臨床外科73巻7号

2018年07月発行

臨床報告

膵腫瘍との鑑別が困難であった膵頭神経叢第Ⅰ部由来のSchwannomaの1例

著者： 山田裕宜¹ 家出清継¹ 大島由記子¹ 大島健司¹ 木村保則¹ 中尾昭公¹

所属機関： ¹名古屋セントラル病院消化器外科

ページ範囲：P.877 - P.880

要旨
症例は26歳，男性．健診にて腹腔内腫瘤を指摘されたため，当院へ紹介され受診した．精査すると膵頭部に長径10 cmの多房性囊胞性腫瘤を認めたが，膵頭部との境界は一部不明瞭であり，膵内病変か膵外病変かの判断は困難であった．確定診断には至らなかったが，悪性腫瘍である可能性を否定できないことを考慮し手術を施行した．膵頭部を授動すると，腫瘍は後腹膜から発生しており，膵頭神経叢第Ⅰ部との連続性を認めた．周囲への浸潤は認めず，腫瘍を一塊として摘出した．病理組織所見ではS-100蛋白陽性であり，膵頭神経叢第Ⅰ部由来のSchwannomaと診断した．膵頭神経叢から発生したSchwannomaは非常に稀であり，文献的考察を加えて報告する．

参考文献

1）Mccarthy S, Duray PL：Giant retropetioneal neurilemmoma. A rare cause of digestive tract symptoms. J Clin Gastroenterol 5：343-347, 1988

2）Dede M, Yagci G, Yenen MC, et al：Retroperitoneal benign schwannoma：report of three cases and analysis of clinic-radiologic findings. Tohoku J Exp Med 200：93-97, 2003

3）阿部元輝，中谷敦幾，堀口裕司，他：巨大後腹膜神経鞘腫の1例．日臨外会誌61：1325-1331，2000

4）只友秀樹，葦沢龍人，安藤昌之，他：膵体尾部神経鞘腫の1例．日消外会誌35：403-407，2002

5）藤岡重一，関根慎一，渋谷和人，他：膵神経鞘腫の1例．日臨外会誌68：1276-1280，2007

6）笠松　洋，中塚博文，豊田和広，他：後腹膜原発神経鞘腫：本邦報告117例（自験例を含む）についての考察．近畿大医誌8：249-266，1983

7）信岡　祐，須崎　真，熊本幸司，他：膵頭部神経鞘腫の1例．日臨外会誌70：206-211，2009

8）安岡季美子，松岡伸一，中川隆公，他：十二指腸原発の悪性末梢神経鞘腫の1例．日臨外会誌69：705-706，2008

9）大河内治，金子哲也，阪井　満，他：上腸間膜動脈周囲神経叢に発生した神経鞘腫の1例．日臨外会誌66：950-954，2005

10）山川俊紀，泉　貞言，徳毛誠樹，他：総肝動脈神経叢由来の後腹膜神経鞘腫の1例．日臨外会誌69：2702-2702，2008

11）木村　理，内田宏昭，藤井　真，他：膵頭神経叢第Ⅱ部に発生したAncient Schwannomaの1例．胆と膵17：790-791，1996

12）宗岡克樹，白井良夫，松尾仁之，他：膵頭神経叢領域に発生し画像上充実性腫瘤像を呈した神経鞘腫の1例．臨外57：399-402，2002

13）清水芳政，菊池勇次，立川伸雄，他：膵原発神経鞘腫の1例．日臨外会誌75：798-804，2014