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増刊号 術前画像の読み解きガイド—的確な術式選択と解剖把握のために Ⅳ 肝臓
腹腔鏡下肝後区域切除
著者: 齊藤亮1 伴大輔1 村瀬芳樹1 水井崇浩1 高本健史1 奈良聡1 江﨑稔1 島田和明1
所属機関: 1国立がん研究センター中央病院肝胆膵外科
ページ範囲:P.209 - P.216
文献購入ページに移動●肝後区域の定義
肝臓の解剖学的領域分類として,本邦ではHealy & Schroyの分類1)とCouinaudの分類2)が広く用いられている.Healy & Schroyは肝臓を右葉と左葉に分け,さらに左葉を外側区域と内側区域に,右葉を前区域と後区域に分類しており,この区域分類が一般に用いられている.一方,この後区域領域はCouinaudの分類ではSegment 6および7に相当する.高崎らは肝門部におけるグリソン一括処理の手技を念頭に,グリソン鞘の分岐形態に従い,肝を右区域,中区域,左区域の3区域に分類した3).それぞれ,Healey & Schroyの分類の後区域,前区域,左葉に相当する.また高崎らは,門脈3次分枝が支配する領域を区域(cone unit)と命名し,門脈2次分枝が支配する領域(section, sector)を区域の集合体として表現したことも,近年の新しい系統的肝切除のコンセプトに即しており有用である.
以上のように,肝後区域に相当する領域は諸家によりそれぞれ定義されているが,近年では後述のようにGlissonean approach4)を用いた阻血領域の切除,あるいはインドシアニングリーン(ICG)ガイド下切除が主流となりつつあることから,一般に「後区域切除」とは後区域グリソン(門脈)に支配される領域を切除する術式と考えられる.
●腹腔鏡下肝後区域切除
肝後区域は肝臓の最背側に位置し,広い面積をもって前区域と接しており,後区域切除では切除容積に比べ肝離断面積が広範囲となる.後区域切除においては十分な展開で良好な視野を確保し,適切な区域境界を維持した肝離断が重要であるが,腹腔鏡手術特有の視野に対応した体位や展開にコツを要する.仰臥位では,肝離断面は下大静脈より低位となり,相対的に静脈圧が高くなり,肝離断としては不利な場となる.そこで後述するように,十分な左側臥位をとるなど体位の工夫が行われる.また,下大静脈右縁剥離を含む肝右葉の広範囲の脱転操作も必要であり,腹腔鏡下肝後区域切除には,腹腔鏡下肝切除において必要なエッセンスが詰め込まれている.一方,肝門部でグリソンを先行処理するGlissonean approach4)やICG蛍光法を用いて区域境界を可視化したナビゲーション手術が日常診療で実践されるようになり,特に後区域切除のような区域切除において極めて有用である.本稿では,安全で確実な腹腔鏡下肝後区域切除を実践するにあたり必要な術前画像と解剖把握,手術のポイントを解説する.
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