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文献詳細

雑誌文献

臨床外科77巻12号

2022年11月発行

文献概要

臨床報告

短期間に多発乳癌,多発胃癌,悪性リンパ腫を発症した毛細血管拡張性運動失調症の1例

著者: 館花明彦1 河合宏美2 井上泰3

所属機関: 1関東中央病院乳腺外科 2関東中央病院消化器外科 3関東中央病院病理診断科

ページ範囲:P.1375 - P.1380

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要旨
 毛細血管拡張性運動失調症(ataxia telangiectasia:AT)は常染色体劣性遺伝形式をとるまれな疾患である.運動失調,毛細血管拡張,免疫不全などを主症状とし,免疫異常や悪性腫瘍により多くは20代前半までに死亡する.今回,AT治療中の30代の短期間で,異時性多発悪性腫瘍により死亡の転帰をとった1例を経験した.症例は初診時33歳の女性で,左右同時乳癌に対し手術を施行し,34歳時に同時性多発胃癌に対し幽門側胃切除が施行され,37歳でT細胞性悪性リンパ腫により死亡の転帰となった.AT患者は被曝が問題となり,検査計画に難渋する.本症例も癌検診および転移再発検索には繊細な配慮が必要であった.
 今回,30代で初回の悪性腫瘍が発生し,短期間に多発し死亡の転帰となったATの1例を報告する.

参考文献

1)水谷修記:症候群Ataxia telangiectasia(毛細血管拡張性運動失調症).日本臨牀73(増6):49-52,2015
2)近藤直実:毛細血管拡張性小脳失調症.小児診療80(増):143-146,2017
3)廣木 遥,高木正稔:毛細血管拡張性運動失調症および類縁疾患.小児内科50(増):244-245,2018
4)高木正稔:原因遺伝子 ATM(ataxia telangiectasia muted).日本臨牀73(増6):263-269,2015
5)厚生労働省:平成27年1月1日施行の指定難病.公示番号65原発性免疫不全症候群.http://www.whlw.go.jp/stf/seisakuunitsuite/bunya/0000062437.html
6)高木正稔:リンパ腫発症の遺伝的素因.日本臨牀73(増8):80-91,2015
7)Taylor AM, Metcalfe JA, Thick J, et al:Leukemia and Lymphoma in ataxia telangiectasia.Blood 87:423-438, 1996
8)深山正久:膿胸関連リンパ腫.病理と臨17(臨増):164-167,1999

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1278

印刷版ISSN:0386-9857

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