icon fsr

文献詳細

雑誌文献

臨床外科77巻2号

2022年02月発行

文献概要

--------------------

あとがき

著者: 橋口陽二郎

所属機関:

ページ範囲:P.250 - P.250

文献購入ページに移動
 結婚式・披露宴の簡略化が進行し,身内と親しい友人だけで行うことが定着して久しい.このたび,医局員の結婚式で祝辞を述べることになった.教授に就任して9年になるが,秘書の結婚式には出席したものの,医局員の結婚式に招待されたのは初めてのことで,大変楽しみである.幸せな二人の人生の門出に立ち会うのは,自分まで高揚した気持ちになるものである.そして,遠い昔の自分の結婚式・披露宴が昨日のことのように思い出される.もちろん,自分にとっては忘れがたい良き想い出である.しかし,それにしても,本当に個人的なことにたくさんの人を巻き込み,お金と時間を費やしたものである.準備やスケジュールの調整が大変だったことを思い出す.もし,まわりの人が盛大な結婚式をしない時代であれば,きっと自分もしなかっただろうと容易に想像される.
 医師の海外留学も,一頃ほど盛んでなくなっているのは明らかである.自分は医師をめざした時から留学すると決めていた.いや,そういうものだと思っていた.これもまた大変な大事業であった.年収は激減し,貯金を使い果たした.慣れない外国に3歳と6ヵ月の2人の子供を連れて行き,言葉にも育児にも大変苦労した.研究して論文は結構書いたが,それが直接将来の出世につながるとも思えなかった.旅行とゴルフが最高の想い出であり,帰国が近づくにつれて帰国後の将来への不安が生まれてきた.帰国直前に父が急死し,親の死に目にも会えなかった.子供たちは帰国後に日本語に苦労した.もし,まわりの人が留学に積極的でない時代であったら自分は留学しただろうか.うーん,こちらはたぶん,したな.妻が外国で生活することをとても楽しみにして私と結婚したから.留学先がナッシュビルからニューヨークに変更になった時の女房のガッツポーズは,今でも目に焼き付いている.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1278

印刷版ISSN:0386-9857

雑誌購入ページに移動
icon up
あなたは医療従事者ですか?