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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科78巻1号

2023年01月発行

雑誌目次

特集 外科医が知っておくべき! 免疫チェックポイント阻害薬

ページ範囲:P.5 - P.5

 免疫チェックポイント阻害薬が,がん診療の日常診療として使われるようになってから,まだ日が浅い.しかしながら,最近では,次々に新たな薬剤,抗CTLA-4抗体,抗PD-L1抗体なども登場し,その適応も着実に広がっている.これまでは,標準治療が終了した症例が主に対象になっていたが,術後補助療法のみならず,一次治療としても保険適用になってきている.その状況下,外科医自身が処方する場面も多くなっているものと思われる.ただ,従来の化学療法薬とは異なる有害事象,副作用も発生してしまい,その対応も従来の薬剤とは異なる治療が求められている.日進月歩の領域であり,今後も新たな展開をみせることも間違いない.外科医はcatch upしていくこと自体に難渋してしまう可能性もある.

総論

外科医にとっての免疫チェックポイント阻害薬

著者: 黒田晃弘 ,   小林由香利 ,   長岡孝治 ,   垣見和宏

ページ範囲:P.6 - P.11

【ポイント】
◆がんに対する治療として,免疫チェックポイント阻害薬の適応が急速に拡大している.
◆腫瘍微小環境における免疫と代謝の関連が重要である.
◆周術期における患者の全身状態管理と同様の配慮が,免疫チェックポイント阻害薬治療にも必要である.

免疫チェックポイント阻害薬の有害事象とその対応

著者: 馬場啓介 ,   朴成和

ページ範囲:P.12 - P.17

【ポイント】
◆癌免疫療法の普及に伴い,免疫関連有害事象(immune-related adverse effect:irAE)の特徴が明らかになりつつある.
◆様々な癌種における様々な免疫チェックポイント阻害薬(ICI)を含む併用療法が行われており,殺細胞性抗癌薬の副作用とirAEの鑑別が重要である.
◆複雑な臨床像を呈するirAEを治療するためには,早期発見と各種専門家による多職種チーム医療が重要である.

各論

乳癌における免疫チェックポイント阻害薬の現状

著者: 三好康雄

ページ範囲:P.19 - P.22

【ポイント】
◆PD-L1陽性の転移・再発トリプルネガティブ乳癌を対象に,アテゾリズマブとペムブロリズマブが保険承認されている.
◆アテゾリズマブはnab-パクリタキセルと,ペムブロリズマブはパクリタキセル,nab-パクリタキセルあるいはゲムシタビン/カルボプラチンと併用される.
◆PD-L1のコンパニオン診断薬として,アテゾリズマブはSP142,ペムブロリズマブは22C3が用いられる.

肺癌における周術期の免疫療法

著者: 森本健司 ,   髙山浩一

ページ範囲:P.23 - P.26

【ポイント】
◆免疫チェックポイント阻害薬の登場は肺癌の治療に大きな変化をもたらした.
◆免疫チェックポイント阻害薬は術後補助療法へ適用を拡大した.
◆周術期における免疫チェックポイント阻害薬の有効性や安全性を評価するには,長期フォローアップデータが必要である.

食道癌に対する免疫チェックポイント阻害薬治療の実際

著者: 本山悟 ,   武藤理 ,   小棚木圭 ,   吉楽拓哉 ,   里吉梨香 ,   工藤和大 ,   澤田俊哉 ,   宮澤秀彰

ページ範囲:P.27 - P.33

【ポイント】
◆免疫チェックポイント阻害薬は食道癌治療において今や欠くことのできないキードラッグとなった.
◆二次治療以降のみならず,一次治療,さらには術後補助療法としても確立された.
◆化学療法との併用療法,他の免疫療法との複合免疫療法も行われている.

胃癌に対する免疫チェックポイント阻害療法の臨床試験と将来展望

著者: 田中浩明

ページ範囲:P.36 - P.41

【ポイント】
◆保険適用となっているニボルマブとペムブロリズマブそれぞれの適用,レジメン,また免疫チェックポイント阻害薬(ICIs)の有害事象について単剤および化学療法との併用による影響などを解説する.
◆結果が期待される現在進行中の第Ⅲ相臨床試験(術前術後補助療法,マルチキナーゼ阻害薬との併用の試験)について解説する.
◆将来のICIsの位置づけとして,ほかのICIsやHER2陽性胃癌に対するICIの使用,クローディン抗体との併用に関する臨床試験について解説する.

大腸癌治療における免疫チェックポイント阻害薬の役割

著者: 若林宗弘 ,   室圭

ページ範囲:P.43 - P.48

【ポイント】
◆dMMR/MSI-H大腸癌では腫瘍組織の免疫原性が高く,様々な免疫チェックポイント分子が発現しており免疫チェックポイント阻害薬(ICI)による治療が有効である.
◆dMMR/MSI-H切除不能進行再発大腸癌に対するICIのエビデンスは確立しており,一次治療,または二次治療よりICIの使用が推奨される.
◆pMMR/MSS切除不能進行再発大腸癌に対するICIのエビデンスが登場しつつある.

肝細胞癌に対する免疫チェックポイント阻害薬—適応と有害事象,進行中の臨床試験

著者: 伊藤橋司 ,   市田晃彦 ,   河口義邦 ,   金子順一 ,   赤松延久 ,   有田淳一 ,   長谷川潔

ページ範囲:P.50 - P.54

【ポイント】
◆切除不能進行肝細胞癌の一次薬物療法はアテゾリズマブ+ベバシズマブ併用療法が第一選択である.
◆アテゾリズマブ+ベバシズマブ併用療法を使用する際には免疫関連副作用に注意する必要がある.
◆肝細胞癌に対する免疫チェックポイント阻害薬として抗PD-1抗体,抗PD-L1抗体および抗CTLA-4抗体を中心とした薬剤開発が肝細胞癌のさまざまなステージで検討されている.

胆道癌・膵癌における免疫チェックポイント阻害薬の臨床試験および今後の展望

著者: 手塚瞬 ,   上野誠 ,   古瀬純司

ページ範囲:P.56 - P.60

【ポイント】
◆2022年11月時点において,MSI-HighまたはTMB-Highを有する患者を除き,胆道癌および膵癌患者に対する免疫チェックポイント阻害薬の投与は本邦で薬事承認されていない.
◆治癒切除不能な胆道癌患者を対象とした国際共同第Ⅲ相試験であるTOPAZ-1試験において,ゲムシタビンとシスプラチンとの併用への抗PD-L1抗体薬デュルマルマブの上乗せの有効性および安全性が示された.

症例紹介

切除不能進行食道癌に対して免疫チェックポイント阻害薬が奏効し根治切除を施行した1例

著者: 谷島翔 ,   黒田晃弘 ,   八木浩一 ,   岩崎晶子 ,   瀬戸泰之

ページ範囲:P.62 - P.68

【ポイント】
◆遠隔転移を伴う食道癌に対し,免疫チェックポイント阻害薬が著効し,根治手術が可能となった.文献検索上は初の症例報告である.
◆治療中,周術期を通じて,免疫チェックポイント阻害薬の有害事象は認めなかった.
◆治療過程で食道扁平上皮癌から未分化癌への脱分化,あるいは優勢な組織型の変化が生じた.

腹水濾過濃縮再静注法(CART)を併用してニボルマブ療法を行いCRが得られた高度腹水を伴う胃癌症例

著者: 佐藤靖祥 ,   瀬戸泰之

ページ範囲:P.70 - P.72

【ポイント】
◆腹膜播種による高度腹水を伴う胃癌患者に対し,腹水濾過濃縮再静注法(CART)を併用してニボルマブ療法を行い,CRを得た.
◆irAE甲状腺炎(甲状腺中毒症→甲状腺機能低下症)を合併したが,レボチロキシン内服を併用してニボルマブ療法を継続し,CRを維持できている.

職業性胆管癌再発に対しニボルマブで完全寛解後長期間durable responseが認められた1例

著者: 田中肖吾 ,   久保正二 ,   石沢武彰

ページ範囲:P.74 - P.82

【ポイント】
◆職業性胆管癌は,塩素系有機溶剤の高濃度・長期曝露による化学発癌である.
◆広範囲の肝内外胆管に慢性胆管傷害,前癌病変(胆管上皮層内腫瘍および胆管内乳頭状腫瘍)が認められ,同部ではDNA損傷が引き起こされている.
◆通常の胆管癌の約30倍に相当する高い腫瘍遺伝子変異量を有し,胆管癌でPD-L1の発現が確認されている.

手術器具・手術材料—私のこだわり・13

単孔式腹腔鏡下大腸癌手術におけるLigaSureTM Marylandの有用性

著者: 米澤博貴 ,   平能康充

ページ範囲:P.83 - P.85

 当科では,右側結腸癌での手術を中心に単孔式での腹腔鏡下大腸癌手術を行っている.その際のエネルギーデバイスは基本的にLigaSureTM Maryland(図1)を選択し使用している.本稿では,LigaSure Marylandを用いた単孔式腹腔鏡下大腸癌手術に関して述べる.

同心円状モデルで読み解く 新しい食道外科解剖・1【新連載】

右上縦隔—縦隔の左右対称性を見抜く

著者: 藤原尚志

ページ範囲:P.86 - P.97

連載を始めるにあたって
 “同心円状モデル”は,私が2012年に食道外科医となって以降この10年間に食道癌手術に取り組むなかで,外科手術の土台である解剖をとことん考え尽くした成果です.そしてこの10年の成果をこのたび連載という形で発表する機会をいただきました.
 私は2012年(卒後6年目)に食道外科の道に踏み入る以前の3年間を東京医科歯科大学の一員として,その関連病院(JAとりで総合医療センター,土浦協同病院)で一般消化器外科研修を受けていました.虫垂炎,胆囊炎,鼠径ヘルニアの手術に始まり,大腸癌,胃癌などの手術を担当するようになり,いろいろな手技を学び覚え,とても楽しく充実していた一方で,どこか満足しきれない,不安な気持ちがありました.その原因は「一体そこがどうなっているのか」ということがなかなかわからなかったためでした.先輩方は百戦錬磨の外科医であり,とても丁寧に(かつ優しく!)手術指導をしてくださるので「どうすればいいか」は教えてもらえるのですが(もちろん大事!),ただ一方で「どうなっているのか」についてはなかなか明快に(私が納得のいく形で)説明してはもらえませんでした.どうなっているかわからなければ次の機会にうまくできる保証はない! と不安だったのです.

FOCUS

手術解剖学とAI技術の融合を目指した取り組み—医師の認識を支援する手術AIシステムの開発

著者: 熊頭勇太 ,   小林直 ,   大島貴 ,   篠原尚

ページ範囲:P.98 - P.103

はじめに
 外科医療は従来の開腹手術から内視鏡手術,ロボット支援下手術と科学的発展を遂げてきた.高い解像度をもつ手術内視鏡が精細な「目」を,より緻密な操作を可能とした手術支援ロボットは精緻な「手」を外科医にもたらしている1,2).しかし,手術合併症は依然として大きな課題である3).その原因の約30%に,手術中の外科医の誤認識が影響しているとする研究報告がある4).解剖構造や出血,手技操作などに対する認知能力は,外科医個人の経験や知識によって左右され,精神状態や集中力にも影響を受けるため5,6),外科医は常にベストパフォーマンスを発揮できる状況とは限らない.このような現状のなかで,手術合併症の減少をもたらす次なるイノベーションとして,外科医の認知機能である「頭脳」を支援するAI技術が期待されている.

病院めぐり

医療法人原三信病院外科

著者: 当間宏樹

ページ範囲:P.104 - P.104

 医療法人原三信病院は福岡市中心部に所在し,大相撲の九州場所の会場である福岡国際センターや学会会場で有名な福岡国際会議場からも徒歩圏内のアクセスです.玄界灘に面した博多湾を臨むウォーターフロント地区にあることから,壱岐や対馬などの離島からの患者さんも多いのが特徴です.
 当院の歴史は古く,黒田藩の藩医にさかのぼり,民間病院としても,約110年の歴史を持ちます.江戸時代の六代 原 三信によるオランダの翻訳解剖書は,杉田玄白の「解体新書」より80年以上早く,日本最古の翻訳解剖写本と言われています.古来は,病院が遊郭街に近接していたことから,性病の治療などでの泌尿器科の発展が特徴的で,同科は現在も大学病院並みの診療規模を誇っています.鼠径ヘルニアの患者さんが,はじめは泌尿器科を受診するケースも多く,同科からの紹介が多いこともあり,鼠径ヘルニア修復術は外科の看板的な手術です.

臨床報告

原発巣および肝転移巣切除後に肛門転移をきたしたS状結腸癌の1例

著者: 中田博 ,   北條大輔 ,   元吉誠

ページ範囲:P.105 - P.109

要旨
症例は69歳,男性.某年1月にS状結腸癌・同時性肝転移の診断でS状結腸切除術(D3)を施行した.病理所見はS,2型,45×33 mm, tub2, pT4a(SE), INFb, ly2, v2, pN2(7/10), M1a(H1), Stage Ⅳであった.切除断端に癌細胞の浸潤は認めなかった.RAS変異型でありmFOLFOX6+BEVを4クール行い,同年5月に肝転移切除術を施行した.翌年2月に肛門痛で外来を受診した.肛門部に腫瘤を認め,生検で腺癌と診断された.他に転移を認めず,肛門転移の診断にて同年3月に腹会陰式直腸切断術を施行した.病理所見はP,1型,60×70 mm, tub2, INFb, ly1, v1, pN0(0/3)であり,表面は扁平上皮で覆われており肛門への転移と診断された.

転位左肝動脈まで及んだ特発性左胃動脈解離の1例

著者: 山本希誉仁 ,   可児祐介 ,   山村和生 ,   長屋寿彦 ,   大谷聡 ,   安藤修久

ページ範囲:P.111 - P.114

要旨
症例は50歳,女性.背部痛が出現し当院を受診した.造影CTで左胃動脈解離を認め解離は転位左肝動脈まで及んでいた.いずれの解離も偽腔閉鎖型で真腔は開存していた.絶食・安静降圧の保存的治療を選択し,降圧により疼痛は消失した.第6病日に軽快退院となり外来経過観察となった.発症から2年経過しているが解離部位の瘤化は認めていない.転位左肝動脈解離を合併した左胃動脈解離は非常にまれと思われ,文献的考察を加え報告する.

臨床研究

再発鼠径ヘルニアに対する腹腔鏡下鼠径ヘルニア修復術の検討

著者: 岩内武彦 ,   平川俊基 ,   青田尚哲 ,   櫛谷友佳子 ,   栂野真吾 ,   内間恭武

ページ範囲:P.115 - P.122

要旨
【目的】再発鼠径ヘルニアに対して腹腔鏡下鼠径ヘルニア修復術(TAPP)を施行した症例について検討する.
【方法】2012年8月〜2021年10月に施行した鼠径ヘルニア手術815例を対象とし,初発症例に対しTAPPを行った群603例703病変と再発症例にTAPPを行った群19例20病変について比較検討を行った.
【結果】初発群と比較して再発群において内鼠径ヘルニアが有意に多かった.手術時間,術後合併症率については有意差を認めなかった.再発については初発群に1例再発を認め,再発群では認めなかったが,有意差は認めなかった.
【結語】再発鼠径ヘルニアに対するTAPPは有用な術式であることが示唆された.

書評

—Anne M. R. Agur,Arthur F. Dalley(原著) 坂井建雄(監訳) 小林 靖,小林直人,市村浩一郎,西井清雅(訳)—グラント解剖学図譜 第8版

著者: 尾﨑紀之

ページ範囲:P.34 - P.34

 このたび,原著15版に基づいた『グラント解剖学図譜 第8版』が出版されました.本書は,J. C. B. Grant教授が,自らの手で繊細な解剖を行った解剖標本をもとに忠実に描かれた解剖学図譜がもとになっており,写実性と正確性を特徴とした優れたアトラスです.
 写実的なアトラスの有用性は,解剖実習の現場で教えている誰もが感じるところです.解剖学で難解なのは,複雑な形をした臓器や器官の,空間的・立体的配置の会得です.これはいかに丁寧に言葉を尽くしても伝えるのが難しく,また繰り返し文章で読んでも理解することは難しいものです.剖出写真を示したとしても,学生では写真のどこに着目したらよいのかわからない場合があります.しかし,構造を理解している人の手によって描き起こされたアトラスの図を見ながら,自らの手で剖出することによって,頭の中でいくら再構築してもわからなかったことが初めてわかる,まさに腑に落ちる経験は,実習を経験した者なら何度もあると思います.

—佐々木克典(著)—外科医のための局所解剖学序説 第2版

著者: 松下尚之

ページ範囲:P.61 - P.61

 著者の佐々木克典先生は本書初版の序文で「卒後まだ日の浅い若き術者は,学生時代に学んだ解剖をうまく使えないということに,もどかしさを感じるのではないか」と述べておられるが,私はまさにその一人であった.私が1996年に大学を卒業し熊本大学第1外科に入局した年に雑誌『臨床外科』にて本書初版のベースとなる連載が始まった.私は雑誌から「外科医のための局所解剖学序説」の連載を切り離し冊子とし使用してきた.2006年に書籍として本書初版が出版され,長く待ち望んでいた第2版を2022年に手にすることができた.
 本書では系統解剖学と手術の実践解剖のギャップを埋めるべくさまざまな手法がとられている.その一つとして,体表の構造物を深部の構造物と結びつけることがある.個体差を超え構造物が恒常的に同じ位置にあることは手術のアプローチやIVRの手技などの基礎となる.また手術では表層から深部へアプローチするが,視点を変え深部から表層へ,左右の違いを理解するため正中から外側へ構造物をたどる手法がとられ,立体的な理解が得られるよう工夫されている.また生体には解剖を理解するための重要な間隙や断面がありその詳細が解説されている.私は本書の立体的なシェーマと『グラント解剖学図譜』などの解剖図譜を見比べながら,構造物を本文に沿って一つひとつたどっていき,そして手術に入るといった作業を繰り返した.単調ともいえる作業であり,膨大な構造物をすぐに覚えられるわけではないが,繰り返しているうちに次第に血管の基本走行や隣接臓器,さらに深部の構造物との位置関係が把握できるようになり,さまざまなメルクマールを持つことができるようになった.この知識は定型的な手術の安全な遂行や時間短縮だけでなく合併切除や突発的な出血への対応に役に立つ.

—小野敏嗣(編)—教科書では教えてくれない!—私の消化器内視鏡Tips Vol. 2+レジェンドTips—とっておきの“コツ”を伝授します

著者: 新井冨生

ページ範囲:P.69 - P.69

 本書は,日常診療で行う内視鏡検査における“コツ”を『教科書では教えてくれない! 私の消化器内視鏡Tips』として出版された書籍の第二弾(Vol. 2)である.表紙にはサブタイトルとして「とっておきの“コツ”を伝授します」とあり,帯には「実務で役立つ内視鏡の“コツ”100! +レジェンドから学ぶTips 23選」と記されている.表紙を見ただけで手に取りたくなる.
 日常診療における“コツ”というのは,内視鏡検査に限らず医療のいろいろな分野にあると思う.評者は病理医であり,内視鏡検査については全くの素人であるが,消化管病理を専門としている関係で書評を依頼された.Vol. 2の前にVol. 1も拝読してみたところ,なんとそこには既に内視鏡の“コツ”129編と他科からのアドバイス&メッセージ11編が紹介されていた.Vol. 2ではさらに100編の“コツ”が紹介されており,内視鏡検査の操作の難しさと奥深さを感じた.紹介されたTipsは観察,診断,治療など技術的なことに加え,心構えについてのTipsも紹介されている.心構えは指導医から直接教わることが多いが,本書を通じて会ったこともない先輩から学ぶのもよいと思う.

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目次

ページ範囲:P.2 - P.3

原稿募集 「臨床外科」交見室

ページ範囲:P.68 - P.68

バックナンバーのご案内

ページ範囲:P.126 - P.126

次号予告

ページ範囲:P.127 - P.127

あとがき

著者: 瀬戸泰之

ページ範囲:P.128 - P.128

  過ぎたるは猶及ばざるが如し
 免疫は実に面白い(失礼な言い回し,ご容赦を).これまで薬物療法においては,癌を叩くためには癌細胞を死滅させること(殺細胞性)が重要と考えられてきた.本特集の免疫チェックポイント阻害薬はまったく異なる発想である.もともと個体に備わっていた能力を引き出すために,その能力(癌細胞を排除する免疫力)を抑制していたものを抑制しようというのである.まさに,マイナス×マイナスはプラスなのである.癌細胞の戦略として,その周囲に制御性T細胞に代表される免疫抑制環境が形成されるとのことである.それが優位になると癌細胞の成長が速まるということらしい.個体に発生した異物である癌細胞には発生の早い段階から免疫が作用し,その発育を抑えるが,成長の段階で前述の免疫抑制環境がそれを抑えこむのである.もともと体内に発生した細胞への免疫細胞なので,時に癌細胞以外の正常細胞にも攻撃を加えてしまう.それがirAE(immune-related adverse effect)であり,従来の抗癌剤とはまったく異なる有害事象が起こりうる.その臓器も多岐にわたり,開始前には予想もつかないのが現状であろう.そして,時に致死的レベルの事象も起こりえるのであり,まさに「過ぎたるは猶及ばざるが如し」といったところと感じている.ぜひ本特集を熟読し,早期にその兆しを捉え,重篤な事態を回避することに努めていただきたい.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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