9857

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