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文献詳細

雑誌文献

臨床外科74巻6号

2019年06月発行

文献概要

臨床報告

陰圧閉鎖療法の工夫による難治性鼠径部リンパ漏の1治療例

著者: 岡本暢之1 嶋田徳光1 矢野雷太1 渡谷祐介1 大毛宏喜1 末田泰二郎1

所属機関: 1広島大学病院外科学

ページ範囲:P.768 - P.771

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要旨
50代,男性.悪性リンパ腫に対する鼠径部リンパ節生検術後5日目に鼠径部のリンパ漏を発症した.原因となるリンパ管の同定が困難であり,外科的治療による治癒が困難であることが考えられたため,陰圧閉鎖療法(NPWT)を選択した.開始17日目で排液はほぼ認めなくなり,26日目に有害事象なくNPWTを終了した.また,下腿浮腫も短期間での著明な改善を認めた.NPWT終了後3か月現在,再発は認めていない.罹患部位が鼠径部であっても,外科処置後のリンパ漏に対する治療としてNPWTは有用な選択肢であると考える.今後は適切な陰圧設定や治療期間の短縮化が課題である.

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1278

印刷版ISSN:0386-9857

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