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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科78巻10号

2023年10月発行

雑誌目次

特集 肝胆膵外科 高度技能専門医をめざせ!

ページ範囲:P.1169 - P.1169

 日本肝胆膵外科学会が2011年に最初の高度技能専門医を認定してから10年以上が経ち,この制度は手術成績と若手外科医の育成に大きく寄与してきた.この資格では,単なる技術論だけでなく,理にかなった手術の適応や良好な術後成績,正確かつ丁寧な手術記事の記載など,肝胆膵外科医の総合的な実力が求められる.2022年12月に高度技能専門医制度の資格認定施行細則が改訂され,高難度手術の定義と範囲に大きな変更が加えられた.本特集では,今後同資格をめざす若手外科医の良き指針となるよう,必要な情報を網羅し,各論ではビデオ審査を受けるにあたっての手技の要点を解説していただいた.

総論

肝胆膵外科医がめざす各種学会資格の現状

著者: 板野理 ,   皆川卓也 ,   星本相淳 ,   篠田昌宏

ページ範囲:P.1170 - P.1173

【ポイント】
◆肝胆膵外科医がめざす各種学会資格として,日本肝胆膵外科学会高度技能専門医以外に,日本内視鏡外科学会技術認定医やロボット支援手術プロクターがある.
◆今後,内視鏡外科のさらなる普及に伴って,各資格の目的や対象などについて,関連学会間での摺り合わせと再構築が必要と思われる.

高難度肝胆膵外科手術の新基準:肝臓手術

著者: 松木亮太 ,   新田浩幸 ,   阪本良弘 ,   波多野悦朗

ページ範囲:P.1174 - P.1179

【ポイント】
◆肝胆膵外科高度技能専門医制度における高難度肝臓手術は,2021年までは開腹を想定した外側区域切除を除いた系統的肝切除や肝移植手術に限定されていた.
◆高難度肝臓手術の定義の見直しが行われ,腹腔鏡下肝切除や非系統的肝切除であっても,切除個所や深度,解剖学的位置によっては高難度肝臓手術として2022年1月より認められるようになった.

高難度肝胆膵外科手術の新基準:胆道・膵臓手術

著者: 白井祥睦 ,   吉岡伊作 ,   渋谷和人 ,   田中晴祥 ,   平野勝久 ,   渡辺徹 ,   村主遼 ,   木村七菜 ,   深澤美奈 ,   八木健太 ,   伊東美喜 ,   竹下知健 ,   長岡泰宏 ,   三輪武史 ,   関根慎一 ,   橋本伊佐也 ,   澤田成朗 ,   松井恒志 ,   藤井努

ページ範囲:P.1180 - P.1183

【ポイント】
◆拡大胆摘以上の肝切除とリンパ節郭清を伴う胆囊癌手術が新たに高難度手術に指定された.
◆膵体尾部切除(D2領域リンパ節郭清を伴った膵癌に限る)からリンパ節郭清を伴う膵体尾部切除(膵原発性浸潤性悪性腫瘍,NETに限る)に変更された.
◆血管温存膵体尾部切除が新たに高難度手術に指定された.

手術記事の書き方:肝臓編

著者: 石亀輝英 ,   丸橋繁

ページ範囲:P.1184 - P.1189

【ポイント】
◆肝胆膵外科手術は定型的な症例であっても,腫瘍局在や解剖変異などによるバリエーションが多く,詳細な記録記載および概略を示す手術スケッチが必須である.スケッチは手術記事全体の印象を決める大きな要素であるため,文章記録と同様に気合いを入れて作成すべきである.
◆高度技能専門医申請における手術記録には記載が必須の項目がある.記載漏れがないかをチェックリストを用いて確認するのが良い.
◆2022年12月の高難度肝胆膵外科手術の定義の改定により,肝臓においても「所定の条件」を満たす肝部分切除は高難度肝胆膵外科手術として認められるようになった.「所定の条件」を満たしていることを明確に示す手術記録が求められる.

手術記録の書き方:膵臓編

著者: 上村健一郎 ,   岡田健司郎 ,   松本逸平 ,   藤井努

ページ範囲:P.1190 - P.1196

【ポイント】
◆手術記録には手術適応についての記載が重要である.手術適応ありと認められた症例についてのみ認定される.
◆手術記録記載ではスケッチが重要で,写真のみでは不可.デジタルのイラストは使用可能であるが,症例固有の解剖や手術の違いにより随時変更が必要である.また,スケッチに腫瘍の位置や切離部位など症例固有の情報の記載が必要である.
◆スケッチについては少なくとも開腹時の腹腔内の所見,途中経過,再建図(再建がない場合は切除終了図)を必ず記載する.これらに加え,より詳細に記載することが望ましい.

オペ記事に役立つデジタルイラストの作成法

著者: 加藤智敬 ,   大嶋侑平 ,   高瀬健一郎 ,   渡辺雄一郎 ,   渡邉幸博 ,   岡田克也 ,   合川公康 ,   岡本光順 ,   小山勇 ,   田邉稔

ページ範囲:P.1197 - P.1204

【ポイント】
◆肝胆膵外科修練医には,情報が集約され記録として有用なスケッチを効率よく描くことが求められる.
◆質が高いスケッチを少ない労力で描くことができるツールとして,デジタルイラストは非常に有用である.

市中病院でもできるビデオ撮影と編集のコツ

著者: 浅野大輔 ,   吉野潤 ,   石川喜也 ,   渡邊秀一 ,   上田浩樹 ,   小野宏晃 ,   赤星径一 ,   工藤篤 ,   田中真二 ,   田邉稔

ページ範囲:P.1205 - P.1209

【ポイント】
◆審査員に見せる意識をもって,適切な倍率,適切な明るさで手術内容が一目でわかるビデオ撮影を意識する.
◆近年では一般向けのビデオカメラも十分高性能になってきているため,録画システムが病院になくても手術ビデオの撮影は可能である.
*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画を見ることができます(公開期間:2026年10月末まで)。

各論:ビデオ審査編

肝左葉切除(開腹)

著者: 河地茂行

ページ範囲:P.1211 - P.1215

ビデオ審査を受けるにあたってのアドバイス
◆多くの重要場面の術野が頭などで見えないビデオは,それだけで不合格になるので十分注意する.
◆Arantius板中枢(近位)での左Glisson鞘一括処理は不適切な鞘処理と見なされるので行わない.
◆術者の主体性も評価対象なので,第一助手主導の手術と見なされないよう意識することも大事である.
*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画を見ることができます(公開期間:2026年10月末まで)。

肝左葉切除(腹腔鏡下)

著者: 伴大輔 ,   高本健史 ,   水井崇浩 ,   奈良聡 ,   江﨑稔

ページ範囲:P.1216 - P.1221

ビデオ審査を受けるにあたってのアドバイス
◆申請時には術式の適応について明確に記載する.
◆左グリソンへのアプローチは安全かつ確実な手技で行う.
◆肝離断を安定して行う技量が必要である.
*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画を見ることができます(公開期間:2026年10月末まで)。

肝右葉切除(開腹)

著者: 片桐聡 ,   趙明浩 ,   樋口亮太 ,   新井田達雄

ページ範囲:P.1222 - P.1226

ビデオ審査を受けるにあたってのアドバイス
◆頭で術野を遮らない:カメラアングルを意識し良好な視野で撮影する.重要な所ではズーム機能を使用すると効果的.
◆指導的助手は手を出さない:術者ファーストで手術を進める.助手の手の動きで術者主導となっているかどうかはすぐにわかる.
◆中肝静脈は露出するよう努力する:必ずしも全露出は必要ないが,意識していることは強調したい.
*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画を見ることができます(公開期間:2026年10月末まで)。

肝右葉切除(腹腔鏡下)

著者: 阿部雄太

ページ範囲:P.1228 - P.1233

ビデオ審査を受けるにあたってのアドバイス
◆右肝動脈,門脈右枝を個別に処理をする際,腹腔鏡下の独特な視野がdisorientationをきたす可能性があり十分に注意する.
◆右肝管(肝門板)の切離はできるだけ末梢で行うべきである.そのためにある程度,肝実質離断を施行するなどの工夫が必要である.
◆Midplaneに対して術者が使用するトロッカーが適切な位置に挿入されていないと実質離断が難しくなる.場合によってはトロッカーの位置変更も考慮する.
◆肝離断面に中肝静脈を露出する必要性は症例により異なるが,審査ビデオではその技量が問われるため,ビデオ審査には適切な症例を選択したい.

生体肝移植ドナー手術

著者: 日比泰造

ページ範囲:P.1235 - P.1242

ビデオ審査を受けるにあたってのアドバイス
◆俯瞰・鳥瞰の意識をもつ:生体ドナー肝切除の各工程における手術操作が,どのような角度と距離から撮影すると見やすいか? 日頃より肝胆膵領域の手術ビデオを撮影し,術野を術者の視点ではなく上空からの映像として捉える(=審査員の視点)訓練を重ね,自身の手技を客観的に顧みることがビデオ審査での高い評価のみならず,さらなる技量の向上に繋がる.
◆手術チームで共通認識をもつ:健常人である生体ドナーに対する肝切除に限らず,外科医の本質である手術の高みを極めて新たな発展段階に到達するには,術前に徹底的なシミュレーションを行って執刀医,助手,撮影メンバー全体で各工程の内容,注意点,予定通り進まない場合の対応策,撮影すべき映像をすべて共有しておくことが肝要である.
*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画を見ることができます(公開期間:2026年10月末まで)。

膵頭十二指腸切除(開腹,膵腸吻合)

著者: 川井学

ページ範囲:P.1243 - P.1249

ビデオ審査を受けるにあたってのアドバイス
◆手術全体を通して,第一助手が手術を誘導しないよう,常に術者が主体性をもって手術を行う.
◆リンパ節郭清の際,門脈や総肝動脈,上腸間膜動脈などの主要動脈を鑷子などの粗暴な操作で把持せず,愛護的に操作する.
◆門脈剝離時の出血は,盲目的に止血鉗子でクランプしたり,やみくもに針糸をかけるのではなく,冷静に出血点を血管鑷子で把持し,血管縫合糸で的確に縫合止血する.
◆胃十二指腸動脈切離の前に,総肝動脈から分枝する胃十二指腸動脈および固有肝動脈をしっかり剝離同定し,胃十二指腸動脈クランプテストを行い,固有肝動脈の拍動を確認する.
*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画を見ることができます(公開期間:2026年10月末まで)。

膵頭十二指腸切除(開腹,膵胃吻合)

著者: 伊地知徹也 ,   大井秀之 ,   保坂優斗 ,   山崎洋一 ,   川崎洋太 ,   田上聖徳 ,   蔵原弘 ,   又木雄弘 ,   大塚隆生

ページ範囲:P.1251 - P.1256

ビデオ審査を受けるにあたってのアドバイス
◆術前に病変の進行度と解剖把握によるシミュレーションを十分に行う.
◆十分な術野展開によるビデオ撮影を確実に行い,ブラインド操作を避けた慎重な操作を心掛ける.粗野な操作は厳に慎むべきである.
◆術後は手術手技を振り返り,次の手術に向けての改善に努める.
*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画を見ることができます(公開期間:2026年10月末まで)。

手術器具・手術材料—私のこだわり・20

肝胆膵外科手術におけるLigaSureTM Exactの有用性

著者: 李東河 ,   登千穂子 ,   吉田雄太 ,   村瀬貴昭 ,   亀井敬子 ,   武部敦志 ,   中居卓也 ,   松本逸平

ページ範囲:P.1257 - P.1260

 われわれは肝胆膵外科手術に際し,エネルギーデバイスにLigaSureTM Exactを使用している.本稿では,肝胆膵外科手術におけるLigaSure Exactの有用性について,われわれが行っている手術手技と手技上の注意点,工夫点を踏まえ述べる.
*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画を見ることができます(公開期間:2026年10月末まで)。

同心円状モデルで読み解く 新しい食道外科解剖・8

気管分岐下領域の各論—中心は食道

著者: 藤原尚志

ページ範囲:P.1261 - P.1271

Introduction
 今回と次回で気管分岐部の周辺(気管分岐下領域および気管気管支角領域)の解剖を解説する.食道癌手術において最も危険な領域は,この気管分岐部の周辺であろう.大動脈弓から下肺静脈までの領域は大出血のリスクがあり,また気管分岐部から主気管支にかけては気道損傷のリスクがある.上縦隔郭清ばかりが注目されがちな食道癌手術であるが,今回と次回で扱う気管分岐部周辺をいかに安全に,確実に切り抜けるかが,手術成績に大きく関わるように感じている.逆に言えば,この気管分岐部の周辺の郭清の精度こそが,経胸腔手術の価値であるとも言えるかもしれない.下肺静脈以下の下縦隔領域は経裂孔的郭清で十分な郭清が可能である.また,頸部から大動脈弓までの上縦隔も縦隔鏡アプローチで精度の高い郭清が十分に可能である.しかし,気管分岐部の周辺領域は,間違いなく経胸腔手術が最も優れている領域である.
 この領域を扱う難しさの一つが,解剖理解の難しさ,特に層構造がどのようになっているのかという難しさである.これまで解説してきた縦隔の外科解剖は発生学に基づく左右対称性・同心円状構造を基本原則としてきており,気管分岐部周辺にも当然その原則は当てはまる.

FOCUS

医学生に対する外科勧誘のアプローチ

著者: 小松昇平 ,   岡田健次 ,   掛地吉弘 ,   國久智成 ,   尾藤祐子 ,   眞庭謙昌 ,   福本巧

ページ範囲:P.1272 - P.1276

はじめに
 日本の外科医師数は劣悪な労働環境などから1998年以降減少し,2004年の新医師臨床研修制度がそれに拍車を掛けた.日本外科学会の勤務実態調査を契機に処遇改善の必要性が認識され,外科医の絶対数減少には歯止めがかかったが,増加する医師全体のなかでの割合は減少を続けている(図1)1).このような状況下で外科医療は2024年4月からの働き方改革完全実施を迎えることになるが,医療水準を低下させることなく外科医の勤務時間制限を遵守するためには,①新人外科医師の確保,②医療の効率化,③タスクシフトの強化,など可能な対策に全力で取り組む必要がある.新人外科医の確保が最優先事項であることに異論はないが,長期の減少傾向を食い止める特効薬は存在しない.何よりも医学生に「外科を好きになってもらう」ことがその第一歩と考えている.本稿では特に医学生に対する教育の観点から,神戸大学外科学講座の取り組みを報告する.

臨床報告

経仙骨アプローチで切除したtailgut cystの1例

著者: 酒徳弥生 ,   岡田禎人 ,   永田純一 ,   鈴木和志 ,   田口泰郎 ,   二村雄介

ページ範囲:P.1277 - P.1282

要旨
症例は36歳,女性.30歳時の出産時に臀部皮下腫瘤を自覚.その後32歳と34歳の出産時に腫瘤内容を穿刺排液していた.今回,臀部腫瘤の増大と圧痛を主訴に当科紹介となった.左臀部に約5 cm大の軟らかい腫瘤を認め,MRI所見からtailgut cystが疑われた.経仙骨アプローチで囊胞を一括切除し,病理所見でtailgut cystと診断した.Tailgut cystは尾腸囊胞とも呼ばれる稀な先天性囊胞性疾患で,悪性化の報告があり,治療は手術による完全一括切除が推奨されている.今回,経仙骨アプローチで切除したtailgut cystの1例を経験したため,文献的考察を加え報告する.

鼠径部切開法のみで手術した鼠径ヘルニアに合併した非交通性陰囊水腫の1例

著者: 塩ノ崎元博 ,   河原秀次郎 ,   河合裕成 ,   塚崎雄平 ,   平林剛 ,   小村伸朗

ページ範囲:P.1283 - P.1285

要旨
症例は44歳,男性.7年前に右鼠径ヘルニアの手術を他院で受けた.3年ほど前から左側陰囊が徐々に腫大し巨大化したため,精査加療目的で当科に紹介された.腹部CT検査では両側の陰囊水腫がみられ,さらに右鼠径ヘルニアの再発と左鼠径ヘルニアがみられた.手術は両鼠径部の鼠径部切開法で開始した.左側鼠径管を開放して鼠径管内容を検索したがJHS M-3の鼠径ヘルニアと非交通性陰囊水腫であった.左側陰囊水腫を陰囊内から剝離授動して摘出しWinkelmann手術を行ったあと,精巣を陰囊内側に3針縫合固定して還納し,左鼠径ヘルニアはonlay meshを用いて修復した.右鼠径ヘルニアは前回の手術で留置したonlay meshと恥骨の間の再発でJHS R1,M-1であったため,その部位を縫合閉鎖した.また右側陰囊水腫は穿刺吸引のみ行った.これまでに非交通性陰囊水腫と鼠径ヘルニアを同時に手術した報告例はなく,陰囊を切開することなく鼠径部切開法だけで行う手術は,選択すべき術式の1つと考えられた.

病院めぐり

聖隷三方原病院外科

著者: 木村泰生

ページ範囲:P.1286 - P.1286

 聖隷三方原病院は,静岡県西部に位置する人口79万人の浜松市のやや郊外にあり,徳川家康と武田信玄の戦で知られる「三方ヶ原の戦い」の合戦場の近郊に立地しています.
 当院は総病床数940床と県下最大の病床を有し,浜松市北西部を中心に北は長野県境部,西は愛知県東部まで広範な医療圏を支える中核病院となっています.当院の特徴として,ドクターヘリが常駐している高度救命救急センター,手術支援ロボットda Vinciやハイブリッド手術室等の最新の診断・治療機器を備えている急性期病院である一方,日本で初めて開設されたホスピス病棟(27床)や重症心身障害児のためのおおぞら療育センター(150床),精神科病棟(104床)など,他の医療施設では経営効率的に敬遠されがちな慢性期医療でも,地域にとっては必要とされる医療を切り捨てることなく大切にしていることです.

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目次

ページ範囲:P.1166 - P.1167

原稿募集 私の工夫—手術・処置・手順

ページ範囲:P.1209 - P.1209

原稿募集 「臨床外科」交見室

ページ範囲:P.1256 - P.1256

バックナンバーのご案内

ページ範囲:P.1290 - P.1290

次号予告

ページ範囲:P.1291 - P.1291

あとがき

著者: 田邉稔

ページ範囲:P.1292 - P.1292

  ChatGPT神対応!(前編)
 「エッ,どうすんだよ!」朝一メールを見て思わず叫んだ.筆者が主催する第35回日本肝胆膵外科学会開催まであと10日,スペインのF教授が急に体調を崩して訪日できなくなったとの一報.メインセッションで基調講演を2つ頼んでいるので,プログラムに大穴があく.しかもメールを読み進めると,「ブラジルのE教授とイタリアのT教授に代理発表を頼んどいたヨ!」と軽いノリ.「ヒェ〜,大丈夫か!」ラテン系教授からラテン系教授への気軽な口約束,本当に代理発表を受けてもらえるのか? ましてやその日に会場に来られるのか? コロナ禍が明け,もはやリモート発表の機材は用意していない.この学会は筆者のキャリアを総括する大仕事,大恥をかくわけにはいかない.何とかしなければ…とにかく当事者たちにメールを書こう.代理発表を受けてもらえる? 発表日に訪日できる? ホテルは何泊? 謝金はフライト代含めてこれだけ…成田空港からの送迎は…会長招宴は…講演内容は…ウウウ…このクソ忙しいときにこんな複雑な内容のメールを書いていられるか,しかも英文で….PCOに頼もうと電話をするも,内容が複雑すぎて伝わらない.教室のスタッフを呼んで説明するが,それぞれが大量の仕事を抱えていて首が回らない.「本番まで時間がないし,会長自ら連絡をとらないとレスポンスが遅れて…」との冷静な意見も.ウウウ…「どうすんだよ!」

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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