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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科76巻1号

2021年01月発行

雑誌目次

特集 徹底解説 術後後遺症をいかに防ぐか—コツとポイント

ページ範囲:P.5 - P.5

 多くの癌手術において,臓器損失によるデメリットが発生してしまう.それは,癌根治とのバランスのうえで考えなければならず,患者さんにとって納得しうるものもあろうが,しかし特に早期癌の患者さんにとっては,多くは無症状の方が有症状になってしまう.その意味でも,術後後遺症は極力発生させてはならないものである.

乳癌

乳癌術後のリンパ浮腫—センチネルリンパ節生検での合併症低減をめざす

著者: 飯島耕太郎 ,   齊藤光江

ページ範囲:P.6 - P.10

【ポイント】
◆センチネルリンパ節生検を行う前に,術前画像検査を工夫・確認し,存在部位を把握しやすくすること.
◆組織を適当に切り込んだり安易にサンプリングを行わず,きちんと腋窩に到達してから検索・生検を進める.
◆なにかと急ぎがちになりがちであるが,焦らず基本的な操作を効率的に行い,無駄な損傷や出血を避けること.
*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画を見ることができます(公開期間:2024年1月末まで)。

食道癌

縦隔アプローチでの反回神経麻痺—その特徴と術中持続神経モニタリングの有用性

著者: 藤原斉 ,   塩崎敦 ,   小西博貴 ,   大辻英吾

ページ範囲:P.11 - P.18

【ポイント】
◆持続神経モニタリングを用いることで,反回神経麻痺リスク操作をリアルタイムに認識し回避することができ,麻痺の軽減,さらには予防が可能である.
◆左頸部からの縦隔アプローチでは,頸胸境界部と大動脈弓部が麻痺の好発部位であり,牽引と熱損傷が最多の原因であった.
◆麻痺リスク操作,麻痺症例の学習は,外科医のスキル向上を促進する.
*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画を見ることができます(公開期間:2024年1月末まで)。

食道癌術後の吻合部狭窄—三辺外翻三角吻合の概要とピットフォール

著者: 岡村明彦 ,   高橋慶太 ,   丸山傑 ,   蟹江恭和 ,   藤原大介 ,   金森淳 ,   今村裕 ,   渡邊雅之

ページ範囲:P.19 - P.23

【ポイント】
◆サーキュラーステープラーを用いた食道胃管吻合では,吻合部狭窄が起こりやすいことが報告されている.
◆リニアステープラーを用いた三辺外翻三角吻合は,縫合不全,吻合部狭窄ともにきたしにくい吻合法である.
◆本稿では頸部食道胃管吻合における三辺外翻三角吻合の概要とピットフォール,ならびに当院での治療成績について述べる.
*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画を見ることができます(公開期間:2024年1月末まで)。

胃癌

胃癌術後の吻合部狭窄—術式ごとの特徴と予防のポイント

著者: 松本陽介 ,   寺島雅典

ページ範囲:P.24 - P.29

【ポイント】
◆吻合法に際しては,臓器の血流を保つこと,緊張がかからないようにすることを心がける.
◆観音開き法においては十分な吻合長をとり,特に後壁側の縫合を絞めすぎないように注意することが重要である.
*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画を見ることができます(公開期間:2024年1月末まで)。

逆流性食道炎—噴門側胃切除後の逆流性食道炎をいかに防ぐか

著者: 山下好人 ,   辰林太一 ,   山口賢二 ,   青山諒平 ,   川人章史

ページ範囲:P.31 - P.36

【ポイント】
◆ダブルトラクト法や空腸間置法における食道残胃間の空腸の長さは10〜15 cmとする.
◆食道残胃吻合における逆流防止の基本は食道と残胃を5 cm程度オーバーラップさせて固定することである.
◆mSOFY法ではリニアステープラーの吻合孔よりさらに口側の食道と残胃を縫合固定する.
*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画を見ることができます(公開期間:2024年1月末まで)。

ダンピング症候群—その病態と機能温存手術による予防のポイント

著者: 菊地覚次 ,   黒田新士 ,   藤原俊義

ページ範囲:P.38 - P.42

【ポイント】
◆胃切除後障害の代表的な一つであるダンピング症候群予防は,胃切除後のQOL向上において重要である.
◆ダンピング症候群を予防する機能温存手術の適応や手術手技のコツを正しく理解する.
◆管理栄養士などの医療スタッフと連携したチーム医療体制の構築と患者教育が重要である.

直腸癌

排便障害—予防のための工夫と起きたときの対処法

著者: 吉岡和彦 ,   徳原克二 ,   関本貢嗣

ページ範囲:P.43 - P.46

【ポイント】
◆術後の機能障害が起こる機序は,直腸肛門部に対する直接的な損傷や神経障害などによるとされるが,すべてが明らかとなっているわけではない.
◆術後障害を完全に回避することは困難であるが,いくつかの手段により一定の効果は期待できる.
◆一旦発現した術後排便障害に対しては,保存的治療と積極的な外科的治療がある.

便失禁—肛門機能を配慮したISRの際の骨盤内操作から経肛門吻合までのコツ

著者: 吉田武史 ,   藤田文彦 ,   下村晋 ,   藤吉健司 ,   大地貴史 ,   合志健一 ,   弓削浩太郎 ,   溝部智亮 ,   主藤朝也 ,   赤木由人

ページ範囲:P.47 - P.55

【ポイント】
◆便失禁の評価(主観的評価,客観的評価)の種類および意味を理解する.
◆直腸癌術後の肛門機能の経過を理解し,術式の選択を行う.
◆骨盤内操作,経肛門操作における解剖を理解し,正しい操作,丁寧な操作を心掛ける.
*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画を見ることができます(公開期間:2024年1月末まで)。

排尿・性機能障害—自律神経温存のポイント

著者: 山口茂樹 ,   平能康充 ,   石井利昌 ,   近藤宏佳 ,   石川慎太郎 ,   藤井能嗣 ,   淺利昌大 ,   片岡温子 ,   片岡将宏 ,   島村智

ページ範囲:P.56 - P.59

【ポイント】
◆直腸癌手術における自律神経の走行を解剖学的に十分理解することが基本である.
◆下腹神経,骨盤神経叢からの直腸枝に注意を払い,total mesorectal excision(TME)の範囲外の組織を切除しないことで確実な神経温存が行える.
◆癌浸潤が疑われる場合やcircumferential resection margin(CRM)確保のために必要と判断した場合には合併切除をためらわず根治性を優先すべきである.
*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画を見ることができます(公開期間:2024年1月末まで)。

肝臓癌

肝切除後胆汁瘻—難治性胆汁瘻を防ぐコツと発症時の診断・対処法

著者: 佐野圭二

ページ範囲:P.60 - P.63

【ポイント】
◆胆管末梢断端からの胆汁瘻予防・対応は胆管の減圧が効果的である.
◆区域切除以上の肝切除を個別処理で行う場合は離断性胆汁瘻防止のため原則術中胆道造影を行う.
◆離断性胆汁瘻に対しては,原則再手術をできるだけ早く行う.

胆管癌

胆管癌術後の胆道狭窄・胆管炎・肝内結石

著者: 吉川潤一 ,   杉岡篤 ,   加藤悠太郎 ,   安田顕 ,   高原武志 ,   棚橋義直 ,   小島正之 ,   木口剛造 ,   内田雄一郎 ,   宇山一朗

ページ範囲:P.64 - P.70

【ポイント】
◆胆道狭窄,胆管炎,肝内結石は胆道再建が大きな要因であり,互いに密に関係している.
◆肝内結石は胆管癌発症リスクとなるため適切な対応を要する.
◆胆道系の後遺症はQOLを大きく損なうばかりでなく,肝硬変を惹起し,最終的に肝不全に至ることがある.
◆迷ったとき,予期せぬことが起こったときは必ず外瘻チューブを胆管内に留置する.
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膵臓癌

膵切除後の消化吸収障害・脂肪肝—膵外分泌機能温存のポイント

著者: 北畑裕司 ,   廣野誠子 ,   山上裕機

ページ範囲:P.72 - P.78

【ポイント】
◆再建において,安全確実な膵消化管吻合を施行する.
◆膵酵素剤を中心とした栄養補充療法を積極的に行う.
◆縮小手術も考慮した適切な術式選択をし,膵切除量を必要最小限に抑える.

膵臓癌術後の糖尿病—膵内分泌機能障害の要点と防止策,血糖管理

著者: 村上義昭 ,   中川直哉 ,   橋本泰司

ページ範囲:P.79 - P.83

【ポイント】
◆膵臓切除後の糖尿病の新規発症は,20〜40%の頻度で認められる.
◆膵臓切除後の膵内分泌機能は残膵体積に最も依存し,糖尿病発症の防止には,術後膵萎縮をきたさないための膵管の開存性を考慮した膵消化管吻合が重要である.
◆膵臓切除後の糖尿病症例に対しては,十分な膵酵素補充療法を伴う血糖の管理が重要である.

良性疾患

肛門部の術後障害—痔核術後の肛門狭窄と痔瘻術後の括約筋不全・肛門変形

著者: 栗原浩幸 ,   金井忠男 ,   赤瀬崇嘉 ,   高林一浩 ,   八木貴博 ,   浅川愛里

ページ範囲:P.84 - P.89

【ポイント】
◆かつて肛門部術後障害の代表的なものであったホワイトヘッド肛門は,ほとんどみられなくなった.
◆痔核術後の肛門狭窄を避けるには,肛門上皮・粘膜下の痔核をアンダーマインし,上皮・粘膜を適切に温存する.
◆痔瘻術後の括約筋不全を避けるには,恥骨直腸筋と歯状線より口側の内括約筋を温存する.
*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画を見ることができます(公開期間:2024年1月末まで)。

鼠径部ヘルニア術後疼痛—神経痛症(neuralgia)に焦点を当てて

著者: 蜂須賀丈博 ,   齊藤卓也 ,   深見保之 ,   佐野力

ページ範囲:P.90 - P.97

【ポイント】
◆鼠径部ヘルニア術後疼痛は,近年最も問題となっている合併症であり,特に神経痛症(neuralgia)は,重篤な症状を呈する可能性のある最も避けなければいけない合併症である.
◆神経痛症は,術中の外傷により腸骨下腹神経,腸骨鼠径神経,陰部大腿神経,大腿外側皮神経のいずれにも起こりうる.
◆外科医は,神経痛症を十分念頭に置き,前方到達法,腹腔鏡下手術,ロボット手術のいかなる手技においても細心の注意を払い,神経痛症を回避できる安全な手技の確立を目指さなければいけない.
*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画を見ることができます(公開期間:2024年1月末まで)。

坂の上のラパ肝・胆・膵・13

膵体尾部切除術(後編:膵離断〜手術終了)

著者: 大目祐介 ,   本田五郎

ページ範囲:P.98 - P.106

Point
◆膵実質離断には時間と手間を惜しまない.
◆膵実質周囲には線維性の被膜様構造(本稿では膵被膜と呼ぶ)があり,自動縫合器による膵離断の際には,この膵被膜が破れないよう膵実質に一定の圧を加えてゆっくりと絞るように圧挫する.
◆膵断端の被膜に損傷が生じたり膵実質が裂けたりした場合には,妥協することなく“次の手”を打つ.

FOCUS

慢性便秘症の最近の治療

著者: 山脇博士 ,   二神生爾 ,   岩切勝彦

ページ範囲:P.108 - P.114

はじめに—なぜ今,便秘症が注目されるのか
 便秘症は日常臨床で最も多く遭遇する疾患の一つであるが,その疾患概念についてわが国では定義が定まっていなかった.2017年に日本消化器病学会関連研究会より「慢性便秘症診療ガイドライン」1)が発刊され,便秘の定義と分類,治療に関するエビデンスが収集され,消化器専門以外の医療従事者でも標準的な診断から治療までの見通しが可能となった.ガイドラインでは,便秘は「排出すべき糞便を十分量かつ快適に排出できない状態」と定義されている1).これは疾患概念であり,問診時には次の4項目,①便の性状,②排便後の気分(残便感など),③排便時の気分(排便困難感など),④排便の頻度,を参考にするとよい(図1).患者の便秘に対する訴えは複雑であり,また複合的である.したがって臨床医は,排便回数や便の硬さなどの定型的なclosed questionにとどまらず,目の前にいる患者が,どの症状のために“便秘”であると訴えているのかを十分に聴取する必要がある.
 便秘治療の大きな変化として,新規治療薬の開発が挙げられる.便秘は以前より重要なcommon diseaseの一つであったが,最近まで使用できる薬剤が限られていたため,注目される疾患ではなかった.特に外科医にとっては加療の対象でなかったかもしれない.これまで治療薬としてはおもに,効果発現が早い大腸刺激性下剤であるアントラキノン系のセンノシド(プルゼニド),センナやジフェニール系のピコスルファート(ラキソベロン)などが頻用されてきたが,長期投与による効果減弱が指摘されており,患者の満足度も高くはなかった.しかし,2012年以降,新たな便秘症治療薬として,ルビプロストン(アミティーザ)が承認され,2017年にはリナクロチド(リンゼス),ナルデメジントシル酸塩(スインプロイク),2018年にエロビキシバット(グーフィス),ポリエチレングリコール(モビコール)と,新規治療薬が続々と上市されるに至った.近年登場した新薬は作用機序がそれぞれ異なり,これは,高齢者など多くの合併症をもった患者に対する薬剤処方の選択肢が大きく広がり,便秘治療にinnovationを引き起こすことを期待させる.
 ガイドラインが策定され,使える薬剤が増えたことで,便秘はもはや“漫然と”薬剤を使用し続ける疾患ではなくなっている.本稿では,特に新薬に着目しながら,慢性便秘症における最近の治療について述べたい.

病院めぐり

岡山市立市民病院外科

著者: 池田宏国

ページ範囲:P.115 - P.115

 岡山市立市民病院は,自治体病院として1936年4月に誕生し,2015年5月にJR岡山駅から一駅で新幹線へのアクセスも良好なJR北長瀬駅に直結した現所在地に新設・移転しました.総病床数は400床,診療科は26科の総合病院です.施設としては救急医療,医療者教育,大規模災害への対応,感染症対策に特に尽力してきました.救急体制は「断らない救急医療」をモットーに24時間365日すべての救急患者を受け入れて初期診療を行う「岡山ER」に力をいれています.救急科・総合内科を中心に各専門診療科と横断的に救急センターを構成し,救急車応需率97%以上を堅持できるような医療体制を敷いています.また,2018年の西日本大豪雨災害では被災地に災害時派遣医療チーム(DMAT)を派遣,昨今のコロナ肺炎においては岡山県内では最初に患者の受け入れ・対応を行い,地域の先導的かつ中核的な役割を担っています.
 日本外科学会外科専門医制度修練施設,日本消化器外科学会認定専門医修練施設,日本癌治療学会がん治療認定医機構認定研修施設をはじめ,他科においてもさまざまな施設認定を修得しています.岡山大学病院と連携した研修プログラムも充実し,教育施設としての機能・役割も十分に有しています.当科の診療領域は,心臓血管以外の外科全般に携わっており,現在,スタッフ6人(うち日本内視鏡外科学会技術認定医2人在籍),後期研修医2人の計8人で日常診療を行っています.2019年(1〜12月)の手術症例数は736例で,主だったところでは,胃癌手術24例,大腸癌手術98例,肝胆膵手術(良性も含む)33例,胆囊摘出術187例,鼠径ヘルニア60例.充実した救急体制を背景として緊急手術は多く(年間180例程度),急性腹症の診断能力・初期対応・術後管理を十分に研修することが可能です.定期手術のみならず,緊急手術においても80%以上の症例は鏡視下手術で対応していることも当科の特色です.加えて,本年7月には腹部ヘルニア手術のハイボリュームセンター化を目指したヘルニア外来を開設,院内の外科系診療科が連携した「低侵襲手術センター」の立ち上げなど,地域の方々により良い医療を提供できるよう常に新しいことに取り組んでいます.

臨床報告

大腸癌術後5年目にFDG-PET陽性を示した縫合糸膿瘍の1例

著者: 禰寝重史 ,   須郷広之 ,   岩永直紀 ,   関根悠貴 ,   渡野邉郁雄 ,   町田理夫 ,   児島邦明

ページ範囲:P.117 - P.121

要旨
症例は80歳の男性で5年前に横行結腸癌に対し結腸部分切除術を施行された.今回,経過観察のCT検査で結腸吻合部近傍に10 mm大のPET-CT陽性結節を認め,横行結腸癌のリンパ節転移再発の可能性も否定できず手術を施行した.術中,結節内腔に膿汁と前回手術の縫合糸を認め術後病理検査で縫合糸膿瘍の診断となった.術中に採取された膿汁の細菌培養検査は陰性であったが,縫合糸の培養では緑膿菌が検出された.培養検査で細菌感染の証明された本症の報告は少なく,自験例は縫合糸内の細菌が確認された稀な症例であった.

書評

—國松淳和(編)—不明熱・不明炎症レジデントマニュアル

著者: 萩野昇

ページ範囲:P.122 - P.122

 COVID-19の波が世界を押し流している.まさしく「パンデミック」の風景であるが,このパンデミックは各社会が内包する脆(ぜい)弱(じゃく)性を片端から明らかにしつつある.わが国の診療現場においても,少なからぬ数の「システムエラー」が明白になったが,その一つに「日常診療において『発熱患者』に対してどのようにワークアップすればよいのか,きちんと理解して診療している医師は決して多くない」という不都合な事実がある.卒前の医学教育において,疾患ごと・臓器ごとの縦割りの教育(そのメリットが幾分かは存在することは,旧世代の医学教育を受けた者としては,一応留保をつけておきたいところではあるが)を受け,卒後の臨床現場では多くはon-the-job trainingの形で,教える側の医師の専門性に大きく偏った教育が施される現状であれば,今後もしばらくは慣性的に現状が維持されるのではないかと悲観せざるを得ない.
 そのような状況で出版された『不明熱・不明炎症レジデントマニュアル』は,「遷延する発熱=不明熱」ならびに「不明炎症」という,非常にありふれていながらぞんざいな扱いを受けてきた症候に対して,多くの分野の専門家が寄稿する形でまとめられた1冊であり,まさにwith COVID-19の一著としてふさわしい内容である.編集者の國松淳和先生はすでに類似テーマで『外来で診る不明熱—Dr. Kの発熱カレンダーでよくわかる不明熱のミカタ』(中山書店,2017),『「これって自己炎症性疾患?」と思ったら—疑い,捉え,実践する』(金芳堂,2018)などのスマッシュヒットを飛ばしておられるが,今回のレジデントマニュアルは過去の単著よりもやや基本的なレベルに読者対象を絞っており,「レジデント」が踏まえておくべき内容として適切と思われる.一方で,「コアな國松ファン」にとっては,やや食い足りない感じも否めないが,そういう読者に向けては國松節全開の10章「とにかく全然わからないとき」,付章「こっそり読みたい『不明熱マニュアル外伝』」が準備されている.ただし,付章については「コアな國松ファン」は立ち入り禁止の札が立っているので,そういう意味でも「こっそり読みたい」.

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目次

ページ範囲:P.2 - P.3

原稿募集 「臨床外科」交見室

ページ範囲:P.83 - P.83

バックナンバーのご案内

ページ範囲:P.126 - P.126

次号予告

ページ範囲:P.127 - P.127

あとがき

著者: 瀬戸泰之

ページ範囲:P.128 - P.128

 本号は「術後後遺症をいかに防ぐか—コツとポイント」を特集している.一読していただければ,達人たちの思いがひしひしと伝わってくる.ぜひ,若手外科医にも学んでほしい内容である.外科医は診断にとどまらず治療も行う医師である.その点では治療後にも責任を負わなければならない.外科医にとっての主たる治療手段は手術であり,体にメスを加えることを生業としている.理想的な手術は患者さんが元気な時の状態に戻すことだと思うが,固形がんの手術では殊更難しい.臓器損失に伴う症状や,手術によって起こりうる様々な症状など,患者さんはがんが根治した後でもそれらと直面しなければならない.特に早期がんの段階で発見された方の多くは無症状であるが,がん根治術を受けたあとに有症状になってしまうのである.本特集はそれらをいかに回避するか,あるいは軽減するかの創意工夫が満載である.外科医,特に若手の皆さんには,ぜひ手術を担当する前に本特集を熟読していただきたいし,周囲の仲間にも薦めていただきたい.それくらいの価値,意義あるものと思う.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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