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文献詳細

雑誌文献

臨床外科75巻4号

2020年04月発行

FOCUS

体動を捉えるモーションセンサーによる腹腔鏡手術の上達度計測

著者: 松下宗一郎1 八木浩一2 愛甲丞2 瀬戸泰之2

所属機関: 1東京工科大学コンピュータサイエンス学部 2東京大学大学院医学系研究科消化管外科

ページ範囲:P.495 - P.499

文献概要

はじめに
 外科手術においては,患者への侵襲性が低く,術後の速やかな回復が期待できる内視鏡下手術の手法が近年急速に広まりつつあるが,技量習得は切開手術と比して困難である.このため,腹腔鏡手術についてはドライボックスと呼ばれる機材により,施術者の両手にて把持される内視鏡手術鉗子を操作する縫合・結紮といった技量のトレーニングが行われてきた.ここでは,施術操作に要したタスク時間と,縫合・結紮の出来栄えに加え,施術部位を撮影・投影しているビデオ動画の目視評価を組み合わせることで,技量の評価が行われている.しかしながら,ビデオによる技量評価では正確な判定を下すことのできる評価者が必要であることに加え,ビデオの再生自体に時間がかかることから,技量トレーニングの効果的な実施という視点からは問題が生じている.さらには,手術鉗子操作における施術者の前腕姿勢や力の入れ方といった,内視鏡画像では捉えることが難しい運動技法については,熟練者による指導といった手法に頼らざるをえない.このため,手術鉗子にモーションセンサーを設置し,速度や加速度といった運動信号による施術技量評価が試みられているものの,多様な手術器具への対応やセンサーの取り付け方法といった視点から,技量トレーニングの場において手軽に利用することは困難である1)
 そこで本稿では,施術者の手首運動を正確に捉えるモーションセンサー機器により,腹腔鏡手術における縫合・結紮技量の客観的な数値評価を行う研究開発事例を紹介するとともに,その中で得られた施術技量に関する知見について概説する.

参考文献

1)Chmarra MK, Grimbergen CA, Dankelman J:Systems for tracking minimally invasive surgical instruments. Minim Invasive Ther Allied Technol 16:328-340, 2007
2)松下宗一郎,菅野谷知佳,出口智基,他:手首装着型運動センサによる内視鏡下鉗子操作技量評価—手首傾斜角と回旋角による手術鉗子操作状況の可視化.日コンピュータ外会誌20:316-317,2018
3)Hogan N, Sternad D:Sensitivity of Smoothness Measures to Movement Duration, Amplitude, and Arrests. J Mot Behav 41:529-534, 2009
4)Mohamadipanah H, Parthiban C, Law K, et al:Hand Smoothness in Laparoscopic Surgery Correlates to Psychomotor Skills in Virtual Reality. IEEE 13th Int. Conf. on Wearable and Implantable Body Sensor(BSN), pp 242-246, 2016
5)松下宗一郎,八木浩一,愛甲 丞,他:手首装着型運動センサによる内視鏡鉗子操作技量の定量推定.日コンピュータ外会誌21:256-257,2019

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1278

印刷版ISSN:0386-9857

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