文献詳細
臨床報告
文献概要
要旨
症例は48歳の男性.右鼠径ヘルニアの存在に気付いていたが支障ないため放置していた.5日前の大きなクシャミをきっかけに右陰囊が大きく膨らむことになり,その後還納せず痛みが増強したため,救急要請し当院を受診した.初診時,右陰囊は小児頭大に腫大緊満して発赤が著明であり,血液検査でも高度の炎症反応を示した.腹部CT検査では,腹腔内に異常所見を認めず,陰囊内に盲腸が下垂嵌頓していることが認められた.炎症所見は右陰囊部に限局しており,ヘルニア囊と盲腸壁の間にガス像を認めたため,嵌頓した盲腸の穿孔と診断し緊急手術を行った.手術は,全身麻酔下に行い,ヘルニアに対して前方アプローチで開始し,さらに下腹部正中切開を追加し腹腔内も精査した.ヘルニア囊内には膿汁を認めたが,腹腔内は正常で回盲部切除術を行い,ヘルニア根治術を追加して終了した.鼠径ヘルニアでの盲腸の嵌頓や穿孔は稀とされており,文献的考察を加えて報告する.
症例は48歳の男性.右鼠径ヘルニアの存在に気付いていたが支障ないため放置していた.5日前の大きなクシャミをきっかけに右陰囊が大きく膨らむことになり,その後還納せず痛みが増強したため,救急要請し当院を受診した.初診時,右陰囊は小児頭大に腫大緊満して発赤が著明であり,血液検査でも高度の炎症反応を示した.腹部CT検査では,腹腔内に異常所見を認めず,陰囊内に盲腸が下垂嵌頓していることが認められた.炎症所見は右陰囊部に限局しており,ヘルニア囊と盲腸壁の間にガス像を認めたため,嵌頓した盲腸の穿孔と診断し緊急手術を行った.手術は,全身麻酔下に行い,ヘルニアに対して前方アプローチで開始し,さらに下腹部正中切開を追加し腹腔内も精査した.ヘルニア囊内には膿汁を認めたが,腹腔内は正常で回盲部切除術を行い,ヘルニア根治術を追加して終了した.鼠径ヘルニアでの盲腸の嵌頓や穿孔は稀とされており,文献的考察を加えて報告する.
参考文献
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