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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科77巻8号

2022年08月発行

雑誌目次

特集 よくわかる肛門疾患—診断から手術まで

ページ範囲:P.893 - P.893

 外科医にとって日常的に診療する代表的な肛門疾患といえば,痔核,裂肛,痔瘻であるが,実臨床では様々な肛門関連疾患に遭遇し,診断に苦慮する場合も多い.手術対象の疾患ばかりでなく,皮膚科,内科に関連した疾患の知識も必要である.本特集では,肛門疾患のエキスパートの先生方に,肛門の解剖から診断,手術手技に至るまで解説していただき,さらに実臨床で遭遇する肛門関連の皮膚疾患についてもその対応を解説していただいた.明日からの肛門疾患診療に役立てていただければ幸いである.

総論

肛門の解剖

著者: 辻順行 ,   高野正太 ,   山田一隆 ,   高野正博

ページ範囲:P.894 - P.899

【ポイント】
◆肛門管は消化管の末端に位置し,肛門縁から恥骨直腸筋の上縁までの約4 cmの部分を指し,肛門周囲には内肛門括約筋,外肛門括約筋(皮下部,浅部,深部),連合縦走筋,肛門挙筋を構成する恥骨直腸筋が全周性に取り巻き閉鎖している.
◆痔瘻は肛門陰窩に開口する肛門腺の感染で発生するが,痔瘻の手術は括約筋に侵襲を与える可能性があり,これらの肛門周囲の筋構造を十分熟知して手術に臨む必要がある.

肛門管の生理

著者: 内田好司

ページ範囲:P.900 - P.903

【ポイント】
◆肛門管は組織学的に横紋筋と平滑筋とが併在しており,体性神経の支配による横紋筋と自律神経支配による平滑筋は刺激伝導のしくみにも大きな違いがある.

肛門疾患の診察法と診断

著者: 岡本康介 ,   松島小百合 ,   紅谷鮎美 ,   彦坂吉興 ,   宮島伸宜 ,   黒水丈二 ,   松島誠

ページ範囲:P.905 - P.912

【ポイント】
◆肛門部の診察は,プライバシーに十分配慮をしたうえで患者の羞恥心,不安感や緊張感を緩和させて行う.
◆直腸肛門疾患の診察および診断は,解剖学的構造,生理機能,病態を十分に理解したうえで行う.
◆肛門疾患の発生は生活習慣病的な要素があり,便性状や排便習慣に起因することが多いため,食事,生活習慣,職業など環境要因を考慮することも重要である.
◆肛門疾患は視診,肛門指診,肛門鏡診などにより直接患部を診ることができるので正確に診断しやすいが,適切な補助診断を選択しより確実な診断を行う.

各論

痔核の分類と治療法選択

著者: 黒田敏彦

ページ範囲:P.913 - P.924

【ポイント】
◆肛門部の膨隆・脱出性病変には典型的な内痔核だけでなく様々な成因によるものがあり,治療法も異なってくるので,注意深く診察し的確な診断を心掛ける.
◆このような病変の中には,安静時には脱出せず,怒責による力やうっ血などが加わってはじめて脱出ないし膨隆するものがあることに留意して診断する.
◆肛門病変のほとんどは良性疾患であるので,治療方針はなるべく患者の意向に沿うようにし,患者に経済的,身体的負担をかけない治療方針を選択できるよう,診断・治療技術を磨くべきである.

痔核の外科手術

著者: 岡本欣也

ページ範囲:P.925 - P.932

【ポイント】
◆痔核の基本術式は,根治性が高くすべての痔核の形態に応用がきく結紮切除術である.
◆結紮切除術の留意点は,過度の侵襲を加えることなく,患者の愁訴を取り除く必要最小限の切除を行うことにある.
◆どの痔核をどの程度切除するか,全体に調和のとれた切除デザインをplanningすることが重要である.
*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画を見ることができます(公開期間:2025年8月末まで)。

内痔核に対するALTA硬化療法のポイント

著者: 鮫島隆志 ,   丹羽清志 ,   江藤忠明 ,   緒方俊二 ,   鮫島加奈子 ,   山元由芙子 ,   今村芳郎 ,   西俣伸亮 ,   濵元ひとみ ,   平川あさみ ,   家守雅大 ,   鮫島由規則

ページ範囲:P.933 - P.939

【ポイント】
◆Aluminum potassium sulfate and tannic acid sclerotherapy(ALTA)療法は,痔核の縮小とともに痔核出血の速やかな改善が得られる低侵襲治療で,それまで結紮切除法が主であった痔核の外科治療に大きな変革をもたらした.
◆ALTA療法は内痔核に対する治療法であり,外痔核や肛門ポリープおよび痔核に随伴する器質的な変化を伴う病態や嵌頓状態の痔核には用いることはできない.また,直腸脱や直腸粘膜脱にも安易に用いるべきではない.
◆ALTA療法の四段階注射法および注入量には,推奨される器材や基準量がある.これらを遵守することが,ALTA療法の最大効果を得ることのみならず,有害事象や合併症の防止,軽減につながる.
*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画を見ることができます(公開期間:2025年8月末まで)。

裂肛の診断と治療

著者: 岡田有加 ,   山本哲久 ,   小澤毅士 ,   野澤慶次郎 ,   松田圭二 ,   橋口陽二郎

ページ範囲:P.941 - P.948

【ポイント】
◆裂肛とは肛門上皮に生じた非特異的潰瘍性病変の総称で,肛門三大疾患の中で痔核に次いでよくみられる疾患である.肛門後方に好発し,若年,女性に多いとされる.
◆原発性裂肛は経過によって急性裂肛と慢性裂肛に分類される.診断は問診と視診,指診でつくことが多い.
◆急性裂肛は痔疾注入軟膏による保存的治療,生活指導で治癒が望める.繰り返す場合や保存的治療で治癒せず慢性裂肛となった場合は手術治療の適応になる.
◆手術療法として用手的肛門拡張,側方内括約筋切開術,肛門形成術がある.
◆治療法の選択は,肛門疾患・直腸脱診療ガイドライン2020年版に記載されているフローチャートをもとに行うことができる.

肛門周囲膿瘍・痔瘻の診断と外科手術

著者: 岡田滋 ,   松尾恵五

ページ範囲:P.949 - P.956

【ポイント】
◆肛門周囲膿瘍・痔瘻の診療には,解剖学的知識と膿瘍・痔瘻の進展状態を正しく診断する能力が必要である.
◆切開排膿に際しては消炎後の根治手術を見据えて的確な位置に切開を行い,十分な排膿により遺残膿瘍を避ける.
◆痔瘻根治術に際しては痔瘻の成因であるcrypt glandular infection theoryに基づき,原発口の除去および瘻管の摘除を行う.
*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画を見ることができます(公開期間:2025年8月末まで)。

クローン病の肛門病変と外科手術

著者: 篠崎大

ページ範囲:P.957 - P.961

【ポイント】
◆クローン病は口から肛門までの消化管を冒す疾病であるが,肛門病変を高頻度に合併し,QOLを下げる.
◆手術は根治ではなくQOL改善を目的とし,切開排膿,seton法,人工肛門造設術から,病態に合わせて選択する.
◆10年以上経過例では痔瘻癌の存在を念頭に置き,画像診断に加えて積極的に麻酔下生検・内視鏡生検を行って,その早期発見をめざす.

痔瘻癌の診断と外科手術

著者: 須並英二 ,   吉敷智和 ,   若松喬 ,   小嶋幸一郎 ,   麻生喜祥 ,   飯岡愛子 ,   本多五奉 ,   片岡功 ,   金翔哲 ,   磯部聡史 ,   阪本良弘 ,   阿部展次

ページ範囲:P.962 - P.966

【ポイント】
◆痔瘻癌の診断に際しては,罹病期間の長い痔瘻に対して癌発生の疑いをもつことが大事であり,必要があれば麻酔下に生検を行う.
◆治療は手術が基本となるが,腫瘍範囲の正確な判断は困難であるため,十分なマージンを想定した手術計画が必要である.
◆切除断端陽性の回避のため術前化学放射線療法なども考慮する.

肛門の扁平上皮癌の治療

著者: 髙橋里奈 ,   百瀬裕隆 ,   河合雅也 ,   小島豊 ,   坂本一博

ページ範囲:P.967 - P.971

【ポイント】
◆肛門周囲皮膚の高分化型扁平上皮癌(T1〜2,N0)症例では,局所切除の適応となる.
◆上記以外の肛門扁平上皮癌の治療の基本は,5-FUとマイトマイシンを併用した化学放射線療法(CRT)である.
◆初回治療後に局所再発を認めた場合には,サルベージ手術の適応となる.

臀部膿皮症の診断と治療

著者: 松田大助 ,   山下貴正 ,   清松英充 ,   柴田淳一 ,   大高京子 ,   松田好雄 ,   栗原浩幸

ページ範囲:P.972 - P.974

【ポイント】
◆臀部膿皮症は成人男性に多くみられる.
◆治療の原則は,膿瘍期には切開排膿を行い,慢性期には病変部の全層切除を行う.
◆痔瘻を合併する症例も多く,癌化することも稀にあるので注意が必要である.
◆近年,新たに生物学的製剤の有効性が報告され,本邦においても保険適用になった.

毛巣洞の診断と外科手術

著者: 寺田俊明

ページ範囲:P.975 - P.981

【ポイント】
◆毛巣洞は,仙骨正中部の体毛が皮膚に入り込み皮下組織に膿瘍塊を形成し,感染を繰り返す慢性炎症性疾患である.
◆体毛が濃い人に好発する.
◆瘻孔から毛髪が出ていれば診断は容易であるが,痔瘻との鑑別が必要となる.
◆自然治癒や保存的な治療による治癒は期待できないため,根治には病巣部の完全切除が必要である.

肛門周囲の皮膚疾患—尖圭コンジローマ,肛門部Paget病,悪性黒色腫

著者: 八木貴博 ,   栗原浩幸 ,   赤瀬崇嘉 ,   髙林一浩 ,   金井忠男

ページ範囲:P.982 - P.985

【ポイント】
◆尖圭コンジローマは性感染症の一つであり,肛門周囲皮膚だけでなく肛門管内の検索が必要である.
◆肛門部Paget病には,皮膚原発癌の原発性乳房外Paget病と直腸癌などの隣接臓器から発生する続発性乳房外Paget病がある.
◆悪性黒色腫は早期に転移をきたし予後不良である.無色素性悪性黒色腫(amelanotic melanoma)の存在に注意する.

肛門掻痒症の診断と治療

著者: 金井慎一郎 ,   島田俊嗣 ,   栗原浩幸

ページ範囲:P.986 - P.989

【ポイント】
◆不快な痒みは生活の質を低下させる.まず痒みを軽減させることは重要である.
◆痒みを除去しながら原因の検索を行う.疑わしい原因が認められれば治療する.
◆原因が不明なことも少なくない.日常生活において原因となりうるものを改善するよう指導する.

How to start up 縦隔鏡下食道亜全摘・7

左反回神経の温存,頸部操作終了前のチェックポイント,頸部縦隔鏡の応用

著者: 森和彦 ,   瀬戸泰之

ページ範囲:P.990 - P.997

 今回で頸部縦隔鏡の解説を終える.ここでは左反回神経を切除側から温存側に「救出する」手技について解説を行うほか,各術野に見えるものの確認,経裂孔操作に移る前のチェックポイントについて解説する.そして,余白を用いて最近になって試みている単孔式デバイスによる前縦隔および右上縦隔でのリンパ節採取の試みを紹介する.

病院めぐり

松江市立病院消化器外科

著者: 若月俊郎

ページ範囲:P.998 - P.998

 松江市立病院は,1948年4月に日本医療団の施設を買収し,松江市の医療行政政策の一環として開設されました.2005年8月には松江市乃白町に新設移転し,病床数470床(一般病床416床,感染症病棟4床,精神病棟50床),27診療科(緩和病棟20床)を有し,100名を超える医師が勤務する山陰の中核病院の一つとなっています.付属施設としてがんセンター,健診センターがあります.さらに令和2年から地域医療拠点病院,がんゲノム医療連携病院に承認されました.ゲノム医療相談室もあり,がん遺伝子パネル検査も実施可能となっています.
 消化器外科関連施設認定として,日本外科学会外科専門医制度修練施設,日本消化器外科専門医制度指定修練施設,日本大腸肛門病学会認定施設,日本外科感染症学会外科周術期管理教育施設,日本癌治療学会認定癌医療ネットワークナビゲーター,シニアナビゲーター見学施設があります.他科においてもさまざまな認定施設を獲得しています.教育の面においては,研修プログラムを鳥取大学と島根大学と連携し,毎年8名の研修医を迎え,教育施設としての機能,役割も十分に果たしています.

手術器具・手術材料—私のこだわり・8

腹腔鏡下手術・ロボット支援下手術における「俵型ガーゼ」の開発と有効性

著者: 中山吾郎 ,   田路育恵 ,   宮田かおり ,   中村貴之 ,   生田直子 ,   服部憲史 ,   梅田晋一 ,   家崎志のぶ ,   小寺泰弘

ページ範囲:P.999 - P.1001

はじめに
 消化器外科領域においては従来の直視下での開腹手術に代わって,鏡視下手術が急速に普及している.腹腔鏡下手術は整容性や低侵襲性など様々な利点がある一方で,鉗子で組織を直接把持・圧排することによる組織損傷や出血時の迅速な圧迫止血が困難であるなどの問題がある.さらに,近年普及しつつあるロボット支援下手術では,視野の安定性や多関節を生かした自由度の高い鉗子操作により,従来の腹腔鏡下手術に較べ,より繊細な手術操作が期待できる一方で,「触覚の欠如」を補って組織の損傷を防ぐ工夫がより重要である.今回,当科で使用している鏡視下手術用滅菌ガーゼを円柱形に形成した「俵型ガーゼ」の開発経緯と,腹腔鏡下手術やロボット支援下手術での有用性について報告する.
*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画を見ることができます(公開期間:2025年8月末まで)。

FOCUS

災害時に外科診療をどのように継続できるか

著者: 江川新一 ,   佐々木宏之

ページ範囲:P.1002 - P.1006

はじめに
 1923年9月1日の関東大震災を経験した寺田寅彦は,1937年に「文明が進むほど天災による損害の程度も累進する傾向があるという事実を十分に自覚して,そして平生からそれに対する防禦策を講じなければならないはずであるのに,それが一向に出来ていないのはどういう訳であるか.その主なる原因は,畢竟そういう天災が極めて稀にしか起らないで,丁度人間が前車の覆を忘れた頃にそろそろ後車を引き出すようになるからであろう.」と述べている1).2011年の東日本大震災と同規模クラスの地震・津波が東北地方を襲ったのは,869年貞観地震,あるいは1605年慶長地震であるから,人間の一生よりもはるかに長い間隔で繰り返す事象を,世代を超えて伝えていくのも困難であるし,伝わったとしてもまるで違う社会なのであるから,起こりうる被害も全く異なる.それほど長い時間起きずに済んでくれれば,自分の一生には無関係と割り切ることもできそうだが,どうやら地殻のひずみとして蓄えられたエネルギーは,地球にとっては極めて正確な時間間隔をもってやってくることがわかっている.現在の科学技術からは,地震の発生を正確に予測することは不可能である2)とされている一方で,地殻変動は極めて正確に測定されるようになり,ひずみのエネルギーが蓄積されていることも正確に計算されている.したがって,内閣府が予測するように,南関東で30年以内にM7クラスの地震(首都直下型地震)が発生する確率70%,西日本で30年以内にM8〜M9クラスの大規模地震(南海トラフ地震)が発生する確率70%,30年以内に日本海溝千島海溝周辺で海溝型地震が発生し最大波高20 mに及ぶ津波を引き起こす確率60%という予測3)(図1)は正しいのである.正しいのだが,被災者(未災者)にとっては,起きうる正確な日時はわからないことに変わりはない.しかし,正確にわかったとして,あなたはどのような対策をとるだろうか? 日本は全国どこに引っ越そうが災害に出遭わないという地域はない.また,地震や津波だけが災害ではなく,新型コロナウイルスSARS-CoV-2が引き起こしたパンデミックで外科手術の制限を誰しも経験したところではないだろうか?
 本稿は,東日本大震災の経験と災害医療,災害科学の考え方にもとづいて災害時の外科診療継続を見直したものである.今いる地域で,外科医としてどのように災害を乗り越え,日常の外科診療の中断時間を短くするための工夫を考えていただく一助になれば幸いである.

臨床報告

食道癌術後5-FU+シスプラチン療法中に多発血栓症を発症した1例

著者: 桂川麗 ,   石橋雄次 ,   川崎浩一郎 ,   保坂晃弘 ,   今村和広 ,   森田泰弘

ページ範囲:P.1007 - P.1010

要旨
症例は58歳,男性.食道癌に対する術後補助化学療法として5-FU+シスプラチン療法を施行目的に入院となった.1コース17日目に突然の左下肢の疼痛,冷感,麻痺を認めた.造影CTで急性下肢動脈閉塞症,上腸間膜動脈塞栓症,肺塞栓症,脾梗塞,左腎梗塞の診断となった.急性下肢動脈閉塞症に対しては手術適応と判断し,大腿動脈血栓除去術を施行した.経過は良好で術後13病日に退院となった.発症後8か月経過した現在,フォローアップの造影CTで血栓はすべて消失し,食道癌の再発も認めていない.

書評

—今村清隆(訳者代表)—症例で学ぶ外科医の考えかた—外科診療の基本がわかる30症例

著者: 本多通孝

ページ範囲:P.948 - P.948

 最近,外科の世界にもオンライン教育が導入されつつあるが,コロナ禍がやってくる遥か以前から,医学生・研修医向けにWeb上で勉強会を開催していた先駆者がいた.本書の翻訳を企画した今村清隆先生である.それもただの勉強会ではない.米国のテキストや専門医試験問題集を利用して全国のやる気ある医学生がWeb参加しているというではないか.「自分が医学生のときに,そんな勉強会があったら……」とほぞをかむ先見性と企画力である.その今村先生がオンライン勉強会で使用した米国の有名なテキスト『Surgery:A Case Based Clinical Review』(第2版,Springer)の訳書が,このたびついに発刊された.
 日本にいて同じ病院や医局で長く仕事をしていると,知らず知らずのうちにローカルルールにとらわれてしまい,ともすれば特定の疾患を自分の型に当てはめて治療する作業に満足しがちである.しかし疾患の本質的な理解が浅いと,他の文化圏の病院に異動したときに大いに苦労することとなる.昔から,外科診療では「外科医が絶対に外してはいけない疾患」があり,そうした外科医の幹となる症例をしっかりと伝えることこそが,国内だけでなく国際的に活躍する外科医を教育する第一歩になろう.本書の原書は,もともと米国の外科教育を目的に執筆されたものであるが,わが国の医学生,初期研修医,専攻医にとっても必読の内容である.読者それぞれの段階でこの30症例から学び取れることは違ってくると思うが,早めに本書を手にして熟読していただければ,将来のキャリアで必ず役立つ知識が得られることだろう.まずは今村先生の愛情がこもった本書のページをめくってみていただきたい.情報量の多さに圧倒されることなかれ,世界で戦うにはこれくらいがちょうどよいのだ!

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目次

ページ範囲:P.890 - P.891

原稿募集 「臨床外科」交見室

ページ範囲:P.1001 - P.1001

バックナンバーのご案内

ページ範囲:P.1014 - P.1014

次号予告

ページ範囲:P.1015 - P.1015

あとがき

著者: 橋口陽二郎

ページ範囲:P.1016 - P.1016

 今回の特集では肛門疾患を取り上げ,エキスパートの先生方に診断から手術まで解説をお願いし,素晴らしい特集ができあがったと自負しています.この1冊があれば,初期研修医は言うに及ばず,総合臨床医,一般外科医そして下部消化管の専門医においても肛門疾患に対する診療に困ることはないと思われます.
 さて,肛門疾患の診療には,視診,触診,肛門診,直腸診,肛門鏡検査,内視鏡検査などが不可欠ですが,診療以外に注意を払わなければならないポイントがあります.近年,とくにセクシャルハラスメントに関する訴訟,トラブルが頻繁に報道されるようになり,医師の診察行為に対する目も大変厳しくなっています.肛門疾患はそのようなトラブルが発生しやすい領域です.トラブルを避けるためには,男性医師が女性患者を診察する場合には,女性医師あるいは女性看護師が立ち会うことが必要です.しかし,人員が逼迫している状況では,立ち会ってもらう女性医療者を探すために診察を中断しなくてはならないことも多く,ストレスを感じることもしばしばです.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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