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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科77巻2号

2022年02月発行

雑誌目次

特集 ガイドラインには書いていない 大腸癌外科治療のCQ—妥当な治療と適応を見直そう

ページ範囲:P.131 - P.131

 「大腸癌治療ガイドライン2019」が発刊されて3年が経過し,いよいよ「大腸癌治療ガイドライン2022」が1月に発刊となった.しかし,おもに薬物療法領域に限定した部分改訂となっている.本特集では,「大腸癌治療ガイドライン2022」のCQに取り上げられていないが,現在活発に議論されている外科領域のトピックを取り上げた.普及し始めたばかりの治療,普及しつつあるがエビデンスが十分でないためにガイドラインで触れられていない治療,すでに普及しているが議論のある治療など,その領域のご専門の先生方に妥当性と適応を中心に解説していただいた.「大腸癌治療ガイドライン2022」と合わせて,外科医の日常診療に役立つ特集となれば幸いである.

「大腸癌治療ガイドライン2022」はどこが変わったか

著者: 橋口陽二郎 ,   松田圭二 ,   野澤慶次郎 ,   端山軍 ,   島田竜 ,   金子健介 ,   福島慶久 ,   大野航平 ,   浅古健太郎

ページ範囲:P.132 - P.135

【ポイント】
◆切除不能な遠隔転移を有する症例に対する原発巣切除に関して,原発巣による症状がない場合は,原発巣を切除せず全身薬物療法を行うことが推奨された.
◆高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-H)切除不能大腸癌の初回治療について,ペムブロリズマブ(Pembro)療法の一次治療への使用が保険収載され,使用が推奨された.
BRAFV600E変異切除不能大腸癌の既治療例に,エンコラフェニブ(ENCO)+セツキシマブ(CET)+ビニメチニブ(BINI),またはENCO+CET療法が新規に保険収載され,使用が推奨された.

TNM以外で本当に臨床的に有用な大腸癌の予後因子はあるのか—炎症性マーカー,栄養指標および遺伝子を用いた大腸癌治癒切除後予後因子の検討

著者: 端山軍 ,   松田圭二 ,   橋口陽二郎

ページ範囲:P.136 - P.141

【ポイント】
◆炎症性マーカーにおいて,好中球/リンパ球比(NLR),血小板/リンパ球比(PLR),単球/リンパ球比(MLR)が再発予測因子として有用であった.
◆栄養指標の中でPrognostic Nutritional Index(PNI),Glasgow Prognostic Score(GPS),Controlling Nutritional Status(CONUT)スコアで再発率の予測因子として有用性を比較したところ,CONUTスコアが一番有用であった.
RAS変異,BRAF変異ではKRAS遺伝子変異が予後予測因子であった.

T1大腸癌の追加腸切除の適応は縮小できないのか

著者: 梶原由規 ,   神藤英二 ,   岡本耕一 ,   上野秀樹

ページ範囲:P.142 - P.146

【ポイント】
◆現行の大腸癌治療ガイドラインの推奨基準に基づくと,T1大腸癌の約2割はリンパ節転移リスクが著しく低いと判断でき,局所摘除後の追加腸切除は不要である.
◆一方,追加切除が推奨される症例においても,実際のリンパ節転移率は1割をやや上回る程度である.
◆リンパ節転移リスク因子におけるリスクの重みづけや新たなリスク因子の導入により,追加腸切除の適応をより適切に判断できる可能性がある.

結腸右半切除におけるリンパ節郭清の至適範囲

著者: 山口茂樹 ,   近藤宏佳 ,   番場嘉子 ,   金子由香 ,   腰野蔵人 ,   谷公孝 ,   中川了輔 ,   前田文 ,   相原永子 ,   時任史聡 ,   大木岳志 ,   小川真平 ,   井上雄志 ,   板橋道朗

ページ範囲:P.147 - P.151

【ポイント】
◆大腸癌取扱い規約には動脈系のみが図示されており,静脈系のsurgical trunkは示されていない.
◆日本のD3郭清は経験的にsurgical trunkの郭清,すなわち上腸間膜静脈前面中心の郭清が多く行われてきた.
◆自験例からはsurgical trunkの郭清により上腸間膜動静脈近傍の再発はほとんどなく,surgical trunkの郭清をもってD3とすることは妥当と思われるが,今後の検証が必要である.

蛍光ガイド下大腸癌手術は本当に有用か

著者: 石井雅之 ,   佐藤雄 ,   竹政伊知朗

ページ範囲:P.152 - P.160

【ポイント】
◆ICG蛍光法による吻合部腸管の血流評価を行うことは,縫合不全の発生率の低下に有効である.
◆ICG蛍光法を用いた腫瘍の局在マーキングは安全で,術野に影響を与えずに腫瘍の位置を確認することが可能である.
◆転移のあるリンパ節では,ICGで蛍光標識される頻度が有意に低く,リンパ節の90%以上が癌細胞で占拠されている場合に,そのリンパ節はICG蛍光法では標識されない.

ロボット支援下直腸癌手術は腹腔鏡下手術よりも推奨されるのか

著者: 島野瑠美 ,   絹笠祐介

ページ範囲:P.162 - P.166

【ポイント】
◆直腸癌におけるロボット支援下手術は腹腔鏡下手術に対して安全に施行でき,一部の先進的な施設からは良好な成績も報告されており,推奨される術式である.
◆ロボット支援下手術は直腸癌において安全に,より術後合併症を少なくすることができる可能性がある.
◆ロボット支援下手術は困難症例において,より従来の腹腔鏡下手術と比べて有用である.
◆ロボット支援下手術は腹腔鏡よりも習得までの期間が短く,術中教育システムも優れている.

ISRは本当に有用な治療なのか—長期治療(腫瘍学的・機能的)成績からみたISRの有用性と問題点

著者: 佐伯泰愼 ,   山田一隆 ,   田中正文 ,   福永光子

ページ範囲:P.167 - P.176

【ポイント】
◆括約筋間直腸切除術(ISR)の適応基準は,①RMの確保,②DMの確保,③特殊癌症例の除外,④排便機能障害例の除外が原則である.
◆安全性・癌根治性は良好だが,術後排便障害を30〜40%に認める.
◆術後は癌のフォローだけでなく排便障害のフォローと治療が大切である.
◆適応患者を十分に選択すればISRは有用な治療である.

直腸癌に対してtaTMEは従来式の腹腔鏡手術よりも推奨されるのか

著者: 塚田祐一郎 ,   伊藤雅昭 ,   北口大地 ,   長谷川寛 ,   池田公治 ,   寺村紘一 ,   西澤祐吏

ページ範囲:P.177 - P.183

【ポイント】
◆taTMEにより,深く狭い骨盤内においても精緻な手術が可能となる.
◆taTMEの従来式腹腔鏡手術に対する優位性が報告されつつある.
◆現在2つのランダム化比較試験(COLOR Ⅲ Trial,GRECCAR 11 Trial)が進行中である.

術前CRTを施行した直腸癌に予防的側方郭清は推奨されるか

著者: 安井昌義 ,   松田宙 ,   西村潤一 ,   原口直紹 ,   仲井希 ,   秋田裕史 ,   和田浩志 ,   大森健 ,   宮田博志 ,   大植雅之

ページ範囲:P.184 - P.187

【ポイント】
◆進行直腸癌に対する骨盤内側方リンパ節郭清は,局所制御と生存率改善が期待される手技である.
◆腫大した側方リンパ節がない症例においては,術前化学放射線療法および直腸全間膜切除による治療後の側方領域局所再発は低頻度である.
◆術前化学放射線治療および直腸全間膜切除,選択的側方郭清を施行した症例の検討では良好な局所制御が報告されるが,今後,標準治療と比較した検証的な研究が必要である.

Watch & waitは直腸癌の標準治療の選択肢となりうるか

著者: 江本成伸 ,   石原聡一郎

ページ範囲:P.188 - P.193

【ポイント】
◆欧米では下部進行直腸癌の術前CRT後のcCR症例に対して,watch & waitが広まりつつある.
◆Watch & waitは密なサーベイランスとサルベージ手術までを含めたdelayed surgeryの治療戦略である.
◆Total neoadjuvant therapyによりwatch & waitの成績も向上が期待される.

治癒切除可能直腸癌に対するtotal neoadjuvant therapy(TNT)の推奨レジメンと臨床成績

著者: 秋吉高志 ,   向井俊貴 ,   日吉幸晴 ,   長嵜寿矢 ,   山口智弘 ,   福長洋介

ページ範囲:P.194 - P.198

【ポイント】
◆進行直腸癌に対するtotal neoadjuvant therapy(TNT)は,これまでの術前化学放射線療法+術後補助化学療法に比べて遠隔再発の抑制が期待できる.
◆TNTにより,今後watch and waitアプローチの適応となる症例の増加が見込まれる.
◆再発低リスク直腸癌に対するTNTの適応については,今後の検討が必要である.

高度進行大腸癌への術前治療を分子標的薬別に考える—Total neoadjuvant therapy・triplet時代における術前治療の最新エビデンス

著者: 小倉淳司 ,   上原圭 ,   村田悠記 ,   水野隆史 ,   國料俊男 ,   伊神剛 ,   山口淳平 ,   宮田一志 ,   尾上俊介 ,   砂川真輝 ,   渡辺伸元 ,   杉田静紀 ,   横山幸浩 ,   江畑智希

ページ範囲:P.199 - P.206

【ポイント】
◆局所進行直腸癌に対し,術前CRTへの分子標的薬併用による局所制御・生存率への上乗せ効果は証明されていない.一方,NACやinduction chemotherapyへの分子標的薬併用による局所制御への上乗せ効果の報告は散見される.
◆Stage Ⅳ・再発大腸癌では,分子標的薬を併用することで奏効率・腫瘍縮小率が上昇し,原発巣・遠隔転移巣ともR0切除やconversion手術のチャンスが増加する.
◆“Cure”をめざした術前治療との併用こそが,分子標的薬の真の使いどころかもしれない.

大腸癌肝転移に対する局所治療はどのような場合に有用か

著者: 栁秀憲 ,   相原司 ,   仲本嘉彦 ,   岡本亮 ,   生田真一 ,   中島隆善 ,   笠井明大 ,   一瀬規子 ,   藤川正隆 ,   松木豪志 ,   友尾祐介 ,   山中若樹

ページ範囲:P.207 - P.209

【ポイント】
◆肝局所治療の標準療法は肝切除術であるが,代替局所治療として穿刺治療,肝動注化学療法,肝動脈塞栓療法,放射線療法が検討されている.
◆近年,非常に強化された全身化学療法と低侵襲である肝局所治療を併用した治療法が検討されている.

How to start up 縦隔鏡下食道亜全摘・2

頸部直視操作

著者: 森和彦 ,   瀬戸泰之

ページ範囲:P.211 - P.217

左頸部での術野作成
 前回述べたように,肩枕で頸部背屈,さらに右回旋とする.皮膚切開は鎖骨頭からあまり離れない弧状切開とする.胸鎖乳突筋胸骨枝はペンローズでテーピングして,外側(内側でもよい)に牽引しながら覆布にペアンで固定する.胸鎖乳突筋の胸骨停止部の近傍の背側に前頸静脈が現れ,多くの症例でかなり太い.縦隔鏡では術野の入り口を横断するので,この静脈は適宜結紮,切離する.同様に,視野の妨げとなる前頸筋群の腹側にある脂肪は切除するが,この際,不規則に分岐する前頸静脈がこの脂肪組織の中を通過するので,頭側,尾側それぞれで処理する(図1).

手術器具・手術材料—私のこだわり・2

手術用ヘッドライト

著者: 遠藤格

ページ範囲:P.218 - P.219

 当たり前のことだが手術は術野が良く見えた状態で行いたいものである.小生も寄る年波には逆らえず,5年ほど前から老眼のせいで陰になった部分が見難いと感じるようになった.助手の頭の位置を変えてもらったり,一時操作を中断して無影灯の位置を変えたりしていた.不便さを感じていたがどうしようもないと諦めていた.
 そんなときに出会ったのが「OPERA Ⅲ」(太陽商事)というウェアラブル手術用照明(ヘッドマウントライト)である(図1,2).

FOCUS

「十二指腸癌診療ガイドライン」の要点—特に外科治療に関して

著者: 庄雅之 ,   中川顕志 ,   赤堀宇広

ページ範囲:P.220 - P.223

はじめに
 十二指腸癌は消化器癌のなかでも希少癌に属する疾患である.昨今の日常診療においては遭遇する機会が少しずつ増えつつあるが,希少癌ゆえに明確な標準治療といえるものはなく,実臨床では治療計画に苦慮することも少なくない.また,十二指腸の解剖学的特性から診断,治療においてはいくつかの難しい側面がある.特に治療においては,外科手術,内視鏡治療,薬物治療,放射線治療,あるいはそれらの組み合わせを含めてさまざまな選択肢がある.また個々の治療法の必要性,妥当性の判断や検証は難しいことも多い.実際,手術では至適術式やリンパ節郭清範囲の決定は必ずしも容易ではない.
 今回,がん対策推進総合研究事業「希少癌診療ガイドラインの作成を通した医療提供体制の質向上」における研究代表者であり,日本胃癌学会理事長,名古屋大学 小寺泰弘教授ならびに日本肝胆膵外科学会前副理事長,和歌山県立医科大学 山上裕機教授が主導され,両学会の支援の下,十二指腸癌診療ガイドライン作成委員会が発足した.筆者が委員長を拝命して,その後,少しずつではあったが慎重かつ着実に作業を進めていった.途中,コロナ禍に見舞われ,思わぬ形で作業が難航したが,ガイドライン作成委員の献身的な多大なる尽力によって,ようやく2021年7月末に国内初のガイドライン1)が発刊できた.
 本稿では,ガイドラインの内容の概説と,主に外科治療に関する要点の解説を行いたい.

病院めぐり

JA徳島厚生連吉野川医療センター外科

著者: 佐藤宏彦

ページ範囲:P.224 - P.224

 当院は以前,「麻植協同病院」の名称でしたが,2015年の新病院移転に伴い「吉野川医療センター」に改名され,スタートしました.徳島県西部に位置しており,徳島市内から20 km,車で30分ほどの吉野川市にあります.遊園地跡の敷地に建てられたため,風光明媚な景色を望むことができます.医療圏の対象人口は約8万人,病床数は290床,標榜科は19科で,現在の医師数は49人です.
 当院では,「患者さまの人格を尊重し,いたわり・思いやりの気持ちで接すること」,「常に専門職としての意識と各部門間の協力を忘れず患者様と共同して医療にあたること」,「かかりつけ医との連携を深め,地域完結型の医療を進めること」の3つを患者さんとそのご家族への約束として医療に取り組み,総合的に質の高い医療を目指しています.

臨床報告

根治切除から5年後に,多発骨格筋転移で再発した胃低分化腺癌の1例

著者: 北川祐資 ,   田村徳康 ,   勝野暁 ,   梅谷直亨 ,   阿美克典

ページ範囲:P.227 - P.230

要旨
症例は67歳男性,胃体部進行胃癌に対して幽門側胃切除術(por2>sig, pT3N2bM0, pStage ⅢA,第15版)を施行.術後補助化学療法(S-1)施行後,4年半再発なく経過.術後5年の画像検査で多発筋転移を疑う腫瘤を認めた.同時に胸水貯留を認め,筋生検で低分化腺癌を認め転移の診断となった.化学療法を再開し3次治療まで試行するも病勢進行を抑えられずBSCの方針となり,再発から6か月で永眠された.胃癌骨格筋転移の報告は稀であり確立した治療法も定まっていない.本邦報告例と併せて報告する.

後腹膜myolipomaの1切除例

著者: 牧田直樹 ,   宗本将義 ,   八木康道 ,   大西一朗 ,   萱原正都 ,   川島篤弘

ページ範囲:P.231 - P.235

要旨
症例は62歳,女性.腹部CTにて左下腹部後腹膜に腫瘤を指摘され当科紹介.造影CTでは左下腹部後腹膜腔に4 cm大の不均一に造影される充実性腫瘤,MRIでは腫瘤の大部分は脂肪信号,T2画像では等信号と高信号が混在,脂肪抑制T2画像では不均一な高信号を呈した.画像上は肉腫などの悪性腫瘍も否定できず,診断治療目的に手術の方針とした.腹腔内から腹膜越しに左側後腹膜腔に境界明瞭な腫瘤を触知,主病変近傍の小結節も含め一塊で摘出した.病理組織診断では紡錘形細胞と成熟脂肪細胞の増生を認め,免疫染色にて脂肪肉腫は否定,最終診断はmyolipomaであった.Myolipomaは脂肪肉腫との判別が困難なことも多く,文献的考察を加えて報告する.

正中弓状靱帯症候群による前・後膵十二指腸動脈瘤同時破裂を動脈塞栓・血行再建で救命し得た1例

著者: 高橋利明 ,   國府島健 ,   野木祥平 ,   金平典之 ,   遠藤芳克 ,   甲斐恭平

ページ範囲:P.236 - P.240

要旨
症例は52歳,男性.背部痛で当院へ搬送され,造影CTで正中弓状靱帯症候群(MALS)による腹腔動脈狭窄,前下膵十二指腸動脈(AIPDA)動脈瘤切迫破裂が認められた.血管造影ではAIPDAに加え,後下膵十二指腸動脈(PIPDA)瘤も認められた.双方を塞栓することによる肝血流障害の可能性が考えられ,血行再建術と動脈塞栓を併用する方針とした.はじめに胃十二指腸動脈と上腸間膜動脈に左大伏在静脈グラフトを用いて血行再建を施行し,その後AIPDA, PIPDAをコイルで塞栓した.術後3か月後のCTでもグラフトの開存は維持されており,肝機能障害は認めていない.MALSによるAIPDA・PIPDAの双方に動脈瘤をきたすことは非常に稀であり,一期的に動脈塞栓と血行再建術を行うことが有用であると考えられた.

胆囊亜全摘術後遺残結石による膿瘍形成に対し瘻孔鏡を用いて治療した1例

著者: 日比野貴文 ,   山口直哉 ,   米山文彦 ,   木村桂子 ,   加藤祐一郎 ,   河野弘

ページ範囲:P.241 - P.244

要旨
症例は57歳,女性.Grade Ⅰの急性胆囊炎に対して開腹(腹腔鏡から移行)胆囊亜全摘術を施行した.摘出標本は壊疽性胆囊炎の所見であった.経過良好で退院したが,発熱と心窩部痛を主訴に来院し,遺残結石と遺残胆囊炎および腹腔内膿瘍を認めた.再手術は副損傷のリスクが高いと判断し,経皮経肝膿瘍ドレナージを選択した.瘻孔を拡張したのちに瘻孔鏡を併用して結石を摘出し,ドレーン抜去とした.3年経過するが,再発は認めていない.今回,遺残結石による遺残胆囊炎・腹腔内膿瘍に対して用いた瘻孔鏡による治療法は,手術や経乳頭的アプローチが困難な場合には有用な治療法の1つであると考えられた.

書評

—辻 哲也(編著)—がんのリハビリテーションマニュアル 第2版—周術期から緩和ケアまで

著者: 志真泰夫

ページ範囲:P.225 - P.225

 今日,がん医療では治療やケアの進歩に伴い,患者の生存期間が延長し,がんと共生する時代となった.
 わが国におけるがんのリハビリテーションの黎(れい)明(めい)期は,2002年に静岡県立静岡がんセンターが開院し,リハビリテーション科が設けられたことに始まる.その時の初代部長は,本書の編者の辻哲也先生である.そして,2010年度診療報酬改定で「がん患者リハビリテーション料」が設けられて,これを契機としてがんのリハビリテーションの成長期が始まった.それから4年を経て「がん対策基本法」(2016年改正)第17条に「がん患者の状況に応じた良質なリハビリテーションの提供が確保されるようにすること」と定められ,がんのリハビリテーションは法的な根拠を持つようになった.そして,本書初版から10年を経て,この間の臨床と研究の成長を踏まえて,第2版が発刊された.

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目次

ページ範囲:P.128 - P.129

原稿募集 「臨床外科」交見室

ページ範囲:P.135 - P.135

バックナンバーのご案内

ページ範囲:P.248 - P.248

あとがき

著者: 橋口陽二郎

ページ範囲:P.250 - P.250

 結婚式・披露宴の簡略化が進行し,身内と親しい友人だけで行うことが定着して久しい.このたび,医局員の結婚式で祝辞を述べることになった.教授に就任して9年になるが,秘書の結婚式には出席したものの,医局員の結婚式に招待されたのは初めてのことで,大変楽しみである.幸せな二人の人生の門出に立ち会うのは,自分まで高揚した気持ちになるものである.そして,遠い昔の自分の結婚式・披露宴が昨日のことのように思い出される.もちろん,自分にとっては忘れがたい良き想い出である.しかし,それにしても,本当に個人的なことにたくさんの人を巻き込み,お金と時間を費やしたものである.準備やスケジュールの調整が大変だったことを思い出す.もし,まわりの人が盛大な結婚式をしない時代であれば,きっと自分もしなかっただろうと容易に想像される.
 医師の海外留学も,一頃ほど盛んでなくなっているのは明らかである.自分は医師をめざした時から留学すると決めていた.いや,そういうものだと思っていた.これもまた大変な大事業であった.年収は激減し,貯金を使い果たした.慣れない外国に3歳と6ヵ月の2人の子供を連れて行き,言葉にも育児にも大変苦労した.研究して論文は結構書いたが,それが直接将来の出世につながるとも思えなかった.旅行とゴルフが最高の想い出であり,帰国が近づくにつれて帰国後の将来への不安が生まれてきた.帰国直前に父が急死し,親の死に目にも会えなかった.子供たちは帰国後に日本語に苦労した.もし,まわりの人が留学に積極的でない時代であったら自分は留学しただろうか.うーん,こちらはたぶん,したな.妻が外国で生活することをとても楽しみにして私と結婚したから.留学先がナッシュビルからニューヨークに変更になった時の女房のガッツポーズは,今でも目に焼き付いている.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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