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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科8巻9号

1953年09月発行

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特集 最新の麻醉

Wet Caseに対する気管支内麻醉の経驗

著者: 篠井金吾 ,   高橋雅俊 ,   早田義博 ,   野沢直道 ,   三宅有 ,   松柳豊志 ,   有坂元彥 ,   中村哲夫 ,   伊藤宏 ,   片根敏郞 ,   村田年男 ,   掛川達夫 ,   久米公夫 ,   大野知実 ,   上野茂之 ,   登坂英夫 ,   木平宏 ,   中村智

ページ範囲:P.519 - P.525

 肺壞疽,肺膿瘍,肺腫瘍,気管支拡張症及び混合感染のある肺結核症等では殆んど常に喀痰量が多く,この樣な所謂Wet Caseでは手術中に分泌物を他側肺に吸引することによつて重篤な肺合併症を起す危險がある.これが対策として術中の体位を適度に保つて分泌物を口側へ自然に誘導することが大切であつて,これにより健側肺への吸引を防止出来ることは既に我々も経驗し,又この問題について報告もしたのであるが,開胸術に於いては必然的に左右肺の間に空気の振子流動が起るため,分泌物は常に安全に口側に流動するとは限らず,やゝもすると振子気と共に健側に吸引される危險が少くないのである.現今では開胸術に対して気管内麻醉が最も賞用されているが,この樣なWet Caseでは気管に挿管を行うため気管壁に抵抗を生じ,其のため健側への吸引を阻止し得ない場合がある.これに対する積極的対策としては手術中患側気管支を閉塞し健側肺のみで呼吸と麻醉を行わしめ,患側と健側の交通を遮断することが好ましいのである.これが対策の1つとして福田外科,武藤外科で試みられている気管支内綿球充填法があるが,この方法に関しては我々は経驗も乏しいので批判することは出来ないが,未だ研究途上のものの樣である.我々が主として研究した方法は気管支内麻醉の問題であつて,これ又極めて困難な問題であるが此処には主として本問題を取上げて檢討して見度いと思う.

心臟外科の麻醉

著者: 榊原仟 ,   織畑秀夫 ,   岸本賴子

ページ範囲:P.527 - P.532

 心臟疾患に対する外科手術は近年急速な進歩を遂げ,治療成績も次第に向上して来ている.
 心臟手術が,数年来著しい発達を遂げた理由は種々あるが,抗生剤の発見と,麻醉法の改良とに負う所が大きい.茲に心臟手術の際の麻醉について,大略を記したいと思う.

両側開胸時の麻醉に就て

著者: 石川義信 ,   米沢利英 ,   大場直人 ,   橋本信 ,   大原到 ,   南城永城 ,   高橋希一 ,   大原梧樓

ページ範囲:P.533 - P.538

 先年吾々は当誌1)に両側開胸の臨床経驗について述べたが其の後症例を重ねたので,両側開胸時の麻醉に就て述べる.胸部外科特に縦隔洞の惡性腫瘍の手術時に両方の胸腔を開放することのある事は縦隔洞惡性腫瘍の手術を実施した人の屡々経驗するところであると思う.文献的にもKüttner2),Sweet3),Parker4),大沢5),高橋6),幕内7)等の報告が見られる.
 桂外科教室で最近行われた85例の開胸手術中,食道癌65例中18例,縱隔洞腫瘍11例中2例,心及び心嚢手術3例中1例,合計21例で両側開胸を起している.此の内食道癌は手術侵襲側から縱隔肋膜を介して他側をも開放したもので,他は前胸部から手術侵襲を加えて両側の肋膜を開放したものであるが,後述する如くに此の2者の開胸樣式によつて肺の萎縮の起り方に相異を認める.尚お之等の21例中心嚢手術の1例をのぞいてはすべて惡性腫瘍である.吾々は之等の臨床例を研討し更に動物実驗を加えて両側開胸時の麻醉に就て考究したので報告する.

腰椎麻醉死について

著者: 田中正夫 ,   鎌田純一

ページ範囲:P.539 - P.542

 現在日本で行われている麻醉法のうち,殊に腹部手術に関しては,矢張り腰椎麻醉で行われる手術が最も多いものと思われる.勿論各病院の夫々の方針により,或は局所麻醉を主とし,又は全身麻醉を主とするものもあるが,現在の日本の経済状態,病院の人員設備等の観点より,やはり腰椎麻醉はその手技の簡單に行われ得る点,及びその麻醉効果の確実性,殊に腹筋緊張の完全な弛緩によつて腹部手術を極めて円滑に行い得る点等より,今後とも広範に施行されるものと思われる.
 而し之等の利点に対して,腰椎麻醉の危險性としては,麻醉液を直接脊椎管内に注入するため.或程度以上の副作用に対しては手の施し樣なく,麻痺の進行による呼吸,循環障碍の進展によって遂に死に到る場合も時に経驗される.

手術,麻醉操作にともなう心電図について

著者: 西邑信男

ページ範囲:P.543 - P.546

 近来胸部,心臟外科の進歩にともない,手術中における心電図の研究が盛におこなわれるようになり,自律神経ことに迷走神経の操作中又は後におこつたと考えられる心臟停止についての報告がしばしばなされてきた.(Moore, Meeks, Willi—am, Ehrenhaft, et. al.)又一方麻醉学の進歩にともないintubation等の操作が盛におこなわれ,cyclopropaneが一部の人々によつて愛用されるようになりこれらの心臟への影響が注目されるようになつた.他方balance anesthesiaの進歩とともに術中操作の自律神経におよぼす作用が重要視されてきた.
 こゝに当外科においておこなわれている外科手術操作の心電図におよぼす影響をみ,このさいの予防処置等について考えてみた.

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門脈圧亢進症の治療,特にBanti氏症状群に対する門脈系大靜脈系吻合術の再檢討

著者: 木本誠二 ,   杉江三郞 ,   三枝正裕 ,   勅使河原正雄 ,   腰塚浩 ,   宮尾淳平 ,   鍵谷德男 ,   小谷彥藏 ,   松井澄 ,   馬場甫 ,   杉浦光雄

ページ範囲:P.501 - P.518

序言
 門脈圧亢進症の問題を吾々がとり上げて研究に着手したのは昭和24年であつた.当時はまだBlakemore氏等やLinton氏等が門脈系大靜脈系吻合手術を始めて間もない頃で,その理論的根拠も必ずしも不動に確立されたものではなかつたのであるが,吾國としてもそうした方面から観た考え方並びに治療法を更に深く掘下げつゝ進めて行く價値は充分にあるとの判断から,吾々は一方では実驗的にまだ充分明らかでない理論的檢索を進めると同時に,他方臨床的にも愼重に実施して,外國のその後の動靜を絶えず注視しつゝ批判的立場を捨てることなく吾々としての研究を推進して来た積りである.その間吾々が肝機能を主体に始めて試みた門脈動脈化手術の構想も輪廓が次第にはつきりして門脈圧亢進の治療に合流しつゝある.こうした門脈外科に関する吾々の成績は日本外科学会総会における一般演説並びに宿題報告1)2)その他で逐次発表し,特に門脈大靜脈吻合術の各術式については誌上3)4)にも吾々の決定的結論に達し得ない困難な点を含めて当時としての考えを記述した.この問題はその後の経驗によつても色々むづかしい点があり,今もつて解決し得ない疑問もあり,又以前の考えに半ば反省を要する点もあるようであつて,本年の外科学会総会で言及した所を含めて現在としての吾々の立場を記述し,この方面の先輩各位の御批判を仰ぎ度いと思う.

第19回アメリカ胸部医学会(19.Annual Meeting, American College of Chest Physicians)に出席して

著者: 鈴木千賀志

ページ範囲:P.547 - P.551

 第19回アメリカ胸部医学会(19. Annual Meeting, American College of Chest Physicians)は1953年5月28〜31日New York市のHotelNew Yorker(34 Street at 8th Avenu)で開催された.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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