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文献詳細

雑誌文献

臨床外科72巻2号

2017年02月発行

文献概要

臨床報告

S-1長期投与を含む集学的治療により長期生存を得ている再発乳癌の1例

著者: 久保秀文1 木村祐太1 河岡徹1 長島由紀子2 山本滋3 永野浩昭3

所属機関: 1独立行政法人地域医療機能推進機構徳山中央病院外科 2独立行政法人地域医療機能推進機構下関医療センター 3山口大学医学部腫瘍・消化器外科講座

ページ範囲:P.232 - P.236

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要旨
症例は60歳代,女性.左乳癌でBt+Axが施行され6年後に多発肺転移が認められた.パクリタキセル,カペシタビン,ドセタキセル,EC(エピルビシン,シクロホスファミド)治療が順次なされたが効果不良で,S-1を80 mg/m2/day(分2)×2週間,休薬1週間で投与開始された.肺転移は縮小し,以後3〜4コース投与後1〜2か月休薬として継続された.その後,少しずつ肺転移増大が認められたが,本人の希望でS-1投与が継続された.その後,脳転移が出現し転移巣切除が追加された.現在,S-1投与より8年以上経過するが,全身状態良好でS-1投与継続中である.肺転移に対しては緩徐な増大はあるものの,脳転移の再発はない.本例ではS-1の長期有効性と安全性が示された.

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1278

印刷版ISSN:0386-9857

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