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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科8巻13号

1953年12月発行

雑誌目次

特集 頸部外科臨床の進歩

合成樹脂による頸部食道癌切除後整形について

著者: 中山恒明 ,   木村滋

ページ範囲:P.727 - P.731

私は頸部食道癌の根治手術に對して既に17例の經験がある。そして第504回外科集談會で述べた通り,圖1・2に示す様な皮膚切開で二次的手術を施行することが,其の手術成功の確實性に於て且又術後の狭窄の豫防に於て優れて居る事を知つた。(圖3〜圖7)
 實際10例が未だ生存し,5年の長期に亘つて全治しているものもある。

頸椎カリエス

著者: 飯野三郞

ページ範囲:P.732 - P.739

1.發症頻度,性,年齢など
 全脊椎カリエスに對する頸椎カリエスの割合を比較的數多い統計のみについてしらべて見ると,表1のように西歐では大體6%〜12%前後を占めるのに對し,わが國の統計では3.2%から5.28%を示し,西歐のそれよりやゝ下廻るように見える。これを更に我々が最近調査した東北大學整形外科10年間における1549例の脊椎カリエスについてやや詳細に觀察すると(表2),性別においては頸椎カリエスは胸椎カリエスならびに胸腰椎カリエスと同じく,男女間に殆んど差を認めない。これに反して腰椎ならびに腰仙椎カリエスがやゝ男性に多いことは,壯年期以後における腰仙椎が急性慢性の外傷で曝露されていることに由來していると云えるのかも知れない。
 次に發症年齡について頸椎カリエスと他の部位のカリエスとを比較すると,まことに格段なる差異が認められるのであつて,表2に示すように頸椎カリエスは10歳以下において過半數(66.1%)が發症し,10年代以後はいずれも僅少であるのに對し,胸椎以下のカリエスではいずれも20年代において壓倒的の頻度を示すことは,古來云われている頸椎カリエスの若年における頻發性をこゝにも如實に示してくれたものと云える。

斜頸

著者: 靑池勇雄

ページ範囲:P.740 - P.750

 斜頸とは頭が頸とともに一方に傾いて,頭を眞直ぐに保てず,斜頸の反對側への運動が制限されている状態を言うもので,種々の原因からおこる一症候であるが,また普通には獨立した病名に用いられている。
 斜頸は單に側方傾斜であることが稀れで,むしろ同時に頸の捻轉が加わるのが普通であり,一般に捻頸(Torticollis)とも言われる。

リンパ腺結核症の治療

著者: 濱口榮祐

ページ範囲:P.751 - P.762

I.序
 リンパ腺結核症の問題は古くして,しかも今日なお種々未解決の重要課題を藏している。殊に最近急速に發達した結核症の化學療法はリンパ腺結核症の治療法をも一變したかの觀がある。われわれは既にリンパ腺結核症を始め,身體各部の結核性冷膿瘍に關し,化學療法を主體とする研究を數次に亙つて報告して來たが,それらは主として治療の近接成績であつた1)2)3)。結核症の如く,慢性經過をとり,しかも再發の多かるべき疾患では治療の遠隔成績を調査し,飜つて各治療法の効果を比較検討し,今後の參考とすることは極めて有意義である。この報告では從來の治療法を批判しわれわれの經驗を述べ,最近調査した遠隔成績から本症の治療法の將來について言及する。

惡性甲状腺腫

著者: 伊藤尹 ,   伊藤國彥 ,   金地嘉夫 ,   大林公明

ページ範囲:P.763 - P.772

 日常臨床外科に於て,甲状腺機能より見て機能亢進を示すものに,バセドウ氏病(突眼性又は中毒性甲状腺腫),急性甲状腺炎等があり,機能低下を示すものに,伊藤の所謂 硬化性甲状腺腫(慢性間質増殖性甲状腺腫炎),ある種の膠樣甲状腺腫等がある。是等に屬せざるものに,一般の膠樣甲状腺腫 大部分の結節性甲状腺腫,地方病性甲状腺腫等があるが,茲に記する惡性甲状腺腫は機能的には殆ど問題とするに足らない。
 然るに機械的障碍から見る時は,惡性甲状腺腫は最も重要なるものに屬し,惡性たる所以は,遲かれ早かれ,機械的障碍が腫瘍發生の局處,或は他臓器への轉移巣に於て必發の症状となり,將來必ず不幸の轉機に導く最大の原因となると極言し得るものである。

氣管切開

著者: 林義雄

ページ範囲:P.773 - P.781

1.氣管切開の歴史
 氣管切開の長い歴史は色々の見地からも注目に値するものである。この手術はキリスト前百年に既にAsklepiadesに由り考えられていたと言う。人間で最初に氣管切開を行つた人はAntonio Musa Brasavolaで16世紀の初めFeraraに於てであつた。その頃氣管に達する方法は大變まちまちであつたが上部氣管輪の間を横切開の下に行つたという。然しFabricius ab Aqa pendenteはその頃既に氣管カニユーレを用いていたし,Casseriusはこの手術を理論的に擴大した。第二回目の氣管切開はSanctoriusが16世紀と17世紀の轉換期に行つている。17世紀初めには巴里のHabicotが屡々行い短直カニユーレを使用した。St.Andrewの看護人George Martinが1730年に氣管切開をした一人の患者に對して初めて二重カニユーレを使用した。1745年にはMorgagniはこの手術にとつて大切な目標であり厄介物である甲状腺の狭部(Isthmus)を發見し,1765年Homeはクループに對する氣管切開を推賞した。
 TrousseanとBellocはクループや喉頭結核の患者に度々氣管切開をしたがその後は主としてカニユーレの工夫に進歩が見られ1776年Göttin—genのA.G.Richterが現在用いられているようなカニユーレを作つたのである。

喉頭癌

著者: 吉田祺一郞

ページ範囲:P.783 - P.796

 戰後相次いで紹介された諸種抗菌劑の恩惠により,現在では所謂炎症性疾患の治療に對する昔日の概念は根底から改められつゝあるが,未だ腫瘍殊に癌腫に對しては飛躍的な治療法なく舊態依然として暗中模索の現状である。筆者は茲に喉頭癌の題名の下に戰後阪大臨床で検索して來た喉頭剔出150例の成績を基礎とし,本疾患に對する現在の私の考え方を述べ,諸賢の御批判を仰ぐ次第である。

脈無し病と思われた1症例並に總頸動脈切除後,内外頸動脈吻合の經験

著者: 神谷喜作 ,   藤岡興人 ,   岡田武

ページ範囲:P.797 - P.800

 我々は脈無し病といわれる疾患の血管變化に類似した1症例を報告する。臨牀所見では所謂脈無し病の3徴候をそなえてはいないが,手術により右總頸動脈を切除し,これを組織學的に検索することが出來た。又右總頸動脈切除後内頸動脈と外頸動脈の吻合を行い,不幸な轉帰に終つたことも併せ報告し,御批判を仰ぎたい。

轉移性甲状腺腫の統計的観察

著者: 靑木正敏

ページ範囲:P.801 - P.805

 甲状腺の上皮性腫瘍の内には臨床的にも組織學的にも惡性腫瘍としての所見を示さないが,生物學的には明に惡性と見られる一群の腫瘍がある。即ち良性腫瘍でありながら轉移するという矛盾は學問的に興味ある問題として病理學者,胎生學者外科醫の間で多年論議されて來たのであるが未だその決論をみていない。この腫瘍に關してはCo—hnheimが1876年にeinfacher Gallertkropfmit Metastasenと題する發表以來Langhans1),Kocher2),Wegelin 我國では1901年から金森3),伊藤4),石山5),斎藤6)等の追加發表があつて昭和28年5月迄に22例の症例の報告がある。而してこの腫瘍の治療成績を眺めると必ずしも良性腫瘍とは言い難く,術前診斷の極めて困難な點,並に最近の米國のこの腫瘍に對する態度を考察する時統計的觀察をする意義も少くないと思い,我が教室の2例を加えて本文を作つた。なお資料の不備,不正確等遺憾な點が少くなかつたがこれは本腫瘍の不明瞭な性格上己むを得ないことであり諸先輩の御批判に俟ちたいと思う。

症例

キュットネル氏病の1例

著者: 阿部諄方 ,   佐藤麟太郞

ページ範囲:P.806 - P.807

 キュットネル氏病とは非特異性慢性炎症性機轉による慢性炎症性唾液腫で,顎下腺に最も多く,舌下腺耳下腺にも發生する。本症の報告は1896年Bruns'Klinikに於けるKüttnerの記載が最初のもので,本邦にては1907年(明治40年)岩鳩氏の症例を最初とするものである。最近北岡氏に至る迄數10例の少數に過ぎない。余等は今般魚骨,及び唾石の二ヵの異物に依り生ぜし本症の1例を經驗したので此處に報告する。

頸部椎間軟骨ヘルニアの1例

著者: 相馬秀臣

ページ範囲:P.808 - P.810

 腰部に於ける椎間軟骨ヘルニアによつて,特有なる根性坐骨神經痛を起した患者は屡々我々の外来を訪れるがその特有な臨床症状並びにミエログラフイー所見によりその診斷はさほど困難なものでなく,亦手術成績も極めて良好である。之に反し頸部の椎間軟骨ヘルニアは,前者に較べその症例も少く,腰部に於ける坐骨神經痛の如き特有なる臨床症状を現して來ない為に,その診斷は可なり困難である。私は最近經驗した頸部椎間軟骨ヘルニアの1例を報告し,我々の教室に於て現在迄に經驗せる15例について,いさゝか考察を加え報告する次第である。

Riedel氏甲状腺腫の1例

著者: 垣內誠一

ページ範囲:P.811 - P.812

 本症は1896年Ridelが始めて獨逸外科學會に於てDie chronische zur Bildung eisenharter Tumoren führe—nde Entzundung der schild drüseとして2例を報告し一見悪性腫瘍と思われる本症は組織學的には全く特殊な慢性炎症であるとして1897年にeisenharte Strumitisと命名した。一方Ponset Eiselsberg等は癌腫説を主張した。爾來本症は單にThyreoiditis chronica, Stru—mititis chronica. Riedelsche struma eisenharteStruma等の名稱で各國から發表されて來た。我國に於ては比較的少く昭和25年に溝口氏が自家經驗例を含めてそれまでの20例に就て考察を加えており,27年遠藤氏が自家經驗例8例を報告している。私も最近その一例を經驗したのでその概要を報告する。

頸部淋巴細網肉腫の1例

著者: 山田榮吉

ページ範囲:P.812 - P.815

 慢性炎症性疾患(結核性諸疾患・骨膜骨髄炎・種々難治性潰瘍・放線菌病・梅毒等々)の病竈を母地として惡性腫瘍の併發を見る事は決して稀有では無いが,筆者は結核性淋巴節炎(頸部)の一旦治癒後淋巴細網肉腫を併發した症例を經驗したので追加報告する事にした。自驗例の概要を記述すれば次の如くである。
 自験例:○部○文:26歳男子悪性腫瘍遺傳關係なし)現病歴:昭和23年6月頃右頸部に小指頭大乃至拇指頭大の籔個の淋巴節腫脹現われ,皮膚と癒着し一部軟化したので,某醫より結核性淋巴節炎として7月31日迄54日間穿刺排膿ツベルフラビン20cc局所注入を受けたが自潰し8月1日より創所置と共に太陽燈照射を翌年2月5日迄7ヵ月間に亙り實施され,爾後は9月3日迄創所置を受け小硬結を残し略々治癒の斷定を受けた。然るに約半カ年を経た昭和25年3月再び該部は發赤・腫脹・波動を示めすに至つたので主治醫より筆者に初めて紹介された。當時極く輕症乍ら兩側肺浸潤のため當院の内科で治療が開始されて居たので,(S.M.及びパス,筆者は該部イヒチオール塗布と1週1回の割で數回レ線照射を行いたるも1ヵ月半後自潰したので,パス又はチビオン末等を使用しその間數回太陽燈照射を試みた。

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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