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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科78巻6号

2023年06月発行

雑誌目次

特集 消化管手術での“困難例”対処法—こんなとき,どうする?

ページ範囲:P.649 - P.649

 慣れ親しんでいる術式においても難渋することは,外科医なら誰でも経験する.困難例では,手術時間の延長や出血量の増加,術中・術後合併症が増加することもしばしば経験する.外科医は困難症例を乗り切る技術を身につけておく必要があるだけでなく,事前に予測することも重要である.また,このような技術と知識を兼ね備えてこそ一人前の外科医である.本特集では,標準手術を完投できるようになった若手医師に向け,ありがちな困難症例への対処法をエキスパートの先生方より伝授していただいた.

総論

開腹手術での癒着剝離のコツ

著者: 山東雅紀 ,   上原圭 ,   小倉淳司 ,   村田悠記 ,   梅田晋一 ,   服部憲史 ,   中山吾郎

ページ範囲:P.650 - P.653

【ポイント】
◆癒着剝離とは,元来付いていなかった“モノ”と“モノ”の間のくっつきを剝がし,元の状態に戻す作業である.
◆“モノ”と“モノ”の境界を見極めることが最も重要で,そのコツは,①出血させない,②組織に対し適切な緊張をかける,③確実な剝離層を追い続ける,④剝離ラインの間違いにいち早く気付く,の4つに集約される.
◆癒着剝離の上達には,日頃から何気ない癒着に対し真摯に向き合い,鍛錬を積むことが一番の近道である.
*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画を見ることができます(公開期間:2026年6月末まで)。

腹腔鏡手術での癒着剝離のコツ

著者: 山本聖一郎

ページ範囲:P.654 - P.658

【ポイント】
◆癒着が予想される場合には,癒着が少ないと考えられる箇所からトラブルなく第1ポートを挿入することが重要である.
◆クーパーやメッツェンバームを用いた癒着剝離は,癒着剝離が困難な箇所であればあるほど必要な手技になる.
◆その癒着剝離が必要かどうかを常に意識して対応する必要がある.不必要な癒着剝離は行わない.
*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画を見ることができます(公開期間:2026年6月末まで)。

ロボット手術での癒着剝離のコツ

著者: 芹澤朗子 ,   柴崎晋 ,   梅木祐介 ,   鈴木和光 ,   中内雅也 ,   田中毅 ,   稲葉一樹 ,   宇山一朗 ,   須田康一

ページ範囲:P.660 - P.666

【ポイント】
◆手術における“癒着剝離”=本来あるべきoriginal anatomyを回復することであり,癒着剝離を制するには,「正常を知り尽くす」ことが肝要となる.
◆手術支援ロボットda Vinci Surgical System(DVSS, Intuitive Surgical)を用い多様な手術を行うには,適切な手術のコンセプトとロボットを使いこなす技術の両立が求められる.ロボット支援手術で遭遇する様々な癒着剝離について,実際の手術手技を交え概説する.
*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画を見ることができます(公開期間:2026年6月末まで)。

食道

右肺胸膜全面癒着を伴う食道癌に対する胸腔鏡下食道切除術完遂の工夫—胸腔鏡下癒着剝離術のコツ

著者: 石山廣志朗 ,   伊賀上翔太 ,   久保祐人 ,   宇都宮大地 ,   久保賢太郎 ,   栗田大資 ,   小熊潤也 ,   大幸宏幸

ページ範囲:P.667 - P.671

【ポイント】
◆通常のポート配置を意識して癒着剝離を行う.
◆癒着剝離は必要最小限にとどめる.
◆曲がる器具を多用する.
*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画を見ることができます(公開期間:2026年6月末まで)。

頭頸部癌との重複食道癌症例への対処法—同時性・異時性食道癌に対する治療戦略と手術のポイント

著者: 金森淳 ,   渡邊雅之 ,   丸山傑 ,   蟹江恭和 ,   坂本啓 ,   栗山健吾 ,   岡村明彦 ,   今村裕

ページ範囲:P.673 - P.678

【ポイント】
◆頭頸部癌および食道癌はいずれも飲酒・喫煙の影響が強く,多発癌や同時性・異時性重複癌を認める場合が多い.
◆Cancer-boardにおいて各病変の進行度,狭窄や出血の有無,患者の背景因子や栄養状態を考慮し,治療順位を決定していく.また,状況に応じて方針を変更していく柔軟性も求められる.
◆食道外科医としては,咽頭喉頭食道全摘,McKeown手術,Ivor-Lewis手術など患者の状況に応じた様々な術式および周術期管理に精通しておくことが求められる.

左側食道症例の術前評価と手術手技の工夫

著者: 藤原直人 ,   滋野高史 ,   梶山大介 ,   佐藤和磨 ,   藤田武郎 ,   大幸宏幸

ページ範囲:P.679 - P.684

【ポイント】
◆食道切除術の難易度を上げる要因として左側食道の概念を知っておくこと,術前CTで評価しておくことが重要である.
◆左側食道症例は,術中の解剖学的な因子のみならず,周術期リスクが高い可能性についても考慮する必要がある.
◆術者左手と助手による適切なトラクションと,狭いスペースへ入り込むスコープ操作が有用である.
*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画を見ることができます(公開期間:2026年6月末まで)。

胃管再建困難例への対処法

著者: 八木浩一 ,   谷島翔 ,   大矢周一郎 ,   岡本麻美 ,   川崎浩一郎 ,   三輪快之 ,   浦辺雅之 ,   奥村康弘 ,   野村幸世 ,   瀬戸泰之

ページ範囲:P.685 - P.690

【ポイント】
◆胃を再建臓器として使用できない場合は,有茎空腸・有茎(回)結腸・遊離空腸を用いて再建する.
◆有茎再建でも血管吻合が必要となる可能性があり,形成外科バックアップが望ましい.
◆胃管の挙上性が悪い場合の対処法についても知っておきたい.

肥満症例に対する腹腔鏡下胃癌手術の留意点と工夫

著者: 海藤章郎 ,   冨井知春 ,   斎藤稔史

ページ範囲:P.692 - P.695

【ポイント】
◆肥満症例ではトラブル予防のために経験を積んだ術者・助手で行い,術野展開には間接的牽引も併用する.
◆生理的癒着を剝離し広い術野を得ること,浸出液をふき取り出血はこまめに止血することが重要である.
◆切除臓器は「手前から奥へ」収納し,スコピストの描出するワーキングスペースを広く保つ.
*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画を見ることができます(公開期間:2026年6月末まで)。

十二指腸切離困難例への対処法

著者: 金治新悟 ,   掛地吉弘

ページ範囲:P.696 - P.702

【ポイント】
◆十二指腸浸潤胃癌の多くは通過障害を有するような進行胃癌であり,術中に十二指腸浸潤距離を診断して切除範囲を決定することが多い.
◆十二指腸球部と周囲組織を十分に剝離し,自動縫合器の屈曲・回転機能を用いることで遠位での十二指腸切離が可能である.
◆十二指腸断端の縫合不全予防には,ステイプル断端の埋没縫合などの追加処置が有用と考える.
*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画を見ることができます(公開期間:2026年6月末まで)。

再建空腸挙上困難例への対処法

著者: 田中千恵 ,   小寺泰弘

ページ範囲:P.703 - P.706

【ポイント】
◆良好な空腸の挙上性を確保することで,吻合時のストレスや挙上空腸の穿孔のリスクを低減することができる.
◆間膜血管の走行をしっかり確認した後,適切に腸間膜を処理することで挙上性を確保する.

膵上縁のBulkyリンパ節転移症例における郭清操作の工夫

著者: 阿部恭 ,   寺島雅典

ページ範囲:P.708 - P.711

【ポイント】
◆膵上縁のBulkyリンパ節転移症例では,術前化学療法+拡大手術(大動脈周囲リンパ節郭清)が推奨されている.
◆化学療法後には組織の瘢痕化や浮腫により周囲臓器との境界が不明瞭となるため,解剖学的な目印を確実に同定することが重要となる.
◆郭清に際しては,様々な方向からのアプローチが必要となるが,最終的に他臓器への浸潤が否定できない症例では,合併切除も積極的に考慮すべきである.
*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画を見ることができます(公開期間:2026年6月末まで)。

大腸

高度肥満・狭骨盤症例に対する腹腔鏡下直腸切除術

著者: 稲田涼 ,   黒田絵理 ,   公文剣斗 ,   吉岡貴裕 ,   岡林雄大 ,   尾崎和秀 ,   渋谷祐一

ページ範囲:P.712 - P.715

【ポイント】
◆高度肥満・狭骨盤症例の腹腔鏡手術は,術野の確保や止血,剝離操作などの点から難度の高い手術である.
◆深部骨盤操作は,鉗子の可動制限はあるものの,視野確保や拡大視効果などから,開腹手術と比較し腹腔鏡手術のほうが有利な点も多い.
◆助手と術者の鉗子の協調作業による剝離面の確保と丁寧な手術操作が肝要である.

放射線療法後症例に対する手術の工夫と注意点

著者: 佐々木和人 ,   石原聡一郎

ページ範囲:P.716 - P.721

【ポイント】
◆術前化学放射線療法後の直腸癌手術では,ミストや滲出液をコントロールするための適切な吸引操作が重要である.
◆術前画像検査による切離ラインの設定,線維化や組織の硬化などの変化が少ない部位で適切な切離面を確認する.
◆放射線治療の晩期有害事象や放射線誘発癌のリスクを念頭においたサーベイランスを行う.

PDM症例の術前把握と術中の留意点

著者: 花岡まりえ ,   絹笠祐介

ページ範囲:P.723 - P.727

【ポイント】
◆Persistent descending mesocolon(PDM)は,発生過程において左側結腸が壁側腹膜と癒合せず,下行結腸が内側に変位することを特徴とする固定異常である1)
◆広範な癒着や血管分岐異常を認めることが多く,癒着剝離や中枢血管処理に注意を要するため手術時間の延長が予測される.
◆特に術野の制限がある低侵襲手術では,PDMの術前診断および頻度の高い特徴の把握と,手術戦略の準備が肝要である.
*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画を見ることができます(公開期間:2026年6月末まで)。

高度な炎症を伴う虫垂炎に対する手術

著者: 宮田敏弥 ,   端山軍 ,   橋口陽二郎 ,   浅古謙太郎 ,   福島慶久 ,   金子建介 ,   島田竜 ,   野澤慶次郎 ,   松田圭二

ページ範囲:P.728 - P.732

【ポイント】
◆高度な炎症を伴う虫垂炎に対する緊急手術は,合併症リスクが高いため,保存的加療後の待機的手術が有用である.
◆術式の選択は,画像所見,身体所見,病状経過から総合的に判断するべきだが,術中良好な視野を確保でき,術後surgical site infection(SSI)発生率と術後在院日数を低減しうる腹腔鏡下虫垂切除術が薦められる.
*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画を見ることができます(公開期間:2026年6月末まで)。

手術器具・手術材料—私のこだわり・17

単孔式手術でも簡便に縫合結紮手技が行えるmodifiedクリンチノットの開発

著者: 藤岡秀一 ,   三澤健之

ページ範囲:P.733 - P.735

はじめに
 近年,minimal invasive surgeryとしての単孔式内視鏡手術が普及しているが,手術中の臓器損傷に対して修復を行う際にはポート追加や開腹移行で対応している場合も多いと考えられる.われわれは,単孔式手術中の臓器損傷に対してもポートを追加することなく,1ポートから縫合,結紮を完結できる,modifiedクリンチノットを開発・臨床応用しているので紹介する1)
*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画を見ることができます(公開期間:2026年6月末まで)。

FOCUS

—日常診療+αでできる—成人学習理論に基づいた外科医を伸ばす指導法

著者: 高見秀樹

ページ範囲:P.736 - P.740

はじめに
 「教育」と聞いてどんなイメージを浮かべますでしょうか? 「何が正解かわからない」「自分とは無縁」「やっても評価されない」といったネガティブなイメージをもたれているかもしれませんし,「自分は得意だ」「教育こそが自分の使命だ」というポジティブなイメージをおもちの方もいるかもしれません.いずれにしても『教育は大切だ』ということに異を唱える外科医はいないと思います.実際に,外科医は教育に携わる場面がたくさんあります.手術室・病棟・外来で,後輩外科医・メディカルスタッフ・初期研修医や学生など場所も対象も様々です.そもそもほとんどの外科医は手術を先輩から教わりますし,それを後進に伝えることも業務の1つとなっているのではないでしょうか.
 教育には正解はありません.しかし医療におけるEBM(evidence based medicine)と同じように,医学教育学においてもエビデンスに基づいた教育を行うbest evidence medical education(BEME)という考え方が2000年ごろから広まりました1).実際,医学教育に関する論文は年々増加してきており,様々なエビデンスが蓄積されてきています.
 筆者は日本外科教育研究会が開催するSurgeons as Educator Courseを2019年に,「現場で働く指導医のための医学教育学プログラム-基礎編-(FCME)」を2020年から1年間受講し,医学教育学について学ぶ機会を得ました.本稿では医学教育学を学んだ外科医の立場から,『外科医が臨床現場でできる,学習者の省察を促すような指導の工夫』について紹介します.

同心円状モデルで読み解く 新しい食道外科解剖・5

頸部・鎖骨上領域—二つのNo. 104リンパ節

著者: 藤原尚志

ページ範囲:P.741 - P.752

Introduction
 頸部の手術では,白いアワアワの筋膜構造が明瞭となる局面が多く,出血量も比較的少なく手術が進むことが多い.手術操作は電気メス中心に進み,直視下手術の醍醐味が凝集した手術と言える.またNo. 104領域は反回神経も無関係であるうえに,リンパ節転移頻度もさほど高くないため,食道癌手術においては「特に困らない」領域と言える.一方で既存の解剖学のテキストには,胸腹部と異なり,頸部の筋膜構造については明瞭に描出されているのも特徴である.しかし,この既存の筋膜構造が食道癌手術にとにかく直結しない(と,少なくとも私は感じた).名前が複雑に付いているものの,実際の手術に全く活きることがなかった.今考えると,その理由の一つは,食道癌で扱う頸部が「下頸部・頸胸境界領域」であるからであったのかもしれない.
 以前より私自身は,No. 104領域には本稿の話題の中心である二つの領域が存在することを強く感じながら手術をしていた.このNo. 104領域における二つの領域という話題は,頸部郭清の経験を多く有する外科医ほど共感・理解が得られるようである.この二つの領域,層の違いは何かということを考え抜いて至った結論が,これから本稿で解説する「Vascular layerの2層化」である.そして,気管分岐部以下のいわゆる中下縦隔も含めて,人体は基本的にVascular layer(血管層)が腹側と背側の2層性になっていると仮定すると,途端に多くの解剖学的な課題に説明がつくようになった.この「Vascular layerの2層化」が同心円状モデルのさらなる進化となったのである.

病院めぐり

市立東大阪医療センター外科

著者: 山田晃正

ページ範囲:P.753 - P.753

 当センターは,その前身である「東大阪市立総合病院」(573床)として1990年に現在の地に移転開設されました.2016年には地方独立行政法人化され,新しく「市立東大阪医療センター」(520床)として生まれ変わり,人口50万人の東大阪市の公的病院として,また中河内二次医療圏(東大阪市・八尾市・柏原市)の中核病院として,隣接する「中河内救命救急センター」(三次救急)と協働し,おもに高度急性期ならびに急性期医療を担っています.
 2023年3月現在,全職員数は1,131人で,常勤医師は169名が在籍しています.そのうち,外科ファミリーは消化器外科 9名,呼吸器外科 2名,乳腺外科 2名,小児外科 1名,臨床腫瘍科 1名に外科専攻医の3名を加え,総勢18名で構成され,互いに連携して手術をはじめとする日常診療にあたっています.

臨床報告

乳頭部腺腫の1例

著者: 國又肇 ,   館花明彦 ,   浜口洋平 ,   岡輝明

ページ範囲:P.754 - P.759

要旨
乳頭部腺腫(adenoma of the nipple,「乳癌取扱い規約第18版」ではnipple adenoma)は,乳頭内または乳輪直下乳管内に発生する比較的稀な良性腫瘍である.臨床所見は,乳頭部びらん,乳頭部の腫瘤もしくは硬結,異常乳頭分泌などで,組織学的には偽浸潤像を伴う高度の上皮増生を示すことがあるとされていて,浸潤癌との鑑別に苦慮することがある.今回,われわれは乳頭分泌を主訴とした乳頭部腺腫の1例を経験したので,文献的考察を加え報告する.

局所進行乳癌術後4年目の横行結腸転移の1例

著者: 小城正大 ,   山里有三 ,   荒居琢磨 ,   粉川庸三

ページ範囲:P.760 - P.767

要旨
症例は68歳,女性.他院で左乳癌手術を施行され,術後化学療法(FEC100療法4コース,DTX療法4コース)後に骨転移が出現したため,エリブリンを開始.その後,肝転移出現に伴いTS-1に変更となった.再発後3年目に当院乳腺外科紹介.腫瘍マーカー上昇を認めるもCTで再発病変を同定できず,TS-1継続し経過観察していた.大腸壁肥厚が疑われた3か月後のCTで同部位狭窄を指摘され,下部消化管内視鏡検査にて右側横行結腸の全周性狭窄を認めた.乳癌大腸転移の診断で当科紹介,狭窄解除目的に腹腔鏡下結腸右半切除術を施行した.乳癌フォローにおいて,とりわけ浸潤性小葉癌では消化管転移の可能性を念頭に置き,注腸造影検査や内視鏡検査を含めた複数検査で病勢を判断する必要があると考えられた.

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目次

ページ範囲:P.646 - P.647

バックナンバーのご案内

ページ範囲:P.722 - P.722

原稿募集 「臨床外科」交見室

ページ範囲:P.727 - P.727

次号予告

ページ範囲:P.771 - P.771

あとがき

著者: 絹笠祐介

ページ範囲:P.772 - P.772

 今回の特集テーマは『消化管手術での“困難例”対処法』でした.外科医の技術にゴールはないという思いから,一人前の外科医の定義は本当に難しいわけですが,本特集のような困難症例を独りで切り抜ける力を持つことが一つの指標ではないかと思います.今回は,比較的頻度の高い困難例についてまとめていただきましたが,一方で,非常に稀なケースも存在します.そのような場合に必要となるのは,経験値ではなくしっかりとした基本手技と応用力だと思います.手術の上手い外科医とはどんな医師かと問われると,決まって,応用力が高い医師だと答えています.これはなかなか若い先生に求められるものではなく,エキスパートになってからの差を表すものだと思います.そこに経験値が深く関係している(カバーしている)のかもしれませんが,やはり応用力が一番大事だと感じています.応用力の高い先生の手術は,本当に手術を見ていて勉強になり,目から鱗が落ちます.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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