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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科72巻4号

2017年04月発行

雑誌目次

特集 消化管吻合アラカルト—あなたの選択は?

ページ範囲:P.387 - P.387

 消化管の吻合法には以前から,手縫い吻合ではAlbert-Lembert吻合やGambee吻合をはじめとして数多くの吻合法があり,利点・欠点およびその応用などが議論されてきました.器械吻合が広く普及した今日においても,その方法の修得が重要であることに変わりはありません.一方で,医療機器のめざましい進歩により,機器を用いた吻合法にも様々な工夫がなされてきています.そのような中で,消化管吻合についての知識をup-to-dateし,手術部位や状況により適切に選択することは,今日さらに重要性を増しています.
 本号では,消化管の各手術手技における吻合の実際とその長所・短所,ピットフォールについて,可能ならば動画も交じえてご解説いただき,消化管吻合に関しより深い理解を得ることをめざし企画しました.

総論

消化管吻合術後の生理と評価

著者: 持木彫人 ,   石畝亨 ,   福地稔 ,   熊谷洋一 ,   石橋敬一郎 ,   石田秀行

ページ範囲:P.388 - P.392

【ポイント】
◆消化管収縮は空腹時と食後期では収縮波形態が異なり,空腹期は伝播性の強収縮波群が特徴である.
◆消化管は吻合すれば機能が元に戻るわけではなく,術前に比べて消化管の機能は大きく障害を受ける.
◆消化管は部位によって機能が異なり,切除する部位によって機能障害が異なる.

消化管吻合—器械吻合,手縫い吻合の長所・短所

著者: 瀬戸泰之

ページ範囲:P.393 - P.396

【ポイント】
◆器械吻合,手縫い吻合それぞれの特性(長所・短所)と,その際に使用するデバイスや縫合糸の特徴をも十分に熟知しておくことが大切である.
◆吻合部位やその臓器を考慮し,適切で的確な吻合を行うことが重要である.
◆臨機応変に対応できるよう器械吻合,手縫い吻合ともに熟練しておくことが最も大事である.

食道外科

頸部食道胃吻合:手縫い

著者: 梶山美明 ,   富田夏実 ,   國安哲史 ,   橋本貴史 ,   橋口忠典 ,   那須元美 ,   斎田将之 ,   尾﨑麻子 ,   吉野耕平 ,   藤原大介 ,   菅原友樹 ,   朝倉孝延 ,   鶴丸昌彦

ページ範囲:P.397 - P.400

【ポイント】
◆手縫い吻合は1針ごとに微妙な調節が可能であり,最も信頼性の高い吻合法である.
◆前壁内層連続縫合では胃の漿膜は取らず正確に筋層に針を出す.
◆吻合操作自体でなく吻合開始に至るまでの環境整備が最も重要である.

頸部食道胃吻合:三角吻合

著者: 太田光彦 ,   池部正彦 ,   森田勝 ,   江頭明典 ,   吉田大輔 ,   信藤由成 ,   南一仁 ,   藤也寸志

ページ範囲:P.402 - P.404

【ポイント】
◆三角吻合は簡便で,端々吻合なので阻血域がなく胃管の長さは最短ですむ.
◆比較的吻合部狭窄をきたしにくい.
*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画を見ることができます(公開期間:2019年4月末まで)。

頸部食道胃吻合:Circular stapler

著者: 中島政信 ,   室井大人 ,   菊池真維子 ,   高橋雅一 ,   加藤広行

ページ範囲:P.405 - P.407

【ポイント】
◆大網や胃壁内の血流網を念頭に置いた愛護的操作のもとで胃管を作成し,色調の良好な部位で吻合を行う.
◆過度の緊張を加えないように頸部食道周囲も十分に剝離を行い,ゆとりをもって吻合操作を行う.
*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画を見ることができます(公開期間:2019年4月末まで)。

胸腔内食道胃吻合:Circular stapler—食道癌手術における胸腔内吻合の要点

著者: 村上健太郎 ,   松原久裕

ページ範囲:P.408 - P.411

【ポイント】
◆胸腔内食道胃管吻合は簡便かつ安定した吻合であるが,吻合に際し,いくつかの留意すべき点がある.
◆縫合不全の予防措置と施設ごとのドレナージ戦略を確立させておくことで,安全な食道癌治療が可能になる.
*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画を見ることができます(公開期間:2019年4月末まで)。

胃外科

噴門側胃切除術後再建:手縫い—腹腔鏡下体腔内手縫い「観音開き法」食道残胃吻合

著者: 西﨑正彦 ,   黒田新士 ,   菊地覚次 ,   垣内慶彦 ,   松村年久 ,   渡邉めぐみ ,   香川俊輔 ,   藤原俊義

ページ範囲:P.412 - P.415

【ポイント】
◆逆流防止弁形成食道残胃吻合に共通するのは,His角を強調した人工胃底部,食道全層と胃粘膜からなる下垂弁の形成である.
◆逆流防止には埋め込む食道の長さを十分にとること,狭窄予防には吻合操作やフラップ縫着時にきつく締め過ぎないことが重要である.
*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画を見ることができます(公開期間:2019年4月末まで)。

噴門側胃切除術後再建:Circular stapler—腹腔鏡下手術での胃管再建における吻合

著者: 緒方杏一 ,   矢内充洋 ,   木村明春 ,   生方泰成 ,   高橋研吾 ,   岩松清人 ,   桑野博行

ページ範囲:P.416 - P.419

【ポイント】
◆噴門側胃切除術後の再建法は食道残胃吻合(胃管再建を含む),空腸間置法,Double tract法などがあるが,標準再建法はいまだ確立されていない.
◆おもに早期癌に対する術式であり,低侵襲,機能温存が求められる.腹腔鏡下に行うことも多く,手技の簡便性も無視できないポイントである.
◆腹腔鏡下噴門側胃切除術,胃管再建におけるcircular staplerを用いた吻合法につき概説する.
*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画を見ることができます(公開期間:2019年4月末まで)。

噴門側胃切除術後再建:Linear stapler—腹腔鏡下下部食道噴門側胃切除後のノーナイフ・リニアステイプラーを用いた食道胃管吻合

著者: 吉村文博 ,   佐藤啓介 ,   山名一平 ,   橋本恭弘 ,   中島亮 ,   長谷川傑

ページ範囲:P.420 - P.423

【ポイント】
◆胃管血流に配慮した把持・展開操作を行う.
◆食道と胃管のステイプラー挿入孔のずれが生じないようにノーナイフ・リニアステイプラーでファイアーを行う.
◆確実な縫合結紮手技を習得しておく必要がある.
*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画を見ることができます(公開期間:2019年4月末まで)。

幽門側胃切除術後Billroth Ⅰ法再建:Circular stapler

著者: 中田浩二 ,   羽生信義 ,   柏木秀幸 ,   小村伸朗 ,   矢野文章 ,   志田敦男 ,   三森教雄 ,   矢永勝彦

ページ範囲:P.424 - P.428

【ポイント】
◆幽門側胃切除Billroth Ⅰ法再建においてcircular stapler(CS)による器械吻合を安全に行うためのおもなポイントとして,以下が挙げられる.
◆胃切離ラインはできるだけ胃の長軸に対して垂直となるようにし,大彎のたるみが生じないようにすること.
◆アンビルヘッドとCS本体を合体し締め込む際に,緊張をゆるめ,打ち抜く組織量を多く取るようにすること.
◆残胃小彎のステイプルラインが腹側ではなく0時方向になるように誘導し,吻合部に捻れの力が加わらないようにすること.

幽門側胃切除術後Billroth Ⅰ法再建:Linear stapler(デルタ吻合)

著者: 砂堀さやか ,   石田善敬 ,   中内雅也 ,   中村哲也 ,   柴崎晋 ,   角谷慎一 ,   菊地健司 ,   稲葉一樹 ,   宇山一朗

ページ範囲:P.429 - P.431

【ポイント】
◆one by one technique:デルタ吻合では,術者と助手が同時に操作するのではなく,お互いに手技のポイントを理解し,一つ一つの操作を着実に行うようにする.
◆吻合部への適度な緊張:デルタ吻合の際,テンションが強いと縫合不全のリスクとなるが,弱くても吻合口のサイズが小さくなることがあるため,適切なテンションを心掛ける.
◆リニアステイプラー操作時の微調節:リニアステイプラーを操作する際は,一度に行おうとはせず,開閉を何度か繰り返しながら微調整し,的確なところでファイアする.
*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画を見ることができます(公開期間:2019年4月末まで)。

幽門側胃切除術後Roux-en-Y法再建

著者: 田中千恵 ,   小寺泰弘

ページ範囲:P.432 - P.435

【ポイント】
◆いくつかのランダム化比較試験が行われているが,Billroth Ⅰ法との比較で,短期・長期成績ともに明らかな差は認めないとする報告が多い.
◆十二指腸断端縫合不全防止のため,断端のステープルラインは埋没する.
◆内ヘルニアの原因となりうる間隙は閉鎖する.
*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画を見ることができます(公開期間:2019年4月末まで)。

胃全摘術後再建:Circular stapler—腹腔鏡下手術での経口アンビルを用いた食道空腸吻合

著者: 石橋雄次 ,   福永哲 ,   岡伸一 ,   神田聡 ,   夕部由規謙 ,   小平佳典 ,   枝川広志

ページ範囲:P.437 - P.440

【ポイント】
◆縦隔内吻合のような高位の吻合にも十分対応可能であり,簡便である.
◆食道は大彎側端が鋭角になるように切離,同部位でhemi-double stapling techniqueにて吻合する.
◆自動吻合器の接合時の巻き込み防止,吻合部狭窄予防のため,遠位側腸管を尾側ではなく頭側に展開,牽引する.
*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画を見ることができます(公開期間:2019年4月末まで)。

胃全摘術後再建:Linear stapler—完全腹腔鏡下Inverted-T型Overlap法再建

著者: 進藤幸治 ,   永井英司 ,   森山大樹 ,   大内田研宙 ,   真鍋達也 ,   大塚隆生 ,   中村雅史

ページ範囲:P.441 - P.444

【ポイント】
◆食道と空腸を逆T字型になるように吻合することで,共通孔が腹側を向き,縫合閉鎖に有利である.
◆共通孔閉鎖は連続縫合にこだわらず,術者の技量に合わせて結節縫合を適宜採用すること.
*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画を見ることができます(公開期間:2019年4月末まで)。

小腸外科

小腸吻合:手縫い

著者: 伊崎智子 ,   松浦俊治 ,   田口智章

ページ範囲:P.446 - P.451

【ポイント】
◆Albert-Lembert吻合:小腸吻合の基本.1層目は粘膜面から針をいれて全層縫合,2層目は漿膜面から漿膜筋層を縫合し漿膜面で結紮する.
◆粘膜外漿膜筋層1層吻合:腸管壁の外側から漿膜筋層に糸をかけて粘膜下層に針を出し,粘膜に針をかけずに漿膜筋層を縫合する方法.必ず粘膜は内翻する.

小腸吻合:機能的端々吻合—口径差のある小腸小腸吻合

著者: 浮山越史 ,   渡邉佳子 ,   鮫島由友

ページ範囲:P.453 - P.456

【ポイント】
◆側々吻合の長軸方向のステイプルライン同士が近接しないように位置をずらして調整する.
◆側々吻合のステイプルラインの端の部分(股の部分,crotch)は漿膜筋層縫合を追加する.
◆crotchの漿膜筋層縫合の際には,細径の腸管腔をできるだけ保つようにする.

J型回腸囊作成:Linear stapler

著者: 荒木俊光 ,   大北喜基 ,   廣純一郎 ,   吉山繁幸 ,   問山裕二 ,   井上幹大 ,   内田恵一 ,   楠正人

ページ範囲:P.457 - P.460

【ポイント】
◆それぞれのstaplerの特徴を理解したうえで,どれをどの操作に用いるのかを適切に選択することが重要である.
◆回腸囊作成は一度しかチャンスがないため慎重に行う.回腸の炎症や浮腫が強ければ,分割手術を回避しない.
*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画を見ることができます(公開期間:2019年4月末まで)。

結腸外科

機能的端々吻合

著者: 河原秀次郎

ページ範囲:P.461 - P.464

【ポイント】
◆機能的端々吻合は2つの腸管の側々吻合であるが,腸管内容の移送の面からは端々吻合と同等と考えられてきた吻合法である.
◆吻合法には,順行式(normograde)と逆行式(retrograde)の2つがある.
◆順行式吻合術は小腸結腸吻合に最も用いられてきた吻合法であるが,逆行式吻合は結腸結腸吻合あるいは結腸直腸吻合に有用な吻合法である.
*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画を見ることができます(公開期間:2019年4月末まで)。

直腸外科

Double stapling technique(DST)

著者: 永田洋士 ,   野澤宏彰 ,   清松知充 ,   渡邉聡明

ページ範囲:P.465 - P.468

【ポイント】
◆吻合部の血流を維持するため,腸間膜の処置は最小限とする.
◆術中内視鏡で吻合部からの出血やエアリークがないことを確認する.
◆吻合部の減圧のため,経肛門ドレーンを留置する.
*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画を見ることができます(公開期間:2019年4月末まで)。

端側吻合

著者: 沖英次 ,   中西良太 ,   杉山雅彦 ,   藏重淳二 ,   中島雄一郎 ,   安藤幸滋 ,   佐伯浩司 ,   前原喜彦

ページ範囲:P.469 - P.472

【ポイント】
◆直腸端側吻合は排便機能,血流の観点で端々吻合より利点をもつとされる.
◆複数の比較試験で端側吻合の排便機能はJ-pouch吻合と差がないと報告されている.
◆器械吻合では直腸側々吻合も縫合不全を防ぐ方法として考慮してもよいと考える.
*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画を見ることができます(公開期間:2019年4月末まで)。

胆道外科

肝移植における胆道再建

著者: 篠田昌宏 ,   日比泰造 ,   下田啓文 ,   板野理 ,   尾原秀明 ,   阿部雄太 ,   八木洋 ,   北郷実 ,   松原健太郎 ,   山田洋平 ,   星野健 ,   黒田達夫 ,   北川雄光

ページ範囲:P.474 - P.478

【ポイント】
◆肝移植後の胆道再建法は,胆管胆管吻合と胆管空腸吻合に大別される.それぞれの再建法の特徴や利点を理解して,適切な再建法を選択することが肝要である.

胆管癌手術における胆道再建—合併症発生の危険因子よりみた適切な胆道再建法

著者: 久保木知 ,   清水宏明 ,   吉富秀幸 ,   古川勝規 ,   高屋敷吏 ,   高野重紹 ,   鈴木大亮 ,   酒井望 ,   賀川真吾 ,   野島広之 ,   細川勇 ,   宮崎勝 ,   大塚将之

ページ範囲:P.479 - P.481

【ポイント】
◆胆管空腸吻合に伴う合併症として,縫合不全および術後胆管狭窄に注意が必要である.
◆肝内胆管空腸吻合は難易度が高く合併症も多いが,術前に胆管の合流形態を把握し,定型化した手技に基づいて丁寧に施行することで合併症発生率を低く抑えられる.

膵臓外科

膵腸吻合:柿田変法

著者: 平谷清吾 ,   松山隆生 ,   森隆太郎 ,   遠藤格

ページ範囲:P.482 - P.486

【ポイント】
◆膵液瘻をきたすと腹腔内膿瘍,仮性動脈瘤破裂,腹腔内出血など手術関連死亡につながる重篤な合併症を引き起こす可能性があるため,より安全で確実な手技が求められる.
◆膵消化管吻合術には,①膵管の吻合法,②膵実質の吻合法の2つの要素があり,それぞれの吻合法にgold standardと呼べるものは存在していない.
◆当教室で施行している膵空腸吻合法〔膵実質空腸密着縫合と膵管空腸全層縫合(柿田変法)〕の手技と理論につき概説する.

膵腸吻合:Blumgart変法(Nagoya method)

著者: 多代充 ,   藤井努 ,   杉本博行 ,   山田豪 ,   高見秀樹 ,   林真路 ,   小寺泰弘

ページ範囲:P.488 - P.492

【ポイント】
◆当教室における膵空腸吻合では,膵実質-空腸漿膜筋層密着縫合として,Blumgart法の運針数を減らし,よりシンプルにmodifyした変法(Nagoya method)を導入している.
◆Blumgart変法は,針穴からの膵液の漏出,結紮による膵裂傷を防止でき,線ではなく面で膵断端を確実にラップさせられることが利点である.

膵管胃粘膜吻合

著者: 上村健一郎 ,   村上義昭 ,   末田泰二郎

ページ範囲:P.493 - P.496

【ポイント】
◆膵頭十二指腸切除術の膵消化管再建法は,近年複数の大規模比較臨床試験にて,膵胃吻合が術後膵液瘻を含む術後短期成績において膵腸吻合を凌駕したと報告されている.
◆膵管胃粘膜吻合の手技のポイントは,膵切離は超音波凝固切開装置で行い分枝膵管のシーリングを行う,膵管胃粘膜吻合は8針以上行い内ステントを留置,膵管内の確実な減圧を行う,膵断端を胃粘膜ポケット内に陥入させ分枝膵管由来の膵液漏出を腹腔内に漏らさない,以上の3点である.

病院めぐり

KKR高松病院外科

著者: 出石邦彦

ページ範囲:P.497 - P.497

 KKR高松病院は,四国の香川県高松市にあります.病院は高松市の中心部に位置し,県庁,市役所まで徒歩数分の距離にあります.赴任して5年以上経過しますが,「なぜKKRなのか?」とよく聞かれます.私も赴任以前には,KKRは時にホテル・病院の名前で聞いていたものの,何の略か知りませんでした.英語表記では,国家公務員共済組合連合会はFederation of National Public Service Personnel Mutual Aid Associationsとなりまったく違っていました.調べたところ,単にローマ字で書いたときのKokka-komuin Kyosaikumiai Rengokaiの頭文字をとったものでした(日本放送協会の略がNHKであるのと同じ).KKRは24か所の直営病院(戦後設立)と,10か所の管理医療施設(戦前の海軍共済組合が設立した病院が母体)を運営しており,高松病院は戦後作られた直営病院にあたり,昭和26年に開院しました.翌27年に30床の入院施設を持つ病院となりました.その後,戦後の地域医療の向上・結核患者の治療を目標に増床を進め,昭和38年には209床(結核病床53床含む)になりました.平成10年に敷地面積を広げたうえで全面改築を行い,今の形になっています.現在,一般病床179床の急性期病院として地域医療に取り組んでおり,15診療科(総合内科,血液内科,神経内科,循環器内科,リウマチ科,呼吸器内科,アレルギー科,消化器内科,糖尿病内分泌内科,腎臓内科,消化器外科,呼吸器外科,泌尿器科,麻酔科,眼科)で診療を行っています.
 当院の外科の病床数は40床で,医師は消化器外科3名,呼吸器外科1名,一般外科1名の5名です.写真は,外科研修医2名と撮影したものです(筆者は前列左から2番目).平成27年6月から呼吸器外科の先生が新しく赴任し呼吸器外科が新設されました.昨年度の手術総数は消化器,一般外科および呼吸器外科で371件でした.対象疾患はヘルニア,胆石,膵癌,肝癌,胃癌,大腸癌,肺癌,気胸など幅広く行っております.腹腔鏡・胸腔鏡手術も幅広く行っています.市の中央部だけに急性腹症などを含む救急患者の搬送も多く,積極的に受け入れ治療を行っております.外科受診となった緊急搬送患者は他県の市中病院と変わらず穿孔性腹膜炎,急性虫垂炎,腸閉塞が多くみられます.ただ,他県と異なることは受診時の検査において,香川県では腹部CTで胃のなかにうどんが結構な頻度で描出されることです.MDCTでは高解像度のため,四角い断面で細長いうどんの構造をはっきりみることがあります.うどんは恐らく画像診断でわかる唯一の料理だと思います.気のせいかもしれませんが,MDCTで描出される胃のなかの讃岐うどんは,腰があるためか他県に比べてより角ばり,より長いようにみえます.患者さんに,「うどんを食べて来ました?」と聞くと必ず驚かれます.

ラパコレUpdate 最近のコンセプトと手技・9

総胆管結石症例に対するラパコレ—Choledochotomy

著者: 梅澤昭子

ページ範囲:P.498 - P.507

はじめに
 総胆管結石に対する治療は,二つに大別される.内視鏡的胆管切石と(腹腔鏡下)胆囊摘出術を併用するいわゆる二期的治療,手術的(腹腔鏡下)に胆管切石と胆囊摘出術を同時に行う一期的治療である.二期的治療は内視鏡的治療を手術前か,手術後に行うもので,内視鏡の術者が必要である.一期的治療は術者が一つの手術として包括的に完結させることができる方法であり,患者にとって一回の治療(手術)で治療が完結するという点で優位である.
 現在,総胆管結石は二期的治療が広く行われている1).これは,腹腔鏡下胆囊摘出術の黎明期と内視鏡的乳頭切開切石術(EST)の手技の普及時期が重なり,多くの腹腔鏡外科医が腹腔鏡下の一期的治療を選択肢としてこなかったためである2).しかし,ESTの長期成績(胆管結石累積再発率)や乳頭機能障害について思いを馳せれば,若年および中壮年層には乳頭を温存する一期的治療が正当であるということは明らかである.
 総胆管結石に対する腹腔鏡下の一期的治療は,切石ルートの観点から二種類あり,胆囊管を切石ルートとして用いる経胆囊管法と総胆管を切開する胆管切開法に分類される.経胆囊管法は,切石が完了し手術が終了すれば,術後は胆囊摘出術と同様の術後管理と経過であるため優れた手段であるが,胆囊管を切石ルートに使用するという特性ゆえに制限もある.それを補完し治療を完結させる手技として胆管切開法がある.
 以下に胆管切開法について述べる.

ひとやすみ・149

研修医時代の自分へ

著者: 中川国利

ページ範囲:P.428 - P.428

 過去に遡り,自分の人生を変えたいと思うのは,誰もが望むかなわぬ願望である.そこで後の祭りではあるが,過去の自分に反省を込めて手紙を書いてみた.
 「こんにちは.40年後の自分から新米ほやほやの医師となった自分へ,エールの手紙を送ります.同期の研修仲間や看護師とは仲良く仕事をしていますか.少々内気で恥ずかしがり屋の君には,苦手意識を持たずに勇気を持って話しかけ,積極的に溶け込んで欲しいな.また受け持ち患者をしばしば訪れ,病気以外のことにも耳を傾け,信頼される医師となってね.

書評

—日本Acute Care Surgery学会/日本外傷学会(監訳)—DSTC外傷外科手術マニュアル[Web動画付]

著者: 渡部広明

ページ範囲:P.436 - P.436

 待望の“Manual of Definitive Surgical Trauma Care”の第4版が出版された.本書はこの全訳版であり,外傷外科手技をトレーニングするDSTCコースのコースマニュアルである.
 近年,外傷外科手術症例の減少に伴い外傷外科手術を習得するのは困難となっている.こうした中,外傷外科手術を習得するためのoff-the-jobトレーニングコースに対する期待感は非常に大きい.DSTCコースはその代表的な国際的コースであり,1993年に開発されて以来,全世界の多くの外科医が受講し外傷外科手術の基本事項を学習している.本コースで学ぶべき事項は多いが,本書はそれを網羅するだけではなく,手術手技にとどまらず外傷外科手術症例を治療する上で重要な外傷患者の生理学的事項,ダメージコントロールの基本事項などが詳述されている.また重症外傷症例の多くは,術後集中治療の成否が救命の可否を左右するわけであるが,これについても詳しく解説している.

—がん・感染症センター都立駒込病院 大腸グループ(編) 高橋慶一,小泉浩一(責任編集)—大腸癌診療ポケットガイド

著者: 藤田力也

ページ範囲:P.473 - P.473

 大腸癌の罹患患者数が胃癌を超える勢いで増加している.特に男性・女性の総計では癌死亡率のトップになって久しいが,大腸癌診療に当たっては整理しなければならない,あるいは知っておくべき問題点は多い.
 大腸癌の効率的な検診はどうすべきか,受けたくない大腸内視鏡検査は本当に楽にできるのだろうか,手術は開腹が良いのか腹腔鏡手術が良いのか,手術前に化学療法を受けるほうが良いと聞いたがそうだろうか,などなど,患者からの質問も多いこの頃である.また,血便,腹痛などの自覚症状に頼る診療では手遅れになることもしばしばである.特に右側結腸(上行結腸)では手遅れになりがちで,左側(下行結腸・S字状結腸・直腸)では症状も出やすいので,予後が良いとも言われている.

1200字通信・103

贈る言葉—自戒をこめて

著者: 板野聡

ページ範囲:P.445 - P.445

 医者なってもうすぐ40年,初めから判っていれば,もっとよい医者,あるいはもっとまともな医者になれたと思う事柄を,自戒を込めて,生まれたての先生方に贈ります.
 1.「時間を守る」.これは,言うまでもなく社会人の常識.相手の年齢や立場にも関係ありません.以前,会合に毎回遅れる方があり,「XX先生時間」などという言葉を耳にしましたが,顰蹙を買うだけです.また,スタッフから受けた相談に対して,いくら忙しいからといっても,朝受けたものを夕方(時に翌日)に返答するようでは医者失格です.できる限りスピード感を持って対応したいものです.

昨日の患者

病室に遺された絵画

著者: 中川国利

ページ範囲:P.464 - P.464

 近年,とかく沈みがちな入院患者さんを和ませるために,寛ぐデイルームや病室に絵画,写真,書などを飾る医療機関が増えつつある.そこで入院患者さんには様々な才能を有する人が居るため,私は患者さんのオリジナル作品を病棟に飾ることを思い立った.そして寄贈された作品を見るたびに,贈ってくれた患者さんを思い出す.
 70歳代半ばのWさんは上腹部痛を主訴に来院し,精査の結果は膵臓癌であった.既に多発性肝転移をきたしており,癌化学療法を試みたが治療効果は芳しくなかった.厳しい治療経過に苛立ち,さすがわれわれ医療スタッフに不満をぶつけることはなかったが,付き添う奥さんにはしばしば辛く当たった.

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原稿募集 「臨床外科」交見室

ページ範囲:P. - P.

バックナンバーのご案内

ページ範囲:P. - P.

あとがき

著者: 桑野博行

ページ範囲:P.514 - P.514

 知人の薦めもあり,映画「ハドソン川の奇跡」を視聴しました.これは,2009年1月15日,午後3時30分頃(米国東部標準時)に,ニューヨーク(ラガーディア空港)発シャーロット経由シアトル行きのUSエアウェイズ1549便が,ニューヨーク市マンハッタン区付近のハドソン川に不時着水した航空事故にもとづいて描かれたものです.乗務員5名を含む155人を乗せて離陸した直後に鳥(カナダガン)の群れに遭遇し,両翼のエンジンがこの「バードストライク」により停止し機長は当初,元のラガーディア空港に戻るか進行方向の延長線上にあるニュージャージー州テターボロ空港への着陸をめざしていましたが,長年にわたるパイロットとしての経験から,高度と速度が低すぎるため空港への着陸は不可能と判断し,市街地を避けハドソン川へのきわめて難易度の高い「不時着水」を判断し,見事に全員生存の偉業を成し遂げます.そして機長らは一躍英雄として賞賛されるところでしたが,そのような危険な判断に対し疑問が投げかけられ,近くの空港に即座に戻るべきではなかったか?など,事故調査委員会(国家運輸安全委員会,NTSB)の査問が開始されます.
 映画のあらすじと評価は皆様に委ね,詳細を述べることは避けますが,フライトレコーダーをもとにしたシミュレーションでは当初は近隣の飛行場に安全にたどり着ける結果となります.しかしながら,このシミュレーションでは何度となく練習をしたパイロットが,事故直後に何の躊躇もなく空港に向かっていることから,事故による心の動揺やマシンチェックなどの「人的要因」が考慮されておらず,それを導入すべきということで35秒(それでも短いという意見もありましたが)のインターバルが設定され,再びシミュレーションが行われ,想像に難くない結果となります.そして機長の判断は一か八かのものではなく,これまでの十分な経験にもとづいたものであったことが認められます.ヒトが危機に遭遇した時に,与えられた時間は様々でありながらも,知識(力),経験,そして技術などの「人的要因」にもとづいて「思考」し,「判断」を下すのでしょうが,これらの要因が豊富であればあるほど,判断までの時間も短縮されうるのでしょう.「人的要因」としての「考える」ということの重要性を再認識させられたことでした.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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バックナンバー

78巻13号(2023年12月発行)

特集 ハイボリュームセンターのオペ記事《消化管癌編》

78巻12号(2023年11月発行)

特集 胃癌に対するconversion surgery—Stage Ⅳでも治したい!

78巻11号(2023年10月発行)

増刊号 —消化器・一般外科—研修医・専攻医サバイバルブック—術者として経験すべき手技のすべて

78巻10号(2023年10月発行)

特集 肝胆膵外科 高度技能専門医をめざせ!

78巻9号(2023年9月発行)

特集 見てわかる! 下部消化管手術における最適な剝離層

78巻8号(2023年8月発行)

特集 ロボット手術新時代!—極めよう食道癌・胃癌・大腸癌手術

78巻7号(2023年7月発行)

特集 術後急変!—予知・早期発見のベストプラクティス

78巻6号(2023年6月発行)

特集 消化管手術での“困難例”対処法—こんなとき,どうする?

78巻5号(2023年5月発行)

特集 術後QOLを重視した胃癌手術と再建法

78巻4号(2023年4月発行)

総特集 腹壁ヘルニア修復術の新潮流—瘢痕ヘルニア・臍ヘルニア・白線ヘルニア

78巻3号(2023年3月発行)

特集 進化する肝臓外科—高難度腹腔鏡下手術からロボット支援下手術の導入まで

78巻2号(2023年2月発行)

特集 最新医療機器・材料を使いこなす

78巻1号(2023年1月発行)

特集 外科医が知っておくべき! 免疫チェックポイント阻害薬

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