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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科78巻5号

2023年05月発行

雑誌目次

特集 術後QOLを重視した胃癌手術と再建法

ページ範囲:P.523 - P.523

 胃癌手術における胃の切除範囲は占居部位に規定され,進行癌においてはあまり工夫の余地がないが,比較的早期の癌では縮小手術の適応がある.しかし,縮小手術も真価を発揮するためには様々な工夫が必要である.一方,進行癌に対する胃全摘術はとりわけQOLに対する影響が大きい.著しい体重減少は術後補助化学療法のコンプライアンスにも影響し,予後にも関わる可能性がある.このため術後の外来診療においては,栄養療法や切除術後障害を軽減する薬物療法など様々な工夫が凝らされている.さらに,再建に際して,パウチなどの代用胃で失われた容量を補う工夫も永年行われてきた.

総論

胃癌手術と術後QOLについての患者報告型アウトカムを用いた近年の研究方法とその成果

著者: 小寺泰弘

ページ範囲:P.524 - P.528

【ポイント】
◆質問票を用いて測定する患者報告型アウトカムは臨床研究の評価項目として有用である.
◆これまでは海外の質問票が使用される傾向にあったが,わが国でも胃切除術後障害を含む上部消化管手術後のQOLの評価に適した質問票がいくつか開発された.
◆以上より,術式や再建法を評価する臨床研究を実施する準備が整ったと考える.

胃癌術式と胃切除後障害

著者: 中田浩二 ,   池田正視 ,   高橋正純 ,   木南伸一 ,   吉田昌 ,   上之園芳一 ,   小寺泰弘 ,   川村雅彦 ,   柏木秀幸 ,   羽生信義

ページ範囲:P.529 - P.533

【ポイント】
◆様々な胃切除術式の影響を科学的に評価して術式の選択や改良に役立てることが重要である.
◆各胃切除術式が胃切除後障害(≒患者の日常生活)に及ぼす影響を評価するには,胃切除後の評価を目的に開発された質問票(PGSAS-45など)が有用である.
◆術式以外にも様々な臨床因子が胃切除後のQOLに影響を及ぼすが,術式選択は介入可能な因子として特に重要である.
◆同じ術式でも適応と手技の違いにより胃切除後障害の重さは異なるため,術後QOLの向上に寄与する適応と手技を明らかにし普及させる必要がある.

永年の経験より代用胃への思いを語る

著者: 池田正視 ,   吉安俊介 ,   村上誠洋 ,   和田康宏 ,   山形邦嘉 ,   上田一夫 ,   岡田啓二 ,   大橋佳弘 ,   名波竜規 ,   龍雅峰 ,   上田哲郎

ページ範囲:P.534 - P.539

【ポイント】
◆腹腔鏡やロボット手術が発展する現代でも,胃切除後障害に悩む患者は依然多く,再建法の工夫が重要である.
◆胃切除後にHis角・Fornixがある生来の胃の形状に再建することで,術後QOLは向上する.
◆胃切除後のHis角・Fornix形成もしくは温存パウチ間置術は容易かつ安全な術式である.

噴門側胃切除

噴門側胃切除術は本当に胃全摘術より優れた術式なのか

著者: 國崎主税 ,   佐藤渉 ,   笠原康平 ,   近藤裕樹 ,   田村祐子 ,   小坂隆司 ,   秋山浩利 ,   遠藤格

ページ範囲:P.541 - P.546

【ポイント】
◆腹腔鏡下噴門側胃切除+double tract再建は,短期治療成績が胃全摘と同等あるいは,より優れた術式であるとの報告が多い.
◆腹腔鏡下噴門側胃切除+double tract再建は,長期的QOLが胃全摘よりも良好で,全生存期間は同等との報告が多い.
◆汎用性の高い腹腔鏡下噴門側胃切除術後の再建法としてdouble tract再建が考えられ,胃全摘との前向き比較試験が必要と考える.

噴門側胃切除後再建におけるパウチの役割

著者: 會澤雅樹 ,   藪崎裕 ,   松木淳 ,   番場竹生 ,   中川悟

ページ範囲:P.547 - P.551

【ポイント】
◆噴門側胃切除は上部胃癌における機能温存手術だが,胃全摘に対する術後QOLの優位性は確立していない.
◆空腸パウチ作製によって胃全摘後の症状が改善するエビデンスが示され,今後は噴門側胃切除後再建での導入が期待される.
◆パウチを併用する噴門側胃切除後再建では,逆流防止処置,腹腔鏡手術で施行し得る簡便性,縦隔内吻合に対応可能な術式の開発を要する.

腹腔鏡下噴門側胃切除術におけるdouble tract reconstructionの工夫:NI法

著者: 辻敏克 ,   稲木紀幸

ページ範囲:P.552 - P.557

【ポイント】
◆Double tract reconstruction(DT)は,残胃の大きさに左右されず,胃上部癌のみならず,食道胃接合部癌にも対応可能な再建法である.
◆NI法はDTにおける空腸残胃吻合に工夫を加えたもので,生理的な食物経路の実現と逆流性食道炎の予防をめざした再建法である.
◆NI法は術後逆流性食道炎の発生がなく,術後の体重減少の予防に寄与する傾向にある.
*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画を見ることができます(公開期間:2026年5月末まで)。

胃全摘

腹腔鏡下胃全摘術における空腸パウチ作製の手技とポイント

著者: 太田秀一 ,   沈由剛 ,   庄野容子 ,   李悠 ,   石田叡 ,   岡村昌彦 ,   関岡明憲 ,   水上陽 ,   壷井邦彦 ,   伊藤鉄男 ,   足立幸人

ページ範囲:P.559 - P.564

【ポイント】
◆パウチ作成(腹腔内操作):腹腔内で十分な犠牲腸管を作成する.補助切開はトライツ靱帯の高さで正中におき,腸間膜が捻れないように体外へ導く.
◆パウチ作成(体外操作):腸管牽引はごく軽度にする.折り返し16 cmの空腸で小さなパウチ(SigniaTM camel 60 mm+45 mm)を形成する.排出路の狭窄に注意し共通孔を閉鎖する.
◆食道空腸吻合:パウチの頂点が左背側に位置するように順蠕動方向に食道後壁と吻合する.pseudo fornixの形成を意識する.
◆パウチの固定:左側への落ち込み予防するため,横行結腸,横行結腸間膜へ固定する,必要に応じて十二指腸への固定も追加する.
*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画を見ることができます(公開期間:2026年5月末まで)。

胃全摘後の再建法:ランダム化試験によるパウチ再建の検証—Aboral pouch

著者: 伊藤友一

ページ範囲:P.565 - P.573

【ポイント】
◆胃全摘術後には食事摂取量の減少や体重減少,栄養障害が続発する.
◆胃全摘術後の再建法として,Roux-en-Y法とAboral pouch法を比較する多施設共同ランダム化試験を行った.
◆Aboral pouch再建は長期的には下痢症状を緩和するが,体重減少や栄養状態はRoux-en-Y法と変わらなかった.

幽門側胃切除

小胃を残す幽門側胃切除術

著者: 石田洋樹 ,   布部創也 ,   幕内梨恵 ,   速水克 ,   井田智 ,   熊谷厚志 ,   大橋学

ページ範囲:P.574 - P.579

【ポイント】
◆極小残胃となっても噴門機能を温存することで術後のQOLや栄養状態の維持が期待できる.
◆術前内視鏡で腫瘍口側縁,陰性生検,食道胃接合部の正確な位置を確認する.
◆術中内視鏡での反転操作でマーキングクリップを確認し,口側断端を確保する.
*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画を見ることができます(公開期間:2026年5月末まで)。

幽門側胃切除術後の最適な再建方法とは

著者: 今井義朗 ,   田中亮 ,   松尾謙太郎 ,   本田浩太郎 ,   朝隈光弘 ,   李相雄

ページ範囲:P.581 - P.589

【ポイント】
◆幽門側胃切除術後の再建法は,それぞれに長所・短所があり,第一選択肢として推奨される再建術式は存在しない.
◆幽門側胃切除術後の再建術式を比較したRCTは多数存在するが,QOLに関しては大きな差はない.
◆Postgastrectomy Syndrome Assessment Scale(PGSAS)-45は,胃切除後のQOL評価に特化した質問票であり,幽門側胃切除術後の再建法に関する新たなエビデンス構築に有用な評価法になりえる.
◆再建法の長所・短所を十分に理解し,症例ごとに最適な再建法を選択することが望ましい.

QOLからみた幽門保存胃切除術のコツ

著者: 並川努 ,   花﨑和弘 ,   瀬尾智

ページ範囲:P.590 - P.594

【ポイント】
◆幽門保存胃切除術は幽門側胃切除術に比して下痢,ダンピング症状,補食必要度の面で優れた術式である.
◆1/3〜1/2程度の残胃の大きさが至適であり,残胃幽門洞長は胃術後障害の程度に影響する.
◆吻合方法および迷走神経腹腔枝温存の有無が術後障害に与える影響の解釈は難しく,さらなる検討を要する.

グルコース値からみた幽門側胃切除術後の再建法

著者: 窪田健 ,   大橋拓馬 ,   西別府敬士 ,   大辻英吾

ページ範囲:P.595 - P.600

【ポイント】
◆胃切除後は血糖変動が大きく,低血糖の頻度が高い.そして症状を訴えない夜間低血糖の患者が存在する.
◆術後12か月が経過しても低血糖の頻度はさほど改善しておらず,血糖変動はむしろ増悪していた.
◆BillrothⅠ法とRoux-en-Y法再建の比較では,Roux-en-Y法のほうが血糖変動は大きく,低血糖の頻度は多いが,術後約12か月で同等となる.

同心円状モデルで読み解く 新しい食道外科解剖・4

頸部・気管傍領域—頸部こそが食道外科の原点

著者: 藤原尚志

ページ範囲:P.602 - P.611

Introduction
 頸部こそが食道外科の原点であるとはいえ,胸腔鏡手術,さらにはロボット支援手術全盛の現在においては,直視下での頸部操作は明らかに手術の中心ではない.現在の胸腔鏡全盛の時代より以前には,胸部操作の負担(患者および術者双方の負担!?)を軽減するために,頸部および腹部(経裂孔)から可及的に切除操作をあらかじめ進めておく術式が行われており,頸部操作の重要性は実際に高かった.この頸腹先行の流れは現在の縦隔鏡(+経裂孔的腹腔鏡)手術へとつながっている.胸腔鏡や腹腔鏡と異なり,わかりやすい形で映像を残すことが少々難しく,技術の標準化が難しかったという点も,頸部操作が時代に取り残された原因かもしれない.
 私自身は,解剖学的に一様である頸部〜上縦隔の頸胸境界領域を「(大動脈)弓上領域」と認識して,部分的な胸骨切開を厭わず頸部からの一括した手術操作でこの領域に限局した食道癌の切除・再建を行うことの合理性を強く感じており,実際に積極的に行っている.ときに切除するのが難しい頸胸境界領域の食道癌に適したアプローチであると確信している.もちろん現在は頸部操作が重視される時代ではないが,時代がまた一巡して日の目を見るときがきっと来るはずである.

手術器具・手術材料—私のこだわり・16

食道裂孔からの中下縦隔術野展開におけるatrial retractor(心囊鉤)の役割

著者: 瀬戸泰之

ページ範囲:P.612 - P.613

 2018年診療報酬改定で,食道癌に対する非胸腔アプローチ根治手術として,縦隔鏡下食道悪性腫瘍手術が保険適用され,さらに2020年改定では同手術でのロボット支援も認められた.すなわち,食道裂孔からと頸部からの術野展開で食道癌根治術を行えることとなった.肺癌術後や慢性閉塞性肺疾患(COPD)により胸腔アプローチ適応外となる症例に対しても,従来法では困難であった根治切除が行えることになり,今では根治術式として認知されるに至っている.後縦隔という狭小空間での術野確保が課題で,仰臥位であることもあり,気腹を用いても特に食道裂孔からの中縦隔(心囊背側)の視野展開が難しいことはしばしば経験されるところである.
 われわれは,食道癌に対する非開胸・非胸腔アプローチを,片肺換気麻酔不要no one-lung ventilation esophagectomy with lymphadenectomy(NOVEL)として,2012年から行ってきた.当初は開腹創からda Vinci armを経裂孔的に挿入し,視野展開のため特注の柄の長い鉤を入れて心囊を圧排(挙上)し術野を確保した.心拍出量低下による血圧低下が術中しばしば発生し,そのつど手術を中断し,血圧の回復を待ったものである.15例目からは気腹下da Vinci armを挿入したが,やはり術野展開が課題であった.そんな状況で,atrial retractorがわれわれの術式における視野展開に有用なのではないかとのアドバイスをいただいた.確かに非常に有用であり,今日まで270例のロボット支援縦隔鏡食道悪性腫瘍手術を行ってきたが,不可欠の手術器具になっている.
*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画を見ることができます(公開期間:2026年5月末まで)。

FOCUS

「食道癌診療ガイドライン2022年版」改訂のポイント

著者: 竹内優志 ,   松田諭 ,   川久保博文 ,   北川雄光

ページ範囲:P.615 - P.620

はじめに
 2002年に日本食道疾患研究会(現:日本食道学会)により食道癌の日常診療に役立てることを目的に「食道癌治療ガイドライン」が発刊され,2007年には「食道癌診断・治療ガイドライン」へと名称が変更された.2017年には「食道癌診療ガイドライン」と名称を変えて第4版が出版され,2022年9月,5年の期間をおいて第5版1)が発刊された.
 本稿では,「食道癌診療ガイドライン2022年版」における主な改訂点,ポイントについて概説する.

病院めぐり

公立学校共済組合東海中央病院外科

著者: 日比健志

ページ範囲:P.621 - P.621

 このたび,病院紹介の機会をいただきましたので,概略ではありますが,当科の現状を記載させていただきます.
 東海中央病院は公立学校共済組合直営8病院の1つで,岐阜県の各務原市にあります.各務原市は人口約15万人で,名古屋市のベッドタウンとして栄えています.許可病床は332床(一般241床,HCU 12床,緩和ケア30床,地域包括49床)で,地域医療支援病院の指定を受けており,市民病院のない各務原市の基幹病院として機能しています.

手術手技

術中膀胱鏡が有用であった右鼠径部膀胱ヘルニアの1例

著者: 赤尾希美 ,   成田潔 ,   草深智樹 ,   小倉正臣 ,   濵田賢司 ,   金兒博司

ページ範囲:P.622 - P.626

要旨
膀胱ヘルニアの治療は,膀胱を損傷することなく解剖学的に正確な位置に還納し,鼠径ヘルニア同様に再発を予防するためのヘルニア修復術を行うことが重要であり,術中に確実に膀胱を同定することが求められる.本症例ではヘルニア囊と膀胱が強く癒着していたが,術中膀胱鏡を用いることで膀胱を損傷することなくヘルニア囊を剝離することができた.ヘルニア囊との癒着の強い膀胱ヘルニアの手術の際には,術中膀胱損傷回避のため術中膀胱鏡を併用することが有用である.

臨床報告

鼠径管後壁を切開することで腹腔鏡下に切除しえたNuck管水腫の1例

著者: 黒田顕慈 ,   長谷川毅 ,   久保尚士 ,   櫻井克宣 ,   日月亜紀子 ,   前田清

ページ範囲:P.628 - P.632

要旨
症例は30歳の女性,右鼠径部痛を主訴に当院を受診した.子宮内膜症を合併したNuck管水腫と診断し,子宮内膜症の検索も要したため,腹腔鏡下手術を選択した.内鼠径輪から水腫を確認することができなかったため,下腹壁動静脈内側の鼠径管後壁を切開し,子宮円索を内側へ引き抜いたうえで,さらに遠位側へ追求していくとNuck管水腫を認め,損傷することなく完全に切除できた.体表近くにあるNuck管水腫に対して腹腔鏡下手術は完全切除が困難といわれているが,鼠径管後壁を切開する手技を加えることで,より遠位部にあるNuck管水腫も切除可能であると考えられた.

乳び腹水を伴った原発性小腸軸捻転症の1例

著者: 佐久間崇 ,   寺岡均 ,   庄司太一 ,   木下春人 ,   中川泰生 ,   大平雅一

ページ範囲:P.633 - P.637

要旨
症例は81歳の男性で,心窩部不快感および黒色嘔吐を主訴に救急搬送され,絞扼性腸閉塞の術前診断で緊急手術を施行した.腹腔内には少量の乳び腹水が貯留しており,また小腸は腸間膜根を軸として時計回りに180度捻転していた.小腸に病変は認めず,原発性小腸軸捻転症および絞扼性腸閉塞と診断した.腸管壊死は認めず,捻転解除術のみ施行し手術終了した.術後24日目に退院となり,8か月間再発なく現在まで経過している.成人例での原発性小腸軸捻転症は比較的稀で,絞扼が緩い初期段階には乳び腹水を伴うことがある.腹腔穿刺やCT値から術前の腹水性状を精査することで,腸管壊死の有無を術前から予測できると考えられた.

書評

—国立がん研究センター内科レジデント(編)—がん診療レジデントマニュアル 第9版

著者: 石岡千加史

ページ範囲:P.539 - P.539

 高度化する今日の日本のがん医療には,質の高い医療提供体制が必要であり,その要となるのはがん専門医療従事者です.がん対策基本法の施行(平成19年4月)後,専門医を含むがん専門医療従事者の育成の必要性が社会や国に認識されるようになり,がん薬物療法専門医,放射線治療専門医,緩和医療専門医など,学会が主導するがん治療に特化した専門医制度が確立しました.また,がん看護専門看護師やがん関連の認定看護師制度などの専門性の高いメディカルスタッフの育成体制もおおむね確立し,がん専門医療従事者の養成は少しずつ進んできました.しかし,いまだにがん専門医療従事者の配置は地域間格差や医療機関間格差が明らかで,高度化するがん医療と相まって医療水準の質の格差の原因となっています.このため,同法に掲げられる「がん医療の均てん化の促進」は,いまだに解決すべき重要な課題です.
 本書は現場ですぐに役に立つマニュアルとして版を重ね,四半世紀が経ちました.この間,コンパクトながら系統的にまとめられた内容が好評で,主に腫瘍内科をめざす若い研修医やがん薬物療法専門医をめざすレジデントに愛読されてきました.がん専門医療者に求められる知識は,各臓器別,治療法別の知識にとどまらず,がんの疫学,臨床試験,がん薬物療法の基礎知識,集学的がん治療,がんゲノム医療,緩和医療など臨床腫瘍学の幅広い領域にわたります.今回の第9版は,前版までの読みやすくかつ系統的な内容・書式を継承しつつも,疫学データ,標準治療などを最新の内容にアップデートし,さらにがんゲノム医療を新たに章立てしたもので,腫瘍内科医はもとより,がん診療に携わる全ての医師,メディカルスタッフの入門書として大変有用だと思います.さらに若い医療者や学生を育成する指導者のための参考書としても役に立つはずです.

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目次

ページ範囲:P.520 - P.521

原稿募集 「臨床外科」交見室

ページ範囲:P.551 - P.551

バックナンバーのご案内

ページ範囲:P.642 - P.642

次号予告

ページ範囲:P.643 - P.643

あとがき

著者: 小寺泰弘

ページ範囲:P.644 - P.644

 胃癌の治療においては,まずは確実な診断技術により適切な治療法を選択し,手術を含む集学的治療により根治を目指すことが優先されることは言うまでもない.そして誰もがそこを目指して日夜努力しているがゆえに,わが国における胃癌による死亡率は着実に低下している.手術療法においては,古くから行われてきた術式のどの部分が予後に影響しないかが細かく解析されて内容が簡素化され,腹腔鏡下手術の普及で低侵襲化が進み,ロボットの活用によりそれが完成形に到達しつつある.さらに薬物療法の進歩によりStage Ⅲ胃癌の再発の頻度が抑えられ,Stage Ⅳ胃癌もconversion surgeryの恩恵を受けるようになった.
 しかし,こうした中でも,手術により胃を失った場合の胃切除術後障害の問題は未解決である.いやいや,もう解決しているよと言い切る外科医も実は存在し,その人にも敢えて執筆を依頼して今回の特集「術後QOLを重視した胃癌手術と再建法」を組んだ.とは言え,私自身はこの問題はまだ解決していないと考えているし,胃切除術後障害の研究の手法についてすら,執筆者によって考え方はまちまちである.それでも現時点でこのテーマについてこれ以上の内容は望めないような熱心な研究者で執筆陣を構成することができ,この領域の現状を知る観点から読み応えのある特集になったと自負している.この特集のコアは永年にわたって胃切除術後障害の研究に取り組まれ,多少の意見の相違も寛容に受け止めるALL JAPANの研究体制を確立され,リーダーシップを発揮して来られた中田浩二先生(東京慈恵会医科大学,現所属・川村病院)による「PGSAS研究」である.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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