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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科8巻3号

1953年03月発行

雑誌目次

綜説

イレウスの治療—閉塞内容の吸引・排除法

著者: 齊藤淏

ページ範囲:P.111 - P.114

 閉塞が起れば直ちにその上部に内容の蓄積が始まる.この閉塞内容に就てはその68%は嚥下されたもの残りの32%は体内に発生したものであつて,後者の中70%は流血より30%は腸内に発生したものであるとされている(Mc. Iver, Wangensteen, Hibbard).
 兎も角もかくて起つた腸膨満と腸内圧亢進の必然の結果として腸壁の血行障碍が招かれることになる.Sper—lingによると閉塞腸の重さは35%以上に増加すると云う.百瀨の調査によると,低位閉塞時の小腸の重量は逐日増加するが,其の内容を除いた小腸のみの重量比(体重に対する)も閉塞後逐日増加に傾くが解除を加えると速かに減少する.即ち單純性閉塞の後に於ては腸管壁にも逐次液体の停滯が起り之は腸管の膨満に密接な関係にあると解される.

虫垂炎性急性化膿性腹膜炎に対するクロロマイセチンの効果(I)

著者: 高田善 ,   藤田承吉 ,   渡辺暉邦 ,   喜多昌彥 ,   安田義雄 ,   庵谷実 ,   松山きん

ページ範囲:P.115 - P.119

まえがき
 虫垂炎性急性化膿性腹膜炎は,吾々外科医が日常遭遇する機会の多い疾患であつて,化学療法の発展と共に,本疾患に対する化学療法も常に注目され,研究されて来た.
 Domagkがマウスの腹腔感染にSulfonamideを使用して以来,BowerのProntosilの臨床実驗,EppsのSulfanilamide化合物及びSulfathiazol等の実驗報告があり,Penicillin(Pと略す)の発見により,益々化学療法が多く導入された.殊にCrile1)2)がPの大量投與により好成績を得たと報告してから,Dean3),Farris4),Cappleson5),坪井6),田代7)等は,Pの有効なことを報告している.又Bower8),Rothenberg9),Eerne10),Pulaski11)等はPとStreptomycin(S. M. と略す)とを併用し,P單独よりも良好な成績をあげ得たことを報告している.Altemeier12)は虫垂炎による腹膜炎の死亡率が1934年から1938年の間の化学療法を行わなかつた338例では14.5%であつたものが,1942年から1948年の間の化学療法を行つた244例では4.9%に減少したと報告している.

リンパ腺結核への塩基性アミノ酸製剤の局所應用について—臨床経驗について

著者: 高山坦三 ,   靑木高志 ,   新津谷哲

ページ範囲:P.121 - P.124

1
 新藥の続出は近来ことにいちゞるしく,しかも輝かしい各種抗生物質の成果やスルファミン剤の医療効果は,化学療法への信頼を一気に高めたかの感がある.かつてはサルバルサンをのぞいては化学療法に対しては,おおむね悲観的とまでゆかなくとも,一般に懷疑的であつたが,その観念がまつたく一変したかの観がある.ことに結核症に対する化学療法は,多くの学者の執拗,強靱な挑戰にもかゝわらず,強固な城壘のなかに閉ぢこめられたまゝであつたが,この一両年のあいだにその牙城の一角に崩壞の兆しがあらわれてきて,われわれ医師をして期待の喜びを感じさせている.
 ひるがえつて考えてみるに,結核の治療剤の嚆矢は,1890年ベルリンで開催された第10回万國医学大会において,コッホによつて発表されたツベルクリンである.

裂肛とその1手術法

著者: 工藤達之 ,   工藤市雄

ページ範囲:P.125 - P.128

 裂肛は慢性化するとなかなか治癒し難く,殊に裂創の囲周に瘢痕形成が著明となり,又所謂Sentinel pileと呼ばれるポリープが形成されると,例え一時的の軽快を見ることがあつても屡々増惡を繰返えし,自然治癒は殆ど望まれなくなる.この頃患者は上圊時の苦痛と出血に堪えられなくなつて外科医を訪れるのであるが,著者等はこれ等の患者に対し成書に記載してある各種の治療法を試みて来たが,いずれも多少の欠点があつて充分満足すべき方法とは思われなかつた.
 幸に昭和21年以降我々は慶應義塾大学医学部附属月ケ瀬温泉治療学研究所に勤務し,昭和27年9月迄に521例の肛門疾患の手術的治療を行つたが,そのうちに26例の慢性裂肛を経驗することが出来たので,これ等の症例に就て調査を行う一方手術法の改良に努めて来た.最近に至つてその調査の結果と,手術症例の予後調査も一段落し,ほゞ満足すべきものと考えられるに到つたのでこゝにその成績を報告し諸賢の御参考に供し度いと考える.

肝腸吻合(Hepato-enterostomy)

著者: 本庄一夫 ,   長谷川正義

ページ範囲:P.129 - P.132

 肝外胆道は種々の原因により内腔に恒存性の狹窄を生じ,黄疸を惹起する.即ち外部(膵頭部癌,慢性硬化性膵炎)からの圧迫により,或は内腔の閉塞(総胆管癌,フアーター氏乳頭部癌)により,又は管腔の炎症性瘢痕收縮(主として結石に基く)によつて起る.或は胆嚢剔出時の手術的過誤による術後の狹窄もある.
 これらの外科的黄疸に対しては,從来からも種々の手術的操作が工夫,施行されているのは周知のところである.

腹壁冷膿瘍—殊にその発生機序について

著者: 岩井芳次郞 ,   山下九三夫 ,   木村信良

ページ範囲:P.133 - P.136

まえがき
 筋肉結核の発生機序は古くから興味がもたれ,隣接器官の結核から二次的に生ずるとなすもの(Virchow,Zen—ker,Ostendorf)と結核巣から血行性にいわゆる原発性筋肉結核を発生するとみなすもの(Habermaas u. Mü—ller, Lanz u. de Quervain)との2説があつたが大井1)はClairmont,Winterstin u. Dimtza2)氏等が68歳男子の右前膊屈側及び右大腿伸側の結核性筋肉膿瘍の患者で,自家膿汁療法の目的のため,右大腿膿瘍から得た膿汁5ccを左大腿伸側に注射した結果発生した結核菌の直接接種による眞性原発性筋肉の1例を報告した事にかんがみ,筋肉結核を表1の樣に,原発性,轉移性,波及性と分類する事を提唱した.
 腹壁筋肉結核に関しては,最近解剖学的見地から淋巴行性発生が注目されるようになり,特に腹壁淋巴節が重要な役割をなすものと見られるように到つた3)4).然しながらその考察に於ても,病理組織学的檢索が未だ充分とはいえない.

症例

原発性胃肉腫の3例

著者: 白石幸治郞 ,   川瀨達也 ,   河合常雄 ,   中村嘉三

ページ範囲:P.137 - P.140

 原発性,胃肉腫は比較的稀な疾患とされているが,我々は最近短期間のうちにその3例を経驗した.病理組織学的にいずれも滑平筋肉腫であり,興味ある症状を呈したのでこゝに報告し,考察を加えてみたい.

心臟伏針の1例

著者: 飯田茂 ,   田中敏夫

ページ範囲:P.140 - P.141

 最近,心臟外科が研究され,その手術成績も向上しつゝあり,且つ心臟異物に関しても,若干の摘出成功例が報告されている.
 我々は最近精神異常者により,心臟内に刺入された木綿針を摘出し得たので,之につき報告する.

手術創より壞死腸管の排出を見た結核性腸閉塞症の1例

著者: 植竹光一 ,   広瀨輝夫

ページ範囲:P.142 - P.145

 腸閉塞症に関する報告例は,文献上枚挙の暇のないところであるが,最近極めて稀有な経過を取つて幸い治癒し得た1症例に遭遇する機会を得た.余等の渉猟したところでは,本邦においては未だ本症例の如き報告例を見出し得ないものであつて,敢えて茲に御報告致し,大方諸賢の御参考に供し度いと存ずる次第である.

術後蛔虫アレルギーに因る熱発作(二題)

著者: 阿部達次 ,   熊谷秀夫 ,   杉山諭 ,   千葉慶子

ページ範囲:P.145 - P.147

 蛔虫症の多くは内科,小兒科領域に属するものであるが,外科領域に於ても屡々重大な役目を演じている事は戰後多数の文献にみられる所のものである.併しその多くは蛔虫迷入症,蛔虫性イレウス,或は手術創からの蛔虫脱出例等で,外科手術の対照報告例である.
 我々も亦蛔虫迷入症又は蛔虫性イレウス等の経驗はあるが,次に述べる樣な術後合併症と考えるべき稀な蛔虫症を経驗し,多大の苦汁をなめると共に,これが駆虫に依て忽ち劇的治癒を来たした.これを本邦文献上に求めるも外科領域に於ては全くみられないので茲に報告する

手術により治癒した成人の特発性総胆管拡張症の1例

著者: 水野明

ページ範囲:P.147 - P.148

 胆嚢水腫の診断のもとに開腹したところ,胆嚢膿腫を伴う特発性総胆管拡張症で,胆嚢剔除,総胆管切除,及び肝管空腸端々吻合術を行い幸に全治せしめ得た1例を経驗したので報告する.

若年者胃,十二指腸潰瘍治驗7例

著者: 岡本一男 ,   堀向憲治

ページ範囲:P.148 - P.150

 胃および十二指腸潰瘍は,頻度の甚だ高い疾患で,内科たると外科たるとを問わないで,各々の領域に於て適当に処理されているが,漸次外科医に於て処置される傾向が強くなりつゝある.手術例数の増加と共に,若年者胃および十二指腸潰瘍は,今迄考えていたよりも遙かに多数にあり,かつ成年のそれと比べて差異がなく,むしろ其れよりも病変の高度の場合が多く,手術適應として少しも躊躇を感ずることがないのである.たゞ若年者という理由で,姑息的治療によつて徒らに日子を費すことは不可で,速かに手術により1日も早く苦悩から脱却させ,1日も早く就業させることに努力するのが我々の務と思う.
 術後経過も亦非常に良好で,極言するならば,胃,十二指腸潰瘍は年齢的に豪も考慮を拂わないで,存在を確認すれば,手術的処置をとるべきだと考えている.

仮性膵臟嚢腫の嚢腔腸吻合による治驗例

著者: 広瀨堯

ページ範囲:P.151 - P.152

 最近当院外科に於て,腹部挫傷後約3週間にして,巨大仮性膵臟嚢腫の発生を見た患者に,嚢腔腸吻合を行つて全く円滑に治癒せしめた1例を経驗した.仮性膵臟嚢腫を内瘻造設によつて治癒せしめたものゝ報告は,尚多くない樣であるからこゝに報告する.

オルトパン筋注麻醉とモヒ靜注麻醉の追試

著者: 有賀英之 ,   渡辺賢二

ページ範囲:P.153 - P.154

 我々は最近オルトパンソーダ筋注麻醉とモヒ靜注麻醉の追試を行い好成績を得たのでこゝに報告する.

皮膚轉移及び両側乳腺腫瘍を伴える未分化胚細胞腫の1例

著者: 和田正士

ページ範囲:P.155 - P.156

 卵巣には特殊な腫瘍として未分化胚細胞腫があり,睾丸に於けるSeminomと対比せられ一部の人はSemi—noma ovoriiと呼んでいる.この腫瘍は惡性のものだが轉移は他の惡性腫瘍とは比較的少く主として淋巴道を介して轉移し,血行を介する事は極く稀とされている.私は本腫瘍剔出後早期に血行性皮膚轉移及び両側乳腺腫瘍を生じた1例に遭遇し,かゝる例は文献上に無く興味あるのでこゝに報告し諸賢の御批判を乞いたい.

最近の外國外科

近い將来の外科,他

ページ範囲:P.157 - P.158

 本年9月中旬開かれた第38回日米國外科学会の総会で将来外科は如何に予期すべきかが問題となつた.現在心臟や,肺や,其他の活きた臟器を移殖することは不可能なのだが,尚多くの外科的試練を経て其可能なことを熱心に研究しつつある.
 既に外科医が一つの動物から他の動物に種々なる組織を移殖することが行われている.例えば角膜移殖は明らかに成功した.其他血管や骨や特殊事情下の皮膚や歯牙でさえ人間の方で殆んど成功に近づいた.

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集談会

ページ範囲:P.159 - P.160

第513回東京外科集談会 27.12.20
 1)積極的酸素療法により救い得た一酸化炭素中毒の1例  日本医科大斎藤外科 犬養 功
 26歳 医師 睡眠中ガス漏洩のため一酸化炭素中毒を起し諸反應遅鈍意識,消失,失禁,Cheyne-Stokes氏呼吸の状態にあつた。挿管による酸素送入による人工呼吸,潟血と共に多量(1.700cc)の酸素飽和加血液の頸動脈,股動脈より注入により救命。爾後何等の精神症状域は後貽症を呈することが無かつた。

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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