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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科78巻11号

2023年10月発行

雑誌目次

増刊号 —消化器・一般外科—研修医・専攻医サバイバルブック—術者として経験すべき手技のすべて

著者: 田邉稔

ページ範囲:P.1 - P.1

 消化器外科や心臓血管・呼吸器外科をめざす場合,2年間の初期臨床研修をした後に外科専門研修プログラムに入る.多くの場合,地域の病院でまずは消化器・一般外科の手ほどきを受ける.高難度手術は助手としての体験にとどまるが,術者として体験すべき手技は,昔から手術の基本とされているアッペ,ヘモ,ヘルニア,ラパタンはもちろんのこと,乳腺腫瘤の生検,気管切開など多種多様である.さらに消化器外科専門研修プログラムに入れば,大腸癌や胃癌などの手術も担当するようになる.外科領域専攻医として体験する最初の数年間の手技は,その後の外科医としてのキャリアの基礎になる.
 本書では,外科領域専攻医として最初の数年間に体験すべき処置や手術を網羅した.一般外科医の「基本手技・処置」としては,中心静脈ライン挿入,CVポート造設,胸・腹腔穿刺,気管切開などの病棟で役立つ技術や,消化管吻合法,腹腔鏡下・縫合結紮法,カメラオペレーターの心得などの手術の基本操作を網羅し,外科医としてのキャリアをスムーズに開始できるような内容にした.また,疾患・手術としては消化器ばかりでなく,乳腺疾患,下肢静脈瘤,熱傷など一般外科医として現場で扱う可能性が高い疾患についても基本的な部分を網羅した.執筆にあたっては,臨床現場で役立つように図表やビデオクリップを多くし,外科専攻医ばかりでなく研修医にもわかりやすいように,技術や情報をコンパクトにまとめるよう心掛けていただいた.

Ⅰ.基本手技・処置

開腹・閉腹

著者: 篠田昌宏 ,   皆川卓也 ,   星本相淳 ,   板野理

ページ範囲:P.6 - P.11

ビギナーへのアドバイス
◯開腹,閉腹手技は,消化器外科研修の一丁目一番地である.
◯概ねの操作を習得するのは容易だが,すべての作業は合目的であり,その目的や意味まで理解していただきたい.
*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画を見ることができます(公開期間:2028年10月末まで)。

開胸・閉胸

著者: 谷島翔 ,   八木浩一 ,   瀬戸泰之

ページ範囲:P.12 - P.14

ビギナーへのアドバイス
◯開胸・閉胸操作に慣れるには,体位変換時から積極的にかかわり側臥位に慣れることが肝要である.
◯手術により開胸位置が異なったとしても,皮膚切開から胸膜切開までに出現する筋肉とその処理の仕方をイメージできるようにする.
*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画を見ることができます(公開期間:2028年10月末まで)。

中心静脈ライン挿入,CVポート造設

著者: 三輪快之

ページ範囲:P.16 - P.19

ビギナーへのアドバイス
◯きちんと準備を整えて,やりやすい状況で行う.
◯合併症をできる限り起こさないよう安全に行う.特に,穿刺針を深く刺入しすぎない.

胸腔穿刺,腹腔穿刺,ドレナージ

著者: 大矢周一郎 ,   廣末剛士 ,   渥美振一郎 ,   坂本啓 ,   岡本麻美 ,   浦辺雅之 ,   三輪快之 ,   谷島翔 ,   奥村康弘 ,   八木浩一 ,   野村幸世 ,   瀬戸泰之

ページ範囲:P.21 - P.24

ビギナーへのアドバイス
◯胸腔および腹腔穿刺に際して最も重要なのは穿刺部位の決定であり,事前に超音波画像診断やCT検査で適切な位置が選択できれば必ずしも難度の高い手技ではない.
◯急速な脱気や排液は呼吸循環動態に影響を及ぼす場合があり,特に多量となる場合は単回穿刺ではなく緩徐な持続ドレナージも考慮すべきである.
*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画を見ることができます(公開期間:2028年10月末まで)。

気管切開

著者: 浦辺雅之 ,   瀬戸泰之

ページ範囲:P.25 - P.27

ビギナーへのアドバイス
◯外科的気管切開では,皮膚切開から気管への到達・開窓まで,手技に様々なバリエーションがある.それぞれの特徴をよく理解しておくことが重要である.

トロカーの種類,挿入・閉創法

著者: 近藤宏佳 ,   山口茂樹

ページ範囲:P.28 - P.31

ビギナーへのアドバイス
◯臍でのファーストトロカー挿入時,臍の解剖をよく理解したうえで切開し,十分に腹壁を挙上しながらトロカーを挿入すること.
◯10 mm以上のトロカー創は筋膜も縫合し,縫合後に自身の指で触診し筋膜に欠損がないことを確認しておくこと.

減黄処置—PTGBD,PTBD

著者: 皆川卓也 ,   板野理 ,   星本相淳 ,   篠田昌宏

ページ範囲:P.32 - P.36

ビギナーへのアドバイス
◯PTGBDを安全かつ確実に行う技術とドレナージ後の適切な管理を行う知識を体得する.
◯PTBDでは適切な穿刺ルートを選択し,PTGBDの技術を応用させて愛護的操作を心がける.
*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画を見ることができます(公開期間:2028年10月末まで)。

消化管吻合

著者: 藤本大裕 ,   小林宏寿

ページ範囲:P.37 - P.39

ビギナーへのアドバイス
◯ゆっくりと.
◯確実に.
◯丁寧に.

腹腔鏡下の縫合・結紮法

著者: 内田一徳

ページ範囲:P.41 - P.43

ビギナーへのアドバイス
◯腹腔鏡下縫合結紮は地道なトレーニングで勝ち取るテクニックである.テキストブックを読むだけで簡単に縫えると思ったら大間違い.
◯腹腔鏡下縫合結紮のテキストブックを読んで,各地で行われている講習会やセミナーに参加し基本を身につけ,ドライボックスでのトレーニングを行い鉗子操作に慣れることが大切である.
◯その辺りを踏まえたうえで,腹腔鏡下鉗子操作に不慣れな先生方に腹腔鏡下手術中サバイバルブックとしての簡単な縫合結紮テクニックを紹介する.腹腔鏡下縫合結紮ができる先生方はこのセクションは飛ばして構わない.

審査腹腔鏡

著者: 小林大介 ,   岩崎真由子 ,   村田仁美 ,   平野豪 ,   北条由美子 ,   袴田紘史 ,   野地雄太 ,   安藤秀一郎 ,   櫻井俊輔 ,   小池翠 ,   筒山将之 ,   間下優子 ,   間下直樹 ,   野田純代 ,   杉本博行 ,   望月能成 ,   谷口健次

ページ範囲:P.44 - P.46

ビギナーへのアドバイス
◯審査腹腔鏡は腹膜播種の存在診断や,腹部救急疾患に対する手術適応の判断の目的で行われる,低侵襲で有用な外科手技の1つである.
◯腹腔内観察の手順を定型化し,見落としのないように行うことが重要である.
*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画を見ることができます(公開期間:2028年10月末まで)。

カメラオペレーターの心得

著者: 宮崎遼 ,   平松康輔 ,   黒柳洋弥

ページ範囲:P.47 - P.50

ビギナーへのアドバイス
◯手術の流れを意識する.教科書での学習だけではなく,実際の手術動画を見て,全体の流れを理解することが重要である.
◯解剖学的メルクマールを理解し,各術野においてカメラの水平を意識する.

熱傷(軽症〜広範囲)

著者: 田中佑也 ,   海田賢彦 ,   山口芳裕

ページ範囲:P.51 - P.54

ビギナーへのアドバイス
◯熱傷の手術では壊死した組織を確実に切除することが重要である.
◯熱傷創に対する減張切開は皮下組織までの切開で十分である.

Ⅱ.体表・体壁

乳腺腫瘍生検の適応と手技—吸引細胞診,針生検,マンモトーム生検,切除生検

著者: 関朋子 ,   林田哲 ,   北川雄光

ページ範囲:P.93 - P.97

ビギナーへのアドバイス
◯正確および確実な診断のために撮影した画像を十分に吟味することが第一に重要である.予想される疾患の特徴から病理学的診断に必要かつ十分量の検体を得るため,侵襲度をふまえたうえでの適切な生検方法の使い分けが重要となる.
◯乳腺診療における生検針を用いた手技の獲得には,超音波装置の探触子の方向と針の穿刺ルートをフリーハンドで合わせる技術が必須となる.
*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画を見ることができます(公開期間:2028年10月末まで)。

リンパ節摘出術—頸部,腋窩,浅鼠径部

著者: 丹羽隆善 ,   小川利久

ページ範囲:P.98 - P.101

ビギナーへのアドバイス
◯良好な視野が得られるよう,創はやや広めとする.
◯摘出するリンパ節を損傷させないよう,愛護的な操作を心掛ける.
*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画を見ることができます(公開期間:2028年10月末まで)。

ヘルニア

鼠径部ヘルニア手術のための解剖学的要点

著者: 朝蔭直樹 ,   中村誠志 ,   大島秀紀 ,   徳田禎久

ページ範囲:P.55 - P.60

ビギナーへのアドバイス
◯先輩の素晴らしいテクニックは盗んでも,(解剖)用語の鵜呑みには注意せよ.
◯子宮内の胚子の発育を俯瞰する.腹膜前腔の成り立ちを想像せよ.
◯今どの空間を剝がしているのか意識せよ.

鼠径ヘルニア:メッシュプラグ法

著者: 野田裕俊 ,   蜂須賀丈博

ページ範囲:P.61 - P.64

ビギナーへのアドバイス
◯ヘルニア手術において鼠径部の膜の解剖の理解が非常に重要である.手技において内精筋膜の長軸方向切開,腹膜前筋膜浅葉の全周性切開がポイントである.
◯ヘルニア手術においてneuralgiaは重大な合併症であり,最大限の注意が必要である.

鼠径ヘルニア:TAPP法

著者: 藤崎洋人 ,   中川基人 ,   室井貴子 ,   西村英理香 ,   林啓太 ,   金子靖 ,   田島佑樹 ,   石井賢二郎 ,   本郷久美子 ,   葉季久雄 ,   高野公徳

ページ範囲:P.66 - P.72

ビギナーへのアドバイス
◯solo-surgery:1人で良好な視野を出せないと手術が成り立たない.腹膜を牽引する向きや強さ(ベクトル)が適切か,常に気を配る.
◯定型化:手術手順のみならず,各場面における視野の出し方や使用するデバイス,剝離する方向なども含め,詳細まで突き詰めることが重要である.
*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画を見ることができます(公開期間:2028年10月末まで)。

鼠径ヘルニア:TEP法

著者: 長浜雄志

ページ範囲:P.73 - P.79

ビギナーへのアドバイス
◯腹直筋後鞘から連続する膜様組織APRSを温存して剝離を行う.
◯APRSを腹壁付着部で切開し,腹膜を十分に授動するとのちの操作が容易になる.
◯腹膜前腔から腹直筋後腔を広く展開し,Meshは皺のよらないように十分外側まで被覆する.

大腿ヘルニアの診断と手術方法

著者: 江口祐輝

ページ範囲:P.81 - P.85

ビギナーへのアドバイス
◯大腿ヘルニア(新JHS分類F型)は嵌頓・腸管壊死を伴うことも多く,患者それぞれの状態に応じた治療が必要となる.確実な診断のもと適切な術式選択を行うことが重要であり,各術式に精通しておく必要がある.
◯腹腔鏡下手術は両側の正確なヘルニア診断とその修復,術後早期の疼痛や慢性疼痛が少なく,有用性が広く示されている.

腹壁瘢痕ヘルニア

著者: 嶋田元 ,   松原猛人

ページ範囲:P.86 - P.91

ビギナーへのアドバイス
◯ヘルニア門が大きい,非還納性などの複雑性を避け,臍部正中の比較的小さな腹腔鏡手術後の腹壁瘢痕ヘルニア症例から導入する.
◯特に腸管近傍での癒着剝離ではエネルギーデバイスの使用を避け,剪刀によるコールドカットで行い,ヘルニア門は確実に閉鎖する.
*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画を見ることができます(公開期間:2028年10月末まで)。

下肢静脈瘤

下肢静脈瘤の基礎知識—病態生理,解剖,診断

著者: 西澤真人

ページ範囲:P.103 - P.108

ビギナーへのアドバイス
◯下肢静脈瘤の臨床症状は静脈圧上昇に基づく静脈うっ滞が主体である.
◯下肢静脈瘤の診断治療に超音波検査は重要で,超音波検査技術の習得が必要である.

下肢静脈瘤の治療法—血管内レーザー焼灼術,高位結紮・抜去術,硬化療法など

著者: 広川雅之

ページ範囲:P.109 - P.114

ビギナーへのアドバイス
◯血管内治療はほぼすべての手技をエコーガイド下に行うため,普段から自分でエコー検査を行うことが上達の早道である.
◯血管内治療,ストリッピング手術以外にも,stab avulsion法や硬化療法の手技も必ず身につけておかなければならない.
*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画を見ることができます(公開期間:2028年10月末まで)。

Ⅲ.胃・十二指腸

胃十二指腸穿孔に対する縫合術・大網充填術

著者: 松下英信 ,   木村海斗 ,   新井博人 ,   田中卓 ,   姫野智紀 ,   坪井拓磨 ,   岩田尚樹 ,   鈴木寛 ,   田中秀明 ,   吉田光一 ,   加藤三矢 ,   武田重臣 ,   大河内治 ,   川瀨義久

ページ範囲:P.115 - P.117

ビギナーへのアドバイス
◯穿孔部周囲の組織は浮腫状で脆弱なため,愛護的な手術操作が必要である.腹腔鏡下で縫合・結紮を行う際には,術者が操作しやすい環境を整える.
◯穿孔部の縫合閉鎖および大網被覆を基本術式とするが,腹腔内の洗浄およびドレナージが最も重要であることに留意する.
*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画を見ることができます(公開期間:2028年10月末まで)。

胃瘻造設術—PEGを含めて

著者: 木南伸一

ページ範囲:P.118 - P.122

ビギナーへのアドバイス
◯必要な症例に躊躇なく栄養療法を提供するため,胃瘻造設術はすべての外科医・消化器内視鏡医が精通すべき手技である.
◯今日の内視鏡的胃瘻造設術(PEG)はintroducer変法が主流で,専用の市販キットが有用である.

胃局所切除術

著者: 稲木紀幸

ページ範囲:P.123 - P.127

ビギナーへのアドバイス
◯局所切除で完結する腫瘍であることを術前検査で見極める.腫瘍の部位と大きさで適切な局所切除を計画する.
◯局所切除を行ったあとは少なからず胃が変形する.切除後の胃が囊状やダンベル型にならないように留意する.

胃空腸吻合術:開腹・腹腔鏡下手術

著者: 安福至 ,   杉山恵みり ,   河合純兵 ,   土屋博 ,   奥村直樹 ,   松橋延壽

ページ範囲:P.128 - P.133

ビギナーへのアドバイス
◯本術式には上部消化管手術における吻合を中心とした基本手技が詰まっているため,消化器外科医としてぜひ習得してもらいたい.
*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画を見ることができます(公開期間:2028年10月末まで)。

Ⅳ.小腸・結腸 急性虫垂炎

急性虫垂炎の治療方針

著者: 小山英之 ,   田中邦哉

ページ範囲:P.135 - P.141

ビギナーへのアドバイス
◯急性腹症の中でもcommon diseaseの一つであり,その診断から治療までに必要な知識を整理することが重要である.
◯重症例では右結腸切除,急性汎発性腹膜炎手術など,高度な術式と周術期重症管理を要求されることもあり,虫垂炎といえども幅広い治療戦略をもつ必要がある.

急性虫垂炎の手術:開腹手術

著者: 吉田剛

ページ範囲:P.142 - P.145

ビギナーへのアドバイス
◯術前に虫垂の走行や炎症の程度を十分に評価してから,皮膚切開法や術式を選択し,手術に臨む.
◯腹腔内で虫垂が容易に同定されない場合もある.その際は創の外側をのぞきこむような形で,上行結腸,盲腸をまず同定し,その結腸ヒモをたどり,虫垂根部に到達する.

急性虫垂炎の手術:単孔式腹腔鏡下手術

著者: 平沼知加志

ページ範囲:P.146 - P.150

ビギナーへのアドバイス
◯虫垂切除術は外科医の出発点として重要であり,手術技術,器械操作の基本である.緊急で対応することが多く,日頃から準備をしておくことが重要である.
◯炎症の程度により難易度が様々であるため.指導医の下で適切な判断力,手術手技を身に付ける.

腸切除・人工肛門

回盲部切除術:開腹手術

著者: 青柳康子 ,   椿昌裕

ページ範囲:P.152 - P.156

ビギナーへのアドバイス
◯右側結腸・右側結腸間膜周囲の解剖を理解し,解剖学的な層に沿った剝離層で十分な結腸間膜の授動を行う.
◯右側結腸のリンパ流,適切な郭清範囲を理解し,ICV・ICAを適切な位置で処理し安全な手術を行う.

回盲部切除術:腹腔鏡下手術

著者: 稲田涼 ,   益永あかり ,   相田眞咲 ,   黒田絵理 ,   公文剣斗 ,   吉岡貴裕 ,   岡林雄大 ,   尾崎和秀 ,   渋谷祐一

ページ範囲:P.157 - P.161

ビギナーへのアドバイス
◯回盲部切除は,最初に執刀する消化器癌手術の1つである.腹腔鏡で行われることが多く,解剖学的な理解とともに十分なhand eye coordinationを習得したうえで手術に臨む必要がある.
◯回盲部切除は,さまざまなアプローチ法があるが,大腸癌に対する後腹膜剝離先行内側アプローチに関して解説する.
*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画を見ることができます(公開期間:2028年10月末まで)。

S状結腸切除術:開腹手術

著者: 小森康司 ,   木下敬史 ,   佐藤雄介 ,   大内晶 ,   伊藤誠二 ,   安部哲也 ,   三澤一成 ,   伊藤友一 ,   夏目誠治 ,   檜垣栄治 ,   奥野正隆 ,   藤枝裕倫 ,   赤座賢 ,   斎藤悠文 ,   成田潔 ,   北原拓哉 ,   花澤隆明 ,   小塩英典 ,   禰冝田真史 ,   清水泰博

ページ範囲:P.162 - P.167

ビギナーへのアドバイス
◯開腹手術は基本的に,第一助手(前立ち:指導医),第二助手との協調作業(カウンタートラクションなど)で進行していくことを認識する.
◯進行癌手術の場合は局所再発をしないような手技(徹底したリンパ節郭清,播種予防)を心掛ける.
*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画を見ることができます(公開期間:2028年10月末まで)。

S状結腸切除術:腹腔鏡下手術

著者: 富永哲郎 ,   野中隆 ,   永安武

ページ範囲:P.168 - P.171

ビギナーへのアドバイス
◯腫瘍学的に正しい手術施行のためには,助手と協調した確実な視野展開と剝離層の維持が必要である.
◯縫合不全予防のため,吻合部血流と緊張緩和への対策が重要である.

ハルトマン手術:開腹手術

著者: 藤田晃浩 ,   森下幸治

ページ範囲:P.172 - P.175

ビギナーへのアドバイス
◯患者の術前の状態を適切に把握し,手術時間や手技の選択を.
◯合併症を減らす判断,努力を惜しまない.

人工肛門造設・閉鎖術

著者: 田中佑典 ,   塩見明生 ,   賀川弘康 ,   日野仁嗣 ,   眞部祥一 ,   山岡雄祐

ページ範囲:P.177 - P.183

ビギナーへのアドバイス
◯ストーマ造設後の傍ストーマヘルニアや,outlet obstructionを避けるため,適切な大きさで,腹壁をまっすぐ貫く挙上経路作成を心掛ける.
◯ストーマ閉鎖は癒着の中での手術となるため,挙上腸管の不要な損傷を避けるため,慎重な剝離操作が必要である.
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腸閉塞・憩室

腸閉塞の診断と治療方針

著者: 西舘敏彦 ,   佐橋倭 ,   河野剛 ,   宇野智子 ,   中山健太 ,   甲田英暁 ,   村本里奈 ,   佐々木賢一

ページ範囲:P.184 - P.192

ビギナーへのアドバイス
◯腸閉塞とは腸管内容の通過が機械的/物理的に障害された病態である.腸閉塞は急性腹症の中でも頻度の高い疾患の一つであり,腹部緊急手術の多くを占める.
◯絞扼性腸閉塞など,手術適応がある腸閉塞を見逃すことなく迅速に診断・対応することが,治療成績向上に重要と考えられる.

腸閉塞の治療—保存的治療から手術まで

著者: 松山貴俊

ページ範囲:P.194 - P.196

ビギナーへのアドバイス
◯保存的治療中は患者の状態を十分に観察し,改善がないときは治療法の変更を検討する.
◯外ヘルニア嵌頓に対する非観血的整復は鎮痛下に行い,整復後の偽還納に注意する.
◯癒着剝離時は比較的剝離が容易なところから行う.腹膜播種による腸閉塞の手術ではイレウス管が有用である.

メッケル憩室の診断と治療・外科手術

著者: 岡本健太郎 ,   水野裕貴 ,   伊藤佳史 ,   鎌田悠子 ,   岡本将太

ページ範囲:P.197 - P.201

ビギナーへのアドバイス
◯メッケル憩室は,近年では造影CT検査や小腸内視鏡検査による診断能の向上により術前に正確に診断できるようになった.
◯腹腔鏡・直視下の手技,術前術後管理に至る一連の流れを含めて,消化器・一般外科のビギナーが術者として初期に経験すべき術式としては適切な疾患と思われる.

Ⅴ.直腸・肛門

内痔核結紮切除術

著者: 小澤広太郎

ページ範囲:P.202 - P.208

ビギナーへのアドバイス
◯内痔核の手術治療で最も多く行われているのは結紮切除術である.当院ではそのなかでも開放式結紮切除術(縫合固定法)を行っており,その術式におけるポイントについて述べる.
◯痔核による脱出・出血・疼痛の症状をとり,日常の排便生活に問題のない肛門にすることが痔核手術の目的であり,患者にとって満足のいく肛門にするためには術後の合併症をできるだけ避けることが必要である.

肛門周囲膿瘍切開術

著者: 福島慶久 ,   松田圭二 ,   林くらら ,   池畑泰行 ,   宮田敏弥 ,   浅古謙太郎 ,   島田竜 ,   金子建介 ,   端山軍 ,   野澤慶次郎 ,   落合大樹 ,   橋口陽二郎

ページ範囲:P.210 - P.214

ビギナーへのアドバイス
◯肛門周囲膿瘍と診断したら,膿瘍部を切開排膿してドレナージを行う.
◯切開する際は,将来的に痔瘻化した場合の根治手術を考慮して,括約筋の損傷を避ける.

痔瘻根治術

著者: 高野正太

ページ範囲:P.216 - P.220

ビギナーへのアドバイス
◯本邦では痔瘻は隅越分類によって分類され,治療および手術方針が決定される.
◯手術は肛門機能を保護する術式,つまり括約筋のダメージを最小限に抑える方法を選択する.
◯本邦では括約筋温存術を中心に手術が行われてきたが,近年は欧米を中心に,瘻管を全切除せず切断する方法が広がっている.
*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画を見ることができます(公開期間:2028年10月末まで)。

直腸脱手術(経肛門的)—Delorme法,Altemeier法,Gant-三輪-Thiersch法

著者: 三浦康之 ,   船橋公彦 ,   栗原聰元 ,   吉田公彦 ,   甲田貴丸 ,   長嶋康雄 ,   鈴木孝之 ,   鏡哲 ,   金子奉暁 ,   牛込充則

ページ範囲:P.221 - P.228

ビギナーへのアドバイス
◯直腸脱の治療は手術であるが,高齢者に頻度が高い特性から侵襲が少ない経肛門的手術が選択されることが多い.
◯肛門疾患・直腸脱診療ガイドライン2020年版では,脱出腸管長が5 cm未満はDelorme法あるいはGant-三輪-Thiersch法,5 cm以上はAltemeier法の術式選択が提案されている.
*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画を見ることができます(公開期間:2028年10月末まで)。

Ⅵ.肝胆膵

脾摘術:開腹手術

著者: 吉田寛 ,   清水哲也 ,   川野陽一 ,   上田純志 ,   松下晃 ,   吉岡正人 ,   川島万平 ,   谷合信彦 ,   真々田裕宏

ページ範囲:P.260 - P.262

ビギナーへのアドバイス
◯巨脾に対する脾摘では躊躇せずに皮膚を大きく切開し,良好な視野を展開することが重要である.
◯術早期に脾動脈結紮し出血量を軽減させることは重要だが,視野が悪い場合は無理をせずに後で行う.

膵体尾部切除術(良性):開腹手術

著者: 長瀬勇人 ,   石戸圭之輔 ,   木村憲央 ,   若狭悠介 ,   袴田健一

ページ範囲:P.263 - P.269

ビギナーへのアドバイス
◯膵周囲の膜構造,動脈,静脈の解剖を理解する.
◯膵断端処理や動脈周囲操作は膵液瘻や仮性動脈瘤などの重篤な合併症に関連するため,繊細な手術手技を要する.

肝部分切除術:腹腔鏡下手術

著者: 勅使河原優 ,   若林大雅 ,   藤山芳樹 ,   贄裕亮 ,   伊藤望 ,   間中敬介 ,   青柳裕太郎 ,   松村光 ,   原島諒 ,   海瀬理可 ,   筒井敦子 ,   岡本信彦 ,   大村健二 ,   若林剛

ページ範囲:P.271 - P.275

ビギナーへのアドバイス
◯術前に3D構築画像などから切離ラインや処理するGlisson/肝静脈のシミュレーションを行う.
◯実質離断の際には超音波凝固切開装置または超音波外科吸引装置(CUSA)を用いて愛護的に行い,肝静脈やGlissonは丁寧に処理する.

肝外側区域切除術:腹腔鏡下手術

著者: 山下宏成 ,   石川喜也 ,   浅野大輔 ,   渡邊秀一 ,   上田浩樹 ,   赤星径一 ,   小野宏晃 ,   工藤篤 ,   田中真二 ,   田邉稔

ページ範囲:P.276 - P.280

ビギナーへのアドバイス
◯肝離断は1か所で深く入らず,幅広の離断面を意識する.
◯脈管はすぐに確保せず,周囲の肝実質を十分剝離してから確保・切離する.

胆石症

胆石症の分類と各種治療法

著者: 伊藤晃 ,   上田浩樹 ,   浅野大輔 ,   石川喜也 ,   渡邊秀一 ,   赤星径一 ,   小野宏晃 ,   田邉稔

ページ範囲:P.230 - P.235

ビギナーへのアドバイス
◯胆石症は,胆囊結石症,総胆管結石症,肝内結石症に分類される.
◯胆囊結石症では,症状を認める場合は腹腔鏡下胆囊摘出術が第一選択となる.総胆管結石症および肝内結石症では内視鏡的治療が多く行われている.

急性胆囊炎・胆管炎:診断と重症度別の治療方針

著者: 奥村拓也 ,   牧野晃大 ,   稲守宏治 ,   山下公裕 ,   礒垣淳 ,   川辺昭浩 ,   鈴木憲次

ページ範囲:P.236 - P.241

ビギナーへのアドバイス
◯全身状態と画像を解析し,ガイドラインに沿って個々の治療方針を立てる.
◯急性胆囊炎に対する早期Lap-Cを念頭に置いて,フローチャートをもとに診断を進める.

胆囊摘出術:腹腔鏡下手術

著者: 梅澤昭子 ,   春田英律

ページ範囲:P.242 - P.247

ビギナーへのアドバイス
◯術野を展開する方向に気を配る.視野の奥に押し込まず,手前に引き出すように展開することを心掛ける.
◯主要なランドマークは手技の始まりにも途中にも折々に確認し,誤認損傷を回避する.
*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画を見ることができます(公開期間:2028年10月末まで)。

総胆管結石除去術:開腹手術

著者: 上村健一郎 ,   住吉辰朗 ,   新宅谷隆太 ,   岡田健司郎 ,   馬場健太 ,   原田拓海 ,   橋本龍慶 ,   高橋信也

ページ範囲:P.248 - P.252

ビギナーへのアドバイス
◯近年,総胆管結石除去術は,内視鏡的総胆管結石除去術や腹腔鏡下手術が第一選択となることが多い.そのため,開腹総胆管結石除去術を執刀する機会は,胃切除術後や上記手技での困難例など,必ずしも容易でない症例が多いが,肝胆膵手術の基本手技として習得が必須な術式である.
◯肝十二指腸間膜内には,固有肝動脈,門脈に加え,総胆管の栄養血管で総胆管右側を縦走する9 o'clock arteryと総胆管左側を縦走する3 o'clock arteryがある.これらを損傷しないよう術中超音波検査などにより周囲解剖を正確に把握しながら安全に手術を施行することが肝要である.
*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画を見ることができます(公開期間:2028年10月末まで)。

胆囊疾患の特殊例への対処—急性胆囊炎,偶発胆囊癌,遺残結石

著者: 堀周太郎 ,   田中真之 ,   浜野郁美 ,   長谷川康 ,   八木洋 ,   阿部雄太 ,   北郷実 ,   中塚誠之 ,   北川雄光

ページ範囲:P.253 - P.259

ビギナーへのアドバイス
◯急性胆囊炎に対する腹腔鏡下胆囊摘出術では,safe stepsに従い,常に胆囊表面の層に沿った剝離を行う.
◯胆囊摘出術後に偶発的に胆囊癌を認めた場合,まず正確な組織診断をつけた後に,腫瘍の深達度や水平進展,腫瘍遺残の有無などにより追加切除を検討する.
◯胆囊摘出術前に総胆管結石の既往があり,胆囊〜胆囊管内にも落石しやすい小さい結石を認める症例は,術後総胆管結石遺残の可能性を念頭におく.
*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画を見ることができます(公開期間:2028年10月末まで)。

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目次

ページ範囲:P.2 - P.4

原稿募集 「臨床外科」交見室

ページ範囲:P.259 - P.259

バックナンバーのご案内

ページ範囲:P.281 - P.281

あとがき

著者: 田邉稔

ページ範囲:P.282 - P.282

  ChatGPT神対応!(後編)
【前号のあらすじ】筆者のキャリアを総括すべき第35回日本肝胆膵外科学会の開催を目前に控え,スペインのF教授から体調不良のためドタキャンのメールが入り事務局は大混乱,代理講演は?事態収拾のため,海外関係者に連絡の必要,だが時間がない…そうだChatGPTでササッと英文メールを!学んだばかりの入力方法を思い出しながら…よ〜し,これで良いはず,「Go!…アレッ? 何だこりゃ!!」

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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