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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科72巻7号

2017年07月発行

雑誌目次

特集 イラストでわかる!—消化器手術における最適な剝離層

ページ範囲:P.783 - P.783

 消化器の手術は適切な剝離層の選択の技術であるといえる.当然のように,良性疾患における剝離層と悪性疾患における剝離層とでは,同じ臓器の切除においてもまったく違うものになるであろう.
 本特集では,根治性と機能温存を両立させた適切な剝離層の選択を主体として消化器手術を紐解いていく.

胸腔鏡下食道癌手術における剝離層の選択

著者: 宗田真 ,   桑野博行

ページ範囲:P.784 - P.788

【ポイント】
◆食道癌では他の消化器癌に比べてリンパ節転移をきたしやすく,郭清の精度がその後の予後に寄与する可能性が高い.
◆腹臥位胸腔鏡下手術はよりドライな状況での手術操作が行え,正しい剝離層の維持や脈管神経の維持に有用である.
◆胸部食道癌手術において安全で十分な郭清を行うためには,常に最適な剝離層の選択が重要である.

食道胃接合部癌手術における剝離層の選択

著者: 山下裕玄 ,   瀬戸泰之

ページ範囲:P.790 - P.795

【ポイント】
◆下縦隔郭清終了後には左右胸膜・心囊・大動脈を露出する形となることをイメージする.
◆右側ではinfracardiac bursaが認識でき,ここで右胸膜を視認しやすい.
◆No. 3aとNo. 3bの郭清境界の設定は胃前壁側で行わざるをえない.
*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画(Flash形式)を見ることができます(公開期間:2020年7月末まで)。

胃全摘術における剝離層の選択

著者: 小寺泰弘

ページ範囲:P.797 - P.803

【ポイント】
◆定型的に網囊切除を行うことは進行胃癌の予後の改善に繋がらないことが判明した.
◆網囊切除の剝離層自体は,網囊切除を行わなくても胃癌の手術の様々な局面で応用されている.
◆脾摘や膵尾部の切除を行う場合に必要な膵脾の脱転には,網囊切除の剝離層は有用である.
*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画(Flash形式)を見ることができます(公開期間:2020年7月末まで)。

腹腔鏡下結腸右半切除術における剝離層の選択

著者: 日野仁嗣 ,   絹笠祐介 ,   塩見明生 ,   山口智弘 ,   賀川弘康 ,   山川雄士 ,   沼田正勝 ,   古谷晃伸

ページ範囲:P.804 - P.809

【ポイント】
◆十二指腸,膵頭部腹側の結腸間膜内の剝離層と,それよりも深い上行結腸間膜背側の剝離層をつなげる.
◆surgical trunkの郭清の際には,しっかりと静脈壁に寄って剝離を進める.
*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画(Flash形式)を見ることができます(公開期間:2020年7月末まで)。

腹腔鏡下横行結腸切除術における剝離層の選択

著者: 戸田重夫 ,   黒柳洋弥 ,   的場周一郎 ,   森山仁 ,   花岡裕 ,   富沢賢治 ,   建智博 ,   平松康輔 ,   岡崎直人

ページ範囲:P.810 - P.814

【ポイント】
◆横行結腸間膜の基部を副右結腸静脈根部から下腸間膜静脈の膵下縁流入部の範囲と考える.
◆発生学的に背側胃間膜である大網と横行結腸間膜との関係を理解し,適切な層で剝離を行う.
◆横行結腸間膜前葉と呼ばれる大網後葉を膵下縁で切離し,横行結腸間膜基部を膵から離したうえで郭清を行う.
*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画(Flash形式)を見ることができます(公開期間:2020年7月末まで)。

腹腔鏡下結腸左半切除術における剝離層の選択

著者: 品川貴秀 ,   清松知充 ,   渡邉聡明

ページ範囲:P.815 - P.820

【ポイント】
◆内側アプローチでは尿管および性腺動静脈を後腹膜下筋膜背側に温存する層で剝離を進める.
◆頭側の剝離は膵下縁のレベルまで十分に行い,下腸間膜静脈中枢側は膵下縁のレベルを目安に処理する.
◆脾彎曲部は内側・外側アプローチに加え,胃結腸間や脾下縁など多方向からの剝離を合わせて授動を行う.
*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画(Flash形式)を見ることができます(公開期間:2020年7月末まで)。

低位前方切除術における剝離層の選択—下部直腸癌に対して

著者: 相場利貞 ,   上原圭介 ,   向井俊貴 ,   冨田明宏 ,   菅原元 ,   江畑智希 ,   梛野正人

ページ範囲:P.821 - P.826

【ポイント】
◆一度捉えた剝離層をしっかり追い続けること.
◆直腸周囲の膜解剖を熟知すること.
◆直腸周囲の脂肪組織を取り残さないこと.
*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画(Flash形式)を見ることができます(公開期間:2020年7月末まで)。

肝臓手術における剝離層の選択

著者: 杉岡篤 ,   加藤悠太郎 ,   棚橋義直 ,   香川幹 ,   木口剛造 ,   小島正之 ,   安田顕 ,   中嶋早苗 ,   辻昭一郎 ,   宇山一朗

ページ範囲:P.827 - P.836

【ポイント】
◆Laennec被膜に基づく新たな肝解剖の概念により肝切除の標準化が可能となった.
◆肝外グリソン鞘一括確保では,4つの解剖学的指標と6つのゲートの認識が重要である.
◆主肝静脈の剝離・露出では,頭尾方向の肝切離によりLaennec被膜を肝静脈壁に温存することが重要である.

胆石・胆囊炎手術における剝離層の選択

著者: 多賀谷信美

ページ範囲:P.837 - P.841

【ポイント】
◆胆囊背側で,胆囊管寄りの胆囊頸部から漿膜切開を開始し,半周性の剝離を行う.
◆肉眼的に確認できる胆囊壁内の血管構造物を損傷しない層での剝離を進める.
◆胆囊炎による線維化および瘢痕化の程度に応じた剝離や対処が必要になる.
*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画(Flash形式)を見ることができます(公開期間:2020年7月末まで)。

胆囊癌手術における剝離層の選択

著者: 坂田純 ,   田島陽介 ,   安藤拓也 ,   相馬大輝 ,   油座築 ,   廣瀬雄己 ,   石川博補 ,   堅田朋大 ,   三浦宏平 ,   滝沢一泰 ,   小林隆 ,   若井俊文

ページ範囲:P.842 - P.848

【ポイント】
◆領域リンパ節郭清の際には,温存すべき脈管や膵頭部といった正常組織を露出する層で剝離を進め,リンパ節を含む残りの組織をすべてen blocに摘出する意識が大切である.
◆胆囊床切除を行う際には,胆囊板に近づかないように肝切離を進めて肝前区域のグリソン鞘本幹に到達し,胆囊板をグリソン鞘への移行部で切離する.
◆胆管を温存して胆管周囲のリンパ節を郭清する際には,右肝動脈および後上膵十二指腸動脈から分岐するいわゆる3 o'clock artery・9 o'clock artery,および胆管の血管網を温存する層で剝離を進める.
*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画(Flash形式)を見ることができます(公開期間:2020年7月末まで)。

膵頭十二指腸切除術における剝離層の選択—進行膵癌に対する膵頭部剝離手技

著者: 元井冬彦 ,   海野倫明

ページ範囲:P.849 - P.855

【ポイント】
◆Gerota筋膜下層で膵頭十二指腸を授動する(拡大Kocher授動).
◆右側結腸間膜のくりぬきで膵頭部を被覆する.
◆上腸間膜動脈4時方向からのアプローチで右斜め背側組織を剝離し,膵頭部を遊離する.

膵体尾部切除術における剝離層の選択

著者: 阪本良弘 ,   河口義邦 ,   有田淳一 ,   赤松延久 ,   金子順一 ,   長谷川潔 ,   國土典宏

ページ範囲:P.856 - P.861

【ポイント】
◆低悪性度膵体尾部腫瘍では膵後筋膜に沿った剝離層を選択する.
◆膵体尾部癌では膵後方脂肪織を郭清する剝離層を選択する.
◆進行膵体部癌には,上腸間膜動脈神経叢,左腎前筋膜や左副腎を郭清する剝離層を選択する.
*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画(Flash形式)を見ることができます(公開期間:2020年7月末まで)。

ラパコレUpdate 最近のコンセプトと手技・11

—Difficult gallbladder—Difficult gallbladderの術中判定・対処法

著者: 森泰寿 ,   大塚隆生 ,   仲田興平 ,   宮坂義浩 ,   清水周次 ,   中村雅史

ページ範囲:P.862 - P.867

はじめに
 腹腔鏡下胆囊摘出術(laparoscopic cholecystectomy:LC)は1990年頃より急速に普及し,現在では胆囊結石症の標準治療法として確立している.現在でも,多くの外科医にとってLCが初めて術者として施行する腹腔鏡下手術である.一方LCは,炎症や癒着のない容易なものから熟練した外科医でも難渋する高度炎症を伴うものまで難易度は様々である.また,高度炎症を伴うLCでは開腹移行を余儀なくされる場合や解剖の誤認に伴う胆管損傷の可能性があり,LCの安全な施行には経験と慎重な術中判断,手術操作が求められる.本稿では,胆囊摘出困難例に対するLCの術中判定法とその対処法について述べる.

FOCUS

治療判断に迷う転移のあるMEN1型P-NETの治療

著者: 工藤篤 ,   伴大輔 ,   田邉稔

ページ範囲:P.868 - P.874

はじめに
 神経内分泌腫瘍(NET)と聞くと,比較的進行の遅い,予後の良いおとなしい腫瘍というイメージを抱きがちであるが,2007年の膵NET全国集計1)を振り返ってみると非常に重要なことに気づく.5年生存率は日本膵癌取扱い規約(JPS)のステージIが95%だが,Stage Ⅳaは57.7%,Stage Ⅳbは39.4%と非常に低い.しかもStage Ⅳbは全登録症例の36%を占め,Ⅳbまで進行するケースが少ないというわけでもない.さらに重要な問題は,罹患年齢のピークが50代であるという点である.つまり,P-NETは若く発症し,約4割は5年生存率が40%ということになる.また,本疾患特有の問題は,機能性腫瘍のホルモン症状のコントロールである.例えば,インスリノーマの多発肝転移では通常の末期管理に加えて,低血糖に伴う意識障害のコントロールが加わる.VIP産生腫瘍(VIPoma)の進行例では1日7 Lを超える50回の下痢を制御する必要があり,ここまで進行する前にどのような対応を行うべきか,しばしば反省させられる.さらにMEN1型,Von Hippel-Lindau(VHL)病といった遺伝性疾患に伴うP-NETの治療においては,他臓器の発癌やホルモン症状管理を考慮し,P-NET治療の優先順位を考えなければならない2).本稿では,治療判断に迷うMEN1型症例を中心に,転移のあるNETの診断と治療を考察したい.

免疫チェックポイント(PD-1/PD-L1)がもたらしたがん治療のパラダイムシフト

著者: 山口佳之 ,   堅田洋佑 ,   岡脇誠 ,   山村眞弘

ページ範囲:P.876 - P.880

はじめに
 がん治療の革命が始まっている.免疫チェックポイント阻害薬(immune checkpoint inhibitor:ICI)の登場によって,メラノーマを皮切りに肺がん,腎がん,ホジキン病,頭頸部がんなど,数多くのがんにおいて標準治療が塗り替えられている.「がんに対して免疫なんて作動していない」「がんに対する免疫療法なんて眉唾だ」.このような論評が主体であった過去の長い歴史から一変,多くの研究者は「まるで目が点」状態に変わっている.がん免疫療法は,世界が認める第四のがん治療としてもはやゆるぎない存在となっており,腫瘍免疫は,がん治療を考えるうえで今やなくてはならない,がん診療にかかわる臨床腫瘍医において無関心でいられない分野となっている.
 本稿においてはがん治療革命の立役者となっている分子,programmed cell death-1(PD-1)/PD ligand-1(PD-L1)とその抗体治療について概説し,今後の展望について考えたい.

病院めぐり

鳥取県立厚生病院消化器外科

著者: 西江浩

ページ範囲:P.881 - P.881

 鳥取県立厚生病院は鳥取県中部の倉吉市にあります.倉吉の旧市街には白壁土蔵群や赤瓦の町並みがあり,さしずめ山陰の倉敷といったところでしょうか.西には名峰 大山や蒜山を望み,近くには三朝温泉などの名湯もあり,自然情緒豊かな町です.当院の前身は昭和5年開設の「有限責任利用組合厚生病院」で(日本初の産業組合立病院だそうです),昭和38年に県に移管され,鳥取県立厚生病院となりました.現在は300床,21科,医師は50名のこじんまりとした地方中核病院ですが,職員同士お互いに顔の見える関係にあり,雰囲気はとてもアットホームです.
 外科系は外科(呼吸器外科,心臓血管外科,乳腺内分泌外科)と消化器外科に分かれております.消化器外科は平成21年に新設された比較的新しい科ですが,現在4名の医師で年間約490例の全身麻酔・腰椎麻酔の手術症例をこなしています.地域がん診療連携拠点病院でもあるため,人口はどんどん減っているにもかかわらず,高齢化に伴ってがんの手術症例は毎年増えてきています.昨年1年間で胃癌が67例,大腸癌が62例,肝胆膵の悪性疾患が21例でした.また,腹腔鏡下手術が233例で全体の約50%を占めるようになり,その比率は年々高くなってきています.緊急手術が昨年1年間だけでも約140件あり,メンバーが過重労働で倒れるのではないかと危惧しておりましたが,意外にみんな元気でホッとしています.

臨床報告

Meckel憩室のmesodiverticular vascular bandによる絞扼性イレウスの1小児例

著者: 浅井泰行 ,   松下英信 ,   山村和生 ,   栗本景介 ,   福山隆一 ,   石榑清

ページ範囲:P.883 - P.887

要旨
8歳,男児.既往歴なし.突然の腹痛と嘔吐を認め,近医を受診したところ小腸イレウスの疑いで当院紹介受診となった.腹部は左下腹部を中心に筋性防御を認めた.腹部造影CT検査では十二指腸から回腸まで拡張した小腸を認め,骨盤底に腹水を少量認めたが,明らかな閉塞機転はわからなかった.血液生化学検査では白血球の上昇を認めた.急性腹症であったが,早期治療介入ができ状態も落ち着いていたため,診断も兼ねて腹腔鏡下で緊急手術を行った.回腸末端から口側約50 cmに腸間膜対側にMeckel憩室を認め,腸間膜に伸びた血管を含む約2 cmの索状物が原因で小腸壁の一部が絞扼され,イレウスに至っていた.索状物切離と憩室切除を行い,手術を終了した.術後にMeckel憩室のmesodiverticular vascular bandによる絞扼性イレウスと診断した.稀ではあるが,イレウス症例では本疾患も念頭に手術を行うことで,より低侵襲な治療が行える.

緩徐な腫瘤増大に伴い血小板減少をきたし腹腔鏡下摘脾を行った脾過誤腫の1例

著者: 濱田賢司 ,   野口大介 ,   大森隆夫 ,   大倉康生 ,   金兒博司 ,   田岡大樹

ページ範囲:P.889 - P.893

要旨
症例は70歳,女性.64歳時に脾腫瘤を指摘され経過観察されていたが,5年で約2倍の腫瘍増大に伴う血小板減少が進行し紹介された.超音波検査で腫瘍は等エコー腫瘤として描出され,内部に血流信号を認めた.単純CTで脾臓に径6 cm大,球形で脾実質と同等なdensityの腫瘤を認め,造影CTでは境界明瞭で内部不均一な造影効果を呈する腫瘍として描出された.脾腫瘤を伴った血小板減少と診断し,腹腔鏡下脾臓摘出術を施行した.脾臓の割面は最大径7.5 cmで,膨張性発育を示す境界明瞭・薄い被膜を有した結節性腫瘤であった.組織学的に腫瘍は白脾髄を欠いた脾臓組織で,拡張した血管や類洞を散在性に認め,脾過誤腫と診断した.術後,血小板数も正常範囲内に改善した.

腹臥位CTで術前診断しTAPP法で修復した間接型鼠径部膀胱ヘルニアの1例

著者: 小泉範明 ,   小林博喜 ,   高木剛 ,   福本兼久

ページ範囲:P.895 - P.899

要旨
症例は66歳,男性.右鼠径部の膨隆を自覚し当院を受診した.腹臥位CT検査にて間接鼠径ヘルニアに合併する膀胱ヘルニアと診断し,TAPP法で手術を施行した.ヘルニア分類はⅠ-2型で内側から膀胱が滑脱しており,paraperitoneal typeの膀胱ヘルニアと診断した.膀胱損傷を防ぐため,膀胱下腹筋膜を損傷せぬよう意識しながら腹膜前腔を十分内側まで剝離し,メッシュを留置・固定した.膀胱ヘルニアの手術においては膀胱損傷に注意が必要であるが,CT検査で術前診断を行うことがその予防に有益と考えられた.また,腹腔鏡手術では層構造に基づいた愛護的な剝離を行うことが可能であり,膀胱下腹筋膜を意識することで膀胱ヘルニアに対しても安全で確実な治療が行えた.

ひとやすみ・152

『臨床外科』愛読の勧め

著者: 中川国利

ページ範囲:P.848 - P.848

 時代とともに,情報収集方法が急速に変化しつつある.かつて社会の情報源は新聞が主であったが,ラジオ,テレビ,そして現代ではインターネットが主体となっている.それに伴い新聞購読者は激減し,テレビの視聴率さえ低下しつつある.では,外科医はいかにして医学情報を集めてきたのだろうか.
 私が医師になりたての40年前は,『外科学大系』などの本から情報を仕入れ,『臨床外科』などの医学雑誌もよく読まれていたものである.しかし,当時は文字での表示が多くて難解のため,研修医仲間では比較的図が多い『ゾリンジャー外科手術アトラス』(待望の翻訳が2013年に医学書院から発刊,安達洋祐 訳)などが愛読されていた.また,動画は8ミリ映画しかないため,手術手技は術者の肩越しに見学したり,手術の助手を務めながら学んだものである.

1200字通信・106

働きアリの法則—2:6:2の法則

著者: 板野聡

ページ範囲:P.882 - P.882

 「働きアリの法則」をご存じでしょうか.100匹の働きアリの集団を観察すると,100匹のうちの20匹がよく働き,60匹は普通に働き,残りの20匹はまったく働かない状態になるそうで,この現象は人間の世界も含めた自然界で共通する現象だというものです.
 この法則で興味深いのは,働かない20匹を取り除くと,残った80匹がすべて働くアリになるのかというとそうではなく,新たに80匹のなかで16匹(20%)がよく働き,48匹(60%)が普通に働き,残りの16匹(20%)がまったく働かない状態に再編成されるというのです.逆に,よく働く20匹を取り除いても残りの80匹で同じことが起こるそうで,常に3つのグループができて,それも常に2:6:2の比率になるというのです.

昨日の患者

心に秘めた話

著者: 中川国利

ページ範囲:P.887 - P.887

 死を目前にすると,誰にも語ることのなかった秘話を,誰かに話したくなるものである.10年ほど前のことであるが,死期を悟った患者さんが心の奥底に秘めたことを語ってくれた.
 Tさんは末期の膵臓癌患者であった.ある大雪の晩に病室を訪ねると,窓辺に寄り添い,木々に雪が降り積もる様子をじっと見つめていた.そこで,「雪が降り続きますね.外は寒いでしょうね」と話しかけた.すると,「シベリアの冬はこんなものでないです」と,Tさんが語り始めた.

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原稿募集 「臨床外科」交見室

ページ範囲:P. - P.

バックナンバーのご案内

ページ範囲:P. - P.

あとがき

著者: 渡邉聡明

ページ範囲:P. - P.

 今回は「イラストでわかる! 消化器手術における最適な剝離層」ということで,目で見ることに重点を置いた特集を組みました.視覚は非常に重要な情報源ですが,近年,特に手術において重要さが増しています.ダビンチ手術では3D画像で手術が行えます.通常の腹腔鏡手術でも3Dで行えるようになりました.さらに最近は4K画像も実用化されています.私は以前,8Kの画像を見たことがあります.8Kが腹腔鏡手術に利用される日も近いようです.私が見たのは通常の景色の画面ですが,このとき驚いたのは,非常に精緻な8Kの画面を見ていると立体的に見えることでした.まったく予期せぬ効果でした.精緻な画像を見たとき,なぜ脳が立体視するようになるのかはわかりません.ただ,人間の脳の深い機能に驚いた次第です.今は学会などではナビゲーションサージェリーなどのセッションも多く注目されています.これからの画像が発展してさらなる新たな手術の時代がくることに期待します.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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