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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科75巻12号

2020年11月発行

雑誌目次

特集 消化器外科手術 助手の極意—開腹からロボット手術まで

ページ範囲:P.1265 - P.1265

 各領域における手術術式は,手技の進歩やデバイスの進化に伴い,より解剖に則った精緻な手術が要求されるようになってきました.また,開腹や腹腔鏡下手術,ロボット手術など,アプローチもさまざまあります.適切な手術を遂行させるには,アプローチの違いによらず,助手による視野展開やカメラワークが非常に大事になってきます.手術を円滑かつ安全に進めるための手術手順,視野展開の方法などを助手の目から熟知することは,手術の理解と若手外科医の術者への道の第一歩として重要なことと考えられます.

上部消化管領域

開胸開腹食道切除術における助手の極意

著者: 上野正紀 ,   春田周宇介 ,   大倉遊 ,   水野文 ,   浦辺雅之 ,   矢後彰一 ,   下山勇人 ,   小川雄介 ,   宇田川晴司

ページ範囲:P.1266 - P.1274

【ポイント】
◆開胸食道切除は術野が深く,重要臓器に囲まれており,温存すべき血管や神経がある.鏡視下手術以上に助手の技量に左右される手術である.
◆“場”を作ること;操作部位を左右の手,鉗子,鉤を駆使して3次元に展開する.
◆カウンタートラクション;術者と反対方向の牽引を行うことで“場”を維持,展開する.結紮においてもカウンタートラクションの基本に従う.

胸腔鏡下食道切除術における助手の極意

著者: 川久保博文 ,   松田諭 ,   真柳修平 ,   入野誠之 ,   北川雄光

ページ範囲:P.1276 - P.1282

【ポイント】
◆胸腔鏡下食道切除術において重要なのは,手術,助手,スコピストの共通した認識であり,そのために各施設における手技の標準化が必要である.
◆助手は適度なテンションでカウンタートラクションをかける.常に術野をdryに保つことが重要であり,術野展開をしながら,出血を適宜吸引する.
◆No. 106recRの郭清では,助手は吸引管や鉗子で右鎖骨下動脈を圧排して視野展開をし,術者がエネルギーデバイスを使用する際には,反回神経に熱が伝わらないように,神経を守る役割をする.
◆No. 106recLの郭清では,助手の展開が特に重要である.吸引管で気管膜様部右縁と右気管支を腹側に押すことで気管を転がし,左反回神経リンパ節の腹側,気管左壁腹側の視野を展開する.
*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画を見ることができます(公開期間:2023年11月末まで)。

ロボット支援下食道切除術における助手の極意

著者: 梶原脩平 ,   眞崎晴奈 ,   古川舜理 ,   池田翔大 ,   與田幸恵 ,   能城浩和

ページ範囲:P.1283 - P.1287

【ポイント】
◆ロボット支援下手術は,胸腔鏡手術よりも助手の介入が重要であり,術前のセッティングから始まる.
◆アームやインストゥルメントの干渉を回避するために必要な知識と工夫がある.
◆ロボット支援手術は,術者のみならず,チームとして習熟することで円滑に手術を進めることが可能となる.
*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画を見ることができます(公開期間:2023年11月末まで)。

開腹胃癌切除術における助手の極意

著者: 深川剛生 ,   熊田宜真 ,   添田成美 ,   五十嵐裕一 ,   鈴木悠介 ,   緑川裕紀 ,   金城信哉 ,   堀川昌宏 ,   清川貴志

ページ範囲:P.1288 - P.1293

【ポイント】
◆開腹手術の利点である立体的展開を心がける.
◆術者の左手による術野展開を誘導する.
◆リンパ節郭清の範囲を認識させる.
◆若手外科医が上級医の助手がなくても同程度の手術ができるように育成する.
*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画を見ることができます(公開期間:2023年11月末まで)。

腹腔鏡下胃切除術における助手の極意

著者: 高橋徹 ,   稲木紀幸

ページ範囲:P.1294 - P.1300

【ポイント】
◆術者,助手,カメラ助手の目的意識を統一するため,手術中に使用する言語は一般的でありながら,わかりやすくそのチームで慣れ親しんだ言葉を用いる.
◆術野内の鉗子の方向・動き,臓器に対する愛護的扱い,おのおのの場面での視野展開のみならず,術野外の術者,助手の動きを忠実に再現できるように,模範すべき手術動画を何度も繰り返し閲覧し,予習・復習を必ず行う.
◆手術中は次の手順で使用する道具などを器械出し看護師やカメラ助手に伝え,術者のストレス軽減や手術の円滑な進行に努める.
◆助手にとって一番重要なのは,静止した面を形成し術野を安定させることである.慣れてきた段階で術者の意図に沿った動きを加え,視野が静止しているような展開を試みる.
*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画を見ることができます(公開期間:2023年11月末まで)。

ロボット支援下胃切除術における助手の極意

著者: 佐川弘之 ,   伊藤直 ,   早川俊輔 ,   大久保友貴 ,   田中達也 ,   小川了 ,   高橋広城 ,   松尾洋一 ,   瀧口修司

ページ範囲:P.1302 - P.1307

【ポイント】
◆「面」を意識した場の展開を意識し,助手がその効果的な一手を実践できるかが鍵となる.
◆「場」の整備,特に止血操作が重要であり,「吸引操作」「止血技術」が手術の進行に大きく影響を及ぼす.
◆執刀医・助手間のコミュニケーション能力が安全かつ円滑な手術には必要不可欠である.
*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画を見ることができます(公開期間:2023年11月末まで)。

下部消化管領域

開腹直腸切除術・切断術における助手の極意

著者: 髙見澤康之 ,   塚本俊輔 ,   今泉潤 ,   阿彦友佳 ,   森谷弘乃介 ,   志田大 ,   金光幸秀

ページ範囲:P.1308 - P.1312

【ポイント】
◆開腹術の利点は広い術野展開であり,助手は操作点の遠くを持ち,一度の展開で広い操作が行えるよう牽引する.
◆術者の左手と助手の両手で三角形に場を展開して操作点に適切な緊張をかける.
◆直腸間膜の剝離の際は間膜のラインが見えるよう牽引を行い,適宜吸引してドライな術野を心掛ける.
*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画を見ることができます(公開期間:2023年11月末まで)。

腹腔鏡下結腸右半切除術における助手の極意

著者: 加藤俊一郎 ,   塩見明生

ページ範囲:P.1314 - P.1319

【ポイント】
◆腹腔鏡手術はチーム医療である.術者だけでなく,助手・スコピストが手術チームとして定型的な手術を理解しチームが成熟することで,根治性を確保した安全で質の高い手術の完遂につながる.
◆助手は術野内の適切なテンション,視野を確保することが肝要である.この手術の最重要ポイントともいえる胃結腸静脈幹(GCT)の処理の際にはなお一層の注意を払う.
◆スコピストは画面の水平の意識を持つこと,つまり場面ごとに画面の水平となるランドマークとなる構造物を認識することが重要である.

腹腔鏡下直腸切除術における助手の極意

著者: 深田浩志 ,   秋吉高志 ,   向井俊貴 ,   長嵜寿也 ,   山口智弘 ,   小西毅 ,   長山聡 ,   福長洋介

ページ範囲:P.1320 - P.1324

【ポイント】
◆助手の技量は術者の技量と密接に相関するため,助手としての技量を磨くことは非常に重要である.
◆術者の視点に立って,術者がやりやすいように,痒いところに手が届くような助手を心掛ける.
◆鉗子の当て方や把持する場所・展開する方向など,助手として身に付けるべき部分は多い.
*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画を見ることができます(公開期間:2023年11月末まで)。

ロボット支援下直腸切除術における助手の極意

著者: 馬場裕信 ,   島野瑠美 ,   笠井俊輔 ,   篠原元 ,   富義明 ,   杉下哲夫 ,   井垣尊弘 ,   塩原寛之 ,   田澤美也子 ,   山下大和 ,   青柳康子 ,   山本雄大 ,   高岡亜弓 ,   松宮由利子 ,   菊池章史 ,   山内慎一 ,   松山貴俊 ,   徳永正則 ,   絹笠祐介

ページ範囲:P.1325 - P.1330

【ポイント】
◆ロボット支援下直腸手術における助手の主な役割は手術進行を円滑に行うための視野展開,適切な組織の牽引である.
◆術野に術者がいないため,腹腔内および腹腔外にも注意を払う必要がある.
◆術者とコミュニケーションをとり,解剖の認識,手順,術者の求める視野展開を確認していくことが重要である.
*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画を見ることができます(公開期間:2023年11月末まで)。

肝胆膵領域

開腹肝切除術における助手の極意

著者: 鳥口寛 ,   多田正晴 ,   中村育夫 ,   藤本康弘 ,   波多野悦朗

ページ範囲:P.1331 - P.1336

【ポイント】
◆愛護的な臓器の把持,素早く確実な結紮など基本プレーが高度なレベルで行えるように日々鍛錬しておくこと.
◆術野の展開に徹し,術者の操作中に「術野を崩さない」よう心掛ける.
◆術者との阿吽の呼吸で,術者の意図を汲んで常に先を考えながらアシストする.
*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画を見ることができます(公開期間:2023年11月末まで)。

腹腔鏡下肝切除術における助手の極意

著者: 菅野将史 ,   新田浩幸 ,   高原武志 ,   片桐弘勝 ,   梅邑晃 ,   武田大樹 ,   眞壁健二 ,   安藤太郎 ,   佐々木章

ページ範囲:P.1337 - P.1341

【ポイント】
◆腹腔鏡下肝切除の拡大視効果を最大限に享受するために視野の確保が必須である.
◆本稿では腹腔鏡下肝切除における助手の役割,特に視野展開を中心に解説する.
◆助手の役割,心構えを理解し,今後も多くの施設で腹腔鏡下肝切除が安全に施行されることを期待する.
*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画を見ることができます(公開期間:2023年11月末まで)。

TOYAMA Surgery—開腹膵切除術における助手の極意

著者: 渋谷和人 ,   吉岡伊作 ,   木村七菜 ,   金谷瑛美 ,   深澤美奈 ,   星野由維 ,   渡辺徹 ,   平野勝久 ,   松井恒志 ,   藤井努

ページ範囲:P.1342 - P.1346

【ポイント】
◆膵切除術は長時間に及ぶため,技術的にはもちろん,精神的なサポートも助手の大事な役割である.
◆膵頭神経叢第Ⅰ部・第Ⅱ部の処理では,助手は門脈を愛護的に避けることで良好な視野を展開する.
◆膵空腸吻合・Blumgart変法では「糸の管理」はすべて助手が行う.
*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画を見ることができます(公開期間:2023年11月末まで)。

腹腔鏡下膵切除術における助手の極意

著者: 伴大輔 ,   奈良聡 ,   高本健史 ,   水井崇浩 ,   吉野潤 ,   江崎稔 ,   島田和明

ページ範囲:P.1347 - P.1351

【ポイント】
◆助手の手を取られないように工夫し,胃・肝外側区域を挙上して視野を確保する.
◆総肝動脈・脾動脈根部へのアプローチの際は適切に胃膵間膜を挙上する.
◆脾臓の下極・上極の剝離は助手の牽引方向で展開が決まる.
*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画を見ることができます(公開期間:2023年11月末まで)。

ロボット支援下膵切除術における助手の極意

著者: 長瀬勇人 ,   石戸圭之輔 ,   木村憲央 ,   脇屋太一 ,   赤坂治枝 ,   室谷隆裕 ,   三浦卓也 ,   諸橋一 ,   坂本義之 ,   袴田健一

ページ範囲:P.1352 - P.1356

【ポイント】
◆助手は,体外情報を術者に伝えるとともにロボットアームの衝突回避などの対策をとる.必要に応じてポート位置の調整や追加挿入を行う.
◆触覚を有しないアーム鉗子による臓器損傷の回避に術者は最大限の注意を払い,臓器圧迫を伴う術野展開は基本的に助手が行う.
◆助手は,完全ロボット手術,ハイブリッド手術の如何にかかわらず,腹腔鏡手術操作に習熟する必要がある.また,腹腔鏡下手術ならびに開腹手術へのconversionに対応する必要がある.

坂の上のラパ肝・胆・膵・11

腹腔鏡下総胆管拡張症手術

著者: 大目祐介 ,   本田五郎

ページ範囲:P.1357 - P.1369

Point
◆先天性胆道拡張症の病態と治療を理解する.
◆胆管の壁構造を知る.
◆鈍的剝離を中心に胆管のSS-inner layer(SS-I)を露出して膵内胆管の剝離を進める.
◆膵内胆管の剝離はnarrow segmentを露出するレベルまで行う.
◆胆管空腸吻合は後壁を連続縫合,前壁を結節縫合で行う.

FOCUS

最新の複合がん免疫療法—抗PD-1抗体を軸とした治療法の開発

著者: 城﨑幸介 ,   玉田耕治

ページ範囲:P.1371 - P.1374

はじめに
 免疫チェックポイント阻害療法の登場は,がん治療に新たな選択肢の幅を広げた.免疫療法の作用点は多岐にわたるが,抗PD-1/PD-L1抗体は免疫チェックポイント分子の機能を中和することで抗腫瘍効果を得ることを狙った治療法である.PD-1は1992年にクローニングされた後に多くの機能解析が進められ1,2),活性化T細胞に発現してその過剰な活性を抑制する調節因子として機能することが知られている.PD-1のリガンドはPD-L1とPD-L2であり,腫瘍細胞や腫瘍微小環境のストローマ細胞はこれらのリガンドを発現することでがん免疫から逃避する.このメカニズムを標的として開発された抗PD-1抗体のニボルマブは,本邦においてメラノーマの治療薬として2014年に世界初の承認を受けた.進行性メラノーマ患者107例を対象にした臨床試験では,奏効率31.8%,5年生存率34.2%という優れた治療効果を示し3),以後ニボルマブ単剤療法としては非小細胞肺がん,腎細胞がん,ホジキンリンパ腫,頭頸部がん,胃がん,悪性胸膜中皮腫,食道がん,MSI-High結腸・直腸がんに適応が拡大している.また,同じ抗PD-1抗体であるペムブロリズマブは,2016年のメラノーマに対する承認を皮切りに,非小細胞肺がん,ホジキンリンパ腫,尿路上皮がん,MSI-Highを有する固形がん,頭頸部がんに適応となっている.
 免疫チェックポイント阻害療法は,従来の標準治療法とは異なる機序を介して作用することで多くの臨床試験において有効性を示してきたが,単剤治療での奏効率は10〜30%程度であり3),依然として反応が乏しい患者が多く存在することも事実である.このような課題の克服のため,現在では他の治療法や別の免疫療法との組み合わせによる複合免疫療法が模索され,多くの臨床試験が実施されている.より高い抗腫瘍効果を得るためには,組み合わせる治療法の特徴を熟知し,最大限に活かすことが複合免疫療法の重要なカギとなる.そこで本稿では,抗PD-1抗体療法をベースとした最新の複合がん免疫療法について論述する.

病院めぐり

星総合病院外科

著者: 野水整

ページ範囲:P.1375 - P.1375

 公益財団法人星総合病院は福島県郡山市にあり,創立95周年を迎えました.32の診療科目を標榜し430床の臨床研修指定病院,地域医療支援病院の指定を受けている福島県県中地域中核病院です.2013年1月から現在の地に新築移転し診療をしていますが,この間,2011年の東日本大震災で旧病院が甚大な被害を受け,また2019年の台風で新病院を含む郡山市東部地域が広範な浸水被害を受け,病院自体も被害を受けながら地域医療のために大きな貢献をしてまいりました.郡山市は福島県の中心に位置し人口33万人で福島県の文化経済産業交通の中心地です.東京から東北新幹線で最短1時間16分,有名な滝桜,安達太良磐梯の山,会津の歴史,いわきの海,冬のスキーエリアなどほぼ1時間圏内にあります.県内各地から患者さんが来院し,医療圏人口は60万人です.
 当院の外科は一般外科10名と心臓血管外科3名で構成されており,それぞれ福島県立医科大学消化管外科,肝胆膵外科,心臓血管外科,乳腺外科,甲状腺外科の関連病院になっていますが他大学卒は5名おりそれぞれ県立医大外科と関係をもって勤務しています.一般外科は,消化器外科医4名(上部下部消化管,肝胆膵,肛門,呼吸器)と乳腺外科医6名(乳腺,甲状腺)で年間約860件,心臓血管外科は370件の手術を行っています.とくに乳腺外科は年間乳癌手術数約250例で東北地方第2位の症例数です.外科の化学療法に関しては福島県立医科大学腫瘍内科の応援指導の下に年間約1,700件(延べ)の主として外来化学療法を行っています.また,当院外科は1991年より「がんの遺伝外来」を併設しているのが特徴でこれまで611例の遺伝カウンセリング・遺伝学的検査の登録があり,認定遺伝カウンセラーが常勤しています.臨床研修医は毎月1〜2名がローテートで回ってきており,福島県立医科大学の5年生が毎週外科実習に来ています.

臨床報告

膵腺房細胞癌の残膵再発切除により長期生存を得た1例

著者: 高橋雅哉 ,   久島昭浩 ,   中本壽宏 ,   並木眞生 ,   布村眞季 ,   川崎紀章

ページ範囲:P.1377 - P.1382

要旨
症例は,38歳男性.入院2年6か月前から上腹部痛を反復していた.4か月前から膵尾部に腫瘍を認め,急速に増大し,手術となった.周囲組織と固着していたため,膵体尾・脾・横行結腸・左副腎・胃後壁筋層(部分)を,一塊に切除した.病理組織学的検査で,12.5×8.0×7.0 cmの腺房細胞癌(以下ACC)と診断された.5年後に膵鉤部に腫瘍が再発し,幽門輪温存膵頭十二指腸切除術を行った.前回と同様の組織像を呈する2.7×2.5×2.5 cmのACCだった.2回目の手術後20年以上を経て,再々発をみない.

ひとやすみ・195

後任を託す

著者: 中川国利

ページ範囲:P.1275 - P.1275

 人間には社会的寿命があり,自営業を含めて組織トップの座を後継者に明け渡さざるを得ない宿命にある.私も馬齢を重ね,ささやかながらも組織の長を務めているが,私自身の後継者について思いを巡らした.
 古今東西,歴代王朝では血筋が重んじられ,現代でも自営業では血縁者が後継者として指名されることが多い.しかし変化が激しい現代においては,組織トップの力量が大いに問われる.古来中国では堯や瞬のような徳をもった有能な人材に組織の将来を託すのが理想とされてきたが,後継者はいかなる基準で決められるのだろうか.

1200字通信・149

資格と人格

著者: 板野聡

ページ範囲:P.1301 - P.1301

 「資格」:身分や地位.立場.また,一定のことを行うために必要とされる条件.
 「人格」:①人がら.人品.③道徳的行為の主体としての個人.自律的意志を有し,自己決定的であるところの個人.(②④省略)

昨日の患者

入院中の夫から贈られた赤いバラ

著者: 中川国利

ページ範囲:P.1313 - P.1313

 病院を訪れる多くの見舞客は,花を持ち込むことが多い.逆に入院中の患者さんが自宅の奥さんに花を贈った事例を紹介する.
 Hさんは70歳代後半の胃癌患者さんで,癌性腹膜炎をきたして再入院した.奥さんは毎日のように訪れ,夫の世話をした.そして夫の病状が安定しているのを確認し,昼過ぎに帰るのが通例であった.しかしある日の夕方,帰ったはずの奥さんが再び病室に現れた.

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目次

ページ範囲:P.1262 - P.1263

原稿募集 「臨床外科」交見室

ページ範囲:P.1356 - P.1356

原稿募集 私の工夫—手術・処置・手順

ページ範囲:P.1382 - P.1382

バックナンバーのご案内

ページ範囲:P.1386 - P.1386

次号予告

ページ範囲:P.1387 - P.1387

あとがき

著者: 絹笠祐介

ページ範囲:P.1388 - P.1388

 8月13日からの3日間,第120回日本外科学会定期学術集会が開催されました.Covid-19の感染拡大リスクを考慮し,完全WEB形式での開催となりました.3日間の参加を通して感じたのは,北川雄光会頭の思いが本当に良く伝わってくる学会のテーマや企画であったなということです.もちろん企画等も素晴らしいものでしたが.
 今回のWEB形式について,個人的にはとても良いと思いました.移動や宿泊の手間や負担が避けられたことはもちろんですが,何より多くのセッションを聞くことができるということが一番の利点だと感じました.医者人生で一番長い時間,勉強できたのは間違いありません.その理由として,①自分の椅子で視聴できるので,居心地が良い(疲れない),②学会夜の食事会や飲み会がないので眠くない,③同時にいくつかのセッションを見比べて,興味ある発表を聞くことができる,④意外にデスクワークも捗る,です.一方で,個人的な次回への改善点は,①コーヒーを飲みすぎない(2時間のセッションの担当を2つしましたが,トイレを我慢するのが大変でした),②医局員は学会開催期間中の仕事(手術や外来)をなくす調整をする,③可能であれば,医局員で部屋に集まり皆で視聴する,です.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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