icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

臨床外科76巻12号

2021年11月発行

雑誌目次

特集 ストーマ・ハンドブック—外科医に必要な知識と手術手技のすべて

ページ範囲:P.1319 - P.1319

 近年,ストーマ保有者は増加し続け,多くの外科医にとって,ストーマ造設やストーマ管理に携わる機会が増えている.ストーマ造設は外科医の基本手技であり,若手外科医が担当する手術手技の代表格でもある.
 一方で,ストーマは種類や造設法など多岐にわたり,質の悪いストーマは患者のQOLを著しく下げる要因となるため,外科医はストーマ造設に関する正しい知識と技術を兼ね備えている必要があるが,これらを学ぶ機会はそう多くはない.ストーマ造設を要する患者の状態はさまざまであり,ストーマ関連の合併症も多彩で,一筋縄ではいかない症例も多く経験する.これら合併症の対処法や周術期ケアの知識も極めて重要である.

ストーマの分類と適応

著者: 幸田圭史 ,   小杉千弘 ,   碓井彰大 ,   村上崇 ,   野島広之 ,   首藤潔彦 ,   山崎将人 ,   清水宏明

ページ範囲:P.1320 - P.1324

【ポイント】
◆消化管ストーマの分類,および各ストーマ造設の適応疾患について記載した.
◆単孔式ストーマは永久ストーマとなることが多く,管理のしやすいストーマ造設が求められる.
◆結腸双孔式ストーマは造設の難易度が高く,よい形状のストーマ造設には経験と工夫が必要である.

術前ケアとストーマサイトマーキング

著者: 金光美由起 ,   北澤和香奈

ページ範囲:P.1325 - P.1328

【ポイント】
◆患者や家族がストーマを受容し社会復帰するために,ストーマ造設術における術前ケアは重要である.
◆ストーマサイトマーキングを行うことは,合併症を予防し,セルフケアを容易にする.
◆よりよいストーマ造設に向けて,ストーマ造設後のマーキングに対する評価は大変有用である.

炎症性腸疾患におけるストーマ造設と合併症

著者: 板橋道朗 ,   谷公孝 ,   小川真平

ページ範囲:P.1329 - P.1335

【ポイント】
◆炎症性腸疾患患者のQOLを保つため,ストーマ造設とその後の適切な合併症の管理がきわめて重要である.
◆潰瘍性大腸炎の術後ではstoma outlet obstruction,壊疽性膿皮症や粘膜皮膚離開などのストーマ合併症に注意する.
◆クローン病の難治性肛門病変にストーマ造設は有効であるが,ストーマ周囲膿瘍や瘻孔,空置された直腸からの癌化に注意が必要である.

イレオストミー造設—開腹手術・腹腔鏡下手術

著者: 天野隆皓 ,   山口智弘 ,   野村亮介 ,   根本鉄太郎 ,   向井俊貴 ,   日吉幸晴 ,   長嵜寿矢 ,   秋吉高志 ,   福長洋介

ページ範囲:P.1336 - P.1344

【ポイント】
◆イレオストミーは,腸間膜に捻れが起きないような向きに造設し,口側小腸は高さ2cmとする.
◆ストーマ出口腸閉塞の予防のため,腹腔鏡下手術では気腹を行わない状態で腹直筋鞘を広めに切開する.
◆ストーマ出口腸閉塞が発生した場合,ストーマよりチューブを挿入し減圧する.
*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画を見ることができます(公開期間:2024年11月末まで)。

コロストミー(単孔式)造設—開腹手術と腹腔鏡下手術

著者: 長嶋康雄 ,   船橋公彦 ,   鏡哲 ,   金子奉暁 ,   牛込充則 ,   三浦康之 ,   吉田公彦

ページ範囲:P.1346 - P.1352

【ポイント】
◆良いストーマとは,ストーマ保有者(オストメイト)にとって管理しやすいストーマであり,造設時にはストーマの位置,高さ,形状が重要なポイントになる.
◆術前ストーマサイトマーキングは,ストーマ造設のfirst stepであり,待機的手術だけでなく緊急手術時にも実施を心がける.
◆単孔式ストーマは,双孔式ストーマに比べてストーマに関連した合併症の発生が少なく,管理しやすいストーマである.
◆腹膜外経路で造設されたストーマでは,傍ストーマヘルニアの発生が少なく,永久的ストーマでは第一選択となる.
◆ストーマ開口は,緊急手術でストーマに浮腫が強いときには二次開口とする場合もあるが,原則は一次開口とする.
*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画を見ることができます(公開期間:2024年11月末まで)。

開腹手術によるコロストミー(双孔式)造設術—特に悪性疾患における切除不能状態(原発,再発)症例について

著者: 小森康司 ,   木下敬史 ,   佐藤雄介 ,   大内晶 ,   伊藤誠二 ,   安部哲也 ,   三澤一成 ,   伊藤友一 ,   夏目誠治 ,   檜垣栄治 ,   奥野正隆 ,   藤枝裕倫 ,   川勝章司 ,   國友愛奈 ,   沖哲 ,   末永泰人 ,   前田真吾 ,   長尾拓哉 ,   有竹典 ,   多和田翔 ,   赤座賢 ,   清水泰博

ページ範囲:P.1354 - P.1364

【ポイント】
◆開腹手術におけるコロストミー(双孔式)造設は,腹部手術歴がある症例が多く,癒着剝離などが必要である.
◆コロストミー(双孔式)の高さは皮膚面から約2cm必要であり,「真皮→腸管(結腸)全層→結腸漿膜」の順に腸管を反転させながら(粘膜面を露出させながら),4-0PDS糸で埋没固定する.
◆肛門側は粘液廔になるが,皮膚面と同じ高さであると粘液が皮下に侵入してしまい,人工肛門周囲皮膚炎を起こすことがある.皮膚面よりは高い位置で造設すべきである.
*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画を見ることができます(公開期間:2024年11月末まで)。

コロストミー(双孔式)造設—腹腔鏡下手術

著者: 増田大機 ,   絹笠祐介

ページ範囲:P.1365 - P.1370

【ポイント】
◆結腸ストーマは固定されていない横行結腸かS状結腸で造設されることが多い.
◆後に行われる術式を理解したうえで,ストーマを造設することが重要である.
◆必要に応じて腸管の授動を行うが,緊急手術で授動に時間を要するときは,回腸ストーマ造設への術式変更も考慮する.

ウロストミー造設

著者: 舟橋康人

ページ範囲:P.1372 - P.1376

【ポイント】
◆尿管は血流を維持するよう愛護的に剝離する.
◆尿管を吻合する前に,導管内をよく洗浄する.
◆尿管を導管に吻合したあと,導管が腸管の後面に位置するようにする.
◆突出したストーマを作成することで,セルフケアが容易になる.
◆よくみられる合併症として下部尿管狭窄,尿路感染症に注意する.

ストーマ関連合併症の診断と非外科的対処法

著者: 幡野哲 ,   石田秀行

ページ範囲:P.1377 - P.1380

【ポイント】
◆ストーマ関連合併症には早期合併症と晩期合併症がある.
◆合併症の発生は,患者のQOLに直結するため対処法を熟知しておく.
◆医師だけで判断するのではなく,WOCナースを含めたメディカルスタッフとともに対応する.

ストーマ脱に対する手術

著者: 合志健一 ,   吉田武史 ,   藤田文彦 ,   赤木由人

ページ範囲:P.1381 - P.1385

【ポイント】
◆ストーマ脱に対する手術は,その病態生理や患者因子に応じて適切な術式を選択する必要がある.
◆ストーマ閉鎖が可能な状況であれば,ストーマ閉鎖を行うのが最良である.
◆従来法以外に低侵襲な局所手術や自動縫合器を用いた術式がある.
*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画を見ることができます(公開期間:2024年11月末まで)。

傍ストーマヘルニアに対する手術

著者: 西居孝文 ,   前田清 ,   青松直撥 ,   日月亜紀子

ページ範囲:P.1386 - P.1392

【ポイント】
◆傍ストーマヘルニアは症状の増悪やストーマ管理が困難なため,手術が必要になることがある.
◆メッシュを用いた腹腔鏡下手術は確実な補強が可能で,再発率は低く,一番に推奨されるものである.
◆本邦で使用可能なメッシュには制限があり,再発率低下には手術中の創意工夫が必要である.

その他のストーマ関連合併症に対する外科的治療

著者: 野澤慶次郎 ,   浅古謙太郎 ,   大野航平 ,   福島慶久 ,   島田竜 ,   金子健介 ,   端山軍 ,   松田圭二 ,   橋口陽二郎

ページ範囲:P.1393 - P.1398

【ポイント】
◆ストーマ関連合併症は,排泄ストーマが日常生活に支障をきたす状態の合併症である.
◆保存的加療にて改善が期待できない合併症に対しては,手術療法を考慮する.
◆ストーマ狭窄,ストーマ周囲腫瘍,ストーマ壊死,粘膜皮膚移植,ストーマ皮膚離開,ストーマ出血,便排出障害,大ストーマは手術を考慮する.

ストーマ保有者の日常生活指導

著者: 森岡直子

ページ範囲:P.1399 - P.1403

【ポイント】
◆ストーマ保有者は,食事による排泄物への影響を考慮するが,摂取するものに制限はない.
◆災害への備えと居住地の情報収集は重要である.
◆ストーマから排出される「音」は臭いよりコントロールが難しい.

ストーマ閉鎖

著者: 菅野宏 ,   塚本俊輔 ,   森谷弘乃介 ,   井上学 ,   髙見澤康之 ,   今泉潤 ,   金光幸秀

ページ範囲:P.1404 - P.1410

【ポイント】
◆肛門温存手術の増加により,近年はストーマを閉鎖する機会が増えている.
◆ストーマ閉鎖術は,癒着のなかでの手術操作が要求されるため,正確な剝離操作を行うことが必須となる.
◆症例によって造設部位,腹腔内環境,癒着の程度が異なり,前回の手術録を熟読しておくことが重要である.
*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画を見ることができます(公開期間:2024年11月末まで)。

FOCUS

肝内胆管癌診療ガイドラインの概要

著者: 大塚将之 ,   古川勝規 ,   高屋敷吏 ,   久保木知 ,   高野重紹 ,   鈴木大亮 ,   酒井望 ,   細川勇 ,   三島敬 ,   小西孝宣 ,   西野仁惠

ページ範囲:P.1411 - P.1414

はじめに
 肝内胆管癌は歴史的に原発性肝癌に分類されているが,2005年に初めて発刊され,現在第4版まで版を重ねている肝癌診療ガイドラインは肝細胞癌のみを対象としている1).一方,肝内胆管癌は“胆道から発生する癌”という意味では胆道癌とも考えられるが,2007年に初めて発刊された胆道癌診療ガイドラインでは肝門部領域胆管癌から下流の十二指腸乳頭部癌までを対象としてきた2).したがって,今まで肝内胆管癌を扱ったガイドラインは存在していなかった.しかし,肝内胆管癌は発生頻度が低いわりに多彩な臨床像をとることが知られ,日常診療において遭遇した場合,その扱いに悩む場面も少なくなく,診療における,ある程度の道筋と情報提供を意図した診療ガイドラインの整備は重要な課題の一つであったと考えられる.
 そのような背景のもと,日本肝癌研究会が中心となり,久保正二先生(大阪市立大)を委員長とした肝内胆管癌診療ガイドライン作成委員会のもと,2020年12月に肝内胆管癌診療ガイドラインが上梓された3).本稿では,その概要について解説する.

消化器外科領域におけるdiversityの展望—日本消化器外科学会の取り組み

著者: 調憲 ,   野村幸世 ,   北川雄光

ページ範囲:P.1415 - P.1419

はじめに
 世界経済フォーラムが発表するGlobal Gender Gap Report 2021年版による日本の男女格差指数は156か国中120位で,わが国の女性の社会進出は進んでいない.男女格差指数は経済,教育,健康,政治の4分野における男女格差を国ごとに調査し,4分野のスコアの平均値が総合スコア(男女格差指数)となる.日本は特に経済や政治分野での評価が低く,意思決定の場に女性が少ないことが順位を下げる大きな要因となっている.日本のあらゆる分野でジェンダー平等を進めることが喫緊の課題であると考えられている.
 様々な医学系の学会でもdiversity支援の活動は行われてきたが,日本消化器外科学会の男女共同参画ワーキング・グループ(男女共同参画WG)は2021年9月に東京大学 野村幸世先生を委員長として設立され,私は担当理事を拝命した.したがって,本WGの活動は開始されたばかりではあるものの,北川雄光理事長を始めとした役員・会員の理解と協力により男女共同参画を強力に推進しているところである.日本消化器外科学会の女性会員の状況や今後の展望,個人的な思いを含めて報告したい.

坂の上のラパ肝・胆・膵・22

肝中央2区域切除術

著者: 大目祐介 ,   本田五郎

ページ範囲:P.1420 - P.1430

Point
◆はじめに前区域Glisson茎を確保する.
◆前区域Glisson茎の左側で肝門板頭側面を露出し,連続して臍静脈板の右側面を露出しながら内側区域に流入するGlisson茎(G4)を順次切離する.
◆臍静脈板右側面と肝表の鎌状間膜付着部(あるいはdemarcation line)の間を切離し,最深部(肝門板と臍静脈板の境界の頭側)でArantius管腹側面を露出する.
◆肝門板・臍静脈板とArantius管,主肝静脈の下大静脈(IVC)流入部に囲まれた面を背側の離断面とする.
◆背側面を離断して中肝静脈(MHV)根部を露出したら,前区域Glisson茎根部を先に切離し,内側区域を腹側に持ち上げることでMHV根部を安全に確保する.
◆以降は,前区域切除術と同じ手技を用いる.

手術手技

腹腔鏡下再肝切除術に対するSILSを用いた工夫

著者: 門脇大輔 ,   門田一晃 ,   籠浦正彬 ,   日置勝義 ,   貞森裕 ,   高倉範尚

ページ範囲:P.1431 - P.1435

要旨
再肝切除症例は前回手術による癒着が問題となり,腹腔鏡下での手技に難渋することがある.筆者らは腹腔鏡下再肝切除術の際,3cmの小切開創からラッププロテクターTMミニミニおよびE・Zアクセスを装着後,単孔式腹腔鏡下手術(SILS)で癒着剝離を行う手法を行っている.さらに腫瘍の局在によっては心窩部に留置することで,目的病変まで最小限の癒着剝離でワーキングスペース確保が可能である.腹腔鏡下再肝切除術における単孔式腹腔鏡下癒着剝離の手技を報告する.

臨床報告

魚骨が原因と考えられたS状結腸膀胱瘻の1例

著者: 一宮佑輔 ,   西田洋児 ,   山本大輔 ,   﨑村祐介 ,   角谷慎一 ,   伴登宏行

ページ範囲:P.1436 - P.1440

要旨
症例は77歳,男性.血尿を主訴に当院泌尿器科を受診した.精査の結果,S状結腸膀胱瘻が疑われたため当科紹介となった.腹部CT検査ではS状結腸に多発する憩室と膀胱内にairを認め,膀胱鏡検査で食物残渣と考えられる異物を認めた.S状結腸膀胱瘻と診断し,腹腔鏡下直腸前方切除術を施行した.手術所見ではS状結腸憩室から15mmの魚骨が膀胱壁に迷入,貫通していた.この魚骨が原因でS状結腸膀胱瘻を生じたと考えられた.魚骨先端が消化管壁を穿通し膀胱壁に刺入して腸管膀胱瘻に至ることはきわめて稀である.魚骨を原因とするS状結腸膀胱瘻に対し腹腔鏡下手術を施行し,良好な結果を得た1例を経験したため報告する.

私の工夫

腹腔鏡下胆囊摘出術における帯状ガーゼ巻き付け牽引展開法

著者: 高木剛 ,   小林博喜 ,   平島相治 ,   福本兼久

ページ範囲:P.1441 - P.1443

はじめに
 腹腔鏡手術を遂行するうえで,視野展開が不十分なことが原因で合併症を惹起させることは回避しなければならない.腹腔鏡下胆囊摘出術において,炎症や結石などの状態により胆囊を鉗子で把持することが困難な場合がある.胆囊腫大や壁肥厚による把持牽引が困難な症例に対して,胆囊穿刺吸引により減圧させることで把持を可能にする方法以外に,われわれは,帯状ガーゼを胆囊に巻き付け牽引することで視野を確保する工夫を行っているので紹介する.

病院めぐり

岡山済生会総合病院外科

著者: 仁熊健文

ページ範囲:P.1444 - P.1444

 岡山済生会総合病院は岡山駅の西口(運動公園口)から徒歩9分の場所に位置し,標榜35診療科,医師数165人(常勤換算),473床の総合病院です.臨床研修指定病院として,初期臨床研修医25人が研修しています.
 済生会は明治44年(1911)2月11日,明治天皇が医療を受けることができないで困っている人たちに,施薬救療の途を講ずるようにというご趣旨の済生勅語と,その基金を下賜され発足しました.1934年済生会岡山診療所として,診療を開始したのが当院の起源とされ,今年で83年の歴史があります.以前は新館病棟と旧館病棟を空中通路でつなぐ建物でしたが,旧館が災害拠点病院としての耐震構造に問題があり,国道を挟んだ近隣地に2016年1月に新病院を建築しました.新病院は入院・救急診療部門とし,元の病院は改修して岡山済生会外来センター病院として,各科外来,外来透析センター,日帰り手術センターおよび80床の地域包括ケア病棟として運用しています.入院と外来を分離した全国でも稀なユニークな病院となっています.

書評

—坂本穆彦,北川昌伸,菅野 純(著)—組織病理カラーアトラス[Web付録付]第3版

著者: 泉美貴

ページ範囲:P.1345 - P.1345

第3版を出(しゅっ)来(たい)するとは
 今日のような,本が売れない,教科書が売れない時代にあって,『組織病理カラーアトラス』が第3版を出来するに至ったことは,大変な慶賀である.評者自身は15年前に上梓した著書の第2版を最近ようやく出来したばかりであり,これがどれほど凄いことかを実感するとともに,羨望と尊敬の念が交錯するのである.

—明智龍男,杉浦健之(編著)—こころとからだにチームでのぞむ—慢性疼痛ケースブック

著者: 矢吹省司

ページ範囲:P.1353 - P.1353

 本書は,慢性疼痛患者を診療する医療者が参考にできる事例集が中心となっている.8章から成っており,1章:慢性痛を知る,2章:慢性痛をどう評価するか,3章:慢性痛の臨床—エビデンスの治療と原則,そして4〜8章:ケースブック,という構成である.
 まず,慢性痛を理解し,どのように評価し,そしてどのような治療があるのかを1〜3章で知ることができる.これらの章の各項目には,「Point」があり,その項目のまとめが記載されている.そこを読んでいくだけでも内容をある程度理解できるようになっている.そして4章:ICD-11分類に基づく慢性痛,5章:精神疾患と併発する慢性痛,6章:ライフステージと慢性痛,7章:臨床で気を付けたい慢性痛,および8章:慢性痛診療のアプローチで,具体的に事例を挙げて病態の評価の結果とそれをもとにどのような治療方針を立てるかについて記載されている.共通していることは,(1)いち医師だけでの評価や治療では限界がある,(2)多くの専門家がそれぞれの視点で評価し,それをカンファレンスでディスカッションすることで的確な治療方針が見えてくる,そして(3)多面的に治療することで複雑な慢性痛であっても改善(痛みの程度そのものに変化がなくてもADLやQOLは改善)できる可能性がある,ということである.

—吉永繁高(著)—百症例式 早期胃癌・早期食道癌 内視鏡拾い上げ徹底トレーニング

著者: 市原真

ページ範囲:P.1371 - P.1371

 「コンセプトは1,000本ノックですが,さすがに1,000症例用意するのは大変ですし,紙面も足りませんので100本ノックでご容赦いただけましたら幸いです.」(「序」より)
 笑ってしまった.そうか,なるほど,本書はノックなのか.どれどれ.

--------------------

目次

ページ範囲:P.1316 - P.1317

原稿募集 「臨床外科」交見室

ページ範囲:P.1443 - P.1443

バックナンバーのご案内

ページ範囲:P.1448 - P.1448

あとがき

著者: 絹笠祐介

ページ範囲:P.1450 - P.1450

 今回の特集はストーマについてでした.ストーマ造設も主治医によってまちまちで,技量の差が如実に現れ,かつ患者のQOLに大きく反映します.
 最近学生から,「手術がうまくなるのに必要なことは?」「今から何をしておけばよいか?」という質問をよく受けます.この学生はきっと将来外科医になることを考えているのかな?と思える嬉しくなる質問です.真面目な先生なら,「ドライボックスで練習する」や「良い手術を見ておくこと」なんて答えるのでしょうが,私は笑って「今のうちは色々な人と出会って,飲みに行きなさい」と答えています.コロナ禍に何言っているんだ,不真面目な教授だな,と思われているに違いありません.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

78巻13号(2023年12月発行)

特集 ハイボリュームセンターのオペ記事《消化管癌編》

78巻12号(2023年11月発行)

特集 胃癌に対するconversion surgery—Stage Ⅳでも治したい!

78巻11号(2023年10月発行)

増刊号 —消化器・一般外科—研修医・専攻医サバイバルブック—術者として経験すべき手技のすべて

78巻10号(2023年10月発行)

特集 肝胆膵外科 高度技能専門医をめざせ!

78巻9号(2023年9月発行)

特集 見てわかる! 下部消化管手術における最適な剝離層

78巻8号(2023年8月発行)

特集 ロボット手術新時代!—極めよう食道癌・胃癌・大腸癌手術

78巻7号(2023年7月発行)

特集 術後急変!—予知・早期発見のベストプラクティス

78巻6号(2023年6月発行)

特集 消化管手術での“困難例”対処法—こんなとき,どうする?

78巻5号(2023年5月発行)

特集 術後QOLを重視した胃癌手術と再建法

78巻4号(2023年4月発行)

総特集 腹壁ヘルニア修復術の新潮流—瘢痕ヘルニア・臍ヘルニア・白線ヘルニア

78巻3号(2023年3月発行)

特集 進化する肝臓外科—高難度腹腔鏡下手術からロボット支援下手術の導入まで

78巻2号(2023年2月発行)

特集 最新医療機器・材料を使いこなす

78巻1号(2023年1月発行)

特集 外科医が知っておくべき! 免疫チェックポイント阻害薬

icon up
あなたは医療従事者ですか?