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文献詳細

雑誌文献

臨床外科75巻10号

2020年10月発行

文献概要

臨床報告

愛知県在住者に発症し肝切除した多包性肝エキノコックス症の1例

著者: 藤田康平12 春木伸裕1 越智靖夫1 山川雄士1 原田真之資1 篠田憲幸1

所属機関: 1トヨタ記念病院消化器外科 2大阪国際がんセンター消化器外科

ページ範囲:P.1229 - P.1233

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要旨
症例は愛知県在住の47歳,男性.全身倦怠感を主訴に当院を受診した.20代に北海道の牧場に勤めていた.1年前から肝S4に石灰化を伴う不整形腫瘤を指摘され経過観察されていた.今回,腫瘤の増大を認めたため精査を行い,エキノコックス血清反応試験ウェスタンブロット法にて肝エキノコックス症と診断した.腫瘤は肝S4,5,8に存在しており中央2区域切除を施行した.病理組織診では虫体壁様構造物を認め,肝エキノコックス症に矛盾しない結果であった.再発予防にアルベンダゾール内服を行っている.近年,北海道外でも同症の報告が散見されるようになった.肝腫瘤を指摘の際には,本疾患を念頭において診断し,適切な治療介入が望まれる.

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1278

印刷版ISSN:0386-9857

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