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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科77巻1号

2022年01月発行

雑誌目次

特集 外科医が知っておくべき—《最新版》栄養療法

ページ範囲:P.5 - P.5

 「臨床外科」誌が前回栄養療法を特集してから10年が経つ.この間,新たな製品が世に出ており,かつサルコペニアなど,栄養が外科手術に及ぼす影響のエビデンスも蓄積されてきている.また,超高齢社会を迎え,単なる栄養介入だけではなく,嚥下力低下など患者側要因による栄養障害も注目されてきている.外科周術期では,それらの患者状態をしっかり把握し,かつ診療に活かすことが求められている.

総説

栄養療法—最近の動向

著者: 深柄和彦

ページ範囲:P.6 - P.10

【ポイント】
◆栄養不良・サルコペニアは術後合併症の発生率を高め,がん化学療法の遂行を妨げるので,適切な栄養療法が必要である
◆ERAS®等で推奨される術後早期経口摂取再開は,腸管利用による生体反応改善効果も期待でき,早期回復・合併症予防に有効である.
◆しかし,特に消化器手術では術後の経口摂取量が不十分な場合も多いため,栄養投与量をモニタリングして,適宜,静脈栄養などの補充投与も検討する.
◆「免疫調整効果を有する特殊栄養素を強化した栄養剤の周術期投与がSSI予防に有効」とWHOのガイドラインでも示されたが,適応症例・栄養剤の選択にはいまだ不明確な点が多い.

総論

ERASプロトコルに基づいた栄養管理

著者: 小澤洋平 ,   谷山裕亮 ,   佐藤千晃 ,   岡本宏史 ,   福富俊明 ,   小関健 ,   安藤涼平 ,   高橋梢 ,   海野倫明 ,   亀井尚

ページ範囲:P.12 - P.16

【ポイント】
◆ERASの目的は術後回復のスピードを速めることではなく,回復の質を高めることである.
◆術前,術中,術後の各フェーズにおいて適切な栄養管理を行うことが重要である.
◆患者の術前栄養状態には個人差があること,手術侵襲は疾患によって異なることに留意する.

サルコペニアと外科手術

著者: 海道利実

ページ範囲:P.18 - P.23

【ポイント】
◆超高齢社会を迎え,一次性サルコペニアと二次性サルコペニアを伴う外科手術患者が増加している.
◆消化器癌患者においては,術前サルコペニアは予後不良因子であるため,暦年齢より肉体年齢が重要である.
◆術前体組成・栄養評価に基づく周術期リハビリテーション・栄養介入により,外科手術成績向上が期待される.

嚥下障害と外科手術

著者: 上羽瑠美

ページ範囲:P.24 - P.29

【ポイント】
◆外科手術前から口腔環境や栄養状態,嚥下機能を評価し,術後の嚥下障害や誤嚥性肺炎を予防するための対策を術前より講じる.
◆食道再建手術や膵頭十二指腸切除術で,術後に嚥下障害をきたしやすく,比較的早期に声帯運動を含めた嚥下機能評価を行うべきである.
◆嚥下運動にかかわる臓器や支配神経(延髄,口腔,咽頭,喉頭,食道,反回神経など)を含む外科手術においては,術後の嚥下障害を予測した治療計画を立てたほうがよい.

糖尿病と外科手術

著者: 谷岡信寿 ,   花﨑和弘

ページ範囲:P.30 - P.33

【ポイント】
◆糖尿病患者は近年増加傾向にあり,周術期の血糖管理を難しくしている.
◆周術期は厳密な血糖管理が望ましいものの,ガイドラインでは重症低血糖のリスク回避の観点から比較的緩やかな血糖管理が推奨されている.
◆人工膵臓療法は厳密な血糖管理,重症低血糖の回避,血糖変動の抑制を可能にする.さらに医療スタッフの労働負担軽減効果や詳細なデータ収集機能などの利点は,今後の周術期血糖管理の進展に寄与することが期待される.

製剤

TPN製剤のラインナップと特徴

著者: 小山諭 ,  

ページ範囲:P.34 - P.41

【ポイント】
◆TPN(中心静脈栄養)は生体の維持に必要な糖質,アミノ酸,脂質およびビタミン,ミネラル,微量元素のすべてを静脈内投与する栄養法である.
◆高カロリー輸液用キット製剤が開発・市販されているが,すべての栄養素を配合しているTPN製剤は存在しない.
◆キット製剤の使用は簡便であるが,内容・組成をよく理解し,個々の患者に必要かつ十分な栄養管理を行うことを心がける必要がある.

EN製剤のラインナップと特徴

著者: 鷲澤尚宏

ページ範囲:P.43 - P.49

【ポイント】
◆EN製剤は経口摂取と経管栄養の両者に使用できるが,それぞれの特性に合ったものを選択する必要がある.
◆中等度以上の侵襲を伴う手術の後は,比較的高蛋白のEN製剤を用い,抗酸化作用のある微量栄養素が欠乏しないように工夫する.
◆疾患別,病態別製剤を含め,多種多様のEN製剤が存在するが,各施設の必要性に応じて,また頻用する投与ルートに合わせた製剤を採用する.

各論

食道癌集学的治療における栄養療法

著者: 山﨑誠 ,   山本宣之 ,   菱川秀彦 ,   向出裕美 ,   井上健太郎

ページ範囲:P.51 - P.56

【ポイント】
◆術前化学療法中の経消化管的栄養は化学療法に伴う骨髄抑制や粘膜障害などの有害事象を軽減させる.
◆術前化学療法中の栄養療法において,シンバイオティクスは有害事象を軽減させる.
◆術後早期の蛋白強化投与により,術後の筋肉量の低下を軽減させる可能性がある.

胃外科における栄養療法

著者: 新原正大 ,   櫻谷美貴子 ,   比企直樹

ページ範囲:P.57 - P.60

【ポイント】
◆治療前における病態の把握と栄養管理のプロセス.
◆ERASの概念の理解に基づく術後の栄養療法.
◆術後補助化学療法を施行する症例も含めて,退院後の継続した栄養療法.

小腸・大腸外科(IBDなど)における栄養療法

著者: 松田圭二 ,   橋口陽二郎 ,   宮田敏弥 ,   浅古謙太郎 ,   福島慶久 ,   大野航平 ,   島田竜 ,   金子建介 ,   端山軍 ,   野澤慶次郎

ページ範囲:P.61 - P.65

【ポイント】
◆入院を要する潰瘍性大腸炎は広範囲に粘膜障害があり,蛋白漏出が生じて急速に栄養障害が進行することに留意する.
◆クローン病治療では軽症,中等症,重症,寛解維持,術後再発予防と,あらゆる場面において栄養療法が重要な治療である.
◆経腸栄養は,成分栄養剤に固執せず,消化態栄養剤,半消化態栄養剤も取り入れて行う.

肝臓外科における栄養療法

著者: 山田大作 ,   小林省吾 ,   佐々木一樹 ,   岩上佳史 ,   富丸慶人 ,   野田剛広 ,   高橋秀典 ,   土岐祐一郎 ,   江口英利

ページ範囲:P.66 - P.69

【ポイント】
◆肝切除は背景肝が肝障害であることが多く,肝臓容積の回復に有利な環境を整え,損なわれた肝機能による影響を最小限とする栄養管理が要求される.
◆周術期の絶食期間は患者の肝疾患に合わせた工夫が有用である.
◆周術期BCAAやprobiotics投与は肝再生を促し,周術期感染症を減らして,周術期に有利に働くことが期待される.

膵臓外科における栄養療法

著者: 松本逸平 ,   亀井敬子 ,   登千穂子 ,   吉田雄太 ,   川口晃平 ,   李東河 ,   松本正孝 ,   村瀬貴昭 ,   里井俊平 ,   武部敦志 ,   中居卓也 ,   竹山宜典

ページ範囲:P.70 - P.76

【ポイント】
◆栄養療法の基本は,十分なカロリー摂取のもと,適切な膵内外分泌機能評価に基づいたインスリン療法と膵酵素補充療法である.
◆膵外分泌機能不全は症状・問診,栄養指標,画像所見で臨床診断を行うことが重要である.
◆膵頭部癌では術前から,また膵頭十二指腸切除後は膵酵素補充療法を考慮する.
◆栄養療法の実践には外科医,糖尿病内科医,管理栄養士を含めたチーム医療と患者教育が重要である.

がん悪液質—その本質と対策

著者: 吉川貴己 ,   林勉

ページ範囲:P.77 - P.81

【ポイント】
◆がん悪液質は,サイトカインやペプチドにより惹起される代謝異常であり,筋肉量減少/体重減少を特徴とする.
◆がん悪液質は,通常の栄養療法では改善しない.
◆アナモレリンは,「がん悪液質」に対する治療薬であり,筋肉量/体重を増加させる.

FOCUS

光免疫療法とは何か—治療の概要と今後の展望

著者: 鈴木俊亮

ページ範囲:P.82 - P.87

はじめに
 近年,がん治療における免疫療法は,新たな治療法として従来の治療法とは異なる仕組みで有効性が示され,非常に注目されている.
 現在,弊社楽天メディカル社が取り組んでいる「光免疫療法」は“薬剤の投与“と“特定の波長の光照射”を組み合わせた新たな局所療法である.本稿では,弊社の歩み,本治療の概要,さらに現在の臨床試験の状況について述べる(なお,意見にわたる部分については,筆者の個人見解であり,筆者が所属する法人の見解ではないことをあらかじめ申し添えておく).

How to start up 縦隔鏡下食道亜全摘・1【新連載】

準備編:機材,配置,デバイス,頸部解剖

著者: 森和彦 ,   瀬戸泰之

ページ範囲:P.88 - P.93

連載を始めるにあたり
 縦隔鏡下食道悪性腫瘍手術が本邦の保険術式となり,2022年1月の時点で4年弱ということになる.さらに遡る2011年11月,筆者らは東京大学医学部附属病院における自主臨床試験として,非開胸食道癌手術の経裂孔縦隔操作にdaVinci Surgical System Sを導入した.同術式において腹部から届かない上縦隔には頸部アプローチを適用し,気管分岐部までのリンパ節郭清と食道授動を鏡視下に達成するための工夫を進めたのが,筆者らの頸部縦隔鏡食道手術である.いうなれば,da Vinciが主人公の自主臨床試験の副産物である.
 術者と前立ちにしか術野が見えなかった開胸での食道手術において,若手外科医に前立ちや執刀の機会を与えたのは鏡視下手術であるというのは,いまさら述べることではない.しかし,縦隔鏡下食道亜全摘は「見える化」という点で胸腔鏡手術を凌駕するといっても過言ではない.縦隔鏡では視線の方向が食道周囲を取り巻く筋膜の平面構造に沿っているため,切除側と温存側の境界の認識が得やすく,またデバイスの操作軸が常に剝離方向と平行になるので,手技的な障壁は存外に低い.空間的な制限から3ポートでの手術が基本となり自由度がない分,手術手技が定型化しやすいということもできる.

手術器具・手術材料—私のこだわり・1【新連載】

腹腔鏡下/ロボット支援下直腸切除時のガーゼ—2種類のガーゼの使い分け

著者: 絹笠祐介

ページ範囲:P.94 - P.96

 腹腔鏡下/ロボット支援下直腸切除時,ガーゼに求めるものは,①除湿,②止血,③小腸の圧排,④直腸の牽引,⑤直腸の圧排である.これら手術の重要な役割を担うガーゼに関しては,その長さ,幅,厚さや色など,いずれも重要で,どのメーカーのガーゼでも良いというわけではない.出張手術の際には,鉗子にこだわりはあまりなく,むしろ後述のガーゼを持参することが多い.腹腔鏡下/ロボット支援下直腸切除の際に,こだわりの2つのガーゼを使い分けている.

病院めぐり

鶴岡市立荘内病院外科

著者: 鈴木聡

ページ範囲:P.97 - P.97

 当院は山形県の日本海側,庄内地方南域にあり,北は秋田県境の鳥海山,東は霊峰月山をはじめとする修験道の聖地・出羽三山に囲まれた米どころ庄内平野に位置する地域中核病院です.診療対象人口が約15万人で,26診療科,521床からなり,主に急性期医療を担っています.
 当院の特色は,まずは,庄内二次医療圏唯一の地域周産期母子医療センターに指定され,NICUなど小児・新生児医療に力を入れていることです.また,救急搬送患者数は県内で2番目に多く,二次医療圏最多の救急患者を受け入れていること,県の地域がん診療指定病院としてがんの専門的医療を行っていることなどです.2008年の厚労省の戦略研究「緩和ケア普及のための地域プロジェクト(OPTIM)」の地域のリーダー病院として,地域緩和ケアの普及に努めました.最近では「漢方内科」を開設し,県内では山形大学に次ぐ2番目の漢方診療教育施設に認定されました.外科系,内科系を問わず,時代や地域住民のニーズに的確に応え,地域に根差した医療を提供することを病院のモットーにしています.

臨床報告

急性虫垂炎の保存的治療後に根治術を行ったAmyand's herniaの1例

著者: 田中健太 ,   山村和生 ,   山本希誉仁 ,   大谷聡 ,   佐賀信介 ,   安藤修久

ページ範囲:P.99 - P.104

要旨
症例は79歳,男性.心窩部痛を主訴に当院を受診した.右鼠径部に腫脹と圧痛を認めた.血液検査では軽度の炎症反応上昇を認め,画像検査にて右鼠径管内に脱出する腫大した虫垂を認めた.急性虫垂炎を併発したAmyand's herniaと診断した.嵌頓による血流障害の所見はなく,急性虫垂炎に対して保存的加療を行った後にヘルニア根治術を行った.ヘルニア内容は軽度炎症を伴った虫垂であり,虫垂切除を行った後,Kugel法にて修復した.ヘルニア内容が虫垂である鼠径ヘルニアは稀であり,Amyand's herniaと呼ばれている.ヘルニア嵌頓を疑われ緊急手術が施行された報告は多いが,急性虫垂炎軽快後に待機的手術を施行した報告は少ない.若干の文献的考察を含めて報告する.

腹腔鏡下腹会陰式直腸切断術後に発症した会陰ヘルニアの1例

著者: 篠塚高宏 ,   村井俊文 ,   平山泰地 ,   高島幹展 ,   斎藤悠文 ,   田中健士郎

ページ範囲:P.107 - P.112

要旨
会陰ヘルニアは腹会陰式直腸切断術後に認める比較的稀な合併症である.会陰ヘルニアの予防方法や治療術式の報告は散見されるが,定まった見解はない.今回われわれは,腹腔鏡下直腸切断術後に発症した会陰ヘルニアの1例を経験したので,その予防方法や治療術式の文献的考察を含めて報告する.症例は76歳男性で,直腸癌に対して腹腔鏡下腹会陰式直腸切断術後10か月後に,会陰部の腫脹を主訴に来院した.CT検査にて小腸の会陰部への伸長を認め,会陰ヘルニアと診断した.開腹手術所見では,ヘルニア囊への小腸の癒着は認めず,SymbotexTM composite meshを用い,新たな骨盤底を作成した.術後3年経過し,会陰ヘルニアの再発は認めていない.

腎細胞癌術後24年を経て膵転移をきたした1例

著者: 堂本優 ,   山田圭一 ,   佐野直樹 ,   植田貴徳 ,   下村治 ,   小田竜也

ページ範囲:P.115 - P.120

要旨
症例は66歳女性.1994年,左腎細胞癌に対して左腎摘出術の既往がある.2018年2月,CT検査で膵尾部に多血性腫瘍を認め,膵神経内分泌腫瘍もしくは腎細胞癌膵転移疑いの診断で,2018年4月,膵体尾部切除術を施行.病理組織学的評価で腎細胞癌の膵転移と診断された.腎細胞癌は全体の約2.8%に膵転移を起こすことが知られているが,本症例のように24年という長期間を経て転移を示す報告は比較的稀だと考えられた.本邦で報告された腎細胞癌膵転移の223症例では,207例(93%)が術後20年までに再発し,21年以上経って膵転移をきたしたのは全体の7%であった.腎細胞癌の膵転移は本症例のように,長期間を経て他臓器に転移する可能性を念頭においた経過観察が必要と考えられた.

書評

—中村好一(著)—基礎から学ぶ楽しい学会発表・論文執筆 第2版

著者: 佐伯圭吾

ページ範囲:P.11 - P.11

 本書は主に,保健活動に従事するコメディカルスタッフや学生を含む初学者が,日本語での学会・論文発表をめざす際の指南書として書かれたもので,疫学書では最も人気がある中村好一氏による『基礎から学ぶ 楽しい疫学』の姉妹書である.
 これから研究を始める人が,最初に読む本としてお薦めしたい.「なぜ研究を行うか」「研究指導者をどのように求めるか」から始まって,研究の実施,分析,学会発表,論文執筆,投稿,査読の過程に区分され,それぞれのステップをどのように考え,どのように進めていくかが,ありありと目に浮かぶように書かれている.読者は,各ステップを思い浮かべて読み進めていくうちに,研究プロセスを俯瞰することができ,高く感じていたハードルが,いつの間にか取り組むべき具体的な課題に変わっていることに気付くのではないだろうか.

—山本健人(編著)—レジデントのための専門科コンサルテーション—マイナーエマージェンシーに強くなる

著者: 倉原優

ページ範囲:P.50 - P.50

 若手医師に限った話ではないが,臨床医を続ける以上「専門科にコンサルトすること」と「患者に病状説明すること」は避けて通れない.その技術は,一朝一夕で身につくものではなく,他の医療従事者や多くの患者と真っ向からぶつかり合い,削られ,磨かれ,叩かれ,鉄は強くなる.不幸にも,コンサルトや病状説明が不得手な指導医のもとで育ってしまうと,自身も苦手意識を持ってしまい,後輩にノウハウと伝えられないという負の循環が生まれかねない.うまく叩かれなければ,鉄はただの鉄のままだ.
 医師が独り立ちするころ,コンサルトや病状説明に関して,誰しも己の能力不足を痛感するだろう.この書籍を読んだときに,「放射線科」「麻酔科」「病理診断科」が入ってくるとは予想していなかった.ともすれば「doctor's doctor」と呼ばれるこれらの診療科は,依頼さえすれば,あとはどうにかやってくれると誤解されがちな診療科でもある.とりわけ電子カルテが台頭している現代,以前のように顔を突き合わせて議論百出されることが減っているように思う.臨床情報がなくしては議論すらできないし,著者が書かれているように,じかに顔を見て話さないとわからない部分はあると思う.これは自分への戒めでもある.

—辻 哲也(編著)—がんのリハビリテーションマニュアル 第2版—周術期から緩和ケアまで

著者: 田村和夫

ページ範囲:P.105 - P.105

 2021年9月,本書が発刊された.初版から10年がたち,がん治療の進歩とともに,がんのリハビリテーション(以下,リハ)はエビデンスが蓄積され,標準化が進み改訂に至ったものである.がんに携わる全ての医療者が,がんリハ専門家の指導のもとでがんリハを実践できるように記載された本書をぜひ推薦したい.
 評者は半世紀にわたり化学療法の創成期から現在のゲノム医療まで共に歩んだ腫瘍内科医である.当初,がんを治すことをめざし,徹底した治療を行っていた.ある時,精巣腫瘍の高校生を診る機会があり,脱毛がいやで治療に消極的だった彼を説得しシスプラチン併用療法を開始した.悪心・嘔吐(CINV)が強く心身の疲弊から「もう,許してほしい」と懇願され,治療が完遂できなかった.その後,有効な制吐薬が開発されCINVは制御できるようになった.このような支持療法はがん対策推進基本計画の重要な施策の1つに掲げられているとはいえ,系統立った教育,研究,診療が不十分な領域である.

—坂本 壮,田中竜馬(編)—救急外来,ここだけの話

著者: 増井伸高

ページ範囲:P.113 - P.113

Controversyは159個
 救急外来はギモンでごった返している.
・「敗血症性AKIを併発している患者への造影CTは?」

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目次

ページ範囲:P.2 - P.3

原稿募集 「臨床外科」交見室

ページ範囲:P.112 - P.112

バックナンバーのご案内

ページ範囲:P.124 - P.124

次号予告

ページ範囲:P.125 - P.125

あとがき

著者: 瀬戸泰之

ページ範囲:P.126 - P.126

 本誌では久しぶりの「栄養療法」についての特集である.前回が2011年であったので,ほぼ10年ぶりとなる.前回のテーマは「栄養療法—最新の知見と新たな展開」であり,当時の最新の知見をまとめた内容であったはずである.前回の特集では取り上げておらず,今回の特集で新たに採用されたキーワードは,「サルコペニア」,「嚥下障害」,「がん悪液質」などである.10年しか経っていないにもかかわらず,キーワードから,この間の栄養療法に関する知見の深化が伺える.われわれ外科医はそれらについて深く知る必要があり,本特集はそれを教示する内容となっている.本誌を手にしている若手外科医も,ぜひサルコペニアをいかに診断し防ぐか,嚥下障害をいかに防ぐか,がん悪液質にも新たな治療展開が生まれていることなどを学んでほしい.「10年ひと昔」とはよく言ったものである,と感心している次第である.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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