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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科8巻12号

1953年12月発行

雑誌目次

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長管状骨骨折の新固定法

著者: 福慶逸郞

ページ範囲:P.667 - P.669

 骨折の治療に際しギプス繃帶による固定が他の方法によるより骨の癒合が著しく早いことは知られている,勿論観血的治療の行われる多くの症例は損傷の程度も高度であり,叉全身状態に及ぼす影響も大きいとは想像される.観血的手術を行う場合に注意しなければならない事項も多い.例えば手術の時期である.一般に第2週の始めと考えられている,この時期には損傷部は液状の血液成分の吸收が終り狹義の再生活動が現われると同時に仮骨発生に重要な刺戟となる凝血が周囲と結合している.然し何等の処置も行わないと言う檬な患者の不満のためにやゝもすると早く行つてしまうし,手術時には解剖的関係を見極めるため,又感染の培地となるのを怖れて,遊離した組織及び凝血を創から除去すると治癒機轉に於ける自然の刺戟剤を奪うことになり仮関節を作り易くなる.或は骨膜と軟部組織との間を剥離して循環に障碍を来すとか固定に用いられる金属によつては骨が吸收されるとか等である.此等の事項を充分に考慮しても尚ギプス繃帯に及ばない.又牽引繃帯でも重錘を掛け過ぎたり長期間に過ぎると仮骨硬化が起らず長く異常可動性が存在する.極端に云えば牽引は整復の手段であつて固定の手段でないと考えたい.前田式固定法でも同じで,充分であると考えて螺釘を除去すると未だ異常可動性が存在する,移動さえ起らなければ螺釘を除去し副木で固定して置いた方が寧ろ早く仮骨硬化が起る.

仙腸関節結核の症状

著者: 池田亀夫

ページ範囲:P.671 - P.676

 從来,不治の病としてその多くが諦観され無爲無策に絡つた腰痛或は坐骨神経痛は近時整形外科医の好個の研究対称となり,相次いでその原因的疾患が解明されているが,未だその由つて来た所以の不明なるものが尠くない.
 この一連の疾患の一つとして寧ろなおざりにされてきたものに仙腸関節結核がある.

門脈外科の肝機能に及ぼす実驗並に臨床的研究

著者: 小谷彥藏

ページ範囲:P.677 - P.700

1 いとぐち
 門脈の血行を手術的に変換する実驗的試みは古い歴史をもつが,実際に臨床上重要な問題となつたのはごく最近のことである.1936年Rousse—lot1)氏が門脈圧亢進症という概念を提唱し,この治療として1945年Whipple氏2)並びにBlake—more and Lord氏3)が門脈系大静脈系吻合(Porta—caval Anastmosis)を発表してからである.
 門脈圧亢進症には肝硬変症とBanti氏症状群などが含まれる.然るに,これらの疾患の門脈圧亢進に対しては,今日までの医学は殆んど無力であった.例えば,肝硬変症の食道胃静脈瘤破裂による出血死は約1/3〜1/4に達するといわれ,また一度出血がおこればその2/3以上は一年以内に死亡するといわれる程4),門脈圧亢進はこれら患者の生命を脅かしている.ここに門脈圧亢進症に対する治療の問題が,血管外科の研究と相侯つて外科領域に新しく登場してきたのである.

外科的腸結核症の手術例について

著者: 斎藤弘 ,   寺島一郞

ページ範囲:P.701 - P.705

 各種結核症患者の腸結核症合併頻度は,病理解剖学的には可成高率である事は認められているが,そのうち,外科的処置の対照となるものは,主に,結核性腸狭窄又は,腫瘤形成性腸結核症であつて,本症の大部分をしめる結核性潰瘍性腸炎に比べれば,比較的少いものである.又本症に対する,ストレプトマイシン(S.M.)の有効な事も一般に認められているが,S.M.治療に依り治癒促進の結果,急激に腸狭窄を来したと思われる2例を経験し,切除の機会を得たので,同時に前記2例を含め切除術を施行した結核性腸狭窄3例,結核性廻盲部腫瘤4例を中心に,曠置的手術例4例を加えた,11例の本症に就いて,臨床的,組織学的検討を行つた.

経靜脈性脂肪輸入に関するその後の研究

著者: 日笠賴則 ,   麻田栄 ,   塚田朗 ,   巽亘 ,   西野忠之 ,   妹尾覚 ,   森井外吉

ページ範囲:P.707 - P.711

 我々は靜脈内へ安全に注入し得る脂肪乳剤を作製し,これを動物実驗的に使用した際に於ける本剤の体内代謝過程の一部を嚮きに報告した.即ち靜脈内へ注入された2μ以下の脂肋球は先ず肺胞貧喰細胞,肝星芒細胞,脾臓の網内系細胞群攝に取され,それら細胞内で注入脂肪球はLipoid化し,然る後肝実質細胞並びに全身の組織細胞内に入り,利用されるものであろうとの実驗結果を得た.而も斯る所見は脂肪の経口的投與の際と形態学的には大体同一の組織顯微化学的所見を示す点からも,本脂肪乳剤の如く脂肪を乳化状態で靜脈内へ注入しようとする我々の企てが当を得たものである事を実証した.併し乍ら以上の報告1-6)は何れも從来からの脂肪の体内代謝過程に関する常識からすれば,その第一の段階を取扱つたものに過ぎず,從つて直ちにこれらの成績のみを以て本脂肪乳剤の栄養学的價値を云々するわけにはゆかない.この欠を補うべく更にその後今日迄に我々がなし得た実驗成績を此処に追加発表する次第である.

外科臨牀におけるアンチピリン法による身体全水分量の測定

著者: 高藤歲夫 ,   水川五郞

ページ範囲:P.713 - P.717

 近年急速に発達してきた蛋白代謝や水分及び電解質平衡に関する数々の知見が,実際に臨床的にも應用されて輝かしい成果をあげていることは,周知の事実である.これらの知究のすゝむにつれて,治療の指針とするための各種臨床検査手技もまた,從来の單なる濃度のみを基準として取扱つてきた考え方から,ようやく量的の測定を根拠とする方向へむかつてきたようである.殊に外科臨床においては,手術を中心とした加療の際,かなり多量のしかも高張の溶液も頻繁に注入されるようになつてきたが,このことは同時に,体液の増減及び細胞内外各区の分布変動という面で,種々の問題をなげかけていると考えられる.細胞外区の検索については,既にこれまでに幾つかの方法が考案され,多方面からの批判検討を経て,現在実地臨床上にもかなり広く應用されている.しかし細胞膜の彼方,細胞内液の化学ということになると,諸学者の研究・努力にもかゝわらず,依然として狹き門のなげきを残していた.放射性同位元素の應用は,この方面の解明に大きな希望をいだかせたが,乏しいわが國の現状では,これもいわば高嶺の花にとゞまるべきものであつた.1949年Soberman等が身体の全水分量を測定する方法としてアンチピリン法を提唱して以来,米國に於いてその追試の文献がようやく数多くみられるようになり,本邦に於いてもまた内科方面でその追試成績が発表されるに至つた.

Colistinの臨床経驗

著者: 吉田誠三 ,   加藤敏昌

ページ範囲:P.719 - P.720

 近年各種抗生物質のあい次いでの発見は,外科領域に輝かしい進歩の跡を残した.1946年小山氏等は福島地方の土壌より一種のAerobacillusを分離しその培養濾液より結晶性抗性物質を抽出精製した.之はColistinと名づけられグラム陰性菌に対して特異的に抗菌力を有する事が認められた.ColistinはPolypeptidでその構成アミノ酸としてd-leucine,l-threonineその他が含まれているがd-serineは証明されない.抗熱性(100℃以上数日間でも安定)で水溶液としてもpH 2〜7の範囲では効力に変化なく,体液(血液,血清その他)で効力を減じない.

先天股脱に対するColonna手術の経驗

著者: 丸毛英二 ,   石山敏夫

ページ範囲:P.721 - P.723

 先天股脱に於て臼蓋形成不全のため所謂亞脱臼障碍を有するもの,或は再脱臼を起す様な症例に対し從来臼蓋形成術が行われて来た.Max Laugeに依れば数十年間に行つた多くの臼蓋形成術中僅か2例の失敗をみたのみであるといつている.
 然し最近其他の報告ではこの手術で常に必ずしも満足すべき結果が得られるとも限らない.Bi—ckel, Andersonの報告に依れば80例の臼蓋形成術中27.5%の失敗をみたと云い,Niessen-Lieは57例中20例に移植骨の吸收を見,唯27%のみ成功したといつている.不成功の理由としては移植骨の吸收,関節の硬直等が挙げられている.前述のMax Laugeの2例の失敗は何れも移植骨の吸收によるものであるが1例は髀臼の中へ余りに深く入つた所に移植したものであり,他の1例は余りに高い所へ移植したものである所から,氏は移植骨の吸收は髀臼の中へ深く入りすぎても又高すぎても吸收の原因になるといつている.一方Bran—des, Pauwels Zahradnicek, Bernbeck等は旧蓋形成不全の主なる理由は骨頭のアンテトルヂオンや股外反に依るものであるとして臼蓋形成術を行わないで大腿近位端の截骨術を行うことを薦めている.彼等に依ると大腿近位端の截骨術に依り関節の状態が良くなると骨膜性髀臼蓋附加に依り髀臼部に骨性強化が起るという.

最近の外國外科

術後嘔吐及び他の原因による嘔吐の新鎭吐剤による治療法,他

著者: ,  

ページ範囲:P.724 - P.725

(Der Chirurg 24, J. H. 5, 1953)
 手術後の嘔吐特にエーテル麻醉後に起る嘔吐はさけたい麻醉合併症である.鎭吐剤として嘔吐反射路を中断するか,興奮傳導路に抑制的に働けば確実に良く効くことになる.
 すでに前から抗ヒスタミン剤に鎭吐作用のあることが知られていたが,多くの抗ヒスタミン剤の中から強い鎭吐作用を有するDrmamin,Vomex Aを推奨する.この作用機轉は判然としないがヒスタミンを中和したり化学的に変化させる事よりもむしろその最もよい効果は神経系や組織をヒスタミンや他の病毒に対する刺戟閾が高い樣な違つた反應状態に置き代えんとする能力にある.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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