文献詳細
増刊号 すぐに使える周術期管理マニュアル
Ⅳ章 術後合併症とその管理 A 重点術後合併症の管理ポイント
肺塞栓
著者: 國崎主税1 宮本洋1 佐藤圭1 田中優作1 土屋伸広1 佐藤渉2 小坂隆司2 秋山浩利2 遠藤格2
所属機関: 1横浜市立大学附属市民総合医療センター消化器病センター外科 2横浜市立大学医学研究科消化器腫瘍外科
ページ範囲:P.251 - P.254
文献概要
術後肺塞栓は,術後初めて起床し歩行する際に起こることが多いとされているが,術後数日,退院後に起こることもあり,症状の変化に留意しなければならない.最多の症状は突然の息苦しさである.動脈血中の酸素濃度は低くなるので,安静時でも頻脈,頻呼吸となることもある.次に胸痛が多い.典型症状は吸気時の鋭い痛みで,胸膜炎の際の疼痛と似ている.吸気時には肺動脈内の圧が上昇し,血圧が下がるので冠動脈血流が少なくなり胸痛の原因となる.また,漠然とした前胸部痛や,胸部圧迫感・不快感といった胸部痛もある.ほかの症状として失神,ショック,心肺停止が起こりえる.原因は心拍出量減少による血圧低下,神経反射の影響があるためと考えられている.病状がきわめて重い場合は,突然死することもある.一般に肺塞栓症は深部静脈血栓症から進展ことがほとんどであるので,片側下肢の腫脹,痛み,皮膚の色の変化が伴う上記症状は,強く肺塞栓症を疑う必要がある.
参考文献
掲載誌情報