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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科78巻12号

2023年11月発行

雑誌目次

特集 胃癌に対するconversion surgery—Stage Ⅳでも治したい!

ページ範囲:P.1297 - P.1297

 Conversion surgeryについては様々な臓器でトピックとなっているが,臓器によって事情は少しずつ異なるようである.胃癌においては,術前化学療法(NAC)後の手術に対し,原則として切除の適応がない転移性胃癌において化学療法が奏効したことで手術の適応が出てくるという形での治療モダリティーの変更を表現しconversion surgeryと呼称するのが一般的である.

総論

Conversion surgeryの定義—術前補助化学療法(NAC)後の切除術とどう異なるのか

著者: 小寺泰弘

ページ範囲:P.1298 - P.1301

【ポイント】
◆術前補助化学療法後の手術と化学療法の結果としてのconversion surgeryでは,治療のコンセプトが異なると考えられている.
◆Conversion surgeryにおいてもR0切除が目標となるが,必ずしも治療開始前に存在した癌をすべて切除するわけではない.
◆グローバルにはoligometastasisという概念が出てきており,これに対する手術もconversion surgeryと考えられている.

吉田分類ごとにみたconversion surgery

著者: 石田道拡 ,   丁田泰宏 ,   桂佑貴 ,   白川靖博 ,   塩崎滋弘

ページ範囲:P.1302 - P.1306

【ポイント】
◆Stage Ⅳ胃癌に対するconversion surgeryにおいて,カテゴリー分類が提唱されている.
◆国際多施設共同後ろ向き研究(CONVO-GC-1)で,conversion surgeryの安全性とR0切除での生命予後の改善が示された.
◆カテゴリー分類は,Stage Ⅳ胃癌に対する治療戦略の検討において有用である.

Conversion surgery—適応とタイミング(術前薬物療法の期間)

著者: 藤谷和正 ,   本告正明 ,   宮崎安弘 ,   広田将司

ページ範囲:P.1307 - P.1312

【ポイント】
◆cStage ⅣB胃癌において,標準治療である薬物療法に対するconversion surgeryの全生存期間における優越性を検証したランダム化比較試験の成績は報告されていない.
◆Conversion surgeryの適応としては,欧州におけるOMEC projectでのコンセンサスやランダム化比較試験FLOT5における対象が1つの目安となる.
◆Conversion surgeryを目指した術前薬物療法の適切な施行期間は4〜6か月と推察される.

Conversion surgeryを誘導するための化学療法レジメンとは

著者: 大沼啓之

ページ範囲:P.1313 - P.1318

【ポイント】
◆胃癌においても奏効割合とconversion達成率は相関する可能性がある.
◆conversion達成には標準治療レジメンのほか,三剤併用療法やタキサン腹腔内投与療法も選択肢となりうる.
◆レジメンの選択においては強力なsurvival benefitを有するconversion surgery達成を見据えた視点を忘れてはならない.

海外におけるconversion surgeryの考え方

著者: 服部卓 ,   寺島雅典

ページ範囲:P.1320 - P.1324

【ポイント】
◆欧米では,oligometastasisに対する外科治療をconversion surgeryとして扱うことが多く,根治切除不能例に対する化学療法後の切除に関する報告はきわめて少ない.
◆Oligometastasisを中心とした観察研究では外科切除の安全性と有効性が示唆されており,現在ランダム化比較試験が複数のグループで進められている.
◆オランダの研究グループからはoligometastasisに関するコンセンサスが報告されており,今後ランダム化比較試験が実施される予定である.
◆Oligometastasisに対するconversion surgeryの意義に関しては海外で施行されているランダム化比較試験の結果が待たれる.

化学療法を開始した症例の何%がconversion surgeryの対象となるのか

著者: 河口賀彦 ,   丸山傑 ,   庄田勝俊 ,   赤池英憲 ,   市川大輔

ページ範囲:P.1325 - P.1331

【ポイント】
◆胃癌stage Ⅳのなかで大動脈周囲リンパ節に少量の転移であれば,化学療法後に約8割のR0手術が施行されている.
◆CY1P0症例において化学療法を施行後,R0手術の割合は4〜7割である.
◆多発肝転移を有する症例におけるconversion surgeryは約2割に施行されている.
◆腹膜播種を認める症例において化学療法施行後のR0手術の割合は約2割だが,腹腔内化学療法によりその治療成績は向上している.

腫瘍内科医からみたconversion surgery

著者: 中山厳馬

ページ範囲:P.1333 - P.1338

【ポイント】
◆診断時切除不能胃癌の化学療法奏効例で原発切除を受けず,化学療法を継続した症例の生存期間中央値は27.9か月であった.
◆Conversion手術を受けた症例の再発率は高率であったが,再発例は全例化学療法を施行されていた.
◆手術と化学療法を組み合わせて,長期生存のチャンスを高めるように外科医と腫瘍内科医が力を合わせることが最も肝要である.

各論

高度リンパ節転移を有する胃癌に対する集学的治療—NACかconversionか

著者: 伊藤誠二

ページ範囲:P.1339 - P.1343

【ポイント】
◆No. 16a2/b1の大動脈周囲リンパ節転移までにとどまる場合はNACの対象,これより遠位に転移がある場合にはconversionの対象である.
◆NAC対象の高度リンパ節転移陽性胃癌に対する治療は,術前DOS療法+胃切除+大動脈周囲リンパ節郭清である.
◆大動脈周囲リンパ節転移を伴う場合の取り扱いについては今後さらに検討が必要である.

腹腔洗浄細胞診陽性(CY1)胃癌に対するconversion surgery

著者: 安福至 ,   河合純兵 ,   土屋博 ,   牧山明資 ,   奥村直樹 ,   松橋延壽

ページ範囲:P.1344 - P.1348

【ポイント】
◆CY1胃癌患者に対する治療は主に手術+術後化学療法と化学療法後のconversion surgeryがある.
◆CY1胃癌患者に対するconversion surgeryでは腹腔洗浄細胞診の陰転化が重要である.
◆CY1胃癌患者に対する化学療法の効果判定には審査腹腔鏡検査が有用である.

腹膜播種を有する胃癌に対するconversion surgery

著者: 齋藤心 ,   山口博紀 ,   金丸理人 ,   大澤英之 ,   高橋和也 ,   金子勇貴 ,   倉科憲太郎 ,   細谷好則 ,   佐田尚宏 ,   北山丈二

ページ範囲:P.1349 - P.1355

【ポイント】
◆腹膜播種陽性胃癌に対するIp-PTX+SOX療法は,安全で有効な治療である.
◆腹膜播種奏効例に対するconversion surgeryは,予後改善に貢献できる可能性がある.
◆高度腹水を伴う胃癌腹膜播種症例でも,CART併用Ip-PTX+SOX療法により腹水コントロールが期待できる.

肝転移を有する胃癌の治療方針—NACかconversionか?

著者: 野呂拓史 ,   吉岡龍二 ,   三瀬祥弘 ,   齋浦明夫

ページ範囲:P.1356 - P.1362

【ポイント】
◆胃癌肝転移は,多発例や,肝以外の非治癒因子が併存することが多く,切除の適応となる症例は限られる.
◆胃癌肝転移切除後の予後因子は,個数,大きさ,原発の深達度などであり,肝外転移をもつものは基本的に手術適応とならない.
◆化学療法の奏効により,R0切除が可能な場合は,conversion surgeryにより肝転移を伴う切除不能胃癌も予後の改善を期待できる.

遠隔転移を有する胃癌治癒切除後に対する術後化学療法

著者: 小倉望 ,   廣瀬俊晴 ,   髙島淳生

ページ範囲:P.1363 - P.1368

【ポイント】
◆遠隔転移を有する胃癌治癒切除(R0)後に対する術後化学療法の有効性を示唆する報告はあるものの,質の高いエビデンスはない.
◆レジメンは,Stage Ⅱ〜Ⅲに対する術後補助化学療法または緩和的薬物療法に準じた報告があるが,エビデンスレベルは低い.手術の影響により全身状態が低下していることも多く,症例ごとに適切なレジメンを選択することが重要である.
◆免疫チェックポイント阻害薬を含んだ周術期治療開発が進んでおり,これらの試験結果が待たれる.

免疫チェックポイント阻害薬投与後のconversion surgery症例の特徴

著者: 中西香企 ,   田中千恵 ,   小寺泰弘

ページ範囲:P.1369 - P.1374

【ポイント】
◆ICI(免疫チェックポイント阻害薬)併用化学療法は高い奏効率が期待できるが,現時点ではconversion surgeryの可能性に関するエビデンスは乏しい.
◆ICI併用化学療法では,irAE(免疫関連有害事象)と化学療法の有害事象との鑑別とマネジメントが重要である.
◆ICI併用化学療法は重篤な有害事象のリスクが高まり,conversion surgeryの適応や安全性に影響する可能性がある.

Topic

Conversion surgeryは本当に必要か?—MSI-H/dMMR症例における臓器温存の可能性

著者: 榊田智喜 ,   舛石俊樹 ,   室圭

ページ範囲:P.1375 - P.1379

【ポイント】
◆MSI-H/dMMR切除可能胃癌に対する術前免疫チェックポイント阻害薬(ICI)は病理学的完全奏効(pCR)割合が高い.
◆MSI-H/dMMR切除不能胃癌に対するICIは高い奏効割合と長期生存が期待できる.
◆切除可能・不能にかかわらずMSI-H/dMMR胃癌に対するICIにより,手術回避による臓器温存が選択肢となる可能性がある.

同心円状モデルで読み解く 新しい食道外科解剖・9

気管気管支角領域の各論—No. 106tbLはどこ?

著者: 藤原尚志

ページ範囲:P.1380 - P.1389

Introduction
 今回のテーマである気管気管支角領域は果たして上縦隔だろうか? 気管分岐部を境界とした胸部上部食道に対応した領域という観点ならば上縦隔に分類されるのが妥当だろう.また手術操作を考えれば,いわゆる左反回神経周囲に含めた一連の領域として扱われることが多い.ただし,いわゆる「臓器鞘」は,頸部から大動脈弓までとされており,そのような観点で考えれば気管気管支角領域は「臓器鞘」という頸部・上縦隔の大きな特徴を欠いた領域,と言える.同心円状の層構造の観点では,気管気管支角領域は大動脈弓上と弓下の移行領域であり,双方の特性を併せもった領域であると理解している.
 同心円状モデルにおいては,Visceral layerが消化管に沿って頭頸部から骨盤まで一貫して,部位に応じて「胃間膜」「腸間膜」「直腸固有間膜」という形で連続的に存在していると考えており,よって本連載第6〜8回でも述べたように,大動脈弓下領域でもVisceral layerは確かに存在している.そのためVascular layerとの境界である間隙Spaceも,大動脈弓上領域から不明瞭となりながらも連続的に存在している.つまり,「大動脈弓より尾側に臓器鞘が存在するのか」という問いは,単に今述べた大動脈弓以下にも存在する間隙Spaceを「臓器鞘」と呼ぶかどうかというだけの問題である.

FOCUS

マルチロボット時代に向けて—異なる手術支援ロボットシステムの導入を経験して

著者: 花井恒一 ,   廣純一郎 ,   勝野秀稔 ,   大塚幸喜 ,   稲葉一樹 ,   須田康一 ,   宇山一朗

ページ範囲:P.1390 - P.1398

はじめに
 本邦では,米国で開発されたDa Vinci S Surgical System(以下,Sシステム)が手術支援ロボットシステム(Robot-Assisted Surgical System:RASS)として2009年に初めて製造販売承認され,臨床応用されるようになった.その後,Da Vinci Si Surgical System(以下,Siシステム)が機能,操作性,教育面においてアップグレードされ,さらにDa Vinci Xi Surgical System(以下,Xiシステム)が,システムの小型軽量化に伴い操作性,安全性の向上,器具の多様化などを中心にバージョンアップされた1).一方,Intuitive社が取得した多数の特許権により他企業でのRASSの開発は遅れていたが,2019年には特許権の有効期限切れにより各企業が開発を進めている.本邦では,2015年よりシスメックス社とMedicaroid社が共同開発を進めてきたhinotoriTM Surgical Robot System(HSRS)の完成を受け,2020年8月泌尿器科,2022年11月には消化器・産婦人科手術の製造販売承認を得た2)(図1).現在までにマスタースレーブ型のRASSが製造販売承認されているのはDa Vinci Surgical System(DVSS),HSRS,Hugo Robot-Assisted Surgical System(コヴィディエンジャパン社)である.今後,マスタースレーブ型ではない機種も含め,多くの企業から次々にRASSは開発されてくることが予想される3)
 当院では2008年にSシステムが導入され,胃癌手術を先頭に自費診療においても各外科系診療科が次々とDVSSを使用した手術を積極的に導入してきた4〜7)(図2).アップグレードされたSiシステム,さらに画期的なバージョンアップがされたXiシステムが製造販売承認後,順に導入された.2018年には12術式の保険収載やDVSSによる手術症例件数が急激に増加したことも受け,機種の変更追加が行われた.さらに2020年にはHSRSが製造販売承認後導入され,現在ではXiシステム3台に加え,HSRSの1台が導入されている(図1,2).
 現在複数のDVSSを導入する施設は多いが,今後,他企業の開発が進むなかで異なる機種を導入する施設も増加することが予測される.異なる機種を同時に運用することは問題点も出てくる.本稿では,著者らの経験をもとにその問題点とその対策について解説する.

手術器具・手術材料—私のこだわり・21

エンドミニリトラクトTM圧排子

著者: 本田五郎

ページ範囲:P.1400 - P.1402

 脈管を剝離・露出して全周を確保するには,脈管の背後を損傷することなく剝離する操作が必須であり,その際,先端が強く屈曲した直角鉗子が有用である.しかし,腹腔鏡下手術では屈曲部の長さ(デバイス幅)はトロッカーの口径(通常は5〜12 mm)以下に制限され,デバイス本体の挿入角度も自在に変えられないため,脈管の背後に沿って回り込むような剝離操作がしばしば困難になる.そこでわれわれが,腹腔鏡下肝切除術の際に脈管確保のために愛用しているのがエンドミニリトラクトTM圧排子(以下,エンドミニリトラクト:コヴィディエンジャパン)である.

病院めぐり

福島労災病院外科

著者: 武藤淳

ページ範囲:P.1403 - P.1403

 福島労災病院は,東北の最南端に位置する福島県いわき市にあります.いわき市は映画『フラガール』でも紹介された大規模温泉リゾート施設があり,“常磐もの”と呼ばれる海産物の美味しい,降雪のほとんどない気候温暖な地域です.1955(昭和30)年に常磐炭鉱(1976年に閉山)とその関連産業での労働災害対処を目的に開設されましたが,疾病構造変化に伴い1962(昭和37)年,当時470床あった病床を1998(平成10)年には結核病棟を廃し,2022(令和4)年からは399床・21診療科にコンパクト化して,地域の二次救急の中心病院として稼働しています.労働災害は大きく減りましたが,労働者の職業関連疾患の予防やリハビリテーション,社会復帰支援などを行いつつ,がん診療に重点をおき,地域連携(紹介患者約9割,逆紹介が約7割)を大切にした診療体制です.
 現在は外科医7人(指導医4人・専攻医3人)で診療していますが,年間100件ほどの手術をこなす呼吸器外科(2人)の人手不足を手伝いながら9人で協力して外科系疾患に対応しています.この3年にわたるCOVID-19感染下で時々の診療制限はありましたが,通年での外科の手術件数に大きな変化はなく,約850件(呼吸器外科を含めると約950件)の手術を行っています.そのうち約4割が悪性腫瘍の手術で,進行癌が多い地域にて,鏡視下手術割合は4割弱にとどまっています(ちなみに良性胆道疾患へのラパコレは毎年100件超え).

臨床研究

歯科標榜のない急性期病院での歯科衛生士による周術期予定外介入症例の検討

著者: 中山良子 ,   沖田充司 ,   池谷七海 ,   山本澄治 ,   佃和憲 ,   横山伸二

ページ範囲:P.1404 - P.1409

要旨
背景:当院は歯科標榜のない急性期公的基幹病院で,予定外に口腔管理介入を要し難渋する症例を経験している.
方法:2019年1月から2020年3月まで周術期等口腔機能管理の対象外で,歯科衛生士による予定外介入外科手術症例を対象に,周術期背景と介入内容を検討した.
結果:対象は全手術(局所麻酔除く)796例中20例(2.5%)で,年齢中央値81歳,男性13例,女性7例.19例が緊急入院で,疾患は急性胆囊炎が多かった.高齢者,摂食嚥下機能障害,口腔内環境悪化,低栄養状態の症例が多く,全身状態に配慮した口腔健康管理を必要とした.
結論:歯科専門職による緊急入院症例への介入体制の構築と地域住民への普段からの歯科受診啓発の必要性が示唆された.

臨床報告

SOX療法による化学療法中に肝膿瘍を発症した進行胃癌の1例

著者: 今西謙太郎 ,   治田賢 ,   小林一泰 ,   丸山修一郎 ,   平井隆二 ,   金谷欣明

ページ範囲:P.1410 - P.1414

要旨
72歳,女性.脱力,嘔気を主訴に受診.上部消化管内視鏡検査を施行し,幽門前庭部大彎側に1型病変を認め,生検結果は腺癌であった.造影CT検査では大動脈周囲リンパ節に腫大を認め,まず化学療法を行う方針とした.SOX療法開始5日目に発熱し,造影CTにて肝膿瘍を疑う所見があり,肝膿瘍ドレナージおよび抗菌薬投与を開始した.膿瘍腔は縮小し発熱も改善した.CT検査にて肝膿瘍は縮小したが原発巣は増大しており,原発巣制御目的に幽門側胃切除術を施行した.術後1年間S-1による術後補助化学療法を施行し,術後1年6か月の現在も無再発生存中である.肝膿瘍を伴う胃癌は,原発巣切除により肝膿瘍のコントロールも可能となりうる.

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目次

ページ範囲:P.1294 - P.1295

原稿募集 私の工夫—手術・処置・手順

ページ範囲:P.1301 - P.1301

原稿募集 「臨床外科」交見室

ページ範囲:P.1348 - P.1348

バックナンバーのご案内

ページ範囲:P.1418 - P.1418

次号予告

ページ範囲:P.1419 - P.1419

あとがき

著者: 小寺泰弘

ページ範囲:P.1420 - P.1420

 夜中に呼び出されて緊急手術をすると,仮に1時間の手術であってもその準備,手術室からの連絡待ち,術後の指示出しなどに加えて病院との往復で相当の時間を取られます.それに一旦手術という究極の緊張状態で覚醒させられると,終わったからといってすぐに入眠し翌朝までの残された睡眠時間を有効利用するのは簡単なことではありません.ゆえに翌日の夜まで通常勤務をすると若くても相当疲れますが,そこで長い一日がようやく終わったと思っているとその夜中にまた呼ばれる…という経験はありませんか.緊急手術を要する患者さんが連日搬入されるのはそれほど珍しいことではないという日常において,前日の夜中に緊急手術に従事したとか,当直で救急対応をしまくったとか,諸々の事情を考慮してどの若手を呼び出すかを緻密に考えてもらえるような仕組みは,これまではあまりなかったのではないかと思います.私が働き方改革にもっとも期待しているのは,そのようなところをしっかりと管理していただくことです.
 ところが,ようやく時間外労働の管理をしっかりしてくれる方向になると思ったら,今度はこれまでろくに支払っていなかったはずの超過勤務手当を気前よく支給せよとのこと.どれだけ働いても「勉強になってよかったな」で済まされ,今風にいえば過労死レベルの業務を何とかこなしつつ勤務医として生き残った世代の私たちが今,頭を抱えながらどの仕事が業務でどの仕事が自己研鑽かをZ世代の若者たちにハラスメントにならないように説明しなければならないのは何の因果か陰謀かと腹立たしい思いです.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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