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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科74巻12号

2019年11月発行

雑誌目次

特集 特殊な鼠径部ヘルニアに対する治療戦略

ページ範囲:P.1283 - P.1283

 鼠径部ヘルニアは外科のなかで最も多く,若手外科医が執刀する機会の多い疾患の1つである.その疾患概念,鼠径部の解剖やさまざまな修復法の手術手技については成書で十分に学ぶことができる.しかし,実臨床では典型的な症例ではない特殊なヘルニアに遭遇することもあり,その診断や治療戦略に難渋することも少なくない.特殊なヘルニアに対する知識や治療戦略を持つことはヘルニア診療を行う際に非常に有利となるため,特に若手外科医には学んでいただきたい事項である.本特集では,実臨床では十分に経験することができない特殊な鼠径部ヘルニアに対する診断から治療を網羅した治療戦略について,エキスパートの執筆者にご解説いただいた.

特殊な鼠径部ヘルニアの診断と治療—精索脂肪腫を中心に

著者: 松原猛人 ,   嶋田元

ページ範囲:P.1284 - P.1287

【ポイント】
◆精索脂肪腫は,鼠径管外側から内鼠径輪を経由して脱出した後腹膜脂肪組織である.
◆腹腔鏡下手術では意図的に検索しない限り見逃され,再発の原因となる.
◆sacless lipomaは鼠径ヘルニアと同等に扱うべき疾患である.

de novo型Ⅰ型ヘルニアの概念と分類

著者: 早川哲史

ページ範囲:P.1288 - P.1297

【ポイント】
◆腹膜鞘状突起の開存に由来しない外鼠径ヘルニア(Ⅰ型)の特殊型ヘルニアが存在する.
◆国内でも海外でもこの分類に対する統一見解はないが,本稿ではde novo型Ⅰ型ヘルニアと総称し分類した.
de novo型Ⅰ型ヘルニアの概念の認識は重要であり,腹腔鏡下ヘルニア修復術の合併症や再発を防止できる.

de novo型Ⅰ型ヘルニアに対するTAPP法

著者: 星野明弘 ,   大橋直樹 ,   篠原元 ,   井垣尊弘 ,   山口和哉 ,   松井俊大 ,   岡田卓也 ,   松山貴俊 ,   徳永正則 ,   東海林裕 ,   川田研郎 ,   中島康晃 ,   田邉稔 ,   絹笠祐介

ページ範囲:P.1298 - P.1304

【ポイント】
de novo型Ⅰ型ヘルニアはTAPP法の修復において3割程度の症例に認められ,そのうちの約9割に脂肪組織の鼠径管内への滑脱が関与している.この脂肪組織の認識や扱いがTAPP法における修復に重要であり,再発防止につながる.
◆TAPP法におけるde novo型Ⅰ型ヘルニアの簡便な診断法は,ヘルニア囊の腹腔側への翻転が容易に可能かどうかである.
◆滑脱した脂肪組織は精索とは容易に剝離可能である.脂肪の多い症例では精索損傷の予防のため,脂肪組織の剝離の際に容易に剝離できない精索周囲の脂肪組織との混同に留意する.
*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画を見ることができます(公開期間:2022年11月末まで)。

de novo型Ⅰ型ヘルニアに対するTEP法

著者: 川原田陽 ,   佐藤大介 ,   横山啓介 ,   櫛引敏寛 ,   寺村紘一 ,   才川大介 ,   鈴木善法 ,   北城秀司 ,   奥芝俊一

ページ範囲:P.1306 - P.1314

【ポイント】
de novo型Ⅰ型ヘルニアは困難症例であり,その特性をよく知っておく必要がある
◆困難症例克服のための方法の1つとして,アプローチを変えてみることが有用である.
◆TAPPとともにTEPにも精通しておくことにより,de novo型Ⅰ型ヘルニアの理解と攻略の幅が広がる.
*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画を見ることができます(公開期間:2022年11月末まで)。

前立腺癌術後のヘルニアの特徴および治療戦略

著者: 長浜雄志 ,   野谷啓之 ,   中嶋昭

ページ範囲:P.1316 - P.1322

【ポイント】
◆前立腺癌術後鼠径ヘルニアは下腹壁血管内側に高度の瘢痕形成を伴うJHS分類Ⅰ型ヘルニアであり,鼠径部切開法により修復することが可能である.
◆TAPP法を用いた腹腔鏡下修復も可能で一部の施設で行われているが,十分なTAPP法の経験を要する.
◆前立腺摘出術の詳細,特にロボット支援下手術や鞘状突起の離断処置などは鼠径ヘルニア修復手術の難易度に影響を与えるため,念頭に置いたほうがよいものと考える.
*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画を見ることができます(公開期間:2022年11月末まで)。

再発鼠径部ヘルニアに対する鼠径部切開法

著者: 伊藤契

ページ範囲:P.1324 - P.1330

【ポイント】
◆鼠径部ヘルニア根治手術は進化しているが,再発0は達成できていない.その原因を考察し,知っておくべきである.
◆再発鼠径部ヘルニアの多くは,回避可能である.その原因は,初回手術にある.再発原因を考えることから,再発0が可能となる.
◆再発例の再手術は難易度の高い特殊例となるが,鼠径ヘルニア根治手術の原則は変わらない.ヘルニアへの直接的アプローチ,ヘルニア門確認,腹膜前腔を意識した修復方法が要点である.再再発を作ってはいけない.

再発鼠径部ヘルニアに対する腹腔鏡下修復術

著者: 湯浅康弘 ,   福田美月 ,   牧秀則 ,   藤本啓介 ,   竹内大平 ,   常城宇生 ,   松尾祐太 ,   森理 ,   江藤祥平 ,   藤原聡史 ,   富林敦司 ,   石倉久嗣

ページ範囲:P.1331 - P.1340

【ポイント】
◆再発鼠径ヘルニアは何らかの形で腹壁構造が通常解剖とは異なっており,特に既往手術が腹膜前修復術であった場合,腹腔鏡操作に際して既存のメッシュによる膀胱や脈管への癒着,偏位に留意する必要がある.
◆可能な限り初回手術と同様の剝離を心がけ,MPOの完全修復を行うべくメッシュを留置する.このため除去しうるメッシュは原則除去するが,膀胱,脈管,神経周囲など除去すると危険な場合や,鼠径床の補強に役立っている場合,新たなメッシュの展開に支障がない場合は留置したままとする.
◆再発鼠径部ヘルニアに対する腹腔鏡手術の術者は解剖を熟知していること,日常的に腹腔鏡下修復術を行っており十分な経験を有することはもとより,入念な準備を怠らず,絶対に再発させない,安全で確実な手術を完遂するという,強いメンタリティを有する外科医が行うべきである.
*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画を見ることができます(公開期間:2022年11月末まで)。

巨大鼠径ヘルニアに対する鼠径部切開法

著者: 山本海介 ,   宮崎恭介 ,   石毛孔明 ,   榊原舞 ,   里見大介 ,   森嶋友一

ページ範囲:P.1342 - P.1347

【ポイント】
◆巨大鼠径ヘルニアとは,陰囊の下端が立位時に大腿部中点より下方に存在するものと定義されている.
◆巨大鼠径ヘルニアの治療は,腹部コンパートメント症候群のような致死的な合併症に注意する.
◆巨大鼠径ヘルニアに対する手術手技のポイントは,鼠径部ヘルニアの病態の理解とその基本手技の習得である.
*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画を見ることができます(公開期間:2022年11月末まで)。

巨大鼠径ヘルニアに対する腹腔鏡下修復術

著者: 進誠也 ,   甲拡子 ,   山口泉 ,   田中史朗 ,   岡田和也 ,   岸川博紀

ページ範囲:P.1348 - P.1353

【ポイント】
◆巨大鼠径ヘルニアに対する手術ではヘルニア内容を安全に還納した後,ヘルニア門を十分なサイズ・強度のメッシュで確実に修復することがきわめて重要である.
◆巨大鼠径ヘルニアに対する治療において腹腔鏡下修復術は第一選択ではない.安全・確実な修復のために必要であれば,開腹・鼠径部切開法の選択をためらってはならない.
◆腹腔鏡下修復術を選択する場合には膨潤手技を併用した腹膜前腔剝離とヘビーウェイトメッシュの使用を推奨する.
*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画を見ることができます(公開期間:2022年11月末まで)。

嵌頓鼠径部ヘルニアに対する腹腔鏡下治療

著者: 野谷啓之 ,   中嶋昭 ,   川村徹

ページ範囲:P.1354 - P.1360

【ポイント】
◆直視下手術の適応とされてきた嵌頓鼠径部ヘルニアに対して,TAPP法が実施されるようになってきた.
◆腸管壊死や穿孔による腹膜炎を合併した症例においても,TAPP法の適応範囲は拡がりをみせている.
◆腹腔鏡下修復術を主軸とした嵌頓鼠径部ヘルニアに対する治療戦略について,自験例をもとに述べる.
*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画を見ることができます(公開期間:2022年11月末まで)。

膀胱ヘルニアに対する治療

著者: 松村勝 ,   児玉麻亜子 ,   下河辺久陽 ,   田代恵太 ,   西村太郎 ,   竹谷園生 ,   吉本裕紀 ,   林享治 ,   和田義人 ,   谷脇智 ,   明石英俊 ,   宗宏伸 ,   今村鉄男

ページ範囲:P.1362 - P.1366

【ポイント】
◆膀胱ヘルニアは膀胱壁の一部分,もしくはすべてが脱出する病態で,成人鼠径ヘルニアの1〜4%と報告されている.
◆鼠径ヘルニア同様の症状に加え,頻尿・夜間尿・二段性排尿・血尿・排尿障害など,泌尿器系症状を有する場合は膀胱ヘルニアを疑う必要がある.
◆術前画像検査により膀胱ヘルニアと診断することで,術中膀胱損傷を回避できるが,外鼠径ヘルニア/内鼠径ヘルニアともに膀胱滑脱の可能性があることを念頭に置き手術を行うことで膀胱損傷を回避しうる.
*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画を見ることができます(公開期間:2022年11月末まで)。

小児の特殊な鼠径ヘルニア

著者: 岡本健太郎 ,   伊藤佳史 ,   水野裕貴 ,   荻野恵

ページ範囲:P.1368 - P.1372

【ポイント】
◆小児の鼠径ヘルニアは,小児外科臨床において最も頻度が高い疾患であるが,ヘルニア囊は薄く脆弱で,性腺と分離する手技の難易度は高い.
◆男児の場合は精巣・精管,女児の場合は卵巣・卵管の位置や走行を常に意識した手術を行う必要がある.
◆頻度は低いが成人と同様の内鼠径ヘルニアがあり,小児に通常は行わない後壁補強が必要となる症例がある.

FOCUS

急性腹症と漢方—大腸憩室炎を中心に

著者: 小川恵子 ,   西島弘二

ページ範囲:P.1374 - P.1378

はじめに
 外科領域では,大建中湯や六君子湯が術後の腸管機能不全や食欲低下にしばしば用いられるが,急性期に漢方薬を服用する,という発想がそもそもないと思われる.意外なことかもしれないが,3000年以上前から,腹腔内膿瘍に漢方薬が使われていた.古典にはいくつかの処方の記載があるし,日本でも,症例報告や比較試験が散見される.とはいえ筆者も,実際に臨床症例を経験して初めて,その効果について認識した.
 本稿では,「臨床外科」における急性腹症に対する初めての漢方の記事ということで,わかりやすく,先生方の臨床にすぐに役立つように,大腸憩室炎を中心に解説する.

Reduced Port Surgery—制限克服のための達人からの提言・23【最終回】

Reduced port surgeryの近未来展望

著者: 池田公治 ,   佐々木剛志 ,   西澤祐吏 ,   塚田祐一郎 ,   伊藤雅昭

ページ範囲:P.1379 - P.1381

はじめに
 腹腔鏡下大腸手術の歴史は,1991年にJacobs1)らにより施行された世界初の腹腔鏡下大腸切除術に始まる.本邦初の事例は1993年に渡邊ら2)により報告され,1996年には早期がんを対象として保険収載された.1990年代後半からは,欧米において進行大腸癌に対する腹腔鏡手術の根治性について,開腹手術での結果と比較する大規模RCT:randomized control trial〔COST(北米)3),CLASICC(英国)4),COLOR(欧州,他)5)〕が行われ,全生存率,無再発生存率に差がないことが報告された.2002年には本邦においても腹腔鏡手術の保険適応が進行大腸癌にも拡大されたことをきっかけに,急速に全国に普及した.
 腹腔鏡下手術は開腹手術に比べて低侵襲で整容性が高いことから,広く患者の支持を得られるようになり,近年では手術手技の向上や手術機器開発の進歩に伴い,より小さな創での手術が可能なreduced port surgeryが行われるようになった.

病院めぐり

済生会熊本病院外科

著者: 髙森啓史

ページ範囲:P.1382 - P.1382

 社会福祉法人恩賜財団済生会熊本病院は1935年に開設され,1995年に熊本県熊本市南区に移転し,現在は病床数400床の急性期病院として救命救急センター・地域医療支援病院・地域がん拠点病院・地域災害拠点病院・臨床研修病院の役割を担っています.病院理念は「医療を通じて地域社会に貢献します」であり,「救急医療・高度医療・地域医療と予防医学・医療人の育成」を基本方針としています.1996年にはクリニカルパスを先駆的に導入し,2012年には手術支援ロボットda Vinciとハイブリッド手術室を導入し,2013年には国際医療機能評価機関(JCI:Joint Commission International)の認証を取得しています.
 外科スタッフは11名で,2018年度の手術件数は1,323件で,その内訳は,予定手術が810例(61%),緊急手術が513例(59%)でした.腹腔鏡手術の占める割合は全手術症例の49.6%で,年々増加傾向にあります.また,悪性腫瘍手術は461件(35%),胃がん手術96例,結腸直腸がん手術161例,肝胆膵領域悪性疾患手術117例で,肝胆膵領域の高難度手術は76例行っています.外科関連の施設認定では,日本外科学会・日本消化器外科学会専門医制度指定修練施設,日本肝胆膵外科学会高度技能医制度認定修練施設A,日本胆道学会認定施設および日本膵臓学会認定指導施設になっています.

臨床研究

乳がん術後内分泌療法における服薬アドヒアランス低下に影響する因子

著者: 島宏彰 ,   九冨五郎 ,   和田朝香 ,   里見蕗乃 ,   長谷川匡 ,   竹政伊知朗

ページ範囲:P.1383 - P.1388

要旨
【背景】乳がんにおける術後内分泌療法は長期間に及ぶため服薬アドヒアランスは重要であるが,実態は不明な点も多い.【方法】当院にて術後内分泌療法施行中の乳がん症例を対象に,電子カルテおよびアンケートによる調査を行った.【結果】181例のうち116例(64.1%)から回答を得た.アンケート結果からアドヒアランス良好群87例,不良群21例と2群に分けた.アドヒアランス低下に対する単変量解析では有職者,遠隔地からの長距離通院,ほかの常用薬がないことが相関を示し,多変量解析でも同様だった.【考察】有職者,遠隔地からの通院,ほかの常用薬がないことがアドヒアランス低下に関与する可能性が示唆された.

臨床報告

小腸アニサキス症イレウスに対し緊急腹腔鏡手術を施行した1例

著者: 酒井健一 ,   石丸英三郎 ,   大柳治正

ページ範囲:P.1389 - P.1394

要旨
症例は62歳,男性.受診2日前に鮮魚刺身を摂取し,受診当日朝より上腹部痛と嘔吐が出現し受診した.諸検査でイレウスが疑われたため腹部造影CTを施行したところ,限局した空腸の浮腫と壁肥厚を認め,これより口側の腸管は著明に拡張し腸管気腫も呈していた.拡張腸管壁の造影欠損は認めないものの,強い腹痛と白血球高値を伴うため,診断と治療目的に,同日緊急手術にて審査腹腔鏡を施行した.硬結浮腫腸管の部分切除術を施行したところ,粘膜面に刺入するアニサキス虫体を認め,小腸アニサキス症イレウスと診断した.

直腸癌肝転移と肝内胆管癌の同時性重複癌の1例

著者: 桒原聖実 ,   向井俊貴 ,   米山文彦 ,   加藤祐一郎 ,   佐竹立成 ,   河野弘

ページ範囲:P.1395 - P.1400

要旨
症例は64歳,男性.直腸腫瘍で近医より紹介となった.下部消化管内視鏡検査および腹部CT検査では,下部直腸の腫瘍および肝外側区域と肝S4区域に腫瘤影を認めRb直腸癌〔T3N0M1(肝)Stage Ⅳ〕と診断した.まず原発巣に対して腹腔鏡下腹会陰式直腸切断術を施行した.術後2か月のCTで肝転移は軽度増大するものの,新規病変を認めなかったため肝左葉切除術を施行した.術後の病理組織学的検査では肝S4区域の腫瘍は直腸癌肝転移であったが,肝外側区域の腫瘍は肝内胆管癌と診断された.術後は補助化学療法として双方の癌に共通するS-1を6か月間内服した.稀な直腸癌肝転移と肝内胆管癌の同時性重複癌の1例を経験したので報告する.

ひとやすみ・183

医師は長寿か

著者: 中川国利

ページ範囲:P.1315 - P.1315

 医師は医療に従事し,膨大なる医学知識を有している.したがって医師は医療の恩恵を最も授かる立場にある.一方,医療に従事するが故に種々の職業病も指摘されており,医師の平均寿命は他職種と比較して優劣があるのだろうか.
 古くはペストやコレラなどの感染症により,多くの医師が命を落とした.またキューリー夫人の死因は再生不良性貧血であり,放射線を大量に浴びたことが誘因とされている.私の研修医時代でも消化管造影検査は暗室で蛍光版を用いて行い,体幹部こそは鉛の防御衣を付けたが,患部を手で直接圧迫して撮影したため,皮膚癌を発症した恩師の元教授もいた.

昨日の患者

患者家族からの新聞投稿

著者: 中川国利

ページ範囲:P.1341 - P.1341

 患者や患者家族は主治医の言動をつぶさに観察し,そして何時までも記憶として脳裏に焼き付けているものである.新聞投稿を介して,元受け持ち患者家族の私への思いを知る機会があったので紹介する.
 献血が初めての息子と一緒に献血する微笑ましい父子の様子を,新聞に寄稿した.するとたまたま私の名前を見つけた元受け持ち患者Sさんの家族が,私に関する思い出を同じ新聞に寄稿した.

1200字通信・137

夢を語りましょう—私のリーダー論

著者: 板野聡

ページ範囲:P.1367 - P.1367

 「夢は実現した途端に現実になる.」
 昨年秋に放送されたドラマ『下町ロケット』の中の台詞ですが,ご覧になった方も多いのではないでしょうか.この言葉を聞いた瞬間,「そうか,夢は叶えるものと信じて努力するのだが,叶えた先にまた新しい夢を繋がなければならないのだ」と閃きました.

書評

—金谷誠一郎(監修) 赤川 進,三浦 晋(編)—大阪日赤ラパロ教室—イラストで学ぶ腹腔鏡下胃切除[DVD付]

著者: 二宮基樹

ページ範囲:P.1373 - P.1373

 金谷誠一郎先生が『大阪日赤ラパロ教室 イラストで学ぶ腹腔鏡下胃切除』を上梓された.DVD付きである.
 個人の名で,さらに施設名まで冠して手術書を世に問うことは大変勇気の要ることである.論議,時に批判に耐え得る自信がなくてはならないし,DVD映像では言葉ではない手術の真実がさらされる.“本物”にしかできないことである.

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目次

ページ範囲:P.1280 - P.1281

原稿募集 「臨床外科」交見室

ページ範囲:P.1297 - P.1297

原稿募集 私の工夫—手術・処置・手順

ページ範囲:P.1372 - P.1372

バックナンバーのご案内

ページ範囲:P.1404 - P.1404

次号予告

ページ範囲:P.1405 - P.1405

あとがき

著者: 絹笠祐介

ページ範囲:P.1406 - P.1406

 医者になってはじめての手術が鼠径ヘルニアでした.現在のような臨床研修制度がなく,医師免許を取得した翌月には1人で当直バイトまでこなし,大学ではアッペやヘルニアの患者さんが来れば執刀さえできた時代でした.当時の手術はMcVay法やIliopubic tract repair法でしたが,何度やってもヘルニアの手術は難しく,事前に読んだ手術書と実際の術野に現れる景色が全く違い,「何がなんだかわからないまま終える」を繰り返していました.外科医としての自信をなくす最初の経験でもあり,今となっては笑い話ですが,当時は大きな壁にぶつかっていたのだと思います.
 麻酔科研修を終え,関連病院に出向した際に,手術をとても丁寧に行う院長先生に助手をしていただいた際に,時間はかかりましたが,満足出来る鼠径ヘルニア手術をはじめて執刀できました.まさに教科書どおりの景色が現れ,ようやくヘルニア手術が理解できたときの感動は今でも忘れられません.手術は回数をこなして徐々にうまくなるのではなく,経験(努力)を重ねていくなか,とあるタイミングで上達するのだと感じていますが,最初の貴重なステップアップの瞬間でした.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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