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増刊号 手術ステップごとに理解する—標準術式アトラス 1 食道
腹部食道癌(食道胃接合部癌)に対する手術
著者: 山下裕玄1 瀬戸泰之1
所属機関: 1東京大学胃食道外科
ページ範囲:P.17 - P.22
文献購入ページに移動 食道胃接合部癌とは,食道と胃の筋層境界(食道胃接合部)の上下2 cmに腫瘍の中心をもつもの全般を指す.下部食道癌に対しては食道亜全摘,体上部の進行胃癌に対しては胃全摘が標準術式であり,上部消化管の癌に対する術式は腫瘍の占居部位によって極端に異なっていることがわかる.したがって,食道胃接合部癌に対する施行術式が常に議論の的であることは容易に想像できる.扁平上皮癌であれば食道癌に準じた食道亜全摘を,腺癌であれば食道浸潤(食道が主占居である腫瘍であれば“食道”浸潤ではないのであろうが,この用語の使用頻度が多いため同語をあえて用いる)距離,胃側の腫瘍volumeに応じて食道亜全摘,胃全摘を使い分けている.また,腫瘍長径が4 cm以下であれば,深達度によらず胃全摘は不要で,下部食道噴門側胃切除により予防的リンパ節郭清は十分であるという結論から,同術式の選択頻度が増えてくると推測される.食道亜全摘,胃全摘については他稿に譲り,本稿では食道胃接合部癌に対する独自のoptionである下部食道噴門側胃切除の解説を行うことにする.
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