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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科8巻4号

1953年04月発行

雑誌目次

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手術中の急性心動停止に対する心臓マッサージによる蘇生の経驗—特に長時間マッサージ成功例に就て

著者: 木本誠二 ,   杉江三郞 ,   三枝正裕 ,   佐藤文雄

ページ範囲:P.163 - P.171

 手術中の急性心動停止は以前から時々経驗される重篤合併症であつたが,最近非常に侵襲の大きい手術が日常多数行われるようになつた関係上その発生頻度も多くなり,これが対策は各國の外科医並に麻醉医の間で重大な関心を以て研究されている.その文献も数百に上るほどであるが,日本では著者1)が昭和25年5月に当時経驗した心臟マッサージによる心動停止恢復の1例を機会にこの方面の注意を喚起した小文を発表した以外に,臨床的の報告は殆ど見当らない.
 吾々は数年前福田外科の時代から胸部の心臓,大血管ばかりでなく,腹部でも特に從来に比較して大きい侵襲を要する手術を度々実施する機会があつたため,こうした心動停止を一再ならず経驗した.その度に心臓マッサージを試みた症例が木本自身だけで7〜8例あると記憶しているが,その中一應心動が恢復し且つ1日以上正常の心動を続け得たものが3例ある.殊に最近の1例は56分間に及ぶ長時間の心臓マッサージでその間一度も有効心搏動は出現せず,しかも何等の後障碍なく完全に治癒した記録的症例であり,この機会に纒めて本問題に関し御報告申上げ度いと思う.

結核肺切除術の臨床成績より見たる適應

著者: 澤崎博次 ,   佐藤登 ,   山田二郞 ,   田部英雄 ,   山田充堂 ,   山中豊 ,   向井勝郞 ,   戒定義人 ,   佐藤史郞 ,   梶山一彥

ページ範囲:P.172 - P.177

 結核肺切除術の成績に就ては,多数の報告があり,而かもその成績はストレプトマイシンの使用により格段の向上を見たが(Bailey1),Overholt2)),肺結核治療体系上の肺切除の占める位置に就て考慮するならば,從来の肺虚脱療法不適又は無効例,乃至は気管支狹窄,拡張,結核腫等と云う從来の治療法には適しないと云う観点からの適應選定のみならず,更に進んで手術の安全性乃至術後結核性合併症の軽減と云い観点からの嚴重な適應症決定がなされなければならない.その意味に於てSive-Bogen-Dolley3),吉村4)等の手術成績分析より割り出した細い手術適應條件選択と云うことが今後の研究問題となつて来よう.
 吾々は昭和24年8月以降100例を越える肺切除術を施行したが,その中昭和26年5月迄の54例についてその臨床成績より逆に適應に関し,注意すべき事項を檢討した.

虫垂炎性急性化膿性腹膜炎に対するクロロマイセチンの効果(II)

著者: 高田善 ,   藤田承吉 ,   渡辺暉邦 ,   喜田昌彥 ,   安田義雄 ,   庵谷実 ,   松山きん

ページ範囲:P.178 - P.180

臨床例
 虫垂炎性急性化膿性腹膜炎に対するC.M.使用例の報告は本邦に於いても甚だ少く,僅かに白羽氏17)の報告を見るのみである.
 吾々は表6(前号参照)に見る様な症例を経驗した.何れも國産C.M.錠を使用した.広汎性腹膜炎4例(内小兒2例),限局性腹膜炎3例,盲腸周囲膿瘍1例で,この最後例は発病後10日目に来院,右下腹部に手拳大の有痛性腫瘍を触れ既に盲腸周囲膿瘍を形成していたもので,入院後直ちに手術を行うことなく,C.M.を投與して経過を観察した.その他の例は何れも虫垂を切除し排膿消拭した後手術創は一次的に閉鎖し,直ちにC.M.の投與を開始した.

腰部糞瘻を主徴とするクローン氏病の経驗

著者: 石山俊次 ,   石山功 ,   今井正一

ページ範囲:P.181 - P.187

はしがき
 いわゆるクローン氏病がclinical entityとして注目されるようになつたのは1932年B. B. Crohn,L. Ginzburg and G. D. Opyenheimers1)が,最初末端部廻腸炎Terminal ileitis次いで局所性廻腸炎Regional ileitisとして記載してからである.しかしLewisohnによれば2)その以前にもDalziel(1913)3),Monihan(1907)4),MayoRobson(1908)5),Braun(1909)6),Moschcowitzand Wilensky(1923)7),Coffen(1925)8)などが同樣の病変について報告して居り.Crohn以後にもSegmental ileitis,Lewisohn(1938)9),Regional enteritis,Felger and Schenk(1940)10),Chronic interstitial enteritis,Dalziel(1913)3),Chronic cicatrizing enteritis,Reichert andMathes(1936)11)など多くの名称でよばれている.

胸腔内手術とプロカイン及びプロカインアマイドの使用

著者: 飯田文良 ,   服部孝雄 ,   穴沢雄作 ,   石井正文 ,   澁沢喜守雄

ページ範囲:P.188 - P.195

 近時気管内麻醉法の発達に伴い胸腔内諸臓器に対する手術侵襲は比較的容易に行われるようになり,特に心臓に対する諸手術さえ本邦に於ても漸く盛に行われようとしている.気管内カテーテルによる気道の維持,酸素の確保,或いはクラーレの應用,補助呼吸,調節呼吸の應用等によつてわれわれにとつても或程度の呼吸の調節は可能なものとなつたが,心臓循環系に対する調節可能の範囲は尚お微々たるものに過ぎない.しかし気道えの刺戟や心臓そのものに対する侵襲がしばしば重篤な心臓循環系の障碍を招いて死帰を見ることもあり,これら胸腔内諸操作とその心臓循環系に対する作用を檢索してその予防及び治療の方法を檢討することはきわめて重要なことであろう.これに関する研究の一端としてわれわれは塩酸プロカインならびにプロカインアマイドの予防的および治療的効果について檢索を行つた.尚おプロカインアマイドは田辺製藥会社の好意により提供された.

リンパ性細網肉腫について

著者: 內山淳夫

ページ範囲:P.196 - P.199

 1916年Ghon及びRoman両氏によつて初めて記載された細網肉腫なる腫瘍に関しては,内外諸学者の間に幾多の眞摯な研究が積まれているが組織構造が複雜多岐を極め,且つ所謂細網内皮系統が形態学的に尚お究明されていない爲に諸家の意見がまちまちであり,其の名称についても今日まだ一定していない状態である.私は最近所謂リンパ性細網肉腫4例を経驗したのでその臨床所見,組織所見等に就き若干の文献的考察を加えて報告し以て諸賢の御高批を仰がうとする次第である.

集談会

ページ範囲:P.204 - P.206

第515回東京外科集談会 28.2.21
 1)猫ヒツカキ病の1例
        國立東京第一病院 長野和夫
 本症に関しては中部欧州には報告が多いが本邦には無い.29歳,女子,右拇指球を飼猫に噛まれ治癒したが2週後発赤,硬結起り6週後頭痛,発熱,所属淋巴腺の腫脹が起つた.摘出淋巴腺には小皮樣細胞の増殖あるも細菌の証明不能,局所も自然に治癒,本症は猫との関係を80%に証明されVirus性疾患と想像されている.

第53囘日本外科學會總會日程

ページ範囲:P.208 - P.212

昭和28年4月1,2,3日の3日間
東京・神田・共立講堂において開催
第1日(4月1日,水曜日)午前8時30分開会
午前の部
開会の辞 会長 河合直次
一般演説(○印演者)
1.高田絮数反應の外科臨床的應用(5分)
 徳島大橋本外科 ○竹内 莊治,申村哲太郎,蓮井 実,井上 正一,梶浦 浩,速水 驍,山崎 益弘

第26回日本整形外科学會總目次

ページ範囲:P.212 - P.215

会 長  九州大学教授 天兒民和
   会 期  昭和28年4月8(水),9(木),        10日(金)
   会 場  九州大学医学部中央講堂
   第1日 4月8日 水曜日 午前8時開会
開会の辞     会長 天兒民和
          午前の部
1.所謂緒方氏腕輪(前腕部皮膚に於ける隆起線)  の原因について     群大整形 二宮 俊作

外科と生理

その17

著者: 須田勇

ページ範囲:P.200 - P.201

4:3 臥位性呼吸困難(orthopnea)
 臥位では呼吸困難があるが坐位をとると呼吸が樂になるという現象が所謂坐位呼吸である.坐位呼吸というのは変な言葉で,臥位での呼吸困難といつた方がよく判る.
 臥位で発現する呼吸困難が何故坐位では消失するか,ということの生理学的機序に就ては色々に考えられて来た.第1に考えられたのに坐位によつて肺活量が増すというと横隔膜の重力による下降が起る。同樣に,肺の血管系に鬱血があれば重力によつて除かれる部分も出来るが,それによつて呼吸困難が改善されることも考えられる.第2は,坐位の方が肺組織の伸屈が充分行われるからとの考え方もある.第3に,第1と同じ理由で中枢での鬱血が除かれ血液循環がよくなるために代謝物質が洗い洗されることが呼吸困難の取除かれる原因だとの考えもある.要するに,臥位と坐位とで作用する物理的要因に呼吸改善の契機を求めてこの現象を説明しよととするものである.そこで,前に述べた一般に呼吸困難を起す要因が坐位から臥位に移る時に増強されるか否かを檢討することが順序である.この点をAltschuleの意見に從つて次に述べる.

最近の外國外科

小兒の急性虫垂炎,他

著者:

ページ範囲:P.202 - P.203

(Ann. Surg. 136:243, 1952)
 Mary J. Drexel Hospitalに於ける小兒虫垂炎777例(1930〜1951)に就て死亡率を観察した.
 死亡は非穿孔例には1例もないが,穿孔例に於ては,次の如くである.
 (I)1930〜1932(16.3%),(II)1933〜1936(6.5%)
 (III)1937〜1944(3.78%),(IV)1945〜1951(5.5%)
 (I)は電解質溶液療法がよく理解されなかつた時代で,(II)は非経腸的に液体の投與がしばしば用いられ,凡ての腹膜炎に腸の空虚がはかられMcBurney切開の使用が増加した時代であつて,此等の諸因子はもつとも顯著に死亡率は減少させたと思われる.(III)は化学療法剤とくにSulfanilamideが用いられた時代,(IV)は抗生物質時代(Penicillin等)を表わして居る.又麻醉の改善,抗生物質は,呼吸器系の合併症や,創の感染,ドレナージの使用等を減じ罹病率を低下させたと思われる.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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