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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科8巻10号

1953年10月発行

雑誌目次

綜説

Billroth第1法と管状胃切除術

著者: 山岸三木雄 ,   渡辺三作 ,   衣笠昭 ,   松並義輝

ページ範囲:P.553 - P.559

 胃潰瘍に対する最も効果的の外科的療法は広汎胃切除術であることは現代一般に認められている.即ち潰瘍部を含めて胃を広汎に切除して術後の胃液酸度を低下せしめることが必要である.その術式に関し,Billroth第1法(B.I)が生理的,解剖的見地からBillroth第2法(B.II)より優つていることは云うまでもないが,何故一般にはB.IIが広く行われているかは,從来のB.Iには実際的に幾多の支障,制約があつたからである.併し我國では最近B.Iの優秀性が再認識せられ,瀬尾,河合,中山の諸教授がそれぞれ創意的のB.I変法を案出され,中山氏法が広く用いられつゝあることは,B.Iを支持する我々には喜ばしいことである.
 從来のB.Iの最大の欠点は云うまでもなく広汎胃切除が困難であつたことである.即ち胃を広汎に切除せんとすれば,胃十二指腸吻合部に必然的に緊張が生じ,縫合不全の危險があつたからである.このことは広汎胃切除を行う場合には致命的欠陷と云わざるを得ない.この外の欠点として,吻合部の縫合線の交叉による弱点,吻合口に狹窄を起し易き点などがあげられる.

内分泌機能から見た乳癌の前癌状態

著者: 藤森正雄 ,   平山峻 ,   林正秀 ,   橫田貞男

ページ範囲:P.561 - P.567

 乳癌の発生,診断及び治療を内分泌機能ことに性腺ホルモンと関連せしめて考察することは古くから行われている.たとえば,動物就中マウスにおいてestrogenの連続注射,(Lacassagne,1932)卵巣移植(Murray,1928)によつて乳癌が発生し,或はその発育を促進する(Murray,1937)のみならず,人においても強力なestrogen注射に一致して同時に乳癌が発生することがある(Allaben& Owen 1933, 1939, Anchincloss & Haagen—sen 1940, Parsons & Mc Call 1941, Footed& Stewart 1954)ことから,estrogenに発病性があり,乳癌の成り立つ原因(Kansale Genese)としてestrogenが1つの有力な因子であろうと推定するものが少くない.また,乳癌患者の性腺ホルモン代謝及び排泄に異常がおこるであろうという推定の下に,これを乳癌の診断に役立たせようという試みもある.

縱隔腫瘍の外科—21自驗例に関る考察

著者: 葛西森夫 ,   中村好和

ページ範囲:P.569 - P.576

 縱隔腫瘍は在来珍しい疾患とされ,我邦では手術された症例は少なかつた.良性腫瘍は後述する樣に,自覚症状を欠く者が可成りある爲に,自覚もされず放置されている場合があると思われる.近年集團檢診等の際に,胸部のレ線檢査が広く施行される樣になると共に,縱隔腫瘍の発見が増加し,稀有な疾患でなくなつて来た,一方胸部外科の進歩により,縱隔腫瘍の手術も段々安全に施行出来る樣になり,手術例も我が國で近年急激に増加した.此所に我が教室に於ける経驗例を基とし,我々の縱隔腫瘍に対する考えを述べ,縱隔腫瘍治療に資し度いと思う.
 縱隔腫瘍は周知の如く病理組織学的に種々のものが含まれる.広い意味にとつて,縱隔内に或空間を占める病変をすべて縱隔腫瘍に含める人もいる.縱隔内に生ずる眞性腫瘍では,それによつて起る苦痛,症状,危險の全部又は大部分が他臟器又は組織を圧迫する事によつて生ずる.結核腫の如く,その症状の発現機轉が眞性腫瘍と殆んど同樣なものは,外科の立場から見て,縱隔腫瘍に含めて考える人もある.

外科手術と調節低血圧法

著者: 大谷五良 ,   飯田文良 ,   鍵谷德男 ,   上野明 ,   浦上正躬

ページ範囲:P.577 - P.584

いとぐち
 手術野に於ける出血を阻止して手術操作を容易にし,あわせて出血量を減らそうという試みは古くより行われており,エスマルヒ氏駆血帶の使用もその一例であるが,このような目的に低血圧を應用することは比較的最近に始まつたものである.即ちClevelandのGardner1)(1946)はメニンヂオーマの手術に,同じくHale2)(1948)は内耳開窓術の手術に,共に脱血によつてこのような目的を達している.脳神経外科の領域に先ずこのような必要が痛感されたのは興味深いものがある.次いでGillies及びその一派(1948)は高位脊髄麻醉法による低血圧をこの方面に應用して大いにその効果を示したが,しかし脱血法にせよ高位脊髄麻醉法にせよ生体に種々の不利な作用を及ぼし且つ調節性に欠けるものであることは明らかである.

總腸間膜症について—日本に於ける本症の統計的観察

著者: 阿久津哲造

ページ範囲:P.585 - P.593

 総腸間膜症Mesenterium communeとは,小腸と結腸が共通の游離腸間膜を有し,可動性になつている状態であつて,胎生学的には,胎生第3カ月位迄は,総て総腸間膜の状態にあるが,新生兒では既に結腸間膜の短縮が起つて,上行結腸,横行結腸は後腹壁床に固定されている.然るに胎生学的発生過程中,腸管の種々なる廻轉異常及び癒着固定異常によつて,腸間膜は完成途上に発育を停止し,或は異常発育を呈し,且つ腸走行にも異常を来す事がある.そして最も多いのは,盲腸及び上行結腸の一部が小腸と共通の腸間膜を有し,游離せるものであつて,高度な場合は横行結腸の中程迄小腸と同一の游離腸間膜を有している.
 総腸間膜症自体では何等症状を訴えぬものもあり,軽い胃腸症状を訴える場合もあるが,重篤なる症状を現すと云う事はない.從つて本症と直接関係のない疾患による開腹術の際偶然発見される事がある.しかし時に腸軸捻軸症或は腸重積症等の重篤なる合併症を起して外科的治療の対称となるのである.

症例

縱隔腫瘍と誤診した上行大動脈瘤の1例

著者: 宮本忍 ,   延島一

ページ範囲:P.594 - P.599

 動脈瘤に関する研究は病理解剖学的,実驗的,臨床的に古来多数の業績発表があるが,発生頻度は多いものではない.
 一般に動脈瘤は,性別では女より男に多く,年齢的には40歳以後に好発する.

Erb氏麻痺の保存的療法

著者: 守安久

ページ範囲:P.600 - P.601

 Erb氏麻痺は第5,6頸神経麻痺であり,主として外傷に引続いて来る肩及びは肘関節の運動麻痺によつて気付かれる.然も腕神経叢部に加わつた直達外力によるよりも,上肢に牽引力が加わつて腕神経叢が過度に伸展されて起るものの方が多いと云われている.そして治療及び予後に関しては神経断裂なく圧迫,過度伸展によるものは保存的に治療して予後は屡々可良であるとされているが観血的に処置した報告は屡々見受けられるにも拘らず保存的治療を行つた報告は少い樣である.私は茲に「トラック」轉覆事故によつて起つたErb氏麻痺が約8ヵ月にわたる保存的療法により全治した1例を報告する.

骨形成不全症の1例

著者: 服部忠

ページ範囲:P.601 - P.604

 乳幼兒骨疾患には佝僂病,メーラーバロー氏病,早発性粘液水腫,Pnokomelie,畸型性骨炎,纖維性骨炎,骨髄炎,骨結核,骨腫瘍,先天性骨梅毒,軟骨化骨障碍の胎兒性軟骨萎縮症(Chondrodystrophia foetalis)の他に,骨形成の先天的不足疾患である骨形成不全症(Osteogenesis imperfecta)がある.骨の脆弱性を示す疾患についてはChaussier(1716),Bordenau(1763),Henckel(1772),Ekmann(1788),Sandifort(1793),Meckel(1822),Sartorius(1826)等の報告があり,Lobstein(1833)が成年の易骨折性症例を報告し,特発性骨脆弱症(Osteopsathyrosis idiopathica)と命名し,Vrolik(1843)が多数の骨折をもつて出産した症例を報告し骨形成不全症(Osteogenesis imperfecta)と名付けた.最近私は本症の1例を経驗し未だ文献上1例も見ない血漿蛋白質分屑を観察し特異な所見を得たので報告する.

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集談会

ページ範囲:P.605 - P.605

第519回東京外科集談会 28.7.18
  1)自発性壞疸に対する最近の保存療法成績
            慶大外科 亀谷 壽彦・他
  本症に対して,(1)2%食塩水の滴点靜注,(2)20〜 40mgイミダリンの滴点靜注,(3)ノボカインにより腰 部交感神経遮断,等を單独或は合併して行い其の治療効 果を檢した.食塩水靜注の作用機序は血液成分のアンバ ランス調整であり,イミダリンは全身的血管拡張剤とし て作く.何れか單独で効果の無い場合は併用により良好 である.其の際(1)+(2)は軽症に,重症には更に(3)を 併用する.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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