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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科79巻4号

2024年04月発行

雑誌目次

特集 エキスパートに聞く!膵頭十二指腸切除のすべて

ページ範囲:P.365 - P.365

 膵頭十二指腸切除(PD)は消化器外科領域で最も高難度な術式の一つである.歴史のある手術ではあるが,近年の上腸間膜動脈周囲の脈管解剖に対する知見の深まりや,ロボット支援手術を含めた低侵襲化により,手技は顕著に変化しつつある.また,局所進行膵癌に対しては,術前治療の普及により,外科的手術の立ち位置やテクニック的な側面にも変化が認められている.本特集では,膵頭十二指腸切除に必要な解剖や術前・術後管理などの基本事項にとどまらず,手技的には標準的な開腹手術から最新のロボット支援手術までを網羅した.研修医からベテランの消化器外科医まで,日常診療の一助になれば幸いである.

総論

手術に役立つ膵頭部の外科解剖

著者: 村瀬芳樹 ,   伴大輔 ,   水井崇浩 ,   奈良聡 ,   高本健史 ,   江﨑稔

ページ範囲:P.366 - P.373

【ポイント】
◆膵頭部周囲の脈管構造は個々によって異なるため,膵頭十二指腸切除の際は包括的な解剖学的知識が必要である.
◆膵頭十二指腸切除の際に考慮すべき解剖変異として,肝動脈の変異や腹腔動脈の狭窄があり,術前に認識しておくことが求められる.

膵癌におけるresectabilityの評価と術前治療

著者: 青木修一 ,   伊関雅裕 ,   水間正道 ,   海野倫明

ページ範囲:P.374 - P.381

【ポイント】
◆膵癌における切除可能性分類は膵癌取扱い規約第7版より記載され,客観的で実用的な指標として広く受け入れられている.第8版の改訂では,腹水細胞診(CY)陽性をM1として扱うことが新たに記載され,切除可能性評価においてCYの病理学的診断が必須となった.
◆切除可能膵癌に対しては,Prep02/JSAP05試験によりゲムシタビンおよびS1の併用療法(GS療法)による術前療法の有用性が証明され,標準治療となった.
◆術前GS療法は不顕性遠隔転移への治療効果により,無再発生存期間および全生存期間の延長をもたらした.今後はより強力な術前治療レジメンの開発や新規バイオマーカーの開発が期待されており,将来的には個別化された周術期治療戦略が膵癌切除の予後向上につながると思われる.

膵頭十二指腸切除の術式選択とエビデンス

著者: 蔵原弘 ,   又木雄弘 ,   伊地知徹也 ,   大井秀之 ,   山崎洋一 ,   川崎洋太 ,   大塚隆生

ページ範囲:P.382 - P.385

【ポイント】
◆膵癌に対する膵頭十二指腸切除術では,予防的な広範囲リンパ節郭清を行うべきではない.
◆膵頭十二指腸切除術後の膵腸吻合と膵胃吻合の優劣に関しては短期・長期成績とも一定の見解は得られていない.
◆脾静脈・門脈合併切除後には左側門脈圧亢進症になる可能性に留意する必要がある.
◆膵癌に対する低侵襲膵頭十二指腸切除術は,手技に熟達した施設では術後短期成績を改善する可能性がある.

膵頭十二指腸切除の周術期管理と合併症

著者: 植松陽介 ,   北郷実 ,   八木洋 ,   阿部雄太 ,   長谷川康 ,   堀周太郎 ,   田中真之 ,   浜野郁美 ,   北川雄光

ページ範囲:P.386 - P.390

【ポイント】
◆膵液瘻などの合併症を減らす努力と準備を怠らないことは重要である.
◆周術期リハビリテーションと栄養管理は重要である.
◆膵内外分泌機能を管理することは重要である.

PDの標準術式

当科における膵頭十二指腸切除術の標準術式—Supracolic anterior artery-first approachによる上腸間膜動脈周囲郭清を中心に

著者: 宮田辰徳 ,   大庭篤志 ,   井上陽介 ,   小林光助 ,   小野嘉大 ,   佐藤崇文 ,   伊藤寛倫 ,   髙橋祐

ページ範囲:P.392 - P.398

【ポイント】
◆膵頭十二指腸切除における上腸間膜動脈(SMA)へのアクセス,SMA周囲の郭清深度は,本術式の工程の中で重要な要素を占める.
◆様々なSMAへのアクセスにおいて,安全な術野で解剖学的なランドマークを確認しながら手技を進めることが重要である.
◆低侵襲手術から得られる知見を開腹手術へfeedbackすることにより,より精緻で安全な開腹手技が可能となる.
*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画を見ることができます(公開期間:2027年4月末まで)。

SMA神経叢へのアプローチ:左側

著者: 井手野昇 ,   仲田興平 ,   阿部俊也 ,   渡邉雄介 ,   池永直樹 ,   中村雅史

ページ範囲:P.399 - P.404

【ポイント】
◆膵鉤部と腹側膵に存在する膵頭部癌がおもな適応である.
◆第一空腸静脈を合併切除するかどうかで腸間膜の切離ラインを決定する.
◆さまざまな“artery-first approach”に共通する手技が含まれているため,応用も可能である.
*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画を見ることができます(公開期間:2027年4月末まで)。

SMA神経叢へのアプローチ:右側

著者: 長井美奈子 ,   庄雅之

ページ範囲:P.405 - P.407

【ポイント】
◆術前に血管解剖は必ず入念にチェックする.
◆膵頭神経叢切離の際はリンパ管や血管も含むため結紮やシーリングデバイスを用いて処理する.
◆腫瘍の位置,大きさなどを考慮し,SMA神経叢郭清の範囲,必要性を症例ごとに適切に判断する.

Mesenteric approach

著者: 廣野誠子

ページ範囲:P.408 - P.413

【ポイント】
◆膵癌に対する膵頭十二指腸切除術におけるmesenteric approachは,切除段階において上腸間膜動脈(SMA)からアプローチするartery-first approachの一手法である.
◆Mesenteric approachにより,下膵十二指腸動脈(IPDA)を早期に切離することで,術中出血量の減量が期待できる.
◆Mesenteric approachは,患部である膵頭部を手で強く把持しないisolated procedureとして,膵癌細胞の揉み出しが回避できる可能性がある.
*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画を見ることができます(公開期間:2027年4月末まで)。

拡大手術

脾静脈合併切除再建を伴う膵頭十二指腸切除術

著者: 川野文裕 ,   藤澤将大 ,   古屋怜慈 ,   吉岡龍二 ,   武田良祝 ,   市田洋文 ,   三瀬祥弘 ,   齋浦明夫

ページ範囲:P.414 - P.417

【ポイント】
◆膵頭部癌に対する膵頭十二指腸切除術は唯一の根治的治療であるが,R0切除は長期予後を得るために重要な因子である.
◆膵頭部癌は解剖学的に門脈と近接することが多く,R0切除を得るために門脈合併切除・再建を要することも多い.
◆脾静脈合併切除を伴う場合,術後左側門脈圧亢進症をきたすことがあり,当科では左側門脈圧亢進症の予防のため脾静脈再建を用いている.
*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画を見ることができます(公開期間:2027年4月末まで)。

Conversion手術の展望

著者: 深澤美奈 ,   渋谷和人 ,   藤井努

ページ範囲:P.418 - P.424

【ポイント】
◆UR-LA膵癌に対するConversion手術は,化学放射線療法や重粒子線治療の保険適用により報告が増えている.手術適応に関しては十分に検討するべきである.
◆UR-M膵癌に対するConversion手術の報告も増えてきているが,その有用性は現時点では明らかでない.
◆CY陽性膵癌は他の遠隔転移に比較して病勢コントロールが得やすく,CY陰転化により遠隔転移のない症例と同等の予後が期待される.

再建法

膵空腸吻合:Blumgart法

著者: 内田雄一郎 ,   髙原武志 ,   西村彰博 ,   三井哲史 ,   水本拓也 ,   岩間英明 ,   小島正之 ,   須田康一

ページ範囲:P.426 - P.430

【ポイント】
◆安全な膵腸吻合を行うためには吻合開始前の膵断端準備が重要である.
◆運針・糸捌きの定型化により,チームで共通認識をもって手技を進める.
◆膵実質,膵管を損傷しない運針・結紮を心掛ける.
*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画を見ることができます(公開期間:2027年4月末まで)。

膵空腸吻合:柿田式—理論背景と現在の工夫

著者: 西澤伸恭 ,   隈元雄介 ,   贄裕亮 ,   藤山芳樹 ,   五十嵐一晴 ,   田島弘 ,   久保任史 ,   海津貴史 ,   柿田章

ページ範囲:P.431 - P.437

【ポイント】
◆膵臓に愛護的な膵切離として,膵小葉間の結合組織を切離する小葉間膵切離を行う.
◆膵管断端を空腸壁内に引き込み,膵管チューブによる主膵管完全ドレナージを行うことで吻合部の長期開存を狙う.
◆通針による膵損傷を最小限にするため,膵空腸密着吻合4針と膵管空腸粘膜吻合4針を基本構成とする.
*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画を見ることができます(公開期間:2027年4月末まで)。

膵胃吻合

著者: 上村健一郎 ,   住吉辰朗 ,   新宅谷隆太 ,   岡田健司郎 ,   馬場健太 ,   原田拓光 ,   高橋信也

ページ範囲:P.438 - P.442

【ポイント】
◆膵管-胃粘膜吻合部にはInternal stentを留置し,主膵管の確実な減圧を行う.
◆膵断端は胃粘膜ポケット内に嵌入させ,膵断端分枝由来の膵液漏出を腹腔内に漏らさない.
◆Blumgart変法では脆弱な膵実質でも損傷することなく吻合が可能である.
*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画を見ることができます(公開期間:2027年4月末まで)。

低侵襲手術 minimally invasive surgery

腹腔鏡下膵頭十二指腸切除術

著者: 中村慶春 ,   川島万平 ,   青木悠人 ,   大城幸雄 ,   賀亮 ,   増田寛喜 ,   大野崇 ,   松下晃 ,   吉田寛

ページ範囲:P.444 - P.452

【ポイント】
◆低侵襲性と根治性が担保された手術手技を,安全性とともに時短を考慮しつつ執り行っていく必要がある.
◆膵管癌と非癌のケースに分けた膵鉤部周辺の術野展開と,アプローチ法について解説した.
◆胆管と膵管の吻合に有用な連続縫合法について解説した.ただし,本術式における門脈再建と膵消化管吻合にはロボット支援が必要である.
*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画を見ることができます(公開期間:2027年4月末まで)。

ロボット支援下膵頭十二指腸切除術:Single-surgeon technique

著者: 生駒成彦

ページ範囲:P.454 - P.460

【ポイント】
◆高度手術技能を要するロボット支援下膵頭十二指腸切除は,慎重な修練計画と適切な患者選択が肝要である.
◆ロボット手術は時間との勝負である.切除・再建のそれぞれの工程において助手に頼らず#4アームを駆使して術野を最適化し,できるだけ工程を行き来せず効率の良い手術を心掛ける.
◆Multimodal pain regimenによるオピオイドの最小限の使用を軸としたERASプロトコールにより早期のfunctional recoveryを実現することで,ロボット手術の使用を患者の利益とできるよう心掛ける.
*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画を見ることができます(公開期間:2027年4月末まで)。

ロボット支援下膵頭十二指腸切除術:Two-surgeon technique

著者: 高木弘誠 ,   楳田祐三

ページ範囲:P.461 - P.465

【ポイント】
◆ロボット支援下手術におけるTwo-surgeon techniqueの概念を述べる.
◆Two-surgeon techniqueを用いたロボット支援下膵頭十二指腸切除術の概要を述べる.
*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画を見ることができます(公開期間:2027年4月末まで)。

FOCUS

手術室で求められる思考パターンの鍛え方

著者: 竹田伸也

ページ範囲:P.466 - P.469

どちらの課題?
 手術室でのあるやりとりを見ていただこう.
執刀医:「何やってんだ! クズ!」
レジデント:「すみません!」(ひどい,傷つけられた….)

病院めぐり

長浜赤十字病院外科

著者: 塩見尚礼

ページ範囲:P.470 - P.470

 長浜赤十字病院は滋賀県の北部,長浜市と米原市からなる人口約16万人の湖北医療圏にある,492床の地域中核病院です.救命救急センター(3次救急),地域周産期母子医療センター,地域災害医療センター,第2種感染症指定病院,精神科を擁する総合病院であり,原子力災害拠点病院,県北部で唯一手術支援ロボットda Vinciが稼働,などが当院の特徴で,屋上にヘリポート,地上ではドクターカーを有して多発外傷,重症救急患者の治療をはじめ「救急患者を断らない」をモットーに診療を行っています.
 当院は昭和7年4月に日本赤十字社滋賀支部病院長浜診療所として発足し,昭和12年12月に日本赤十字社滋賀支部長浜療院と改称,35床の病院として現在地に移転しました.昭和24年4月に長浜赤十字病院と改称,増改築を経て現在に至っています.外科の守備範囲は食道癌,胃癌,大腸癌をはじめとする消化管外科,肝癌,膵癌,胆道癌,胆石症などの肝胆膵外科,ヘルニア,腸閉塞,穿孔性腹膜炎,外傷などを含む救急外科,成人ヘルニア,乳腺外科,腹部大血管,シャントなどの末梢血管外科,鼠径ヘルニア,虫垂炎を含む小児外科,と多岐にわたります.昭和56年には滋賀県で1例目の生体腎移植が外科で行われた関係で,現在でも腎透析センターの管理を担当しています.

臨床報告

急性膵炎をきたした膵動静脈奇形に対し,動脈塞栓後に根治術を施行した1例

著者: 田中健太 ,   山村和生 ,   岡崎泰士 ,   大谷聡 ,   佐賀信介 ,   安藤修久

ページ範囲:P.472 - P.477

要旨
症例は55歳男性.他疾患で施行した造影CT検査で膵頭部に拡張・蛇行した異常血管集簇像を認め,膵動静脈奇形(arteriovenous malformation:AVM)と診断された.無症状のため経過観察の方針としたが,1年2か月後に腹痛のため再受診し,膵AVMによる急性膵炎と診断した.保存的治療後に根治手術の方針とし,術中出血量軽減のため術前に流入動脈のコイル塞栓術を施行した.翌日,亜全胃温存膵頭十二指腸切除術を行い,合併症なく術後22日目に退院した.膵AVMは外科的切除が最も根治を期待できる治療法であるが,術中出血コントロールが問題となる.動脈塞栓後に安全に根治術を施行した膵AVMを経験したので報告する.

書評

—本田五郎(編) 大目祐介,本田五郎(執筆)—坂の上のラパ肝・胆・膵[Web動画付]—腹腔鏡下手術が拓く肝胆膵外科のNEWスタンダード

著者: 山本雅一

ページ範囲:P.391 - P.391

 腹腔鏡下肝胆膵切除術はこの20年間に大きく進歩した.当初は肝胆膵外科分野で発展するのか危惧されたが,術後の患者負担の軽減,合併症が少ないことが多くの臨床研究で明らかにされ保険収載された.腹腔鏡による視野も良好で,外科医教育に有効であることも評価されている.さらには最近ロボット手術も導入され新たな時代を迎えつつある.
 2010年に第4回肝臓内視鏡外科研究会を主催した.フランスからBrice Gayet教授をお招きし腹腔鏡下手術の可能性について多くを学び,その発展を確信した.鏡視下手術の良好な視野から繊細な手術が可能となり,出血量は大きく減少した.創部が小さいことから術後の回復が早く,在院日数も減少した.しかし,臓器を直接触れることができないこと,鏡視下における切除臓器の立体的把握の困難さ,鉗子操作の修得に時間がかかること,大量出血時の止血の困難さなどの問題点も指摘された.経験豊富な医師の下である一定期間のトレーニングが重要であると認識した.

—一般社団法人日本肝胆膵外科学会(編)—肝胆膵高難度外科手術[Web動画付] 第3版

著者: 宮崎勝

ページ範囲:P.453 - P.453

 日本肝胆膵外科学会が認定する高度技能専門医制度におけるその取得は,外科手術の実技面を重視した専門医制度として2011年に発足した専門医制度であり,またわが国において当時手術実技を重視し判定するといった専門医制度として初のものであり,多くの外科領域の医師に注目されたものであった.その後,内視鏡外科学会等でも同様の試みの制度が追随されるようになった.当時,肝胆膵外科手術は術後の致死率が決して他の外科手術の中でも低いとは言えず,手術リスクは高いものとして考えられていた.そのため日本肝胆膵外科学会は,手術を受ける方々にそのリスクを知ってもらうとともに,安心して高難度肝胆膵外科手術を受けていただくべく認定施設制度(A施設とB施設認定)を設け,それを広く公表したのである.それは患者さんに資する情報を提供したいと考えた上でのことであった.その際,施設のみでなく,確実に高難度外科手術を施行し得る外科医の育成およびその認定についても,併せて開始したというわけである.したがって,旧来の専門医制度に比べるとその専門医に合格するのには極めて高いハードルが設けられており,その分受験する医師にとっては,大変な苦労や努力を要すると言える.結果,取得した専門医には高いプライドおよび責任が与えられることになっている.2011年スタート時にはわずか12名の合格者であったが,その後徐々に受験者および合格者が増加してきている.しかしながら,ここ数年来の2020年代に入っても合格率はほぼ50%前後という狭き門ではある.ちなみに2022年の合格者は93名となっている.

—小山恒男,矢作直久(編著)—十二指腸腫瘍の内視鏡治療とマネジメント

著者: 山本博徳

ページ範囲:P.471 - P.471

 この度小山恒男先生,矢作直久先生による『十二指腸腫瘍の内視鏡治療とマネジメント』が出版された.非常にタイムリーな,今必要とされる指南書である.25年前にわれわれがESDを始めたのは,低侵襲で臓器温存のできる内視鏡治療の確実性を高め,適応を広げたいと考えたからである.適応を広げると本来リンパ節郭清を必要とする外科手術の適応病変にまで踏み込む可能性も出てくるため,詳細な病理診断によりリンパ節転移のリスクを詳しく知りたく,一括摘除にこだわったという経緯がある.
 近年十二指腸腫瘍が脚光を浴びている.十二指腸は,解剖学的に特殊な臓器である.食道,胃,大腸では,標準的な治療として手技も確立したESDではあるが,十二指腸においては極めて技術的にも困難であり,リスクも高い.穿孔等の偶発症を起こすと膵液が後腹膜に漏れることにより,致死的な問題に進展するリスクも高い.一方で,十二指腸の解剖学的な特殊性のため,手術的治療においても高度な技術が要求され,リスク,侵襲の大きな手術となってしまう.

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目次

ページ範囲:P.362 - P.363

原稿募集 「臨床外科」交見室

ページ範囲:P.452 - P.452

バックナンバーのご案内

ページ範囲:P.482 - P.482

次号予告

ページ範囲:P.483 - P.483

あとがき

著者: 田邉稔

ページ範囲:P.484 - P.484

アカデミックサージャンになるということ
 人生時が経つのは早いもの,2023年度末で大学を離れ関連病院の院長として新天地に向かうことになった.長く外科医として務めた大学,母校慶應から医科歯科へ山あり谷ありの超充実キャリア,それを終えるにあたり,初めて大学スタッフとして恩師北島政樹先生に呼び戻された時のことを思い出す.それは1999年のこと…「4月から帰室してもらうよ」.医局長から当時私が勤務していた東京電力病院に電話があった.肝移植に憧れ米国ピッツバーグ大学に留学,34歳で帰国したものの出張病院で肝移植が出来るわけもなく,大学の外から移植班としての活動を続けて5年目の出来事だった.当時の医局は北島政樹教授の主催する『西暦2000年第100回日本外科学会総会』の準備の真っ盛り,『居場所と仕事は自分で勝ち取れ』との不文律があり,帰室したばかりの“最弱スタッフ”の私は右往左往するばかりであった.そんな私に天から降ってきた仕事は“第100回記念式典”の準備であった.年長のスタッフは皆,自分のキャリアアップに結びつく学術企画等の準備に多忙を極め,皇太子殿下をお招きする記念式典の準備は誰も寄りつかない“重いお仕事”であった.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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