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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科79巻10号

2024年10月発行

雑誌目次

特集 手術支援機器 百花繚乱!—ロボットとデバイスホールダー

ページ範囲:P.1077 - P.1077

 2018年に消化器外科領域でロボット支援手術の保険適用が承認されて以来,この領域における同手術の普及と発展は目を見張るものがある.従来,手術支援ロボットといえばIntuitive Surgical社のda Vinci一択であったが,最近ではMedtronic社のHugo,国産ではメディカロイド社のhinotori,リバーフィールド社のSaroaなど,複数の機器が臨床の場で使用できるようになった.また少し視野を広げると,スコープや鉗子を把持して術者をサポートするデバイスホールダーにも最新のテクノロジーが応用され,単にデバイスを固定する器具以上の機能を発揮するようになった.これらの機器にはそれぞれ特徴があり,実際の手術で使用するうえでの工夫が必要となる.本特集では,各機器の特徴や実際の手術での使用法について,この領域のエキスパートに解説していただいた.

総論

消化管外科領域のロボット支援手術の歴史

著者: 菊地健司 ,   柴崎晋 ,   宇山一朗 ,   須田康一

ページ範囲:P.1078 - P.1082

【ポイント】
◆1990年代より米国で開発された手術支援ロボットは,2000年に本邦に初めて導入されたが,現在のロボット支援手術の夜明けは,2009年に行われた幽門側胃切除術であった.
◆2014年に開始された先進医療Bの多施設共同前向き単群臨床試験の結果が評価され,2018年に腹腔鏡下胃切除術,腹腔鏡下噴門側胃切除術,腹腔鏡下胃全摘術,胸腔鏡下食道悪性腫瘍手術,腹腔鏡下直腸切除・切断術を含む12のロボット支援手術術式が「(内視鏡手術用支援機器を用いる場合)」という形で保険収載され,その後も多くの消化器外科領域のロボット支援術式が順次保険収載されている.
◆安全なロボット支援手術の普及のために,日本内視鏡外科学会が中心となりロボット支援手術に関する指針や認定プロクター制度などが整備され,現状に合わせて迅速かつ柔軟に改訂,運用されている.

肝胆膵外科・移植外科領域のロボット支援手術の歴史

著者: 板野理 ,   皆川卓也 ,   星本相淳 ,   篠田昌宏

ページ範囲:P.1083 - P.1086

【ポイント】
◆世界では,胆膵手術に対する手術支援ロボットの適応は様々な術式に広がってきている.
◆日本ではその普及は遅れ気味であったが,2020年に入り複数の術式が保険適用となり,現在急速に施行数が増大している.

手術支援ロボット

Da Vinci Xiの特徴と手術の実際:食道切除術

著者: 坊岡英祐 ,   菊池寛利 ,   竹内裕也

ページ範囲:P.1087 - P.1092

【ポイント】
◆移動式プラットフォームを備えるda Vinci Xiは,上中下縦隔郭清を伴う食道切除術には有用な手術支援ロボットである.
◆ロボット支援食道切除術は手術手技をいくつかのstepに分けることでコンセプトが共有され,手術手技の統一が可能となる.
*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画を見ることができます(公開期間:2027年10月末まで)。

Da Vinci Xiを用いた手術の実際:膵頭十二指腸切除術

著者: 松本萌 ,   刑部弘哲 ,   木谷嘉孝 ,   末松友樹 ,   髙野祐樹 ,   西山航平 ,   永川裕一

ページ範囲:P.1093 - P.1101

【ポイント】
◆2020年4月以降,膵腫瘍に対してロボット支援下膵切除術が保険収載を受け,その後現在まで膵臓領域のロボット手術件数は増加傾向である.
◆東京医科大学では2010年より倫理委員会承認のもとロボット支援下膵体尾部切除術を始め,2018年にda Vinci Xiを導入し,以降ロボット支援下膵頭十二指腸切除術(RPD)の経験を積み重ね,手術方法を定型化している.
◆本稿では,われわれが行っているda Vinci XiでのRPDの適応および手術手技について解説する.

Da Vinci SPの特徴と手術の実際:肝切除

著者: 勅使河原優 ,   若林大雅 ,   贄裕亮 ,   若林剛

ページ範囲:P.1102 - P.1107

【ポイント】
◆Da Vinci Xiなどのマルチポート手術に習熟したうえでの導入を検討することが望まれる.
◆現時点ではda Vinci SPのデバイスが少ないことに留意する必要がある.
◆導入する際には肝部分切除から始めて,技量に応じて解剖学的肝切除などに適応を広げることが妥当と考えられる.
*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画を見ることができます(公開期間:2027年10月末まで)。

Da Vinci SPを用いた手術の実際:大腸手術

著者: 廣純一郎 ,   大塚幸喜 ,   宇山一朗 ,   須田康一

ページ範囲:P.1108 - P.1112

【ポイント】
◆Da Vinci SPは4cm程度の創部からロボット支援手術が可能となるが,フレキシブルスコープや多関節鉗子,腹壁と鉗子の干渉など,その特徴の理解が必要である.
◆大腸癌手術ではSPに特徴的な基本操作や手技の進め方を理解することでXiと同様の手技で手術が可能である.
◆SPによる大腸癌手術では,Xiでは鉗子可動制限を生じやすい場面や再ロールインが必要な手技においてもブームを移動によりこれらを回避でき,ストレスのない手術が可能となる.
*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画を見ることができます(公開期間:2027年10月末まで)。

hinotoriを用いた手術の実際:食道切除術

著者: 小野航平 ,   真鍋達也 ,   能城浩和

ページ範囲:P.1113 - P.1118

【ポイント】
◆セットアップにおいてda Vinciと異なる点が多く,工夫を要する.
◆実際の手術操作においてda Vinciと大きな差はない.
◆手術成績においてもhinotoriとda Vinciで有意差はみられなかった.
*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画を見ることができます(公開期間:2027年10月末まで)。

hinotoriを用いた手術の実際:胃切除

著者: 三ツ井崇司 ,   箱崎悠平 ,   齋藤一幸 ,   奥山隆 ,   吉富秀幸

ページ範囲:P.1119 - P.1123

【ポイント】
◆hinotoriによる胃切除は,純切開のカットモードを用いた「メリーランドによるバイポーラカット手術」という新しいコンセプトの手術が選択可能である.
◆Da Vinciによる胃切除に比べ30〜60分程度長くかかる傾向があるが,完成形は変わりなく実施可能である.
◆高度癒着症例や浸潤症例など,より繊細で細い切離線が求められる症例に,hinotoriのカット手術は有効と感じている.
*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画を見ることができます(公開期間:2027年10月末まで)。

Hugoの特徴と手術の実際:幽門側胃切除術

著者: 小濵和貴 ,   久森重夫 ,   錦織達人 ,   坂本享史 ,   笠原桂子 ,   奥村慎太郎 ,   角田茂

ページ範囲:P.1124 - P.1129

【ポイント】
◆Hugoは独立したアームカートをもつため,術式や患者の体格に応じたフレキシビリティの高いアームカートの配置が可能となる.
◆コンソールがオープンタイプであるため,術者と助手や手術スタッフのコミュニケーションがスムーズになる.
◆超音波凝固切開装置やベッセルシーリングシステムがまだ搭載されていないため,ペイシェントサイドの助手のactiveな手術参加が必要である.
*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画を見ることができます(公開期間:2027年10月末まで)。

Hugoを用いた手術の実際:大腸手術

著者: 三代雅明 ,   奥谷浩一 ,   石井雅之 ,   竹政伊知朗

ページ範囲:P.1130 - P.1133

【ポイント】
◆独立型アームを特徴とするHugoでは術式や患者体形に基づいた個別のセッティングが可能であるが,大腸手術の基本的なポート配置・operating room(OR)セッティングはいまだ明確ではない.
◆当科でのポート配置・セッティングを紹介するが,Tilt angleとDocking angleは症例ごとに調節するのがよい.
◆現時点ではDouble bipolar法が使用できず,クリップ・ベッセルシーラー・ステイプラーが不足しているため,今後システムの改善・デバイスの登場が期待される.
*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画を見ることができます(公開期間:2027年10月末まで)。

Saroaの特徴と手術の実際:S状結腸切除術

著者: 花岡まりえ ,   絹笠祐介

ページ範囲:P.1134 - P.1139

【ポイント】
◆力覚フィードバック機能の導入:Saroa Surgical Systemは力覚フィードバック機能により,手術の安全性と操作精度の向上などが期待されている.
◆Da Vinciとの比較:他社製の手術支援ロボットと比べて軽量・小型,廉価であり,特にコスト面で有利である.
◆改良と将来性:この1年間で多くの改良がなされ,さらなる進化が期待される.
*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画を見ることができます(公開期間:2027年10月末まで)。

デバイスホールダー

IvyA1の特徴と手術の実際:消化管手術

著者: 稲木紀幸

ページ範囲:P.1140 - P.1144

【ポイント】
◆IvyA1は手術用内視鏡を把持する役割に特化したロボットであり,スコピストの人員が不要となり,働き方改革に貢献できる.
◆術者の思い通りの視野,かつ,ブレのない安定した視野を確保でき,手術の質を向上させることができる.
◆空気圧駆動という独特のメカニズムは,物理的接触のダメージを可能な限り軽減することができる.
*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画を見ることができます(公開期間:2027年10月末まで)。

ANSURの特徴と手術の実際:S状結腸切除術

著者: 長谷川寛 ,   伊藤雅昭

ページ範囲:P.1145 - P.1150

【ポイント】
◆手術支援ロボット「ANSURサージカルユニット」は,助手とスコピストの役割を担い,「外科医不足」を解消することが期待される.
◆術者は通常の腹腔鏡下手術を行いながら,術者術具に取り付けたセンサーを用いて,術野展開や視野移動を実現する.
◆S状結腸癌に対する「ANSURサージカルユニット」を用いた腹腔鏡下S状結腸切除術の手術手技を供覧する.

センハンスの特徴と手術の実際:ヘルニア修復術・胆囊摘出術

著者: 永田直幹 ,   田嶋健秀 ,   本田晋策 ,   厚井志郎 ,   松村勝 ,   北原光太郎 ,   日暮愛一郎

ページ範囲:P.1151 - P.1160

【ポイント】
◆消化器外科のすべての術式に対して保険収載が認められた.
◆触覚フィードバックシステムで鉗子の先端の圧を感じる作用がある.
◆鉗子がリユースのため経済性に優れている.
*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画を見ることができます(公開期間:2027年10月末まで)。

センハンスを用いた手術の実際:大腸癌手術

著者: 大和美寿々 ,   平能康充

ページ範囲:P.1161 - P.1166

【ポイント】
◆センハンス・デジタル ラパロスコピー・システムは98種類の腹腔鏡下手術で保険収載されている触覚機能を有した手術支援ロボットである.
◆若手のロボット手術導入にも有用と考えらえる一方で,鉗子の動作制限が重要な課題である.
◆当科での手術手技を供覧し,手技やセッティングの工夫を述べる.
*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画を見ることができます(公開期間:2027年10月末まで)。

腹壁ヘルニア修復術道場・5

腹壁瘢痕ヘルニア手術①正中腹壁瘢痕ヘルニア(ⅰ)IPOM(4cmまでのもの),OpenRS,MILOS

著者: 井谷史嗣

ページ範囲:P.1167 - P.1175

はじめに
 腹壁瘢痕ヘルニアは,部位,大きさなどにより術式,手術難度も異なり,治療戦略を立てる際には同一の疾患と考えないほうが良い場合も多い.本稿では正中瘢痕ヘルニアで4cmまでのものに対する治療戦略を述べる.
 正中の4cm以下の瘢痕ヘルニアで心窩部あるいは恥骨にかからないヘルニアに対しては,openでのRives-Stoppa法,腹腔鏡下intraperitoneal onlay mesh(IPOM)法,(e)MILOS(mini- or less-open sublay operation)などが選択肢となる.2010〜2019年のHerniamedの調査1)では,最近導入された手術であるMILOSは別として,Rives-Stoppa法(36.9%),腹腔鏡下IPOM法(27.2%),open IPOM法(12.4%)であり,合計すると76.5%に達し,実際に施行されている術式の大半を占めるものであり,まず習得すべき術式であると考えられる.

FOCUS

肝細胞癌の切除可能性分類の提唱

著者: 進藤潤一

ページ範囲:P.1178 - P.1183

はじめに
 近年の薬物治療の進歩は各種進行癌に対する外科手術の活躍の場を広げ,切除不能・切除困難な進行癌に対するいわゆる集学的治療の一環としての「コンバージョン手術」が各領域で議論されている.肝臓外科分野においては,大腸癌肝転移に対する化学療法から根治手術へのコンバージョンの意義が早くから認識され1),実臨床で広く実践されてきた.一方,難治癌の一つである肝細胞癌は,一般的に殺細胞性の抗癌剤が効きにくく,唯一エビデンスのある薬物であったソラフェニブも劇的な腫瘍縮小を期待できるような薬物ではないため,進行肝癌を薬物治療によって根治切除可能な状態へ導くことは困難と考えられてきた.しかし,2018年のレンバチニブの登場を皮切りに効果の高い新規薬物が次々と登場し,肝細胞癌領域においては進行症例に対する外科治療の意義に関する議論が近年活発となっている.
 こうした背景の中,日本肝癌研究会と日本肝胆膵外科学会では2021年に「いわゆるborderline resectable HCCに関するワーキンググループ」を合同プロジェクトとして立ち上げ,新規薬物治療によって拡大するであろう外科治療範囲を定義づける試みが始められた.約3年にわたる議論の末,2023年11月に腫瘍学的見地からみた肝細胞癌の切除可能性分類がExpert Consensus Statement 2023として発表された.本稿では,肝細胞癌に対する外科治療を取り巻く現状と現時点でのunmet needsを明らかにし,腫瘍学的切除可能性分類の提唱の目的と今後の展望について概説する.

病院めぐり

石川県立中央病院消化器外科

著者: 角谷慎一

ページ範囲:P.1184 - P.1184

 当院は戦後間もない1945年に日本医療団石川支部中央病院として開設されました.その後,1948年に県営病院として石川県立中央病院と改称し,1976年に現在の地(金沢市鞍月東)に移転となりました.1980年には救命救急センターを,2005年にはいしかわ総合母子医療センターをそれぞれ開設したほか,2007年には地域がん診療連携拠点病院に指定されるなど,特に救急医療・周産期医療・がん医療を中心とした高度専門医療の提供を行い,県の基幹病院として県民医療の最後の砦の役割を担ってきました.2017年に老巧化が進んだ建物の完全建て替えが着工し,2018年1月に新病院が完成して新体制(36診療科・630床)のもと診療が開始されました.新病院ではヘリポートも備わってドクターヘリが稼働可能となり,三次救急として石川県の救急診療の中核も担っています.
 現在は手術室が14室あり,そのなかにはハイブリッド手術室も備わっており循環器系の高難度の血管内カテーテル治療も対応が可能となっています.また多くの分野で低侵襲手術(胸腔鏡・腹腔鏡・ロボット支援手術)に積極的に取り組んでおり,現在は日本内視鏡外科学会技術認定取得者8名(消化器外科6名,小児外科1名,泌尿器科1名)が常勤し,レベルの高い低侵襲手術を提供するとともに各科の若手外科系専攻医への教育も積極的に進めています.

書評

—吉村知哲,田村和夫(監修)—がん薬物療法副作用管理マニュアル 第3版

著者: 鈴木昭夫

ページ範囲:P.1176 - P.1176

 がん薬物療法においては副作用が高頻度に発現し,重篤な場合には患者の生活の質(QOL:quality of life)を低下させるだけでなく,治療の中断や中止につながります.したがって,副作用対策は患者QOLの改善のみならず,治療効果を高めるためにも薬剤師が実施し得る重要な業務と考えます.さらに,令和6年度診療報酬改定では,「がん薬物療法体制充実加算」が新設され,がん薬物療法の副作用管理における薬剤師の役割がますます求められています.
 一方で,抗がん薬は従来の殺細胞性抗がん薬以外に分子標的治療薬や免疫チェックポイント阻害薬が次々に上市され,レジメンの数は膨大になっています.抗がん薬の種類やその作用機序により副作用のプロファイルはまったく異なり,さらに,がんの進展に伴うさまざまな有害事象により,日々の副作用管理に苦慮されている先生は多いのではないでしょうか.本書はそんな先生方の悩みを解決してくれる一冊になると確信しています.

—辻 順行(編)—肛門疾患診療の教科書[Web動画付]エキスパートが伝授する診断・治療

著者: 黒川彰夫

ページ範囲:P.1186 - P.1186

 本邦においては,大腸疾患についての専門書や教科書は多く見られるが,肛門疾患に関する成書は非常に少ないのが現状である.日常診療では頻度の高い極めてありふれた疾病であるにもかかわらずである.結果,卒後研修のころから一般的に「痔」と呼んで軽んじて扱う傾向にある.その原因は,以前から肛門専門医の間で論じられてきたように,大学の医学教育や卒後研修の中で「肛門病学」が体系立てて指導されていない点にあるのみならず「肛門病学」の存在すら認められていない点にあるのではないだろうか.
 過去にいくつかの専門書や教科書の分担執筆に携わった者として,今回の辻順行先生の編集された『肛門疾患診療の教科書』は,驚きや感動を感じた点があまた認められた.

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目次

ページ範囲:P.1074 - P.1075

原稿募集 私の工夫—手術・処置・手順

ページ範囲:P.1112 - P.1112

原稿募集 「臨床外科」交見室

ページ範囲:P.1166 - P.1166

バックナンバーのご案内

ページ範囲:P.1190 - P.1190

次号予告

ページ範囲:P.1191 - P.1191

あとがき

著者: 板野理

ページ範囲:P.1192 - P.1192

 外科手術において手術デバイスは手技と並んで切り離せない重要なファクターですが,なぜか手術手技のトレーニングコースはあっても手術デバイスの使用法を教わる機会は外科医にはほとんどありません.ほとんどの外科医は,もともと病院にある機器の使い方を先輩から教わり,新しいデバイスの情報を学会で,時に各メーカーの営業の方より,その長所のみの情報を仕入れるしかありません.使ってみてわかる短所を他の外科医と情報交換する場所もありませんし,他の競合デバイスとの客観的な比較をする機会もありません.今回の特集の手術ロボットは手術デバイスの最も高性能かつ高額なものですが,エネルギーデバイスも,自動縫合器も,その基本原理やそれに沿った使用法を系統立てて教わった経験はほとんどの外科医はないはずです.どうしてなのでしょう? この大いなる疑問を解消するために,数年前から手術デバイスに関する教育について活動をしてきました.まず各手術デバイスを種類別に,その機能と価格を比較するカタログを2022年に出版しました.そして昨年より,私が理事であるNPO法人肝臓内視鏡外科研究会の主催として,日本内視鏡外科学会総会の企業展示ブースで,手術デバイスの各種性能をメカニズムに基づき正しく理解し,適切な使用法を学ぶためのハンズオンセミナー「手術デバイスマエストロセミナー」を開催しています.今年は福岡での開催ですが,20名のエキスパートの講師により10のテーマのデバイスに関するセミナーを行う予定です.学会に参加される方は是非のぞいてみてください.きっと,デバイスの使い方だけでなく,自分の手術のやり方を見つめ直すきっかけになるはずです.今回の本誌の特集は,「手術支援機器 百花繚乱!」と題して,ロボット支援手術の手技のコツだけではなく各機器の特長と違いを,全国を代表するエキスパートの先生が解説してくださっています.「デバイス情報=手術技術のうち」.是非これからのロボット支援手術の参考にしてください.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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バックナンバー

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78巻10号(2023年10月発行)

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