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文献詳細

雑誌文献

臨床外科77巻2号

2022年02月発行

文献概要

臨床報告

正中弓状靱帯症候群による前・後膵十二指腸動脈瘤同時破裂を動脈塞栓・血行再建で救命し得た1例

著者: 高橋利明1 國府島健1 野木祥平1 金平典之1 遠藤芳克1 甲斐恭平1

所属機関: 1姫路赤十字病院外科

ページ範囲:P.236 - P.240

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要旨
症例は52歳,男性.背部痛で当院へ搬送され,造影CTで正中弓状靱帯症候群(MALS)による腹腔動脈狭窄,前下膵十二指腸動脈(AIPDA)動脈瘤切迫破裂が認められた.血管造影ではAIPDAに加え,後下膵十二指腸動脈(PIPDA)瘤も認められた.双方を塞栓することによる肝血流障害の可能性が考えられ,血行再建術と動脈塞栓を併用する方針とした.はじめに胃十二指腸動脈と上腸間膜動脈に左大伏在静脈グラフトを用いて血行再建を施行し,その後AIPDA, PIPDAをコイルで塞栓した.術後3か月後のCTでもグラフトの開存は維持されており,肝機能障害は認めていない.MALSによるAIPDA・PIPDAの双方に動脈瘤をきたすことは非常に稀であり,一期的に動脈塞栓と血行再建術を行うことが有用であると考えられた.

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1278

印刷版ISSN:0386-9857

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