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文献詳細

雑誌文献

臨床外科73巻10号

2018年10月発行

文献概要

昨日の患者

空舞う白鳥に想う

著者: 中川国利1

所属機関: 1宮城県赤十字血液センター

ページ範囲:P.1243 - P.1243

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 宮城県北部には野鳥の越冬地として有名な伊豆沼や蕪栗沼が存在し,秋になるとシベリアからたくさんの白鳥やガンが飛来する.そしてわが家には,「今年も白鳥のお蔭で美味しいお米ができましたので,食べてください.Iの娘より」と書かれた手紙が添えられ,美味しい新米が届く.
 Iさんは10年ほど前に受け持った,60歳代後半の胃癌患者である.胃切除術を行ったが,1年半後に食欲不振となり,さらには腹水で腹が膨れ,嘔吐も生じたため再入院した.しかしながら「夫と同じ胃癌になり,そして同じようにお腹が腫れ,吐き気も生じます.しかし若くして逝かざるをえなかった夫の苦しみと比べれば,まだまだ軽いものです」と,明るく振る舞った.実はIさんは30歳代後半で夫を胃癌で亡くしたが,義理の両親とともに農業を引き継ぎ,一人娘を育てた.そして母親思いの娘は婿養子を迎え,亡き父親に代わり母親を支えていた.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1278

印刷版ISSN:0386-9857

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