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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科74巻10号

2019年10月発行

雑誌目次

特集 腹腔鏡下胃手術のすべて

ページ範囲:P.1155 - P.1155

 JCOG1401試験で食道胃吻合の安全性も確立し,わが国や韓国,中国で行われたランダム化試験で進行癌における腹腔鏡手術の非劣性が示されるか,それに準じた解釈がなされるのを待つ必要はあるものの,相当な比率の胃癌に対して腹腔鏡下手術が標準治療の一つと認定される時代が近づいた.先回の特集から3年がたち,様々な高度な技術も定型化しつつある現在,最先端を歩む執筆陣から,様々な創意工夫も含め,腹腔鏡下胃切除の現在の到達点を示していただいた.

基礎編

膵液瘻ゼロをめざしたリンパ節郭清術

著者: 鷲尾真理愛 ,   比企直樹

ページ範囲:P.1156 - P.1162

【ポイント】
◆スコピストは膵上縁郭清範囲をBird's-eye viewで見下ろす.
◆無傷クリップを用いて胃膵ヒダを把持・挙上する.これにより助手の両手がフリーとなり,両手での展開は膵臓を圧排せずに膵臓を転がすように展開(膵転がし)が可能となる.
◆助手は両手で膵下端の結合織を把持・牽引することで膵上縁の視野を確保する.郭清の序盤は足側へ体の水平面と平行に牽引する.郭清が進むにつれ,より膵臓背側の視野展開が必要になった際は,助手の鉗子を膵背側へもぐり込ませるように膵転がしを行う.
◆エネルギーデバイスは先端のみを使用し,膵臓への接地時間を短くするような方法“Hit and Away technique”で使用する.
*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画を見ることができます(公開期間:2022年10月末まで)。

完全腹腔鏡下手術における切離ラインの決定

著者: 金治新悟 ,   山崎悠太 ,   掛地吉弘

ページ範囲:P.1164 - P.1168

【ポイント】
◆完全腹腔鏡下胃切除術においては様々な胃切離ライン決定法がある.いずれの方法においても,内視鏡での正確な病変範囲診断のもとに術前マーキングを行い,これを術中に認識して胃切離ラインを決定する.
◆幽門側2/3の切除範囲に含まれる病変においては,点墨によるマーキングなど簡便な胃切離ライン決定法で十分である.
◆高位病変では,術中内視鏡を用いて過不足ない胃切除を行うことで胃機能温存に努める.
*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画を見ることができます(公開期間:2022年10月末まで)。

早期胃癌に対する腹腔鏡下幽門側胃切除術

著者: 李相雄 ,   田中亮 ,   今井義朗 ,   本田浩太郎 ,   内山和久

ページ範囲:P.1169 - P.1175

【ポイント】
◆適切なポート配置,肝外側区域・肝円索の挙上で術野を確保する.
◆生理的癒着を外して解剖学的位置関係を明らかにし,郭清時のランドマークを設定する.
◆間膜切離に際しては奥行きのある面状展開を保持し,切離部に適切な緊張をかける.
◆早期胃癌に対する予防的郭清では動脈周囲神経叢の外側(outermost layer)で郭清を行う.
◆術者左手の組織牽引で“outermost layer”を「剝離可能層」として視認し,これを左右に広げて連続させる.
*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画を見ることができます(公開期間:2022年10月末まで)。

完全腹腔鏡下幽門側胃切除における安全な胃十二指腸吻合

著者: 大橋学 ,   高橋遼

ページ範囲:P.1176 - P.1181

【ポイント】
◆吻合前に残胃と十二指腸断端が十分オーバーラップし,緊張なく吻合できることを確認しておく.
◆後壁吻合の際は十二指腸周囲のスペースを確保し,アンビルはやや背側に向けて十二指腸内に挿入する.
◆前壁吻合では共通孔の確実な閉鎖を行う.十二指腸断端を同時に切除すると,血行不良部分をなくし端端吻合様にもできる.
*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画を見ることができます(公開期間:2022年10月末まで)。

安全に行える腹腔鏡下胃全摘術:食道空腸吻合術Overlap法

著者: 田中千恵 ,   神田光郎 ,   小寺泰弘

ページ範囲:P.1182 - P.1188

【ポイント】
◆安全な食道空腸吻合術を施行するためには,確実な視野展開が必須である.
◆ステープラーは,焦らずゆっくり取り回す.ステープラーは,挿入操作の途中で抵抗を感じたら,それ以上押さないことが重要である.
◆余裕をもって小腸を挙上することで,小腸の穿孔を予防し,吻合時のストレスを減らす.
◆経験が少ないチームはピットフォールを組み込んだマニュアルを作成し,手術メンバーで共有することで安全な吻合が可能となる.
*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画を見ることができます(公開期間:2022年10月末まで)。

腹腔鏡下幽門保存胃切除術

著者: 國崎主税 ,   宮本洋 ,   佐藤圭 ,   土屋伸広 ,   佐藤渉 ,   小坂隆司 ,   秋山浩利 ,   遠藤格

ページ範囲:P.1190 - P.1196

【ポイント】
◆腫瘍占居部位が重要であり,腫瘍下縁が幽門輪から50 mm以上離れていることが必須である.
◆残胃の大きさが重要であり,小さすぎても大きすぎても術後QOLが低下する.上部胃は1/3程度を残す.
◆癌手術としての質を低下させてはならない.cT1b,cN0の病変であること,術中迅速診断などを活用すべきである.

早期胃癌に対する腹腔鏡下噴門側胃切除術

著者: 桜本信一 ,   椙田浩文 ,   大矢周一郎 ,   渡邉健次 ,   伊藤直 ,   青山純也 ,   藤原直人 ,   宮脇豊 ,   佐藤弘

ページ範囲:P.1198 - P.1205

【ポイント】
◆胃後壁と膵前面の癒着を十分剝離して短胃動静脈の丈を長く確保し,胃脾間膜を処理する.
◆小網を右胃動脈および肝下縁に沿って切離して胃を下垂させ,膵上縁を展開し膵上縁郭清を行う.
◆術後逆流性食道炎および通過障害の防止・軽減をはかる.残胃と横隔膜を縫着し,食道裂孔ヘルニアを防止する.
*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画を見ることができます(公開期間:2022年10月末まで)。

胃腫瘍に対する腹腔鏡・内視鏡合同手術(LECS)

著者: 三ツ井崇司 ,   箱崎悠平 ,   大井悠 ,   立岡哲平 ,   三輪快之 ,   齋藤一幸 ,   野呂拓史 ,   竹下惠美子 ,   奥山隆 ,   鮫島伸一 ,   野家環 ,   大矢雅敏

ページ範囲:P.1206 - P.1213

【ポイント】
◆病変縁の正確な診断とマーキング,粘膜マーキングの確実な切除,必要最小範囲での漿膜筋層切除が胃局所切除には求められている.
◆LECS関連手技は多数あり,非穿孔式と穿孔式に大別される.
◆LECS関連手技は各手技にメリット・デメリットが存在するため,病変によって手技を使い分ける必要がある.
*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画を見ることができます(公開期間:2022年10月末まで)。

応用編

脾温存での腹腔鏡下脾門リンパ節郭清

著者: 徳永正則 ,   木下敬弘 ,   絹笠祐介

ページ範囲:P.1214 - P.1218

【ポイント】
◆脾門部では動静脈が複雑に入り組んでおり,そのvariationも多いため,術前の3D-CTによる立体関係の把握は安全に手術を遂行するうえで極めて有用である.
◆①脾下極枝の同定,左胃大網動静脈,短胃動静脈の処理,②脾動静脈の露出およびNo. 11dリンパ節の郭清,③脾上極の処理,の順に進めることで,良好かつドライな視野での手術が可能となる.
*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画を見ることができます(公開期間:2022年10月末まで)。

術前化学療法後の腹腔鏡下胃切除術

著者: 稲木紀幸

ページ範囲:P.1219 - P.1226

【ポイント】
◆術前化学療法は胃癌治療ガイドラインにおいてはまだ臨床研究の位置づけであり,その適応は慎重に検討すべきである.
◆術前化学療法後の組織変化の特徴は浮腫と線維化に代表され,手術時にはこの組織変化を念頭に対処すべきである.
◆電極付き吸引装置などを活用して術野をドライに保ち,適切な組織牽引で剝離層を見つけることが肝要である.
*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画を見ることができます(公開期間:2022年10月末まで)。

残胃の癌に対する腹腔鏡下残胃全摘術

著者: 松尾一勲 ,   須田康一 ,   後藤愛 ,   鈴木和光 ,   前田祐助 ,   岩郷俊幸 ,   須田嵩 ,   鶴安浩 ,   中村謙一 ,   中内雅也 ,   柴崎晋 ,   菊地健司 ,   稲葉一樹 ,   宇山一朗

ページ範囲:P.1227 - P.1234

【ポイント】
◆残胃の癌の手術では,初回胃切除後の癒着,再建による解剖学的変化を考慮して,手術手順を症例ごとに工夫する必要がある.
◆内視鏡外科手術は,水平視や拡大視による良好な視野を活用した,手前から奥,内から外の操作を得意とする.
◆網囊左界,膵下縁,右横隔膜脚と尾状葉の間に癒着が比較的緩やかな部位があることが多い.
*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画を見ることができます(公開期間:2022年10月末まで)。

ロボット支援下胃切除術の現状と実際

著者: 久森重夫 ,   小濱和貴 ,   坂井義治

ページ範囲:P.1235 - P.1244

【ポイント】
◆適応:大動脈周囲リンパ節郭清症例を除く,すべての胃癌症例をロボット支援下胃切除術の適応としている.
◆手技のコツ・工夫:手振れのない安定した術野で,膵組織を圧迫せず,Monopolarの関節機能を最大限生かし,剝離可能層をトレースする郭清操作を心掛ける.
◆現状と展望:進行胃癌に対するロボット支援下胃切除術では,従来の腹腔鏡手術と比較して術後合併症の減少が期待される.ロボット支援下胃切除術は,進行胃癌に対する集学的治療の一環として真のminimally invasive surgeryとなるだけでなく,内視鏡外科医の手術環境を改善させうる有益なプラットフォームとなることが期待される.
*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画を見ることができます(公開期間:2022年10月末まで)。

高度肥満ならびに糖尿病に対するBariatric/Metabolic surgeryの現在—腹腔鏡下スリーブ状胃切除術および十二指腸空腸バイパス術

著者: 大城崇司 ,   新井基朗 ,   鍋倉大樹 ,   北原知晃 ,   松永理絵 ,   佐藤雄 ,   岡住慎一

ページ範囲:P.1245 - P.1252

【ポイント】
◆均一径で,狭窄・捻じれのないスリーブ状の胃管を作成する.
◆バイパス腸管が長いため,そのカウントの際には,手繰った腸管を決めた向きに収め,また色素によるマーキングも併用して方向を誤認しないようにする.
◆十二指腸断端を2 cm程度確保し,十二指腸・空腸の器械吻合を行う.
*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画を見ることができます(公開期間:2022年10月末まで)。

FOCUS

外科領域におけるAI手術支援の現状と展望

著者: 竹下修由

ページ範囲:P.1253 - P.1257

はじめに
 近年,artificial intelligence(AI)を活用した製品・サービスの開発が活発化し,医療分野にもこの波が押し寄せてきている.これまでAIブームと呼ばれるものは,推論・探索による人工知能(思考が早いAI)がもたらした第1次ブーム(1960年代),知識表現による人工知能(博識なAI)がもたらした第2次ブーム(1980年代)があり,今回,機械学習による人工知能(学習するAI)が第3次ブーム(2000年代〜)をもたらしているといわれている.この機械学習のなかでも特に,深層学習(人間の脳の構造を模したアルゴリズムであるニューラルネットワークを応用したもの)においては,特徴抽出をAIが行い「勝手に学ぶ」ことが可能となり,人間の介在が不要になるとともに,認識精度の圧倒的な向上が達成された1)
 自動車の運転支援技術などにおいて広く活用され始めているこのAIが,外科手術領域において今後どのようなインパクトをもたらすのか,本稿では,AIによる他領域での診療支援の現状,手術領域での開発動向,今後の展開について,一部私見も交えながら述べさせていただく.

Reduced Port Surgery—制限克服のための達人からの提言・22

RPSによる減量外科手術

著者: 網木学 ,   関洋介 ,   笠間和典

ページ範囲:P.1258 - P.1263

はじめに
 本邦での減量外科手術は,2014年に腹腔鏡下スリーブ状胃切除術(laparoscopic sleeve gastrectomy:LSG)が保険収載されたことを契機に,施行件数が増加している(2015年258例,2016年310例,2017年471例1)).現在,最も行われているconventional LSG(CLSG)は,ポート配置などに関しては施設間に違いはあるものの,術者と第一助手が協調して術野を展開する点に異論はないものと思われる.一方,reduced port sleeve gastrectomy(RPSG)では,術者1人とスコピストのみで手術を行う必要があり,難易度が高くなる2).そのため,RPSGを導入する際には,CLSGに習熟しているのみならず,RPSG独特の困難性を理解し,十分な準備をして臨むべきである.本稿では四谷メディカルキューブで行っているRPSGの手技を提示する.
*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画を見ることができます(公開期間:2022年10月末まで)。

病院めぐり

町田市民病院外科

著者: 脇山茂樹

ページ範囲:P.1264 - P.1264

 当院は,1943年に旧町田町,南村,鶴川村,忠生村の4町村により「南部共立病院」として開設され,町田市の誕生と共に「町田市立中央病院」を経て,1975年に現在の「町田市民病院」となりました.2000年に東棟,2008年に南棟が完成し,現在,二次救急医療機関,災害拠点病院および地域周産期母子医療センターとして多様な役割を担う447床の地域中核病院となっています.2018年に地域医療支援病院の承認を受け,“地域から必要とされ,信頼,満足される病院”として地域医療を担っています.
 当院がある町田市は東京都の南端にあり,半島のように神奈川県に突き出ており,東京26市内では人口約43万人と2番目に人口が多い都市です.「古き良き自然・伝統」と「新しい文化」の共存が特徴で,老若男女を問わず様々なニーズに応えることができます.スポーツ振興では,東京オリンピック・パラリンピックに向けて南アフリカ共和国・インドネシアのホストタウンであり,ラグビーワールドカップ2019に向けては,海外チームのキャンプ地受け入れを行っています.J2リーグのFC町田ゼルビアは,サッカーを通じて町田を元気にする活動を続けています.

臨床報告

術前診断が可能であった爪楊枝によるS状結腸穿孔の1例

著者: 石田航太 ,   河原秀次郎 ,   小村伸朗 ,   矢永勝彦

ページ範囲:P.1265 - P.1267

要旨
症例は49歳の男性.2014年11月に下腹部膨満感と下腹部痛を主訴に当院救急外来を受診した.腹部CT検査では肝周囲に腹水とfree airがみられ,S状結腸内に爪楊枝様の異物が確認でき,その周囲に高度な炎症を伴っていた.穿孔性腹膜炎の診断で緊急手術を施行した.手術切除標本を腸管長軸に沿って切開するとS状結腸に多発する憩室を認め,最も炎症が高度であった憩室内に爪楊枝が陥入していた.誤飲した異物の多くは自然排泄され,消化管穿孔を発症することは稀である.また術前画像診断で木製の爪楊枝はX線検査では描出困難であるとされているが,本症例では術前診断が可能であった.

完全内臓逆位症に合併した転移性肝癌に対する右肝切除術

著者: 宮原洋司 ,   竹内男 ,   金子高明 ,   三浦世樹 ,   神谷潤一郎 ,   尾形章

ページ範囲:P.1268 - P.1272

要旨
症例は81歳,男性.貧血精査にて横行結腸癌,同時性多発肝転移と診断された.原発巣切除術を先行し,化学療法を施行後,肝腫瘍の縮小を認めたため,右肝切除術・S2, S3部分切除術を施行した.肝切除術前の腹部造影CT検査にて,完全内臓逆位症を認めるほか,総肝動脈を欠損し,副肝動脈から全肝が栄養されるAdachi分類Ⅵ型26群に相当する脈管変異を認めた.内臓逆位症を合併する患者における手術に際しては術野が鏡像となること,脈管の変異および合併奇形が多いことが問題となるが,術前の画像評価により解剖を把握し,術者の立ち位置や役割分担を工夫することにより,肝葉の脱転や脈管処理を必要とする高難度手術である右肝切除術でも安全に施行することができた.

昨日の患者

想いの籠った家族への手紙

著者: 中川国利

ページ範囲:P.1163 - P.1163

 人は明日も今日のように続くと思い,あえて家族へ想いを伝えることはしない.しかし余命が残り少ないと悟った時,最愛の家族のために何を残したらよいか,悩みは尽きない.言葉ではなかなか言えない想いを手紙にしたためた患者さんを紹介する.
 Tさんは50歳代後半の胃癌患者で,手術時には既に腹膜転移をきたしていた.そして手術10か月後には癌性腹膜炎となり,再入院した.

1200字通信・135

40年目の握手—ある教授との歴史

著者: 板野聡

ページ範囲:P.1197 - P.1197

 ちょうど1年前の10月のことです.岡山大学の同門会で,私の母校に教授として赴任されていた先生と40年ぶりに握手していただくことができました.私の勝手な思い込みによる長い呪縛から解放された瞬間となりました.
 1978年,私が医学部の6年生になった時,私の母校に岡山大学から外科の新しい教授が赴任されました.早速,岡山県人会で祝賀会を催し,そこで初めてお目にかかったのでしたが,それが40年に及ぶ呪縛の始まりになるとは,当時は知る由もないことでした.

ひとやすみ・181

献血会場の検診医

著者: 中川国利

ページ範囲:P.1213 - P.1213

 献血者と輸血を受ける患者の安全を確保するため,献血バスや献血ルームでは検診業務を担う医師が立ち会う.では献血会場での検診業務は,どのような経歴の医師が行っているのだろうか.
 血液事業は日本赤十字社が担い,全国の都道府県に血液センターが設置され,所長は管理業務と共に検診医も務めている.かつては手術で大量の血液を使う外科系医師が所長になることが多かった.しかし近年は血液疾患を扱う内科医や小児科医,さらには輸血部出身の医師が増えてきて,しかも所長の定年が70歳のために教授や病院長経験者も多い.また厚労省や県庁などの行政職経験者も多く,所長の経歴は千差万別である.

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目次

ページ範囲:P.1152 - P.1153

原稿募集 「臨床外科」交見室

ページ範囲:P.1252 - P.1252

バックナンバーのご案内

ページ範囲:P.1276 - P.1276

あとがき

著者: 小寺泰弘

ページ範囲:P.1278 - P.1278

 かつて傷が小さいのが売りであった腹腔鏡下手術は,拡大された上質な映像を駆使して開腹手術より精緻な手術を行う手段に発展した.腹腔鏡下という制約もあり,吻合,縫合にはステープラーが頻用されているが,こうした器械のentry holeの閉鎖にはsuturingが用いられることが多い.しかし,suturingが苦手でもロボットを使用すれば嘘のようにきれいな縫合が可能となっている.それ以外の局面でも腹腔鏡下手術には特有の制約があることから,ロボットは十分に腹腔鏡下の手技を修得していない医師が低侵襲手術を行うためには格好のツールであると,欧米では評価されている.さらにFirefly imagingを用いれば炎症性瘢痕の中で安全に胆管を同定できたりする.まさに外科医の足りないところを補う道具である.
 しかしわが国では,ロボットのおかげで何とか腹腔鏡下の手技が行えるというレベルの外科医はロボットには触らせてもらえない.どうも釈然としないので,これをアメリカ人に訴えると,一様にcrazyだ,本来のロボットの趣旨ではないという意見が返ってくる.それもそのはず,ロボット発祥の地においては「ちょっとしたトレーニングコースを受ければ,明日から君も一流のラパロ医だ」というのがロボットの売りなのだ.試しにロボット支援手術担当であるという米国人医師に,君は腹腔鏡下手術でゴッドハンドだったの?と聞くと,「いや,腹腔鏡下手術はあまりやってなかったんだけど,〇×病院でロボットのトレーニングコースを受けてきたんだよ」と答える.そんなものなのだ.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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