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文献詳細

雑誌文献

臨床外科74巻11号

2019年10月発行

文献概要

増刊号 すぐに使える周術期管理マニュアル Ⅱ章 併存症をもつ患者の評価とその術前・術後管理 その他

血液凝固異常(先天性)

著者: 川杉和夫1

所属機関: 1帝京大学医学部血液内科

ページ範囲:P.90 - P.92

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血液凝固異常のおもな疾患
 先天性の血液凝固異常(血栓性素因)とは,生理的な凝固制御因子であるアンチトロンビン(antithrombin:AT),プロテインC(protein C:PC),プロテインS(protein S:PS)の遺伝子に異常が生じ,凝固を抑制するこれらの因子活性が低下して,血栓症を発症しやすい状態にあることを意味する.さらに,先天性血栓性素因の原因には,上記のほかにヘパリンコファクターⅡ欠乏症,プラスミノゲン異常症などの疾患も存在する.しかし,それら疾患は頻度的に非常に稀であり,また,病態として必ずしも確立されていない疾患も含まれており,先天性血栓性素因といえば,AT欠乏症,PC欠乏症,PS欠乏症を指すのが一般的である.
 一方欧米では,凝固第Ⅴ因子ライデン変異1)(Factor Ⅴ Leiden;第Ⅴ因子506のArgがGlnに置換)が主要な先天性血栓性素因であり,白人の血栓症患者の10〜20%にも及んでいる.しかし,いまだに日本人においてはFactor Ⅴ Leidenが検出されておらず,本邦の患者に限れば,この疾患を現時点では考慮しなくてよい.

参考文献

1)Bertina RM, et al:Mutation in blood coagulation factor Ⅴ associated with resistance to activated protein C. Nature 369:64-67, 1994
2)Kimura R, et al:Protein S-K196E mutation as a genetic risk factor for deep vein thrombosis in Japanese patients. Blood, 107:1737-1738, 2006

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1278

印刷版ISSN:0386-9857

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