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あとがき
著者: 橋口陽二郎
所属機関:
ページ範囲:P.256 - P.256
文献購入ページに移動 本離れが続いている.筆者が若い頃はテレビの普及とともに若者が本を読まなくなってきていることが指摘され警鐘がならされていた.しかし,インターネットが普及し,記憶媒体の容量が飛躍的に伸び安価で提供されるようになると,本が電子化されるようになり,何百冊もの本や論文をiPadなどに格納して携帯することが可能になった.辞書がなくてもインターネットで迅速に検索できる.こうして本離れは内面的にも外面的にも本格化した.筆者の教室においても,欲しい本があれば年間一定額まで購入をサポートすることを提案しているが,購入を希望する若い医局員はほとんどいないのが現状である.本離れの中で,医学雑誌もデジタル化,オンライン化して生き残りをはからなければならず,本誌編集委員会でもそのことが活発に議論されている.
ところが,先日,ある50歳位の高名な演者の講演の司会を務めた際に,小中学生のころに愛読した「ブラック・ジャック」のコミックシリーズを今でも大事に全部保存しているという話があった.「私はこのブラック・ジャックのマンガ本達と,どこへ行くにも一緒に引っ越して来ました」との言葉がとても印象的であった.なぜならば,筆者も小中学生時代に読んだ本20冊あまりを何十年も保管して,人生の転機が訪れる度に,一緒に引っ越して来たからである.それらの一冊一冊に想い出がつまっているわけであるが,さすがに読むに堪えないほど傷んできて,これ以上保存することが困難な状況になってきた.親,恩人との別れがあるように,これらの本達ともお別れの時が来たようである.家族からの断捨離のプレッシャーの中,少しずつ処分を進めている.医学書の中にも若いころに読んだ別れがたい本達があり,教授室の本棚に鎮座している.幸い,こちらには家族からのプレッシャーはない.
ところが,先日,ある50歳位の高名な演者の講演の司会を務めた際に,小中学生のころに愛読した「ブラック・ジャック」のコミックシリーズを今でも大事に全部保存しているという話があった.「私はこのブラック・ジャックのマンガ本達と,どこへ行くにも一緒に引っ越して来ました」との言葉がとても印象的であった.なぜならば,筆者も小中学生時代に読んだ本20冊あまりを何十年も保管して,人生の転機が訪れる度に,一緒に引っ越して来たからである.それらの一冊一冊に想い出がつまっているわけであるが,さすがに読むに堪えないほど傷んできて,これ以上保存することが困難な状況になってきた.親,恩人との別れがあるように,これらの本達ともお別れの時が来たようである.家族からの断捨離のプレッシャーの中,少しずつ処分を進めている.医学書の中にも若いころに読んだ別れがたい本達があり,教授室の本棚に鎮座している.幸い,こちらには家族からのプレッシャーはない.
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