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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科79巻3号

2024年03月発行

雑誌目次

特集 外科医必携 患者さんとのトラブルを防ぐためのハンドブック

ページ範囲:P.245 - P.245

 日常診療においては,説明不足や合併症・後遺症の発生により,患者さんとトラブルになるばかりでなく,訴訟に至る場合も少なくない.このようなトラブルを未然に防ぐには,それぞれの局面において,どのような説明を行い,どのようなことを念頭において治療に当たればよいかをあらかじめ知っておくことが重要である.これまで多くの特集において合併症・後遺症予防について論じられてきたが,患者さんとのトラブルの原因は多岐にわたっている.合併症・後遺症がなくてもトラブルは発生するし,合併症・後遺症が発生しても適切な説明,対応がとられれば,多くの場合はトラブルには発展しない.
 本特集では,合併症・後遺症の予防については簡単な記述にとどめ,それぞれの臨床局面において,患者さんとどのようなトラブルが発生しうるか,トラブルを防ぐにはどのように説明し,対応すべきであるかを中心に解説した.

総論

医療従事者の法的責任

著者: 宗像雄

ページ範囲:P.246 - P.250

【ポイント】
◆法的責任が認められるためには,現実に患者に損害が生じた場合に,医療の提供に従事した医療従事者に注意義務の違反ないし過失があり,かつ,現実に生じた損害と当該注意義務の違反ないし過失との間に因果関係がなければならない.
◆医療機関ないし医療従事者は,診療契約に基づき,患者に対し,医療水準に適合した医療を提供する義務を負うとともに,医療水準に適合した医療に属する事項について説明する義務を負う.
◆添付文書(能書や取扱説明書)は,医療水準の内容を推知させる極めて重要かつ有力な資料であり,その記載内容は,医薬品や医療機器を使用するに当たって医療従事者が従わなければならない規制としての意味を有している.
◆(法的)因果関係としては,医療従事者が標準的な医療を提供しなかったことが,患者の死亡や身体の傷害などの不利益な事実を生じさせた最も有力な原因であったと認められることが必要であるが,これで足りる.

医療不信を抱かせない患者とのコミュニケーションの方法

著者: 山口育子

ページ範囲:P.251 - P.254

【ポイント】
◆詳細な説明をしても理解できていない患者が多いことを前提に,情報の共有をはかるコミュニケーションが必要.

研修医・若手医師が遭遇しやすいインシデントとその防止策

著者: 松村由美

ページ範囲:P.256 - P.259

【ポイント】
◆研修医や若手医師が遭遇するインシデントは,救急科・救急救命センター,麻酔科で発生することが多い.
◆“初めて”,“変更”,“久しぶり”といった不慣れな作業または状況でインシデントが発生しやすい.
◆日常的に他人との良好なコミュニケーションを心がけることが,インシデントの防止策になる.

ガイドラインと医療訴訟

著者: 橋口陽二郎

ページ範囲:P.260 - P.263

【ポイント】
◆ガイドラインは,患者に適切な医療を提供するための指針を示している.これに従うことで,訴訟リスクを低減することが期待される.もしガイドラインに反する医療を提供した場合,それが原因で発生する医療過誤に関連する訴訟リスク,過誤認定のリスクが高まる可能性がある.
◆あくまでガイドラインは一般的な患者や症例を対象にしたものであり,すべてのケースに当てはまるわけではない.医師は患者の個別な状態やニーズを考慮する必要がある.患者に対して適切なケアを提供するために,ガイドラインに沿っていない医療を提供する場合には,患者の同意とその判断の理由づけが重要である.
◆医療の進歩や新しいエビデンスの出現に伴い,診療ガイドラインは定期的に見直され更新される.医師には最新の情報に基づいて患者にケアを提供する責任がある.これが怠られ,過去のガイドラインに基づいて行動した場合,訴訟リスクが発生する可能性がある.
◆ガイドラインはあくまで一つの参考として捉えるべきであり,患者の個別な状態や医師の臨床的な判断も考慮されるべきである.あくまでガイドラインを遵守することがすべてではなく,患者の状態に応じて適切な医療判断を行うことが求められる.

各論

せん妄対策と医療安全対策

著者: 水沼直樹

ページ範囲:P.264 - P.270

【ポイント】
◆せん妄対策として,リスク因子の特定,スクリーニング,モニタリングが重要である.
◆正確にせん妄を診断することは難しく,見落としや誤診が多いと言われている.
◆入通院に際して,医療従事者のみならず,患者や家族に対しても,せん妄教育,普及・啓発が重要である.

静脈穿刺による神経損傷について—医療訴訟リスクを軽減するための提言

著者: 平田仁

ページ範囲:P.272 - P.276

【ポイント】
◆静脈穿刺に伴う神経損傷の頻度は低いが,医療訴訟に発展するリスクは高い.
◆静脈穿刺後に運動障害を伴う高度の麻痺を起こすことは稀であり,また,神経障害性疼痛様の痛みも半年程度で改善するケースが多い.
◆正中神経など主要な神経が損傷されたと判断されるケースでは医療機関が敗訴する可能性が高い.
◆静脈穿刺を引き金にCRPSを発症する事例は存在する.ただし,CRPSの予後は従来恐れられたほど悪くはなく,痛みを含む諸症状が1年以内に改善する例も多い.
◆訴訟リスクを回避するためにも超音波画像診断装置の積極的な活用が勧められる.

【コラム】採血室管理におけるネットワークカメラの活用

著者: 市村直也

ページ範囲:P.278 - P.279

はじめに
 東京医科歯科大学病院の中央採血室では1日あたり700名前後の外来患者の採血を行っている.日々多くの患者の採血を行っているなかで,穿刺後に強い痛みや痺れを訴える患者や,接遇に対する職員への苦情,また患者からの暴言・暴力といったことが生じることがある.当院ではこうした事例に対する職員の保護や指導のため,採血の客観的な記録を残すことを目的に採血台に設置したネットワークカメラ(以下,カメラ)で採血の様子を収録する取り組みを行っている1)
*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画を見ることができます(公開期間:2027年3月まで)。

中心静脈カテーテル留置・管理に関する医療安全と患者説明

著者: 佐野圭二

ページ範囲:P.280 - P.282

【ポイント】
◆CVカテーテル穿刺時・穿刺後・抜去時の合併症を熟知しておくこと.
◆合併症発生時に関連する科を挙げて対応できる体制を整えること.
◆合併症発生のリスク評価とインフォームド・コンセントを得るうえでの説明は網羅的に行うこと.

がん薬物療法に伴う医療安全と患者説明

著者: 山田岳史 ,   松田明久 ,   岩井拓磨 ,   吉田寛

ページ範囲:P.283 - P.288

【ポイント】
◆治療リスクだけでなく,患者のセルフケアを促進するような説明が望ましい.
◆vulnerableな患者やAYA世代の患者など様々な患者がいるため,個々の患者に合わせた治療選択と説明が必要用である.
◆遺伝学的検査の結果により治療選択肢が増えることがあるため,必要な検査を忘れずに行う.

救急医療時の患者説明,画像と病理の見逃しを未然に防ぐ

著者: 軍神正隆

ページ範囲:P.289 - P.292

【ポイント】
◆患者・家族に対し可能な限り状況に応じた丁寧な説明を行い,患者・家族の考えを傾聴し意思を尊重することが重要.
◆患者さんの意思決定支援のためのコミュニケーション,情報提供,時間的・精神的余裕の確保に努める.
◆外傷(骨折,多発外傷),くも膜下出血,急性大動脈解離,急性喉頭蓋炎,イレウス等の外科系救急疾患は医療訴訟が多いため,見逃しがないよう細心の注意を要する.

輸血拒否への対応

著者: 中村伸理子

ページ範囲:P.293 - P.296

【ポイント】
◆医師は,患者に治療方針などを説明する義務がある一方で,無輸血手術を断る権利もある.
◆医師は,輸血拒否の患者に無輸血手術を行うにあたって,詳細かつ正確にリスクなどを患者に説明する.
◆医師は,患者に説明する時間的余裕がない状況において,患者の同意を得ずに,救命のため輸血を伴う手術を行った場合,責任を負わない.

乳腺外科手術における医療安全と患者説明

著者: 野口英一郎 ,   明石定子

ページ範囲:P.297 - P.301

【ポイント】
◆乳癌治療は術式に多くのバリエーションがあるため,それぞれをよく説明したうえで,個々の患者と術式をshared decision makingすることが重要である.
◆術前にHBOCと診断された乳癌患者は,術前に多岐にわたることを考え,決定しなくてはならない.チーム医療での患者支援が不可欠である.
◆乳腺は左右ある臓器であり,術式も多岐にわたるため,術式の誤りが多く報告されている.全員で手を止めての手術開始時のタイムアウトが非常に重要である.

上部消化管外科手術における医療安全と患者説明—胃瘻造設を中心に

著者: 浦辺雅之 ,   坂本啓 ,   三輪快之 ,   瀬戸泰之

ページ範囲:P.302 - P.306

【ポイント】
◆全身状態不良の患者が対象となる胃瘻造設では,合併症から不幸な転機をたどる可能性も少なくない.
◆患者の病態や予後の把握が十分でないと,合併症のリスクが増大する.また,胃瘻を十分活用できなくなる.
◆胃瘻造設の適応については,倫理的な考察も求められ,施行医には胃瘻のメリット・デメリットを正確に説明する能力が必須である.

上部消化管内視鏡検査における鎮静と患者説明

著者: 柴田寛幸 ,   古川和宏 ,   古根聡 ,   廣瀨崇 ,   中村正直 ,   川嶋啓揮

ページ範囲:P.308 - P.312

【ポイント】
◆鎮静,鎮痛,麻酔について理解する.
◆上部消化管内視鏡検査で使用する鎮静薬の作用・副作用について理解する.
◆鎮静薬による医療過誤を回避するために事前・使用中に注意すべき点について確認する.

下部消化管外科手術における医療安全と患者説明

著者: 佐々木恵 ,   絹笠祐介

ページ範囲:P.313 - P.316

【ポイント】
◆下部消化管手術,特に直腸切除術には様々な術後合併症が存在するため,患者に対する術前の詳細な説明が肝要である.
◆患者とのトラブルになりうるシチュエーション,特に合併症が発生した際の適切な対応が求められる.

大腸内視鏡検査における医療安全と患者説明

著者: 千葉秀幸

ページ範囲:P.317 - P.321

【ポイント】
◆大腸内視鏡時のインシデント・アクシデントの原因は,鎮静薬,腸管洗浄液,処置時の偶発症の頻度が高いことが知られている.
◆鎮静薬使用は検査の苦痛を軽減する反面,高齢者での転倒・転落,ESDなどの長時間に及ぶ処置の前には過鎮静などのリスクを含め説明を特に丁寧に行う.
◆腸管洗浄液は投与後の腸閉塞のリスクを伴うため,排便状況などの問診が必須である.そのリスクが否定できない場合にはCTなどの画像検査を積極的に行う.

胆囊摘出術における医療安全と患者説明

著者: 竹内将 ,   石川喜也 ,   浅野大輔 ,   菅原俊喬 ,   渡邊秀一 ,   上田浩樹 ,   赤星径一 ,   小野宏晃 ,   工藤篤 ,   田中真二 ,   田邉稔

ページ範囲:P.322 - P.327

【ポイント】
◆胆囊摘出術にかかわる医療訴訟
◆胆囊摘出術における周術期合併症とその対策
◆胆囊摘出術におけるインフォームド・コンセント取得のいろは

鼠径ヘルニア診療におけるインフォームド・コンセントと医療安全

著者: 西條文人 ,   蜂須賀丈博

ページ範囲:P.328 - P.335

【ポイント】
◆鼠径ヘルニア診療における過去の医療事故を検証する.
◆過去の事例から学ぶ.
◆医療安全としてのインフォームド・コンセントを考える.

FOCUS

国際医療援助 ウガンダでの経験

著者: 捨田利外茂夫

ページ範囲:P.336 - P.339

はじめに
 外科医としての活動に幅を持たせ,より豊かな人生を送るための一つの方向性として発展途上国での国際医療援助への参加がある.全く違う環境で,現地の人たちの命と向き合うわけで,深い感動を得られる.現地での医療活動の一例として,日本赤十字社のウガンダ北部地区病院支援事業での日常診療を紹介する.2012年11月から翌年3月まで,ウガンダ北部カロンゴの病院に派遣された際のエピソードである.3人の研修医の教育と現地での外科系の医療を担当した(図1).

手術器具・手術材料—私のこだわり・25

肝胆膵領域における新世代多自由度鉗子の使用経験—もし腹腔鏡手術鉗子に関節があったなら

著者: 浅野大輔 ,   石川喜也 ,   菅原俊喬 ,   渡邊秀一 ,   上田浩樹 ,   小野宏晃 ,   赤星径一 ,   工藤篤 ,   田中真二 ,   田邉稔

ページ範囲:P.340 - P.343

はじめに
 近年ロボット手術は急速に普及しており,肝胆膵外科手術領域でも保険適用が拡大している.鏡視下手術における関節を有した鉗子による操作はエポックメイキングであり,ロボット支援下ならではの手技は多数存在する.一方で,ロボットの台数の観点からロボット手術枠制限の問題があったり,コストの観点からロボットの導入が困難であったりする病院も少なくない.本稿では,当施設における腹腔鏡手術で使用可能な新世代多自由度鉗子(ArtiSential)の使用経験について紹介する.
*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画を見ることができます(公開期間:2027年3月まで)。

病院めぐり

佐世保共済病院外科

著者: 丸山祐一郎

ページ範囲:P.344 - P.344

 当院は長崎県佐世保に立地し,413床,22の診療科を有する通称県北(佐世保市,平戸市,松浦市,佐々町)の地域中核病院です.明治44年に開設され,今年で創設112年目を迎えました.国家公務員共済組合連合会(KKR)病院グループの1病院で,虎の門病院と同じ系列になります.ハウステンボスからは少し離れた街の中心街にあり,病院前を佐世保川が流れています.
 当院は,①がん治療(外科,腫瘍内科),②骨折治療(整形外科),③周産期医療(産婦人科,小児科)を診療の3本柱としています.

臨床報告

胃癌術後にみられた孤立性腹腔動脈解離の1例

著者: 山口貴子 ,   赤坂治枝 ,   堤伸二 ,   小笠原宏一 ,   柴田滋

ページ範囲:P.346 - P.349

要旨
症例は50歳台,男性.胃癌に対して幽門側胃切除術,D2郭清を受けた既往があった.術後4年半時に突然の腹部不快感,両背部痛があり,腹部造影computed tomography(以下,CT)で,孤立性腹腔動脈解離の所見を認めた.腹腔動脈の血流は良好で血管外漏出や臓器障害を認めなかったため,絶食と疼痛管理を行い,数日で腹痛は改善した.その後のCTで腹腔動脈瘤は軽度の増大傾向を示したが,自覚症状や臓器障害の所見なく,その後動脈瘤は縮小傾向となった.本症例は孤立性腹腔動脈解離の明らかな危険因子を有していなかった.胃癌手術の際に腹腔動脈周囲郭清にエネルギーデバイスを用いており,手術と本疾患発症との関連性について検証を要するが,そのためにはより多くの症例集積が望まれる.

腹腔鏡下手術を行った脳室腹腔シャント留置患者に生じた横行結腸癌合併急性胆囊炎の1例

著者: 宮岡陽一 ,   松澤文彦 ,   横山良司 ,   中野詩朗

ページ範囲:P.350 - P.354

要旨
脳室腹腔シャント(ventriculoperitoneal shunt:VPS)は水頭症に対する代表的な治療法の1つである.症例は69歳,男性.3年前に右蝶形骨縁髄膜腫術後の水頭症に対しVPSが留置されていた.下痢の精査で横行結腸癌の診断となり,待機的手術を予定していたが10日前に急性胆囊炎となり,抗菌薬加療が開始された.保存的に軽快したため,予定通り腹腔鏡下で横行結腸切除および胆囊摘出術を施行した.経過は良好で特に合併症なく退院した.VPS留置下での腹腔鏡手術は,チューブ由来の合併症が生じる可能性があるとされ,周術期の対応について一定の見解を得られていない.今回,VPS留置下チューブの処置を行わずに腹腔鏡で複数臓器を一期的に摘出した症例を経験したので,文献的考察を含めて報告する.

書評

—本田五郎(編) 大目祐介,本田五郎(著)—坂の上のラパ肝・胆・膵[Web動画付]—腹腔鏡下手術が拓く肝胆膵外科のNEWスタンダード

著者: 遠藤格

ページ範囲:P.277 - P.277

 わが国の肝胆膵外科を牽引する若手のリーダーの一人である本田五郎先生とお弟子さんの大目祐介先生が共同執筆された本書は,本田先生が「現時点での腹腔鏡下肝胆膵外科手術の到達点」として出版されたものである.これは読まないわけにはいかないだろう.
 本書には,本田先生の開発したさまざまな有名術式・概念が網羅されている.例えば有名な「胆囊摘出術におけるSS-inner layer」,「肝静脈の股裂きを防止するCUSAの使い方」,「caudate lobe-first approach」などである.

—尾藤誠司(著)—患者の意思決定にどう関わるか?—ロジックの統合と実践のための技法

著者: 田代志門

ページ範囲:P.307 - P.307

 臨床意思決定のテキストの決定版であり,今後一つの基準となる本である.
 この半世紀で医療における意思決定の在り方は様変わりし,医師が患者の最善を考えて治療法を決めるスタイルから,医師からの情報提供を受けて患者が自身の治療法を決めるスタイルへと大きく変化した.

—一般社団法人日本肝胆膵外科学会(編)—肝胆膵高難度外科手術[Web動画付] 第3版

著者: 海道利実

ページ範囲:P.345 - P.345

 消化器外科手術の中でも肝胆膵外科手術は難易度が高い手術が多い.それゆえ,高難度肝胆膵外科手術を日本全国の皆さんに安全かつ安心して受けていただくことを理念として,2011年に日本肝胆膵外科学会高度技能専門医制度が立ち上げられた.その趣旨は,「高難度の手術をより安全かつ確実に行うことができる外科医師を育てる」ことであり,実技評価に基づき,術者とその修練施設を認定するものである.発足後,10余年を経て,2022年7月現在,高度技能専門医497名,修練施設288施設と,多くの高度技能専門医と修練施設が認定された.しかし,本制度は専門医の質を担保するべく,書類と手術ビデオにより厳密に審査が行われるため,合格率は50%前後と外科系基盤学会の専門医合格率(外科専門医合格率約95%,消化器外科専門医合格率約75%)と比べ,狭き門となっている.
 そこで,高度技能専門医をめざす肝胆膵外科医や指導的立場の高度技能指導医が知っておくべき外科解剖や基本手技,偶発症に対する対処法,代表的な術式などを解説した公的テキストが本書である.2010年の初版,2016年の第2版を経て,今回,大幅に内容を改訂して2023年6月に第3版が発刊された.

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目次

ページ範囲:P.242 - P.243

原稿募集 「臨床外科」交見室

ページ範囲:P.301 - P.301

バックナンバーのご案内

ページ範囲:P.358 - P.358

次号予告

ページ範囲:P.359 - P.359

あとがき

著者: 橋口陽二郎

ページ範囲:P.360 - P.360

 患者さんとのトラブルは,医師にとって大きなストレスとなるばかりでなく,医療訴訟などに発展すれば,時間的,精神的,時として社会的に強烈なダメージを被る.外科の先生が定年退職されるときのスピーチでよく聞かれるのが「外科医人生を大過なく過ごせたのは何よりもよかった」とのコメントであるが,この言葉の指す「大過」のなかには,「裁判沙汰」が含まれている場合が多いと思われる.
 今年度より病院長職に就いて改めて痛感しているのは,裁判沙汰になる・ならないを問わず,患者さんと医療者の間のトラブルが依然として非常に多いことである.そして,近年目立つ要因は,①患者・家族のクレームの増加と②医師の対応力不足である.患者・家族が医療過誤とは全く別次元の事項でも執拗にクレームをつけてくるような傾向は年を追って悪化する一方である.レストランやホテルのフロントで怒鳴っているような巷でよく見かける光景が,医療機関にも流れ込んできている.再三担当医が説明してお勧めしても,頑として聞き入れなかった入院拒否や手術拒否の患者さんから,その後の経過が悪かった場合にクレームを受けることはたびたび経験するところである.主治医がカルテに状況を記載するばかりでなく,「医療行為の不同意確認書」に署名してもらわなければ,水掛け論になりかねない時代になってきた.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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